【原文カタカナ訳】      【語義考察】           【漢字読み下し】
  マーカー部は原文に記されているヲシテ。
 これらを誤写と見て、改修を施した上で解釈しています。
  

 フトマニオノフ        ふとまにのふ          フトマニを展ぶ
  
 フトマニハ インシアマカミ  ふとまには いんしあまかみ    フトマニは     往んし和尊

 トトホコオ サツケタマエハ  ととほこお さつけたまえは    経と矛を      授け給えば

 フタカミモ クニツチヨロノ  ふたかみも くにつちよろの    二尊も       地土 万の

 ミチウミテ キミタルカミオ  みちうみて きみたるかみお    道 生みて      君たるを
                                           (日月)

 ウマントテ ヒヒメミヲカミ  うまとて ひひめみをかみ    生まんとて     一姫三男尊

 ウミマシテ シラスルクニノ  うみまして しらするくにの    生みまして     領らする国の

 マツリコト ミコワカヒトニ  まつりこと みこわかひとに    政事        御子ワカヒトに

 サツケマス          さつけます            授けます
 
       ウケテアマテル        うけあまてる              受けてアマテル

 ヲヲンカミ ヤモヨロカミニ  ををんかみ やもよろかみに    大御神       八百万守に

 ミコトノリ コノフトマニノ  みことのり このふとまにの    御言宣       「このフトマニの

 ヨソコヲハ モトモトアケノ  よそこをは もともとあけの    四十九緒は     元々明の

 サコクシロ アメノミヲヤニ  さこくしろ あめのみをやに    サコクシロ     アメノミヲヤに

 ヨルカタチ          よるかたち            よる形
  
       ソハニトホカミ        そはとほかみ              傍にトホカミ  

 ヱヒタメノ ヤカミハヒトノ  ゑひための やかみひとの    ヱヒタメの     八神は人の

 タマノヲオ フクミフラセテ  たまのをお ふくみふらて    霊の結を      ふくみ振らせて
                                          16万8千のモノ添え
                                           魂魄を喜ばして

 ナカラヱオ ムスヒヤワセハ  なからゑお むすひやわせは    永らえを      結び和せば

 アイフヘモ スシノカミハ  あいふへも すしかみは    アイフヘモ     ヲスシの神は


 キツヲサネ ヰクラムワタオ  きつをさね ゐくらむわたお    キツヲサネ     五臓六腑を

 トトノエリ ミソフノカミハ  ととのえ みそふのかみは    調えり       三十二の神は

 ミメカタチ          みめかたち            見め形
  
       ヒヨノマニマニ        ひよのまにまに              日夜の随に
                                           (陽陰)

 マモラセハ コノフトマニオ  まもらは このふとまにお    守らせば      このフトマニを

 モトウラト ヨロハノアチオ  もとうらと よろはあちお    基と        万葉の味を
                                   <して>     万の言葉の意味を

 カカナエテ ココロミヨメト  かかなえて こころみよめと    かがなえて     試み詠め」と
                                  鑑みて

 ヨマシメテ          よましめて            詠ましめて
  
       カミハシレヲサ        かみしれをさ              神は領長
                                          (アマテル)

 ソヱケツリ モモフソヤウタ  そゑけつり ももふそやうた    添え削り      百二十八歌

 ヱリタマフ モトラツタエノ  ゑりたまふ もとらつたえの    選り給ふ      基伝えの

 フミソタフトキ        ふみたふとき          ぞ尊き
  
 ミワノスヱトシ        みわのすゑとし          ミワスヱトシ
  
  
  
  
  
 1. アヤマ          あやま

 ヤマノ ナカウツロヰカ  あのやまの なかうつろゐか    太の山の      中 ウツロヰが
                                 (ハラミ山)       (中峰)

 アワノスナ コホシノヱナノ  あわのすな こほしのゑなの    アワの砂      九星の胞衣の
                                アワ海を渫った土
 ムネミケル        むねあみける          宗ぞ編みける
                                  (中心)
  
 拙訳:ハラミ山頂の八峰に加え、ウツロヰがアワ海の土を運んで中峰を造り上げる。
    これで核心の中御座が備わり、天の九座が地に下ったも同じ。ハラミは真に地の中心の山となる。
  
 『"中の輪もがな" ウツロヰが アワ海渫え ミオの土と 人 担い来て 朝の間に 中峰成せば』24文
 『中峰の 充てはアワ海 八峰は 裾の八湖 三つ埋まり 焼くれど 眺は 変らじと』32文
  
  
 2. アハラ          あはら

 ハラハ カミノアツマル  あのはらは かみあつまる    天の治は      神の集まる

 ヒトノハラ シツクニワサノ  ひとはら しつくわさの    人の治       仕付くに業の
                                           (躾ける)

 ミトソウミケル        みとうみける          凹凸ぞ生みける
  
 拙訳:天の治め(中央政府の政治)とは、天界の神々が次々と絶え間なく人として生まれ来て行う治めであった。
    彼らは大昔から青人草を教え育んできたが、そうする内に君・臣・民の三件に分れ、行う業も分れたのである。
  
 『天地開け 生る神の ミナカヌシより 計り無き 人種分かれ 貴きも 尊も彦も 生る道を』ミ1文
 『ミナカヌシ 天霧に乗りて 八方に行き 日月の道を 譲り 地に の上の 色国と 名付け』ミ6文
 『天の道 地の道も 葦の如くに 立つ故に』ミ6文
 『八方の代嗣は トヨクンヌ 上より三つの 業を分け 君・臣・民の 三件の 尊は百二十の 御子ありて』2文
 クニトコタチの 八下り子 何クニサツチ 八方主と なりてトホカミ ヱヒタメの 国に生む子は 三件の 君・臣・民ぞ18文
  
  
 3. アキニ          あきに

 アキニトハ コチニヒモトケ  あきにとは こちとけ    明来とは      東風に冷も解け

 ツミノカル ツクミココロノ  つみのかる つくみこころの    弊 逃る       噤み心の

 ルソキニケル        はるにける          張ぞ来にける
                                 [春]
  
 拙訳:一新とは、温い風に冷えも免れ、それまでの疲れも吹き飛ぶ。噤んでいた心の開放の到来なり。
  
 『ホノアカリ マウラを召して 占問えば マウラ フトマニ "アキニ" 採る』20文
 『"東風に冷も解け 弊 逃る" 今 春なれば 西の空 民 疲れ無し 好し好しと 御言定まる』20文
  
  
 4. アチリ          あちり

 チリノ ハナモワカミノ  ちりの はなわかみの    空に散りの     端も我が身の
                                 空間の広がりの     隅々まで

 ウツロヰカ シノヒノコエモ  うつろゐか しのひこえも    ウツロヰが     忍びの声も
                                                控えめな雷鳴ですら

 ナリヒヒクヤハ        なりひひくやは          鳴り響くやは
  
 拙訳:全空間の隅々まで自分の身であるウツロヰだから、小さな雷でも遥か遠くまで鳴り響くのだろうか。
  
 『"鳴神の 主 東北守 ウツロヰの 大将君" とぞ 年稔りに やしろ賜わる』21文
 『もしも 地搖り 鳴神の 騒る障りの あらん時 東北の一木を 居社に ヱトの六十日に 守り余る ヤナヰカクロヒ 空守る』22文
 ウツロヰの神 現れば たとえ鳴神 地搖るも 厳技なして 鎮むべし』22文
 『言えばウツロヰ  飛び上り 鳴神してぞ  去りにける』27文
  
  
 5. アヌウ           あぬう

 アヌウナル ミハノユカリハ  ぬうなる みはゆかりは    天祝うなる      御衣の縁は
                                (神を祭る)          (菊散)

 サヲシカノ モスソニミツル  さをしかの もすそみつる    差使の       裳裾に充つる

 メクミヌウナリ        めくみぬうなり          恵み和うなり
  
 拙訳:アマテル神が九星を祭る時に菊散の御衣を召すのは、その裳裾に充ちる恵みを天元の差使が民に配るためである。
  
 『小葵の御衣 菊散と ヤマハ留彩の 三つの紋 神の装ひの 御衣裳なるかな』26文
 『常に着く 差使八手の我が冠 衣と裳 "民に 緒を届け 陽陰を束ねて 日月為す 裳裾を汲め" と』28文
 『胸清く 身は垢付けど 差使が見て 陽陰に告ぐれば 差使の 八つの聞えに 洗われて いのれもがもと』28文
 『裳裾の 民を撫でつつ 差使の 清きに神は ありと言えき』28文
 『人 常に 神に向はば 世の身々の 垢は天元の 差使に 清め賜ひて サコクシの 振ゆの鏡に 入ると思えば』28文
 カスガに 奉る 神のヲシテと 差使の 冠と衣裳は 菊散ぞ』28文
  
  
 6. アムク           あむく

 ムケト タカキノソミノ  むけと たかきのそみの    天を向けど     高き望みの

 トトカヌモ ナルカミハレテ  ととかも なるかみはれて    届かぬも      鳴神はれて

 アムクナルナリ        あむくなるなり          上向く成るなり
  
 拙訳:天を仰いでも高望みの叶う訳ではないが、
    少なくとも雷は止んで悪夢に襲われなくなるから、調子は上向くよ。
    だからうつむくのはやめて、上を向いて歩こう♪
  
 『ハタタ神 鳴り 止まざらば "ホオコホ騒ぞ ひなおり" と 祈り "留むる ヲノコリ"と 童の額 上に押せば 魘われぬ法』18文
  
  
 7. アエテ          あえて              

 ヱテハ オモハヌフユノ  ては おもはふゆの    回を得ては     思わぬ振ゆの
                                 (運)

 ウラヤミモ ツトメアエテハ  うらやみも つとめあえては    羨みも       努め和えては

 ヤハリウルナリ        やはりうるなり          やはり得るなり
  
 拙訳:幸運に思わぬ恵みを得た人を見ると、つい羨ましく思えるけれども、
    たゆまぬ努力を積み重ねる内に自分にもそうした幸運が巡ってくるものだよ。
  
 『繁の向くは 亀も日月も 千代に目の 輝く華の 頃や迎くらん』フ118
 『繁の連るは 仕え尽くして 一日の 月満つ頃の 振ゆに遭うなり』フ126
  
  
 8. アネセ          あねせ

 ネセハ コトシロヌシカ  あのねせは ことしろぬしか    天のねせは     コトシロヌシが
                                              (クシヒコ)

 ミホノツリ チチカススカノ  みほつり ちちすすかの    美保連り     清かの
                                    [釣り]

 ミソキナスマテ        みそきなすまて          禊なすまで
  
 拙訳:「カシマ立ち」でオホナムチに返答を迫った際に、なぜコトシロヌシが美穂崎あたりでのんびり釣りをしていたのかと思わないか?
    オホナムチは自分が出雲に専念するためにクシヒコをコトシロヌシにしたのだから、クシヒコは都で公職に仕えていてしかるべきだ。
    実は、天(中央政府)は事前にオホナムチが、息子のクシヒコに必ず相談するだろうと読んで、クシヒコをさり気なく出雲に送り、
    相談を受けたら父をうまく清かの道に諭して野望を捨てさせるようにしむける作戦だったんだ。
    美穂崎のクシヒコは戦略上、最も重要な布石だったというわけさ。
  
 『オホナムチには クシヒコを オオモノヌシの 代りとて コトシロヌシと 仕えしめ 己はイヅモに 教ゆるに』9文
 『オホナムチ 応え 問わんと ミホサキの 雉子の イナセハギ の応えを 問ふ時に コトシロヌシが 笑す顔10文
 『 清かにて 父母に "ホロロ泣けども 鉤の鯛ぞ さかなと極るも 愚かなり タカマは民の 笑す尊 いとかけまくぞ 御言宣"』10文
 『ハタレマの 財 集めて 末 消ゆる これ鈴暗ぞ 生きの内 欲を離るる これは鈴明13文
 『"清かの文を 見ざるかや"  頷き "クシヒコが  諌めの '清か' 今 解けり 苦しみは何"』13文
  
  
 9. アコケ          あこけ

 コケハ ヨコヤシルヤモ  こけは よこやしるやも    央の痩けば     側屋・離屋も
                                 (主屋)         (厠・はなれ)

 ハサラナセ アコケクルマノ  はさらなせ あこけくるまの    ハサラなせ     陽回転の

 メクリアラネハ        めくりあらは          巡りあらねば
  
 拙訳:主屋が穢れたならば、主屋だけでなく側屋や離れ屋の地も清めなければならない。
    陽の気(天の精霧)の循環は、主屋で閉塞すると他所への回送も止まってしまっているからである。
  
 『フトマニの "アコケ" は仕業 ウツヲ神 時 御言宣 ウツヲ神 社 閉ざして 陽陰に告ぐ』21文
 クニトコタチの ムロ屋より 宮殿造る バサラ民 傷め祟るの 折あれば これ除かんと 思すなりミ8文
 『敷き座す君の 永らえを 守るハサラの 守鎮め これ住み寄しの いかすりを ヲコヌの尊の 説く法とミ8文
 『住の潔は 伐り初めの木を 中柱 <バサラの>神は赤白黄の 木綿に斎めて』フ111
  
  
 10.  アオレ         あおれ

 アオレトハ シラウトコクミ  あおれとは しらうとこくみ    天穢れとは     シラウドコクミ
                                 (官の堕落)        (天のマスヒト)

 コトハハト ヨソメモオカス  ははと よそめおかす    と      よそ女も犯す

 ナオレナルカナ        なおれなるかな          名折れなるかな
  
 『根の国と サホコの国の マスヒトが 内のシラヒト コクミらが も犯して も犯す』8文
  聞くや シラウドコクミ  犯す 汚名 今にあり 君 真似て 汚名を被るや』32文
  
  
 11.  アヨロ         あよろ

 ヨロノ ホシオシツメテ  よろの ほししつめて    天の万の      星を親めて

 アリノママ スメバヨロコヒ  ありのまま すめよろこひ    ありのまま     住めば喜び

 トキソアリケル        ときありける          研きぞありける
  
 拙訳:天に輝く無数の星々を自分の本来の姿と思い親しみ、地上での束の間を、
    俗世の栄華に心を傾けることなく、ありのまま直ぐに生きる時、真の喜びと輝きを得る。
  
 『往んし和尊 星となる これは範なす』13文
 ミナカヌシ 八面に生める 人は星 星は種なす 御祖神』18文
 『天に還れば ミナカヌシ 及びヱ・ヒ・タ・メ ト・ホ・カ・ミも 天に配りて 星となす アメトコタチの 神はこれ』ミ6文
 十一の君 キ・ツ・ヲ・サ・ネ ア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウも 天に還り サコクシロにて 御言宣 みな星となすミ6文
 クニトコタチの 七代の尊 みなサコクシロ よりの星ミ6文
 『下に在ては 星を崇めて 永らうる 父母に継がえて 茂り得るなり』フ071
  
  
 12.  アソノ         あその

 アソノヨノ ナルカンヲカモ  あそのよの なるかんをかも    発の代の      生る上陽神
                                             (ムナモト)

 スミメカモ ワケヤカエラン  すみめかも わけかえら    下陰神        分けや孵らん
                                 (ミナモト)

 タノシキワナリ        たのしきなり          楽しき地なり
  
 拙訳:原初の時に分かれ現る宗陽神と鄙陰神。
    陽と陰に分かれることで誕生するのが、我らが楽しい地球でございます。
  
 『背のムナモト 日と丸め 妹のミナモト 月と凝り』14文
 天地人も 分かざるに 初の一息 動く時 東上りて 西下り 虚空に回り 泡・泥の 回れる中の 実柱に 裂けて陰陽生る』14文
 天地の 開ける時の 一息が 陰陽と分れて 陽は天に 陰は地となる15文
 陽の空 風 生み 風も 火と分かれ 背のは 日輪なる 妹の鄙元 月となる 地は埴・水 且つ埴は 山・里となる15文
 『天地届く 御柱を 回り分かるる 泡・泥の 泡は清くて 宗陽神 泥は濁りて 鄙陰神』ミ6文
 『陽は軽ろ清く と成り 陰は重り凝る 地の球 背のは 日輪なる 妹の鄙元  月となる』ミ6文
  
  
 13.  アユン         あゆん

 ユンノ マメニヒラキノ  あのゆんの まめひらきの    天の弓の      豆にの

 ムラサキヤ マオウツロヰノ  むらさきや うつろゐの    むらさきや     魔をウツロヰの
                                            [枯]

 ハルヘヒクラン        はるひくらん          祓へ導くらん
                                 [春]
  
 拙訳:年越しの夜、天の弓たる煎豆を打って鬼を遣らい、柊を門に開運を図る。
    その日の暦守のウツロヰが、邪霊を吹き祓い、冬枯れを春に導くことだろう。
  
 『年分けの夜は 豆を煎り 穢・鬼 遣らふ 顔を開き 引き 塞ぎ ハヱユヅ葉 に年越えミ7文
 『"" 元の神の 別る夜は 煎り豆打ちて 鬼遣らゐ 柊鰯は モノの垣 穂長譲葉 注連飾ミ9文
 ウツロヰの 年越瀬前 大晦日 初六日・十四日 五月の三十日 総べ一年守る』ミ7文
 『もしや汚曲の 障いせば あらかねの埴を ウツロヰの 大将神の マサカリや』ミ8文
 たとい東北魔に 障なすも 穢方より '傾ふ 方' 違ひ あらかねの埴を 篤く錬れば 守の恵みに 適ふ成る』ミ8文
  
  
 14.  アツル         あつる

 ツルニ クラヰモワサモ  あのつるに くらゐわさも    熟の尽るに     位も業も

 ユツルトハ シルモシラヌモ  ゆつるとは しるもしらも    譲るとは      知るも知らぬも

 サタメツルカナ        さためつるかな          定めつるかな
  
 拙訳:老いが熟しきる時、その位も職も後任者に譲らねばならない。
    納得しようが出来まいが、それは定めであって人知の及ばぬ所。
    この定めに照らして世での行いを鑑みるべきである。出世も富も名声もいずれは...
  
 『代を継ぐ者は 譲り受け 橋得てとつぎ 睦じく 子を生み育て また譲る』13文
 『"ツ" は木の齢 熟に尽きて 枯れる 熟の尽ぞ』23文
 『茂の尽るば 真栄き華の 功も 篤の病も 元に還つる』フ078
  
  
 15.  アヰサ         あゐさ

 ヰサメ キミハトミアリ  ゐさめ きみとみあり    上の諫め      君は臣あり
                                (上位者への諫め)

 ヲヤハコノ トモニタカラノ  をやの ともたからの    親は子の      共に宝の

 メクルナリケリ        めくるなりけり          恵るなりけり
  
 拙訳:上位者を諫めるというのは並大抵のことではない。我が身のことを思えば誰もあえてやろうとはしない。
    君にあっては家・命を投げ打っても君を思う真の忠臣、親にあっては真に親を思う子のみがそれを恵んでくれる。
    上位にある者は、何物にも代えがたい宝と肝に命じなければならない。
  
 『民も みやすければや 臣が祖 しいる諌めの 畏れみに 隠れ住み行く 末つ身を』 『クシヒコが  諌めの "清か" 今解けり 苦しみは何』13文
 『ワニヒコが 上祖クシヒコ 諌め入る 直きに賜ふ ヤマト尊 三代還の直き 功に "直りモノヌシ 尊"  賜ふ』30文
 オミケヌシ 諌め申さく " 聞くや シラウドコクミ  犯す 汚名 今にあり 君 真似て 汚名を被るや"』32文
 大御神 陽陰の道 成す 代々の君 継ぎ受け収む 和日月 が政 諌めずて 阿り君を 穴にする』32文
  
  
 16.  アナワ         あなわ

 ナワノ ミチモヰモセノ  あのなわの みちゐもせの    の縄の      道も妹背の
                                  (経と矛)

 ナカウトモ ツヨキモヤワス  なかうとも つよきやわす    仲人も       強きも和す

 アナワナリケリ        なわなりけり          縄なりけり
                                 (神の縄)
  
 『意の縄の 文も通れば 妹背も 中に頼みの 結縄(仲人) 引くらん』フ032
 『府の縄の 纏り通れば 妹背も 中に導く 文縄なりけり』フ048
  
  
 17.  イヤマ         いやま

 イヤマナル タカキハソヒエ  いやまなる たかきそひえ    偉山なる       高きは聳え

 オリヤセン オリニヨソウテ  おり おりよそうて    下りやせん     下りに装うて
                                    (せぬ)

 ヰヤマナルヘシ        ゐやまなるへし          礼 成るべし
  
 拙訳:高山の如き貴き者は聳え立ち、決して低まることはない。
    然るに貴き者が身をやつすことによって礼というものは生れる。
  
 『謙の熟は 積伸ふ大臣も なお臣と 言う百・万聞きに 流れ得るなり』フ051
  
  
 18.  イハラ         いはら

 ハラノ ミハタネハラム  いのはらの たねはらむ    弥の腹の      身は胤孕む

 ヒタチヲヒ オヒヌツルキノ  ひたちをひ おひつるきの    直ち帯       負ひぬ連ぎの

 タカラフルナリ        たからふるなり          宝 奮るなり
                                  (子)
  
 拙訳:大きな腹の身は子孫を孕む。それを包む"直ち帯"は、腹に宿す 連なる枝の子宝を健やかに育むなり。
  
 『タマキネの 教えの帯は 己々の果に 品 弁えて 地 治む  帯は五腑の 固めなり』16文
 てれば姫君 障らねど イキス "直ち" と なす帯ぞ』16文
  
  
 19.  イキニ         いきに              

 キニノ キツサニトミノ  いのきにの とみの    勢の熟の      東・西・南に臣の

 アラソヒモ ツサヲハヤメテ  あらそひも やめて    争ひも       西・南 長は病めて

 キニニクラン        きににくらん          熟や和ぐらん
  
 拙訳:勢力拡大のための臣同士の争いは、君にとっては頭痛の種であるが、
    意外にも病や老衰によって自然(天地の見えざる手)に解決するもの。
  
 『勢の鋭りの 争う 充つの 地の殊 君が平へに 引きや散るらん』フ020
 『富の熟の 争う臣の 理を 和せば民の 振ゆぞ来にける』フ035
 『皇の塵の 民栄を消す 争ひの 乙が乱れば 主や散るらん』フ084
 『繁の熟の 経矛に充つの 争ひも 上が疎かに 肝や潰むらん』フ115
  
  
 20.  イチリ         いちり

 チリノ アラソウミツノ  いのちりの あらそうみつの    勢の鋭りの     争う充つの

 クニノコト キミカヒラヘニ  くにのこと きみひらへに    地の殊       君が平へに

 キヤチルラン        ひきちるらん          引きや散るらん
                                 (引切り)
  
 拙訳:勢いを伸ばさんと臣同士で競う現世の功だが、君がほんの少し正せばその性急な心も消えるだろうに。
  
 『例えば曲人 賄ひて 栄い増さんを 臣も欲し 取引増して 喜べば 減り憎む民 また強く 願えば怒る 朋の臣 
  迫るを選み 分け返す 恵み喜ぶ 負け憎む 君召す畏れ 直されて 枯るる哀しさ」17文
 『勢の熟の 東・西・南に臣の 争ひも 西・南 長は病めて 熟や和ぐらん』フ019
 『富の熟の 争う臣の 理を 和せば民の 振ゆぞ来にける』フ035
 『皇の塵の 民栄を消す 争ひの 乙が乱れば 主や散るらん』フ084
 『繁の熟の 経矛に充つの 争ひも 上が疎かに 肝や潰むらん』フ115
  
  
 21. イヌウ          いぬう

 イヌウナル トミハホコリテ  いぬうなる とみほこりて    勢伸うなる     臣は誇りて
                                   勢力急伸の

 コハオコル ハヤルホトカヤ  おこる はやるかや    子は驕る      早る穂と萱
                                (その民)

 ホコロヒルラン        ほころひるらん          綻びるらん
  
 『国守は 民のたらちね その民は 国守の子ぞ』23文
 『荒猛心 子に求め 鋭き過ぎ ねぢけ 横しまの ハタレとなるぞ』17文
 『鞭を逃るる 早利きを 褒め喜べば 過ぎねぢけ ハタレとなるぞ』17文
 『篤き恵みの 緩法を 必ず倦むな 早るなよ 早きハタレに 赴かで』17文
 『誇る世は 陽陰の憎みに 雨風の 時も違えば 稲痩せて 民の力も やや尽きて 弥に苦しむぞ』23文
 『飾りより 驕りになりて 研ぎ化かる 果てはハタレの 地乱れ 民安からず 』23文
 『もしも司の 驕りにて 民を枯らせば 罪大し ヨコヘに更に 検めて その民活かす 臣・小臣 驕り忍びて 道守れ』23文
 『繁に向くば 君華やかに 民驕る 後の災ひ すでにに迎くなり』フ102
  
  
 22. イムク          いむく              

 ムクハ ホノアヤマチト  むくは あやまちと    "い" の向くは    央の誤ちと
                                 (忌・穢)        (本・心)

 ツツシミテ ノソミモニケノ  つつしみて のそみにけの    謹みて       望みも賑の

 ニヤムクラン        にやむくらん          "い" にや向くらん
                                 (斎・活)
  
 拙訳:"い(忌・穢)" が自分に寄ってきたならば、心に過ちありと留意せよ。
    そうすれば同じ "い" でも、賑やかな "い(斎・活)" の方向に望みは向かうだろう。
  
  
 23. イエテ          いえて

 イエテネル ヲキナカシホモ  ねる をきなしほも    気和て練る     が塩も
                                 (魂)

 メヒカミモ ヘソメヨトメモ  めひかみも へそめよとめも    目一守も     ヘソ姫・ヨド姫も   
       [エ]                                  (不明)

 メヤヱルラン        ゑめゑるらん          笑や得るらん
  
 拙訳:気合・魂を込めて練り熟なす。それによってシホカマ翁の塩も、
     アマメヒトツの剣も、ヘソ姫・ヨト姫も良き物を得、そしてまた尊敬や喜びも得る。
  
 『然にあらず 徒に作れば 枯木なり 神霊あればぞ』12文
 『例ふれば 潮の味あり 計らねば 味無し焼けど 塩成らず この天形も 心味  入れて成すなり』12文
 『畏れて百日の 物忌し 右目一つで 錬る剣 八振上ぐれば 御言宣』23文
 『アカ女を褒めて "ヨト姫"と は鉤を得て 喜びに シガの守して 返さしむ』25文
  
  
 24. イネセ          いねせ

 ネセハ ノリニアフルル  ねせは のりあふるる    妹の捩せは    法に溢るる
                                   (妬み)

 アオメラヤ ワカメノナタモ  あおめや わかめなたも    青侍らや     若女の斜も

 ヱモリナスラン        ゑもりなすらん          燻りなすらん
  
 拙訳:女の妬みというものは掟や法では解決がつかない厄介なものである。
    后達はもちろん青侍や若女のねじけと言えども、捨て置けばくすぶり始め、ついには火を吹くだろう。
  
 『背の央中に 妹あり" と 腹悪し言葉 無かるべし 腹病めぬ間に 妙に察せよ』13文
 内宮の 青女のいぶり 気を冷ます 傍のコトシロ 忠なれば これを下侍が 恨むなり16文
 『君が恵みも つい忘れ 恨み妬むの 庭桜』16文
 女は一途に 思えども 妬み煩ふ 胸の火が 愚霊と成りて 子種噛む16文
 『添の捩せば スヘヤマスミの 神祭れ 妻の操も 妬みねせれば』フ104
  
  
 25. イコケ          いこけ

 コケノ オロチカコリノ  いもこけの おろちこりの    妹転の      愚霊が凝りの

 ヒメカムオ タツトカクシノ  ひめかむお たつとかくしの    姫 噛むを     絶つトガクシの

 ハカミナルカナ        はかみなるかな          僻み直るかな
  
 拙訳:女の妬みの生き霊が化けて凝り成る大蛇。その妬みは男の寵愛を得る他の女を次々に噛み殺す。
    トガクシはこの大蛇の霊の結を斬った。世に蔓延する女のねじけはこれでようやく直るのかな?
  
 『女は一途に 思えども 妬み煩ふ 胸の火が 愚霊と成りて 子種噛む』16文
 『二愚霊 姫に生まれて  召せば モチ御子生み 典侍となる ハヤ生み 内局28文
 『セオリツが 御后に なるをモチコが 殺さんと 妬めばハヤは を退い 弟君 媚えど 露れて 共にさすらふ28文
 『アカツチが 弟君に 因むをば ハヤが愚霊に 噛み殺す 弟アシナヅが 姫を乞えば 七姫までは 噛み食らふ』28文
 トカクシ曰く " 今 日三の炎を 絶つべしぞ 我が供 食みて 下に降れ"』28文
 『"直霊を守れば 罪消えて また人成る" と を切れば 撚の結断の 山ぞハコサキ28文
 『忌の連は ハヤコヲロチ 祭られて 生るイワナガも 操 堕ちつる』フ030
  
  
 26. イオレ          いおれ

 オレオ サルタカトリテ  いのおれお さるたとりて    狗愚を     サルタが執りて
                                  (獣)           仕込んで

 カクラシシ ヨコマオハラス  かくらしし よこまはらす    神楽獣     汚曲を晴らす
                                       <笑いは>

 ヨヨノカンカセ        よよかんかせ          代々の神風
  
 『好む渦侍を 賜りて その名顕す 猿部らと 神楽獣の 君の基なり』24文
 姦神楽の 獣舞を 問えばトキヒコ "これ昔 妙に渡りて 騒ばむを 辻君執りて 立て全つる"』40文
 『君 楽しみの 神楽獣 八万鹿島に ある形 "障り無かれ" と 玩ぶ 猿治の尊の 名にし負ふ』40文
  
  
 27. イヨロ          いよろ

 ヨロノ タネハヨワキモ  いのよろの たねよわきも    勢の万の      種は弱きも
                                           (源)

 ナカハシラ モロモツクミモ  なかはしら もろつくみも    中柱        守も 次ぐ身も
                                (中軸・君)       (臣) (次の者)

 イヨロナルヘシ        いよろなるへし          弥宜 成るべし
  
 拙訳:君は繁栄の種である。たとえ貧弱な君であっても周りの臣や小臣が次第に向上し補って行くものである。
  
 『嗣子なく 道衰ひて 弁別無』ミ2文
 『和の尊 嗣無く 政 尽きんとす』23文
 『地上の 御柱のまま 成る如く 政 ほつまに 調ひて24文
  
  
 28. イソノ          いその

 ソノハ ヤナキサクラノ  そのは やなきさくらの    妹の園は       の

 コトヨリモ カスミニモモノ  ことよりも かすみももの    如よりも      かすみの

 ハナヤオソラン        はなおそら          木や惜そらん
                                   (=惜しまん)
  
 拙訳:女の園では、見て楽しむだけの柳や桜の類よりも、
    色と食の材料となるかすみ草や桃の木がもてはやされるに違いない。
  
  
 29. イユン          いゆん

 ユンノ アタハタチハナ  ゆんの あたたちはな    忌の弓の      的は                                     (攻撃)

 メハサクラ ヤムモシナトノ  さくら やむしなとの    穢は       病むもシナトの
                                                  <風に>

 イユンナスナリ        いゆんなすなり          癒結なすなり
  
 不詳。
 木草の病気や害虫のことを言うか。ここでの「い(忌)」と「め(穢)」はどちらも「汚穢」の意と思われるが、その区別は困難。
 "シナトの癒結" はシナトの風が汚穢隈を吹き払って直す事を言うと思われ、これはワカ姫の "押草に煽ぐ祓い" を思い出させる。
 また橘は右、桜は左を象徴し、これは君の守りの両羽である鏡臣・剣臣を暗示するのかもしれない。
  
 『南の殿に 植えて 橘の宮  東に植え 大内宮6文
 『左はタニの サクラウチ 弥のの 鳴らし歌 右はヲヲヤマ カグツミの "研ぎ優ぐ芳ぐ" の 祝歌』14文
 叢雲覆ひ 暗ませば シナトを招き 吹き払ふ』8文
 シナトベの神 現れば 道の明奪ふ 八重雲を シナトの風に 押し払ひ 夜も明け方と 知らすべし』22文
  
  
 30. イツル          いつる

 ツルハ ハヤコカヲロチ  つるは はやこをろち    忌の連は      ハヤコヲロチ
                                 (愚の連鎖)

 マツラレテ ナルイワナカモ  まつらて なるいわなかも    祭られて      生るイワナガも

 ミサホオチツル        みさほおちつる          操 堕ちつる
                              <やはり>
  
 『アカツチが 弟君に 因むをば ハヤが愚霊に 噛み殺す 弟アシナヅが 姫を乞えば 七姫までは 噛み食らふ』28文
 時にソサノヲ これを斬り 身をヤス形と 祭る故 またヤマスミの と生まれ を妬む 罪の連り28文
 『これソサノヲの オロチをば 連りヤスカタ 神となし ハヤスヒ姫も アシナヅチ 七姫 祭る 例し以て』39文
 『母・ 恨み 下侍して  陥さん 他枕』24文
 『妹転の 愚霊が凝りの 姫噛むを 断つトガクシの 僻み直るかな』フ025
  
  
 31. イヰサ          いゐさ

 イサノ コトニヤワラク  いのいさの ことやわらく    初の斎の      琴に和らぐ
                                  (七種の祝)

 ナラワセヤ ウナヒコノフヱ  ならわせや うなひこふゑ    慣わせや      髫髪子の笛

 モフクラン       もゐなさふくらん         陽風 吹くらん
  
 拙訳:新年初の七種の祝には、宮廷で演奏される雅楽に心を和ますのが慣わしである。
    髫髪子が笛を吹くと、それに合わすかの如くに春風も吹いて来るようである。
  
 フトマニ中に2首ある字余りの歌(32音)の一つ。
 「ふゑ(笛)」の音を「ふう(二陽)」にかけている。
  
 『七種の 御饗に歌の 日数経る ワカタリヒコと タケウチと に参らず』40文
 『故 召して 問えば申さく "笑楽日は 遊び戯れ 異忘る 狂え人あらば 窺はん"』40文
 『"" の嘗は 西南にイナサの 初日より 二陽を和せて  焚き』ミ7文
  
  
 32. イナワ          いなわ

 ナワノ フミモトホレハ  なわの ふみとほれは    意の縄の      文も通れば
                                 (思ひの綱)

 イモヲセモ ナカニタノミノ  いもをせも なかたのみの    妹背も       中に頼みの

 イナワヒクラン        いなわひくらん          結縄 引くらん
                                 (仲人)
  
 拙訳:思ひをつなぐ文で心が通ったならば、彼と彼女は間に事をゆだねる仲人を立てることでしょう。
  
 『の縄(経と矛)の 道も 妹背の 仲人も 強きも和す 縄(神の縄)なりけり』フ016
 『府の縄の 纏り通れば 妹背も 中に導く 文縄なりけり』フ048
  
  
 33. フヤマ          ふやま

 ヤマニ オモヒツクミノ  やまに おもひつくの    富の山に      思ひ憑く身の

 トリヱナミ ミニイタツキノ  とりゑなみ いたつきの    捕餌舐み       実に労きの
                                 (釣餌)           (鉤)

 イルモシラステ        いるしらて          入るも知らずて
  
 拙訳:欲に心囚われた者は、現し世の罠とも知らず目前の富に喰い付く。
    鉤は遂には霊の結にからみ、人としての来世は無い。
  
 『ハタレマの 財 集めて 末 消ゆる これ鈴暗ぞ 生きの内 欲を離るる これは鈴明ぞ』13文
 陰陽を結びて 人心 世に還る時 直ぐなれば また良く生まれ 汚欲は あえ還らぬぞ13文
 右の欲を 羨む人が 咬む故に 霊の結乱れ 旋風の 岐にの 苦しみが 獣となるぞ 打たず13文
 『他人を惑わす 我が欲も 他人は打たねど 霊の結に 覚え責められ 長き夢』13文
 『直からざれば 人ならず 世にありながら その業に 産める財を ただ乞ひて 競ぶ愚こそ 大の潰よ』13文
 『財集めて 蔵に満つ 塵や芥の 如くなり 心 素直の 人あらば 我が子の如く 取り立てて 満な足す時は 欲も無し』13文
 塵と集めて 余に迫り 羨むモノが 咬む故に 霊の結 乱れ みやなくて 末 守らぬを13文
 『咲く花に 思ひつく身の あぢきなさ 身にいたつきの いるも知らずて*古今集序
  
  
 34. フハラ          ふはら

 ハラノ ミヤハタカラオ  はらの みやたからお    二の孕の      宮は宝を
                                   [蓬莱の]

 ハラマセテ シタウホツマノ  はらまて したうほつまの    栄らませて     慕うホツマの

 タミソウミケル        たみうみける          民ぞ生みける
  
 拙訳:<タクハタチチ姫の> 二孕み目の御子のハラの宮(ニニキネ)は、
    宝(ニハリの民)を基盤に発展させ、その民が子と慕うホツマの民を生むのである。
  
 『ニハリの民が 群れ来り 掘り土を 峰に上げ "八房計り" と 天に応え』24文
 『大御神 ハラの皇君と 名を賜ふ ニハリの民が 子と慕ふ 風も分かれて 元民と 水際別れ』24文
 地上の 御柱のまま 成る如く 政 ほつまに 調ひて 二万八千経て 三十の なす頃 国の名も 地上ホツマ24文
 『清(キヨヒト)の原の 政 豊かに 寿けば 晴[蓬莱]と潤う 民ぞ頂けり』フ098
  
  
 35. フキニ          ふきに

 キニノ アラソウトミノ  ふのきにの あらそうとみの    富の熟の      争う臣の

 コトワリオ ヤワセハタミノ  ことわりお やわせたみの    理を        和せば民の

 ユソキニケル        ふゆにける          振ゆぞ来にける
  
 拙訳:勢力拡大を目論んで臣同士が相争うのは、いわば必然であるが、それを和せばこそ民は恵みを得るのであるよ。
  
 『勢の熟の 東・西・南に臣の 争ひも 西・南 長は病めて 熟や和ぐらん』フ019
 『勢の鋭りの 争う 充つの 地の殊 君が平へに 引きや散るらん』フ020
 『皇の塵の 民栄を消す 争ひの 乙が乱れば 主や散るらん』フ084
 『繁の熟の 経矛に充つの 争ひも 上が疎かに 肝や潰むらん』フ115
  
  
 36. フチリ          ふちり

 フチリトハ タカラウツラノ  ふちりとは たからうつらの    扶治りとは     高らう連の

 ヌクメトリ ムクイクハラハ  ぬくめとり むくいくはらは    温め鳥       椋活く原は

 タミモチルラシ        たみちるらし          民も繁るらし
  
 拙訳:扶養とは上層の連中(君・臣)が温め鳥になるようなものである。 
    ちなみに椋鳥が繁殖する所では民も茂ると言うぞ。
 『"タ" のオシテ 三光 円の 内に入る 足り助く法 天と父 上下 反す "ラ" のオシテ 地と母法』17文
 『親が子を 孕めば乳足る 父・母は 実に足乳根よ "タ" もヲシも 乳無きの親よ』17文
 『鑑みて 助くる民は 子の如く ヤタは公』17文
 『二尊受けて 親となり 民を我が子と 育つるに 篤く教えて 人と成す』17文
  
  
 37. フヌウ          ふぬう

 ヌウハ メナキモミハノ  ぬうは なきもみはの    布に和うは     穢なき紅花の

 ムメノハナ サスラヤマヒモ  むめはな さすらやまひも    梅の木       流離・病も

 ニソヌヒケル        ふにそぬひける          布にぞ脱ひける
  
 拙訳:布に合せる紋には、穢れ無き紅色の梅の花。 異常も病も布に拭い取ってくれるぞえ。
  
  
 38. フムク          ふむく

 ムクハ アワノオコリノ  ふにむくは あわのおこりの    "ふにむく" は    陽陰の起りの
                                           (万象の起源)

 コエスキオ シツメクタセハ  こえすきお しつめくたせは    声直ぎを      親つめ下せば
                                  (アワ歌)

 ミニオモムク        ふみおもむく          文に赴く
  
 拙訳:"ふにむく"とは、万象の起源たるアワ歌に親しみ、それを噛み砕けば自ずと教えや書物に赴くことを言う。
  
 『二尊の 天のアワ歌に 国を生み 地のアワ歌に 音声和る』ミ1文
 歳冬 男は袴着る 女は被衣 言葉を直す アワ歌を 常に教えて』1文
 和の歌 カダカキ打ちて 率き歌ふ 自づと声も 明らかに1文
 二尊の オキツボに居て 国 生めど 民の言葉の 悉 曇り これ 直さんと 考えて5文
 『五音七字道の アワ歌を 上 二十四声 イサナギと 下 二十四声 イサナミと 歌ひ連ねて 教ゆれば』5文
 『歌に音声の 道 開け 民の言葉の 調えば 中国の名も アワ国や』5文
 下りて共に とつぎして 御柱回り アワ歌を 詠みてオノコロ 万物を 生みしは18文
  
  
 39. フエテ          ふえて

 エテハ タミオソコナウ  ては たみそこなう    富を得ては    民を損なう

 ヲサトミカ ウソヤクスリモ  をさとみか うそくすりも    長臣が       嘘や薬も
                                            (賄賂)

 フエテタスラン        ふえたすらん          増えて治すらん
  
 『力貸す 恵み忘るる 二百座 避るも百座 踏むが五十 掴むの六十で 四百十座 これ逃るるや』7文
 『賂掴み 忠ならず ついに愚霊に 舐められて 法の崩るる 節々に ハタレのモノの 蠢めきて8文
 『例えば曲人 賄ひて 栄い増さんを 臣も欲し』17文
  
  
 40. フネセ          ふねせ

 ネセハ ヌスムタカラモ  ねせは ぬすむたからも    ニの捩せは    盗む財も

 オトカワサ クルシクウセテ  おとわさ くるしくうせて    劣が業      苦しく憂せて

 ネセスラン        ねせふすらん          捩せや沸すらん
  
 拙訳:二度目の捩せ(心の曲り・逸脱・惑い)に盗みを働き、財を得たとても、これは愚かなる所業。
    心苦しく憂鬱で、捩せ(態度・言葉・行動に表れる歪み)は、酷くなるだろう。
  
 『盗みも他人が 知らざれば 財得るとぞ 思えども 一度隠し 二盗み 三度損なひ 改めず 天地人の 見る所』17文
 『隠し盗むも 身に添ふる 風より天に 告ぐるなり 二の盗みは 跼り 抜き足なすも』17文
 『土の神 恵みによりて まだ告げず 三度損ふ 己が胸 騒ぎあるより 言震え 見目に表れ』17文
 ぬすむ心派 ミヤビより 五臓に告げて 安からず 見目に言葉に 跼り 抜き足 応ふ17文
 『人見ぬとても ぬすむなよ およその人は 知らねども 穢 現るる 元の守17文
  
  
 41. フコケ          ふこけ

 コケハ ハヤリオカソウ  こけは はやりかそう    振の痩けば    栄りを数う
                                 (殖・栄)

 モトモトノ ヲキナカワサニ  もともとの をきなわさに    元々の      太祖が業に

 アミリタスヘラ        あみりたすへら          炙り治すべら
  
 拙訳:不振とあらば、栄えを加増する元々の八神の業。
       「ヒ-フ-ミ-ヨ-ヰ-ム-ナ-ヤ-コ(一二三四五六七八九)」と数えて、ブーストアップするべし。
  
 『傷む如 あらば一二三四 五六七八九 十まで数えて ふるえ ただ ゆらゆらふるえ』20文
 『かく為せば すでに曲るも よみがえる 奮る宣言ぞ』20文
 『元々天並 三十二神 纏れば  "廻みの トヨケ尊" 東の君と  受けて4文
 『元々明の ミヲヤ神 側のトホカミ ヱヒタメの 八元の神に 守らしむ17文
 『元々明の 陽陰恵み 届く柱は 透き通る 中の管より 運ぶ息』ミ6文
  
  
 42. フオレ          ふおれ

 オレハ アメノタタリノ  おれは あめたたりの    振の現れは   天地の祟りの
                                (殖・栄)         (審判)

 コホリフム コトノハシメモ  こほりふむ ことはしめも    氷踏む      事の始めも

 ミヤン        ふみおそれ          踏みや恐れん
                                (最初の一歩)
  
 拙訳:栄を生む前には、天地の審判の薄氷を踏まなければばらない。
    だから物事の最初の一歩を踏み出すには勇気が要るのであるぞよ。
  
 『陽陰の報ひは 盗めるも 謗るも打つも 己に返る』17文
 『他人を打てども その時は 痛き報ひも あらざれど 後の病ふは 陽陰が槌』17文
 『風・埴神の 守る故 見る聞く度に 善し悪しも ひめもす陽陰に 告げあれば』17文
  
  
 43. フヨロ          ふよろ

 ヨロハ クニウムカミノ  よろは くにうむかみの    経の万は      地生む神の
                                 (寿命)        (クニトコタチ:ここでは天元神)

 ヲシオシテ ワサモヨロコフ  をして わさよろこふ    御使をして     業も喜ぶ
                                              (優れる)

 モウケナリケリ        もうけなりけり          儲けなりけり
  
 拙訳:人の寿命は天元神がその御使をして結ひ和す。
    万に及ぶ長き寿命は人の為す業も優れさす。これは恵みなり。
  
 『クニトコタチも 和り恵り 堅地に八方を 何方と 生む国 総て オノコロぞ』18文
 十六万八千の モノ 添ひて 人 生まる時 元つ神 そのたえ守が 種下し モノと魂・魄 結ひ和す』14文
 傍にトホカミ ヱヒタメの 八神は人の 霊の結を 膨み振らせて 永らえを 結び和せば』フ序
 『世の身々の 垢は天元の 差使に 清め賜ひて サコクシの 振ゆの鏡に 入ると思えば』28文
  
  
 44. フソノ          ふその

 ソノハ ヲコヌノカミノ  そのは をこぬのかみの    布の園は      ヲコヌの尊の

 コカヒシテ ナモコヱクニノ  かひて こゑくにの    子 介して      名も籠結国の
                 [こかひ]              [籠交ひ]          [肥え国]

 フソノヱルナリ        ふそのゑるなり          富園 得るなり
  
 拙訳:"布の園(織物の国)" と呼ばれる所は、大国主の子のコモリを介して籠交ひを得て、
    名も "籠結国[肥え国]"という豊かな園を得たのであるぞよ。
  
 『モノヌシは 良きを見て アサ姫に 籠交ひ衣織る 経緯の 道 教ゆれば』24文
 『経緯の 道 教ゆれば 八方通り 籠結国の守 皇籠の里 籠交ひ得るなり』24文
  
  
 45. フユン          ふゆん

 ユンハ タオウケモチノ  ふのゆんは たおうけもちの    布の斎は      饒ウケモチの
                                (ぬさの奉納)

 シシカキヤ ヨコマオヲソウ  ししかきや よこまをそう    しし垣や      汚曲を抑う
                                 (穢の垣)    

 フユンナリケリ        ふゆんなりけり          豊結なりけり
                                 [豊木綿]
  
 拙訳:斎餞としてウケモチ神に捧ぐ赤白黄の木綿は、神の霊が宿り穢を祓う垣となる。
    邪を抑える豊穣の結い(囲み/木綿)であるぞ。
  
 「ゆん」:(1) 斎ひ。上げること。捧げること。奉納。 (2) 結ひ。囲み。垣。 (3) 結ひ。結った物。織物。木綿。
  
  
 46. フツル          ふつる              

 ツルハ トミモヨヒナキ  つるは とみよひなき    殖の至るば     富も映なき

 トリヱナミ タツハナヤカノ  とりゑなみ たつはなやかの    鳥餌並み       立つ・華やかの

 ヰモヤツクラン        ゐもつくらん          熟や継ぐらん
  
 拙訳:富というものも、足り至れば魅力を失い、鳥の餌程度にしか見えなくなる。 
    次に来るのは "目立ち" "華やか"の追求である。
  
 鳥の別称として「とみ」("飛び" の訛) があることから、「とみ(富)」に掛けて「とりゑ(鳥餌)」をつまらない物の代表としている。
  
  
 47. フヰサ          ふゐさ

 ヰサメ アラカネワケテ  ゐさめ あらかねわけて    鈍の勇め      粗金分けて

 ネリキタエ カマモツルキモ  ねりきたえ かまつるきも    錬り鍛え      釜も剣も

 カソエヤワラク        そえやわらく          赤添え柔らぐ
                                 (銅)
  
 拙訳:"ふにゃふにゃ" を硬くする法。 粗鉱を分類厳選し純度を高めて練り鍛えるべし。
    釜も剣も銅が混じると柔になる。 人の心も "赤(華やか)" が混じると柔となる。
  
 『殖の至るば 富も映なき 鳥餌並み 立つ・華やかの 熟や継ぐらん』フ046
 『侍の転の 赤和さば垂ひ ヲウナムチ 金も赤・白と 錬るや転けらん』フ057
  
  
 48. フナワ          ふなわ

 ナワノ マツリトホレハ  ふのなわの まつりとほれは    府の縄の      纏り通れば
                                 (中央)

 イモヲセモ ナカニミチヒク  いもをせも なかみちひく    妹背も       中に導く

 フナワナリケリ        ふなわなりけり          文縄なりけり
  
 拙訳:世は中央政府の経矛の縄の縛りによって遍くまとまるが、
    男女は文の縄をつないで一つにまとまる。
  
 『の縄の 道も妹背の 仲人も 強きも和す 縄なりけり』フ016
 『意の縄の 文も通れば 妹背も 中に頼みの 結縄 引くらん』フ032
  
  
 49. ヘヤマ          へやま

 ヤマハ キサキミサホノ  へのやまは きさきみさほの    経の病は      后 操の
                                 (経年疲弊)

 サワマチテ マツモオエレハ  さわまちて まつおえれは    爽 全ちて      待つも老えれば

 アイモノノヤマ        あいものやま          間物の山
  
 拙訳:経の病とは... 局達は清心を全うして操を保ち、君のお召しを待つも、老いては間物(新鮮でない保存食)の山となる。 
    (初心貫徹の気持ちは尊いが、それがいつしか意地や執念や恨みに摩り替わってしまうことも多い。爽やかな引き様も肝心。)
  
 『君の心と 我が花と 合ふや合わぬや 敢え知らず てれば恨むな 厭けらるも 上も端も寄らず 求むなり』16文
 『てれば召すとも 幾度も 畏れて後は 恨み無し 謹みはこれ』16文
 『'満の花も 人も' 移れば 散る花ぞ 誰指し恨む 人も無し』16文
 『他人を妬めば 日に三度 炎食らひて 身も痩する』16文
 『女は一途に 思えども 妬み煩ふ 胸の火が 愚霊と成りて 子種噛む16文
  
  
 50. ヘハラ          へはら

 ハラハ ハタマサユリニ  へのはらは はたまさゆりに    舳の治は      機回さ揺りに
                                 (先端・君)

 ナツラエテ ツキコモワサモ  なつらえて つきこわさも    擬えて       嗣子も業も
                               (万の御機の政事)

 ハラムナリケリ        はらむなりけり          孕むなりけり
                                 [脹らむ]
  
 拙訳:君の政は機織りに似る。機を織り綴る如くに次世代を生み育て、機を織り綴る如くに世の業を興し高めるのである。
  
 『ミカサ社に アマノコヤネの 説く文は 経に緯織る 纏り事 四方人草を 治むなり』ミ1文
 『君の纏りも 速やかに もつれを直す 和の道 形と努め 満ちと実と 四つの教えも ただ一道』ミ1文
 『大地の尊の この四つを 陽陰 人に統れる 人の身の 四つを謹む 機の道ミ1文
 『照る東西南北の 中にいて キ・ミの治むる 纏り事 万機すべて 四方を備えり』ミ1文
 『この三つを 合わす明暗見の "ヤ" はヤシロ "タ" は民を治す その君の 万の御機の 政事』17文
 『治む八隅の 民は八尺 八尺身あまねく 照らさんと ヤタのカガミと 名付くなり』17文
 『天法を 民一組が 乱れても  巡らねば 機 織れず 故 治むるは 機の道かな23文
  
  
 51. ヘキニ          へきに

 キニハ ツマノフヲミモ  へのきには つまのふをみも    謙の熟は      積伸ふ臣も

 ナオトミト イウモヨキキニ  なおとみと いうもよききに    なおと      言う 百・万聞きに

 ナカレヱルナリ        なかれゑるなり          流れ得るなり
  
 拙訳:謙譲心の広まり... 錚々たる大臣ですら、なお自らを "トミ" と名乗る。
    下位の臣達はそれを数多く繰返し耳にする。このようにして謙譲心の浸透する流れが起るのである。
  
 『トの道に 治む故 "オミ" も "トミ" なり』23文
 『この心 万の政を 聞く時は 神も下りて 敬えば 神の御祖ぞ この道に 国 治むれば 百司 その道 慕ふ 子の如く』27文
 『これも御祖ぞ この子末 民を恵みて わが子ぞと 撫づれば還る 人草の 御祖の心』27文
 『偉山なる 高きは聳え 下りやせん 下りに装うて 礼成るべし』フ017
  
  
 52. ヘチリ          へちり

 チリハ ツキホモトミモ  へのちりは つきほとみも    侍の精りは     月日も臣も
                                 (従者) (功)       (君)

 タミワサモ ツマノウツクニ  たみわさも つまうつくに    民業も       つまの弼くに
                                            (添え)

 ヤミヤチルラン        やみちるらん          病みや散るらん
  
 拙訳:従者の功... 君でも臣でも民であっても、従者の助けに病み(闇)は退散するだろう。
  
  
 53. ヘヌウ          へぬう

 ヌウハ マツリトルミノ  ぬうは まつりとるの    侍に貫うは     政執る己の
                                 (臣)

 ムラサキソ イサメツクセハ  むらさきそ いさめつくせは    むらさきぞ     斎さめ尽せば

 タミソヌイケル        たみぬいける          民ぞ伸いける
  
 拙訳:モノノベに徹底して仕込むべきは、"執政者たる自己の向上" である。
    それを高め尽せば当然に民も伸長するのである。
  
  
 54. ヘムク          へむく

 ムクハ ミクサタカラニ  むくは みくさたからに    卑の向くは     三種宝に
                                          (三種の器法)

 サカシリテ タミモミナミニ  さかしりて たみみなみに    直曲知りて     民もに
                                            (栄・高)

 ムクソトウトキ        むくとうとき          向くぞ尊き
  
 拙訳:卑の向上は、三種の器(=経矛法)に正邪を知り、高みに心向けば民とて尊き者となる。
  
 『斬らば三の火に 悩まんぞ 人 成る迄は 助け置き 人 直曲 知れば の種』8文
 『手鍋をさくる 汚きも 磨けば光る 上となる 国守・民の 諭しにも 付離 為させる 妹背の道13文
 『横しまが 縦を捩けて 床闇の 斜和して やや統つむ これも三種の 器法  あらで如何んぞ 得ざらんや
  兼ねて思えば マス鏡 青人草も 直ぐとなる 人に於けらば 限り無し』17文
 『培ふば 卑の葦原も 瑞穂成る 民と成せ臣 臣と成れ民』17文
 『かくの教えに 導きて 民も気安く 賑わせて その地保つ 者あらば 末民とても 上の臣 必ずヲシテ 賜ふなる』17文
  
  
 55. ヘエテ          へえて

 エテハ ミツニアフルル  ては みつあふるる    卑の結ては    充つに溢るる
                                           (調う)

 クニマツリ ネコニメクミノ  くにまつり ねこめくみの    国政       猫に恵みの

 カエテカマルル        かえかまるる          返て噛まるる
                     (受身)         (お返しに)
  
 拙訳:愚かな者が治めたところで、その手に余る国家の政。
    猫に小判を与えては、あちらも迷惑、こちらも痛い思いをするだけ。
  
 『犬に聖なるものを与ふる勿れ。また豚の前に汝等の真珠を投ぐる勿れ。
  恐らくは彼等これをその足にて蹂みにじり、ふふり返りて汝等を裂かん』マタイ伝7:6
  
  
 56. ヘネセ          へねせ  

 ネセノ ミメハイネコロ  ねせの みめいねころ    辺に伸せの    見目は活ね頃

 エノイヌオ ナツハニステテ  えのいぬお なつはすてて    厭忌を      夏初に棄てて
                                  (雑草)

 イネヤオキラン        いねおきらん          稲や熾きらん
  
 拙訳:田の縁に伸びる雑草の景色は伸び盛りの頃。エノコ草の類を初夏に取り除いてやれば、稲はすこやかに育つだろう。
    (口の縁に伸びる髭の景色は伸び盛りの頃。成長の盛りを迎える時に周囲の悪影響を排除しないと、人も真直ぐに育たない。)
  
 『や オノコ草 稲・栗 成らず 肖りて 人も生まるる 道 忘る 例えば 嗜む 枯らし虫 魚・鳥・獣 合い求む』13文
  
  
 57. ヘコケ          へこけ

 コケノ カカサハチタヒ  へのこけの かさちたひ    侍の転けの    赤和さば垂ひ
                                           (華)

 ヲウナムチ カネモカシロト  をうなむち かねかしろと    ヲウナムチ    金も赤・白と
                                          (金属)(銅・銀)

 ネルヤコケラン        ねるこけらん          錬るや転けらん
  
 拙訳:臣の転落は、華美を追い求めて衰退したオオナムチ。
    硬い金属も赤(銅)や白(銀)と混ぜれば柔に転じるではないか。
  
 『殖の至るば 富も映なき 鳥餌並み 立つ・華やかの 熟や継ぐらん』フ046
 『鈍の勇め 粗金分けて 錬り鍛え 釜も剣も 赤添え柔らぐ』フ047
  
  
 58. ヘオレ          へおれ

 オレハ マツリミタルル  おれは まつりみたるる    卑の央れば   政 乱るる

 ウハナリニ ヨコシトツレハ  うはなりに よこしとつれは    上態に      突つれば
                                         (民)

 タミヨ        たみおそれよ          民も恐れよ
 
 拙訳:卑なる者が中心(メジャーな勢力)となれば、政は乱れる。
    にわかに脾(民)が力を伸ばすような場合には、民といえども警戒せよ。
  
 『五腑六臓も 地の道 中子は君ぞ は臣 は民よ  垣 は平らす 腑 副手』17文
  
  
 59. ヘヨロ          へよろ

 ヨロハ ホコノシツクト  よろは ほこのしつくと    卑の万は      祝の滴と
                                (卑人の多くは)     (オノコロ =安住の地)

 ミナレクサ コフモウミニ  みなれくさ こふうみへに    水生れ草      昆布も海辺に
                                (=葦:衣と屋)      (食)

 ナレヨロコフ        なれよろこふ          生れや喜ぶ
  
 拙訳:卑人(民)の大方は衣食住が何とか足りればそれで満足し、それこそが人生と思っている。
    それ以外の何かを求めるということはない。
  
 『二尊は うきはしの上に 幸り得る 祝の滴の オノコロに 宮殿 造り』2文
 『褒衣・美味きに 耽る故 稀に生まるも 貧しくて 奴となりて 実を凌ぎ 人 楽しまず』13文
  
  
 60. ヘソノ          へその

 ソノハ タマニウルホス  そのは たまうるほす    卑の聳は      尊に潤す
                                (低きを高めるは)

 マツリコト カテタルソノハ  まつりこと かてたるそのは    政事        糧足る領は

 ユクモヤスラカ        ゆくやすらか          結くも安らか
  
 拙訳:低きを高めるは、貴き者が低き者を照らして恵むという政事であるが、
    糧が足りている地域ではその治めも滑らかなものとなろう。
  
  
 61. ヘユン          へゆん

 ユンハ ウオモコオウミ  へのゆんは うおうみ    卑の熟は      魚も子を生み

 アキクタル ノソミノヤサキ  あきくたる のそみやさき    秋 朽る       望みの弥咲き

 ホシオスコスナ        ほしすこす          欲しを過ごすな
  
 拙訳:魚も子を生んで秋にはその一生を終える。
    卑人の完成もこれである。野心・欲望の度を越してはならない。
  
  
 62. ヘツル          へつる

 ツルノ ススニウルホス  へのつるの すすうるほす    卑の連の      末々に潤す

 ヲウナムチ ミヤモフクシモ  をうなむち みやふくしも    ヲウナムチ     宮もも
                                         <皇の>   (垣)

 ツクミシノハナ        つくみはな          噤みしの華
  
 拙訳:卑の連中の末々までも潤すオオナムチ。
    皇の宮や瑞垣ですら、口を噤んでしまいそうな栄華であった。
  
 『己はイヅモに 教ゆるに 一二三六百八十 二俵の ヒモロケ数え 種袋 槌は培ふ 御宝 
  飢え治す糧も 倉に満つ 雨・風・日照り 実らねど アタタラ配り 飢えさせず』9文
 イツモ八重垣 オホナムチ 満つれば欠くる 理か 額を玉垣 内宮と これ九重に 比ぶなり』10文
 築く九重 玉垣の 内つの宮に 比べ越しミ逸文
 『五腑六臓も 地の道 中子は君ぞ は臣 は民よ  垣 は平らす 腑 副手』17文
 『繁の塵の 謗りも嘘と 思ひ種 モノヌシならで モノや散るらん』フ116
  
  
 63. ヘヰサ          へゐさ

 イサノ フネハヲシヱノ  へのいさの ふねをしゑの    舳の斎の      船は教えの

 ヲオナムチ ウエミヌキヌオ  をおなむち うえみぬきぬお    ヲオナムチ     飢え見ぬ衣を

 カフリヰサメツ        かふりゐさめ          被り諫めつ
  
 拙訳:舳を厳かに飾った船(鏡の船)に乗って来たスクナヒコナは、オオナムチを教える。
    飢えを見ぬ衣(染め飾り無き木綿)を着て華美と驕りを諌めて。
  
 『クシキネ アワの ササザキに 鏡の船に 乗り来るを 問えど答えず』9文
 『クヱヒコが "カンミムスビの 千五百子の 教えの結ひを 漏れ落つる スクナヒコナは これ" と言ふ』9文
 『夏はヌサ 績みて布織 冬はユキ 撚りて木綿織 着る時は 上・下 弥々の 気も安ぐ』23文
 『木綿・布・絹を 染め飾る これ為す人は 耕さで 暇欠く故に 田も粗れて たとひ実れど 乏しくて』23文
 『飾りより 驕りになりて 研ぎ化かる 果てはハタレの 国乱れ 民 安からず 故 常に 民の癒すき 木綿を着る』23文
 『昔乱れず 驕らぬを 粗衣を着ては いづくんぞ』23文
 『後の代に 弥治まれば 飢え知らで 驕る楽しの 満つる時 飢え遠し頃は 実らずて 真に飢える』23文
  
  
 64. ヘナワ          へなわ

 ナワノ ツリハヱミスノ  へのなわの つりゑみすの    卑の縄の      ヱミスの
                                  (経矛法)

 ホトホトニ アヰトタヰトノ  ほとほとに あゐたゐとの    程々に       鮎ととの
                                           [天と尊]

 トミソマネケル        とみまねける          富ぞ招ける
                                   (「招く」の連体形) 
  
 拙訳:経矛法の最高責任者オオモノヌシの補佐であるヱミス(クシヒコ)は、棄てず集めずの清かの心を以て、
    程良く天からと皇からの両方の幸を招いた。(海老で鯛を釣る ヱビスが尊を釣る)
  
 『オホナムチ 応え 問わんと ミホサキの 雉子の イナセハギ の応えを 問ふ時に コトシロヌシが 笑す顔』10文
 『 清かにて 父母に "ホロロ 泣けども 鉤の鯛ぞ さかなと極るも 愚かなり タカマは民の 笑す尊 いとかけまくぞ 御言宣"』10文
 『汝モノヌシ クシヒコよ 国つ女娶らば 疎からん ミホツ姫 妻として 八十万守を 司り 御孫を守り 奉れ』10文
 『賜ふヨロギは 嘗事の 千草万木の 名を立たす この宮領れば 弱のため 病めるを癒やす 道を分け』10文
 『欲離るは 棄てず集めず 技を知れ 財集めて 蔵に満つ 塵や芥の 如くなり』13文
  
  
 65. モヤマ          もやま

 モヤマトノ ミチハツキセシ  もやまとの みちつきせ    最和の       道は尽きせじ

 アリソウミノ ハマノマサコハ ありそうみの はままさこは   ありそ海の     浜の真砂は

 ヨミツクストモ        よみつくすとも          読み尽くすとも
  
 フトマニに2首ある字余りの歌(三十二音)の一つ。 
 三十二は「みそふ(禊ふ)」に通じ、祓の歌だという。
 "君が代" も三十二音で、なぜか内容も似通っている。『君が代は 千代に八千代に 細石の 巌と成りて 苔の生すまで』
  
 『磯の地の 真砂は熟みて 尽くるとも ほつまの道は  幾代尽きせじ』 『我が恋は よむとも盡きじ 荒磯海の 浜の真砂は よみ盡くすとも*古今集序
  
  
 66. モハラ          もはら

 ハラノ ホコニモトツキ  ものはらの ほこもとつき    曲の払の      矛に基づき
                                          (経矛法)

 ヤワラキテ ヨコモスナホニ  やわらきて よこすなほに    和らぎて      邪も素直に

 ナカレユクナリ        なかれゆくなり          流れ行くなり
  
 拙訳:曲りを祓う経矛法に基づいて調和が成り、曲者も直って蟠りなくサラサラと進むなり。
  
 『かく実心を 尽し生む 一姫三男尊 生みて余の 君・臣の充ち 調の教え 逆り惇らば 綻ろばす』3文
 『民を我が子と 育つるに 篤く教えて 人となす 教えても尚 逆らはば 討ち綻ばせ』17文
 剣の基は 和の矛 クニトコタチの 代にはまだ 矛 無き故は 素直にて 和りを守れば 矛 要らず23文
 またも 宝の故は 調の道に 国治むれど その中に 横転く者は 己が実に 合わねば道を 逆に行く23文
 青人草も 繁に増えて 道を告れても 届きかね 来末破るる 基かや 時 矛振らば 速やかに 通らんものと 剣 成す』23文
 『治むる道の 乱れ糸 切り綻ばす 器物 和の教えに 逆らえば 身に受く和の 逆矛ぞ』23文
 の掟は 御恵みに 横曲滅ぼす 端の抜きミ1文
  
  
 67. モキニ          もきに

 キニノ ノリハオロカニ  ものきにの のりおろかに    模の熟の      法は疎かに

 アラタメス モトオヲコセハ  あらため もとをこせは    改めず       元を熾せば

 ワレモキニケリ        われにけり          割れも来にけり
  
 拙訳:模写したものを基として発展させるという方法は、
    手を抜いて改めず元を単純に拡張するなら、そりゃ破綻も起こるでしょうよ。
  
  
 68. モチリ          もちり

 モチリナル ハナハヨツキノ  もちりなる はなよつきの    捩り成る       花は代嗣の

 タネマテト ワサモウスクテ  たねまてと わさうすくて    種待てど       業も薄くて

 メヤチルラン        もめちるらん          熟めや散るらん
  
 拙訳:ねじけ(妬み・嫉み)が凝り成った花(女)は、代嗣の種を待ったところで、
    為す業も粗末なるが故に、実(子)を結ぶことも無く、老いては散るのみならん。
  
 『恨み妬むの 庭桜 咲かずば知れよ 万民の 恨めん侍殿 万桜 天に植えてぞ 
  愚か女が 妬む イソラの 金杖に 子種打たれて 流れゆく 或は片端と なすイソラ』16文
 『妬む妬まる みな咎ぞ』16文
 『謹む綾の 花と花 打てば散るなり』16文
  
  
 69. モヌウ          もぬう

 ヌエル ミハハタヤスク  ぬえる みはたやすく    喪に和える     衣は容易く
                                   (「和ふ」の連体形)

 アラタメス トノワカミニ  あらため もとわかみに    改めず       元の我が身に

 クラヘヌウナリ        くらへぬうなり          比べ縫うなり
  
 拙訳:喪に着る衣はやたらに新調するものではない。新調する場合は元の我が身に合せて作るべし。
    (織法により、出世すると機の幅が変わるが、常時着るものでもない喪服のサイズには始めの自分を残しておけ。)
  
  
 70. モムク          もむく

 ムクハ ヤマトフモトノ  むくは やまふもとの    本に向くば     山と麓の
                                (人の本来を思えば)   (高き低き)

 カタチヨリ ココロハナレテ  かたちより こころはなれて    形より       心 離れて

 タカラムナシキ        たからむなしき          財 空しき
  
 『'世を栄ふる 始め終りの 慎まやか' 道 教ゆれば 大御神 褒めて賜はる 竈尊13文
 『結を知れるや 陽陰に受け 陽陰に還るぞ』13文
 『陰陽を結びて 人心 世に還る時 直ぐなれば また良く生まれ 汚欲は あえ還らぬぞ13文
 『欲離るは 棄てず集めず 技を知れ 財集めて 蔵に満つ 塵や芥の 如くなり』13文
 『塵と集めて 余に迫り 羨むモノが 咬む故に 霊の結 乱れ みやなくて 末 守らぬを13文
 『永らひ節々に 楽しみて 尽くれば還す 身は黄泉 心は陽陰に 還え生まれ 幾度節々に 楽しめば』ミ4文
  
  
 71. モエテ          もえて

 エテハ ホシオアカメテ  えては ほしあかめて    下に在ては    星を崇めて
                                           (天元神)

 ナカラウル タラニツカエテ  なからうる たらつかえて    永らうる      父母に継がえて

 ノリウルナリ        ものりうるなり          茂り得るなり
  
 拙訳:下にあっては、天元神の星を崇めて寿命を得、父母に連なって子孫繁栄を得る。これが世(下界)なり。
  
 『天に還れば ミナカヌシ 及びヱ・ヒ・タ・メ ト・ホ・カ・ミも 天に配りて 星となす アメトコタチの 神はこれ』ミ6文
 ミヲヤの傍に 八元神 守る トホカミ ヱヒタメの 兄弟の寿ミ6文
 『傍にトホカミ ヱヒタメの 八神は人の 霊の結を 膨み振らせて 永らえを 結び和せば』フ序
 『天の万の 星を親めて ありのまま 住めば喜び 研きぞありける』フ011
  
  
 72. モネセ          もねせ

 ネセハ ヰケトムロトニ  ねせは ゐけむろとに    籾の熟せば    埋けと室とに
                                          (桶・槽)

 ヲウナムチ タワラワラハセ  をうなむち たわらわらは    ヲウナムチ    俵 咲わせ
                                           (熟成・発酵させ)

 ミキソツクレリ        みきつくれ          酒ぞ造れり
  
  
 73. モコケ          もこけ

 コケノ ムシハナカミノ  こけの むしなかみの    籾の痩けの    虫は中身の

 フクロトリ サナヱマツリニ  ふくろとり さなゑまつりに    袋 取り      サナエ祭に
                                 (胴体)

 サルタナスカミ        さるたなすかみ          更る田なす神
                                       <として祭る>
  
 拙訳:籾を痩せさせる害虫は、袋状の胴体を取って、サナエ祭に田を甦らす神として祭る。
 
 不詳。 参考:稲虫祭
 『四月より 大陽を招きて 夏を継ぐ 衣 綿抜きて 月半ば 早開き祭る 稲荷神ミ7文
  
  
 74. モオレ          もおれ

 オレハ ホコノヒヒキオ  ものおれは ほこひひきお    モノ穢れば    "ほこ" の響きを
                                 (魔・鬼)

 オソレミテ ヨソカオイワス  おそれみて よそいわ    畏れみて    四十日を言わず

 ミスキカスオレ        きかおれ          見ず聞かず居れ
  
 拙訳:もののけの障り(霊障)があれば、"ほこ(放く)" の言霊の力を信じて、40日間ほかし続けよ。
    相手になってはならぬ。触らぬ神に祟りなし。
  
  
 75. モヨロ          もよろ  

 モモヨロハ カカミノヲミニ  ももよろは かかみのをみに    百万は        鏡の臣に

 オコレトモ ヒトリレナハ  おこれとも ひとりもれなは    熾れども      一人漏れなば
                                            (コヤネ)

 ココミカケ        こころみかけよ          心 磨けよ
  
 拙訳:百万年に及ぶ繁栄は、鏡の臣が天地の神を世に纏ることで達成された。
    その一人が世を去ったならば自分で心(身の鏡)を磨けよ。
  
 『人は元 中子心派 日月なり』15文
 『これ身の鏡 曇り錆び 奪わる中子 磨かんと ヤタの鏡に 向かわせて 磨く器は 元の守17文
 『中子の形 鏡ぞよ』17文
 『万千は遠し 一年も 経ざるを狭めば 世の恥は 汝の心 穢れより』20文
 『鏡臣 末え滅ぶれば 民 離れ 日月 踏まれず』24文
 『 また 鏡の臣は 軽からず 神を都に 留むべし も守らん これなりと』28文
  
 ホツマツタヱ28文に "サルタヒコ 水濯ぎに泡の 胸騒ぎ フトマニ 見れば 五六の味は 
 『鏡 熟なる 中一人 憂い有り とてこれ纏り 受けぬ憂い』 と驚きて" とあるが、この歌はフトマニの中には見当たらない。
 当「モヨロ」の歌は、内容的にはそれに最も近い物であると思われる。 
 この例に限らず、ホツマツタヱが引用するフトマニの歌は存在しない場合も多い。
 このことは、フトマニに収容されている歌は途中で入れ替えられている可能性を示唆する。
  
  
 76. モソノ          もその

 ソノハ ウケモチノタノ  ものそのは うけもちの    没の園は      ウケモチの饒の

 ツトメオモ ナカトニナラハ  つとめも なかとならは    努めおも      中途に成らば
                                (=努めようも)

 ウエヤヤムラン        うえやむらん          飢えや和むらん
  
 拙訳:不毛の地は、いくらウケモチ神が豊穣に努めても限界がある。
    それでも半ばに実れば飢えは収まるだろうよ。
  
  
 77. モユン          もゆん

 ユンニ ハタレヤフレハ  ものゆんに はたれやふれは    モノ 弓に      ハタレ破れば
                                (モノノベ)

 コトノネノ ヤワシモユンソ  ことのねの やわしゆんそ    琴の音の      和しも弓ぞ

 タウトカリケル        たうとかりける          尊かりける
  
 拙訳:モノノベは弓にハタレを破る。妙なる音に心を和ます琴も弓(弦)ぞ。"ゆん(斎)" は尊きものなり。
  
  
 78. モツル          もつる

 ツルハ マサカキハナノ  つるは まさかきはなの    茂の尽るば     真栄き華の
                                (進展の極まれば)

 イサオシモ アタノヤマヒモ  いさおしも あたやまひも    功も        篤の病も

 トニカエツル        もとかえつる          元に還えつる
  
 拙訳:人の進展が熟に尽きて世を去れば、めざましい華の勲功も、また重篤の病も、またふりだしに戻るのである。
  

 『結を知れるや 陽陰に受け 陽陰に還るぞ』13文
 『財集めて 蔵に満つ 塵や芥の 如くなり』13文
 『ツルギとは "ツ" は木の齢 熟に尽きて 枯れる 熟の尽ぞ』23文
 『永らひ節々に 楽しみて 尽くれば還す 身は黄泉 心は陽陰に 還え生まれ 幾度節々に 楽しめば』ミ4文
 『熟の尽るに 位も業も 譲るとは 知るも知らぬも 定めつるかな』フ014
  
  
 79. モヰサ          もゐさ

 ヰサハ オコロノカメル  ものゐさは おころかめる    モノ萎さば     オコロの掻める
                                 (魔・鬼)            (「掻む」の連体形)

 ハオアカメ ヰモアラタメテ  あかめ あらためて    埴を崇め      気も改めて

 キサオイサメヨ        きさいさめよ          曲を諌めよ
  
 拙訳:悪霊の障りがあれば、オコロの掻き擦る埴を祭り、また気持ちも改めて曲りを直せよ。
  
 『腹・背・頭 足に従ふ 礎に 敷き座す床を いかすれと オコロの守と 名を賜ふ 弥々いかすりて 主屋守るかな』21文
 『年稔りタマメ ヤマサ守 オコロの守も 地に纏り 年月日々の 守はこれミ8文
 『住の痩けの 咎めは主 陰(地)の痩けば ヲコロ纏りて 庵や還らん』フ105
  
  
 80. モナワ          もなわ

 ナワノ ノリハムカシノ  ものなわの のりむかしの    下の縄の      法は昔の
                                 (民の統制)

 マツリコト チナミモワサモ  まつりこと ちなみわさも    政事        因みも業も

 トモニミチヒク        ともみちひく          共に導く
  
 拙訳:下民をきつく縛って統制したのは昔の政治。今は婚姻も仕事も共にして導く。
  
  
 81. ヲヤマ          をやま   

 ヲヤマトノ ミチハスナオニ  をやまとの みちすなおに    大和の       道は素直に

 イツワラテ ヒトノコトノハ  いつわら ひとことのは    偽らで       人の言の葉

 ニヱニユクナリ        にゑゆくなり          和に行くなり
  
 拙訳:大調和の道はまっすぐで曲りやねじけ無く。それは人の話す言葉さえ美しく洗練するものである。
  
 『治まる代は 名の聞こえ 人の心派 およそ肥し 表に努め 裏 安む』17文
 『"曲松を 引き植え 新木 培えば 直木となるぞ" 親心 細々篤き 調の教え17文
 『兼ねて思えば マス鏡 青人草も 直ぐとなる 人に於けらば 限り無し』17文
 『直からざれば 人ならず』13文
 生れ素直に 和道の 教えに適ふ '皇の 八重垣' の翁 賜ふ名も ヤマトヲヲコの ミタマ尊23文
 『偽りの 無き世なりせば いかばかり 人の言の葉 嬉しからまし*古今集序
  
  
 82. ヲハラ          をはら

 ハラハ ミチモツルキモ  をのはらは みちつるきも    穢の祓は      道も連ぎも
                                 (=大祓)

 カケサシト モトメサイワウ  かけと もとめさいわう    欠けさじと     回め幸う
                                          (輪となり)

 ヲハラサシカミ        をはらかみ          終らさじ守
  
 拙訳:大祓は家業も世継も損なわせまいと、茅の輪となって繁栄をもたらす、衰えさせぬ守。
  
 『清みの小川に して 茅の輪に立たす 六月や 民 永らふる なりけり』10文
 『フツヌシの カトリの道を 悉く コヤネに授け 隠れます カシマの道の 奥も皆 コヤネに授く16文
  罷る 八十四歳 若宮 その夜 喪還に入り 四十八夜至り 率川に 禊の輪 抜け 宮に出づ31文
 『(六月)末は尚 暑く乾けば 桃祭 競ひ止むれば 一陰開く 熟瓜・茅の輪に 脱け尽くる 穢の祓ぞ』ミ7文
 六月末は いよ乾き に繁纏る 茅の輪抜け ヰソラを祓う 六月や』ミ9文
  
  
 83. ヲキニ          をきに

 キニノ イサオシオトニ  をのきにの いさおしおとに    兄の貴の      功 弟に

 アルナレハ ヰヱモサカイモ  あるなれは ゐゑさかいも    あるなれば     敬も栄も

 サニソキニケル        にそにける          下にぞ来にける
  
 不詳。 テルヒコキヨヒト兄弟のことを言うか。
  
 『何事も 老民を立てて 新民の 欠けはハラより 償わす 故に万の内 睦じき 兄弟を名づけて "ハラカラ"と 言う基ぞ』24文
  
  
 84. ヲチリ          をちり

 チリノ タミハヒオケス  をのちりの たみはひけす    皇の塵の      民栄を消す

 アラソヒノ オトカミタレハ  あらそひの おとみたれは    争ひの       乙が乱れば
                                          (副・臣)

 モヤチルラン        をもちるらん          主や散るらん
                                  (君)
  
 拙訳:臣同士の抗争は君にまつわり付く塵であり、民の繁栄を損なう。副が乱れば主も衰えるだろうに。
  
 『勢の熟の 東・西・南に臣の 争ひも 西・南 長は病めて 熟や和ぐらん』フ019
 『勢の鋭りの 争う 充つの 地の殊 君が平へに 引きや散るらん』フ020
 『富の熟の 争う臣の 理を 和せば民の 振ゆぞ来にける』フ035
 『繁の熟の 経矛に充つの 争ひも 上が疎かに 肝や潰むらん』フ115
  
  
 85. ヲヌウ          をぬう

 ヲヌウナル ミハハモスソモ  ぬうなる みはもすそも    皇 和うなる     御衣は裳裾も
                                 (君)         (御機)

 ホコロヒス ツウシヨコヘノ  ほころひ つうしよこへの    綻びず       ツウジヨコヘの

 イトモカシコシ        いとかしこし          いとも賢し
  
 拙訳:皇の召す御衣は裳裾さえも綻びず。また皇の政は国家の隅々に至るまで綻びず。
    ツウシ・ヨコヘの何とも優れたることよ。
 『フトマニ見れば 方を知る ツウジヨコベを 遣わして 民を乱らば その司 改め替えて 枯れを融く』21文
 『描き真延に 当て写し ツウヂヨコヘに 吊り分けて 織姫 替更り 踏む時に ヨコヘに分けて ツウヂ率く』23文
 『八十侍の国に ツウヂ置き モノノベ 経を 教えしむ23文
 『このクニツコに ヨコヘ十人 添えてあまねく 道 頒きて 清汚臣アタヒ ツウヂ経て 直ちに告ぐる23文
 『紋 繁ければ 味 見えず の紋を 織る如く ヨコベツウヂに 経を別け 闇惨の床は 明り成す』27文
  
  
 86. ヲムク          をむく

 ムクハ ホコトカカミオ  むくは ほこかかみお    穢の向くば     矛と鏡を

 アラカシメ ムカウアタナク  あらかしめ むかうあたなく    新かしめ      向う仇なく

 タタニヲサマル        たたをさまる          直に治まる
  
 拙訳:穢が襲って来たならば、三種八重垣剣ヤタ鏡を新たにせよ。
    されば向かう仇なく直に治まる。
  
 この解釈が妥当しているとすれば、この歌は崇神天皇の治世以降に作られた可能性が高い。
 崇神天皇の時代にはアマテル神は既に世を去っているので、この歌もアマテル神が選したものではなく、
 後に入れ替えられた歌ということになろう。
  
 『鏡は民の 心入る 入れ物なれば 八尺陽陰見 ツルギは仇を 近付けず』23文
 イシコリトメの 孫 鏡 アメヒト尊の 孫 剣 新に造らせ33文
 『治せざるは 我が心あり 我が裔 オオタタネコに 祭らさば ひとしく平れて 遠つ地も 真に服ふ』33文
 『このは 神を崇めて 疫病治し 三種宝を 新たむる その言宣は 大いなるかな』34文
  
  
 87. ヲエテ          をえて

 サメエテ トニウルホセハ  をさめて うるほせは    治め結て     調に潤せば

 カモシタウ マシテタミオヤ  したう ましたみおや    上も慕う     増して民をや
                                  (臣)

 ヲエテナツラン        をえなつらん          敬えて懐つらん
  
 拙訳:結い治めて調和の恵みに潤せば、臣も心寄せる。まして民は敬って懐いてくるだろう。
  

 万の政を 聞く時は 神も下りて 敬えば 神の御祖ぞ この道に 国 治むれば 百司 その道 慕ふ 子の如く』27文
 『これも御祖ぞ この子末 民を恵みて わが子ぞと 撫づれば還る 人草の 御祖の心』27文
  
  
 88. ヲネセ          をねせ

 ネセハ メノマツリコト  ねせは まつりこと    男の伸せは    女の政事

 オキフシモ ワカヌマヨヒノ  おきふしも わかまよひの    起き臥しも    分かぬ迷ひの

 ネセニケリ        ねせにけり          男は除せにけり
  
 拙訳:男を向上させる(立たせる)のは女の政事。起きてるのか寝てるのかも判らぬどっちつかずの男は、棄てるに然るべし。
  
  
 89. ヲコケ          をこけ

 コケハ ミチニサマヨウ  こけは みちさまよう    央の痩けば     道にさまよう
                                 (心)

 ミノスミカ ワサモヤマイモ  すみか わさやまいも    実の澄みが     禍も病も
                                  (心)

 コケヤタスラン        こけたすらん          痩けや治すらん
  
 拙訳:心が萎えれば道にさまよう。したがってまた、心を清めることが禍も病も、衰えを治すことになるだろう。
  
 『これ身の鏡 曇り錆び 奪わる中子 磨かんと ヤタの鏡に 向かわせて 磨く器は 元の守17文
 『央の上れば 曇る鏡も 明からさま 上れずば鼠 猫や噛むらん』フ090
 『直の復れば 穢れを咎む 身の病みも 'ほつまに明くる 賑' や恐れん』フ106
  
 参照:ミヤビモトモリ
  
  
 90. ヲオレ          をおれ

 オレハ クモルカカミモ  おれは くもるかかみも    央の上れば   曇る鏡も
                                 (心)         (身の鏡:中子)

 アカラサマ オレスハネスミ  あからさま おれねすみ    明からさま   上れずば鼠
                                              (下位者:肉体)

 ナコヤカムラン        なこかむらん          猫や噛むらん
                              (上位者:精神)
  
 拙訳:心が清まれば、曇る中子も明らかとなる。
    もし清められなければ肉体の穢れが精神にも及ぶことになろう。
  
 「ヲコケ」とほぼ同じ内容。
  
 『これ身の鏡 曇り錆び 奪わる中子 磨かんと ヤタの鏡に 向かわせて 磨く器は 元の守17文
 『中子の形 鏡ぞよ 人見ぬとても ぬすむなよ およその人は 知らねども 穢 現るる 元の守17文
 『央の痩けば 道にさまよう 実の澄みが 禍も病も 痩けや治すらん』フ089
 『直の復れば 穢れを咎む 身の病みも 'ほつまに上ぐる 和'や恐れん』フ106
  
 参照:ミヤビモトモリ
  
  
 91. ヲヨロ          をよろ

 ヨロノ ココロハウチノ  よろの こころうちの    大に慶の      心は内の
                                (大いに優れた)       (人の内にある)

 サコクシロ ウツヒトハカミ  さこくしろ うつひとかみ    サククシロ     現つ人は神
                                       <その心を>

 カミハヒトナリ        かみはひとなり          神は人なり
  
 拙訳:大いに優れた心は、人の内なるサコクシロ(神の園・天国)である。
    よってその心境を実現する人は神である。神は人なり。
  
 『昔曰くは 人は神 神は人なり 名も褒まれ 満ち逹つ典の 神は人 人 素直にて ほつま行く まこと神なり』40文
  
  
 92. ヲソノ          をその

 ソノハ ヤケテアワタノ  をのそのは やけあわたの    峰の園は      焼けて田の
                                 (高地)        (渇いて)

 トリエアリ ミツトリエネハ  とりえあり みつとりは    取得あり       水取り得ねば
                                 [鳥餌]

 ソノノモエクサ        そのもえくさ          繁の萌え草
  
 拙訳:高地の耕地は、渇いても粟(鳥餌)の畑にする使い道はある。
    しかし全く水が取り得なければ、伸びた雑草で覆われるのみ。
  
  
 93. ヲユン          をゆん

 ユンノ マツリヤニワニ  をのゆんの まつりやにわに    公の祝の      政社庭に
                                 (白馬の節)

 オソルレト ウマヨリコトノ  おそるれと うまよりことの    畏るれど      馬より琴の

 タミオヒクナリ        たみひくなり          民を惹くなり
  
 拙訳:公の祝典の一つである白馬節会は、政殿の庭で開催され、その時には琴の演奏も披露される。
    畏れ多いことなれど、主役の馬よりも脇役の琴の方が民を惹きつけるようである。
  
  
 94. ヲツル          をつる

 ツルノ マツリハハナノ  つるの まつりはなの    央に連るの     政は端の

 カニノコリ ヤムマツシサモ  のこり やむまつしさも    香に残り      病む・貧しさも

 ニヤツクラン        にやつくらん          央にや継ぐらん
  
 拙訳:政というものは端が中心に連られるものであるから、端にも中心の香りが残る。
    病や貧しさといった傾向もやはり中心のものを受け継いでしまうのだろう。
    だから端を見れば中が見えるのである。
 
 『タカマは万の 国形 これオノコロと』18文
 地上の 御柱のまま 成る如く 政 ほつまに 調ひて』24文
  
  
 95. ヲヰサ          をゐさ

 ヰサノ ミチスミヤカニ  をのゐさの みちすみやかに    央の濯の      道 速やかに
                                 (心の濯ぎ)

 ヰサムルハ アクタノチカラ  ゐさむるは あくたちから    諫むるは      芥の力

 ヰサハヤノカミ        ゐさはやかみ          諫早の神
  
 拙訳:心を濯ぐ方法。速やかに心を直し調えるのは、この世の物事を芥(取るに足らぬ物)と思える能力。
    これを"諫早の神"という。
  
 『欲離るは 棄てず集めず 技を知れ 財集めて 蔵に満つ 塵や芥の 如くなり』13文
  
  
 96. ヲナワ          をなわ

 ナワノ ユウハサルタノ  をのなわの ゆうさるたの    表の縄の      結うは障る多の
                                 (注連縄)

 ツツマヤカ トリヰニホトオ  つつまやか とりゐほとお    慎まやか      とりゐに程を
                                            (往来)

 カクルカサナワ        かくるかさなわ          かくる枷縄
  
 拙訳:門の表に縄を結うのは、過剰を抑える慎まやか。出入りに制限を設ける枷縄。
  
 『撓なる 万の疑ひ 曲和合して 願ひも充つる 神の注連縄』フ128
  
  
 97. スヤマ          すやま

 ヤマハ ムヘモトミケリ  やまは むへとみけり    直の熟まば     むべも富みけり

 サチクサハ ミツハヨツハノ  さちくさは みつよつはの    さち草は      三つ花・四つ花の

 トノツクリセン        とのつくり          殿造りせん
  
 拙訳:直ぐなる者が直ぐに成長すれば、自然当然に栄えるのである。
    さち草(笹百合)は三つ花・四つ花の殿堂を造るじゃないか。
  
 『心素直の 人あらば 我が子の如く 取り立てて 満な足す時は 欲も無し』13文
 『この殿は むべも富みけり 三枝(さきくさ)の 三葉四葉に 殿造りせり*古今集序
  
  
 98. スハラ          すはら

 ハラノ マツリユタカニ  すのはらの まつりゆたかに    清の原の      政 豊かに

 コトフケハ ハラトウルワウ  ことふけは はらうるわう    寿けば       晴と潤う
                                           [蓬莱]

 タミソイタケリ        たみいたけ          民ぞ頂けり
  
 拙訳:清の原(キヨヒトの領地)の政が豊かに満ちて実れば "晴(蓬莱)と潤う民" と至り極まるのである。
  
 『二の孕の 宮は宝を 栄らませて 慕うホツマの 民ぞ生みける』フ034
  
  
 99. スキニ          すきに              

 スキニフキ アニカヒサコハ  すきにふき あにひさこは    鋭き・鈍き      兄が瓢は

 ヨノウツワ オトカナスヒハ  うつわ おとなすひは    万の器       弟が茄子は

 スキニナルナリ        すきなるなり          杉に成るなり
  
 拙訳:鋭き(早き)と鈍き(遅き)。兄(早)の瓢は万の容器。
    弟(遅)の小さな茄子は、遂には杉(直ぐな大木)になるのであった。
  
 瓢と茄子は似ている。瓢は早く大きくなるが中を繰り抜いて容器とするより取得がない。茄子は小さいが美味い。
 「痩せ馬の先走り・痩せ馬の道急ぎ」「大器晩成」
 テルヒコキヨヒト兄弟を暗示しているのかもしれない。
  
 『鈍・均・鋭の 民現るも 例えば数の 器物 屑を捨てなで 鈍・鋭を 均し用いん 和の心ぞ』17文
 『暗き子も 細かに教え 日を積みて 少しは通る 月を経て 篤く教えば 鈍去るる』17文
 『培えば 十年に直る 萌しを得 三十年弥々に 伸び栄え 百の旁木 三百の梁 五百は棟木ぞ』17文
 『篤き恵みの 緩法を 必ず倦むな 早るなよ 早きハタレに 赴かで』17文
 『南の馬は 小さくて 達し熟れ早く 根が薄く 功 成らず』19-2文
  
  
 100. スチリ         すちり

 チリノ スラレノミツノ  すのちりの すらみつの    下の繁の      擦られの瑞の
                                 (地の騒ぎ)

 コトフキニ ナテオサマリシ  ことふきに なておさまり    寿に        撫で収まりし

 スチリカミナリ        すちりかみなり          捩り神なり
  
 拙訳:地の騒ぎ(地震)の擦られ(揺れ)にも幸いに命を保ち、"捩り神"の猛威も収まったのであった。
  
  
 101. スヌウ         すぬう

 ヌウハ ソロマナミツノ  ぬうは そろまなみつの    親に祝うは     ソロ胞衣見つの
                                             ( )

 タママツリ メカニウスラク  たままつり めかうすらく    霊祭        隔に薄らぐ
                                 (盂蘭盆)

 カタチヌウナリ        かたちぬうなり          形 和うなり
                                  (姿)
  
 拙訳:親しく祝うは、ソロ(飯・子)と胞衣(蓮葉・祖)が再会する霊祭。久しさに薄らぐ面影を思い出すなり。
  
 『(七月) 十五日は御祖と 生霊に 胞衣蓮食の 地・天 会えば 仰ぎ踊りて 気を受くる』ミ7文
 親の十五日祝 生御霊 贈る蓮飯 胞衣が典 仰ぎ踊れば 天気受くるミ9文
 『親の寄の 睦みは繁の 一回り 胞衣・ソロ 和みて 万の神座』フ123
  
  
 102. スムク         すむく

 ムクハ キミハナヤカニ  むくは きみはなやかに    繁に向くば     君 華やかに

 タミオコル ノチノワサワヒ  たみおこる のちわさわひ    民 驕る       後の災ひ

 テニムクナリ        すてむくなり          すでに迎くなり
  
 『木綿・布・絹を 染め飾る これ為す人は 耕さで 暇欠く故に 田も粗れて たとひ実れど 乏しくて』23文
 『飾りより 驕りになりて 研ぎ化かる 果てはハタレの 国乱れ 民 安からず』23文
 『故 汚起りを 容易くに 許せば民も 皆驕る これよりハタレ 現るる』23文
 『心 幸き透く 上の代は 千万年の 寿も ウヒチニの代は 厳かに 飾る心の 寿も 百万年ぞ』23文
 『勢伸うなる 臣は誇りて 子は驕る 早る穂と萱 綻びるらん』フ021
  
  
 103. スエテ         すえて

 エテハ キリヒニサムル  ては きりひさむる    垂を得ては    鑽火に侍る
                                 (下げ)

 ヒエアレト ナカレノフネニ  ひえあれと なかれふねに    冷えあれど    流れの船に

 オソヱニケル        さおにける          棹ぞ得にける
  
 拙訳:"下げ" を得ると言うは、熾し火から離れられない冷えの "下げ" もあれど、
    船霊のシマツヒコが得たイカダの棹差しもまた "下げ" である。
  
 『船はいにしえ シマツヒコ 朽木に乗れる 鵜の鳥の アヅミ川行く 筏乗り  竿差し覚え 船と成す』27文
  
  
 104. スネセ         すねせ

 ネセハ スヘヤマスミノ  ねせは すへやますみの    添の捩せば    スヘヤマズミの
                                  (妻)

 カミマツレ ツマノミサホモ  かみまつれ つまみさほも    神祭れ       妻の操も

 ネタミネセレハ        ねたみねせれは          妬み ねせれば
                                   (操は伸す)
                                   (妬みは寝す)
  
 拙訳:妻がねじけたならば、陰(水埴)の源を治めるスヘヤマズミの神を祭るべし。
    妻の操は伸し、妬みは寝せれば。
  
 『七名は陰の 基 領ける スヘヤマズミの 神となる』22文
 『妹の捩せは 法に溢るる 青侍らや 若女の斜も 燻りなすらん』フ024
  
  
 105. スコケ         すこけ

 コケノ トカメハアルシ  こけの とかめあるし    住の痩けの    咎めは主

 メノコケハ ヲコロマツリテ  こけは をころまつりて    陰の痩けば    ヲコロ纏りて
                                  (地)

 ヰオヤカエラン        ゐおかえら          庵や還らん
  
 拙訳:住まいの衰えは主に責がある。
    地が穢れたなら、ヲコロの守を土に纏れば住まいは元に戻るだろう。
  
 『中つ柱の 根を抱え また四所の 守りも兼ね 共に守れよ』21文
 『腹・背・頭 足に従ふ 礎に 敷き座す床を いかすれと オコロの守と 名を賜ふ21文
 『住み寄ろし 兄オコロ守らば 弟オコロ 片身に代り ひめもすに 宮の大殿の 暗所 中つ柱の 根に住みて22文
 『年稔りタマメ ヤマサ守 オコロの守も 地に纏り 年月日々の 守はこれミ8文
 『モノ萎さば オコロの掻める 埴を崇め 気も改めて 曲を諌めよ』フ079
  
  
 106. スオレ         すおれ

 オレハ ケカレオトカム  おれは けかれとかむ    直の復れば   穢れを咎む
                                        <心の>

 ミノヤミモ ホツマニアクル  みのやみも ほつまあくる    身の病みも   'ほつまに明くる

 ニケヤオソレン        にけおそれ          賑' や恐れん
  
 拙訳:素直さが戻れば、心の曲りを警告する体の病も、調和した心が甦す元気を恐れて逃げ出すだろう。
  
 ヲコケヲオレとほぼ同じ内容。
  
 『これ身の鏡 曇り錆び 奪わる中子 磨かんと ヤタの鏡に 向かわせて 磨く器は 元の守17文
 『中子の形 鏡ぞよ 人見ぬとても 盗むなよ およその人は 知らねども 穢 現るる 元の守17文
 『央の痩けば 道にさまよう 実の澄みが 禍も病も 痩けや治すらん』フ089
 『央の上れば 曇る鏡も 明からさま 上れずば鼠 猫や噛むらん』フ090
  
 参照:ミヤビモトモリ
  
  
 107. スヨロ         すよろ

 ヨロハ ヲケノトントノ  すのよろは をけとんとの    下の慶は      どんどの

 カユウラニ ノリユミハシラ  かゆうらに のりゆみはしら    粥占に       乗弓走

 ウタウヨロコヒ        うたうよろこひ          歌う喜び
  
 拙訳:下界に生きる楽しみは、一月十五日の朮、どんどの粥占、二月の馬祭での乗弓、そしてまた歌う喜び。
  
 『十五日の朝は 霊守食の 小豆の粥に 穢病除け とんど 餅焼きて 粥柱なす 神現りの 粥フトマニや』ミ7文
 『十五日の朝祝ぎ 小豆粥 寒さに敗る 腑穢病 清掛 に どんど餅 穢更る神現りミ9文
 『二月は 陰陽ほぼ和し 萌し生ふ 種浸し 祭る 稲荷神 乗弓開き』ミ7文
 『二月や 駆射試み 馬祭ミ9文
  
  
 108. スソノ         すその

 ソノノ モモオタマワル  すのそのの ももたまわる    直の園の      を賜る
                                  (日本)

 ニシノハハ コヱタノシミノ  にしのはは こゑたのしみの    西の母       還 楽しみの

 フカキコトホキ        ふかきことほき          深き寿
  
 拙訳:直の園(日本)の桃を賜る西の母。国に持ち帰る楽しみの深き祝福。
  
 『ウケステメ 根の国に来て タマキネに よく仕ふれば 実に応え ココリの妹と 結ばせて 和の道奥 授けます』15文
 『喜び帰る ウケステメ コロヒン君と 因み合い クロソノツモル 御子 生みて 西の母尊 また来たり15文
 その返えに 満ちみの桃を 賜われば "花見のは 稀なり" と 地苞になす』24文
 『ココリ姫 紋に織り和す 鳥たすき に捧げて また西の 母が土産と 世に遺る』24文
  
  
 109. スユン         すゆん

 ユンハ キノウツタマト  すのゆんは きのうつたまと    添の斎は      の空霊と
                                            (陽)

 ミノハコト カハイヨコマオ  みのはこと かはいよこまお    の魄と     交はい汚曲を
                                   (陰)        (中和し)

 キワムホキナリ        きわむほきなり          窮む祝なり
  
 不詳。 五月さの頃の「妹背の鎖祝」を言うようだ。
  
  
 110. スツル         すつる

 ツルノ ヒトヲハシモニ  すのつるの ひとをしもに    垂の尽るの     一陽十一月に
                                 (冬の至る)

 メクリキテ ミツノネカヒノ  めくりて みつのねかひの    巡り来て      充つの願ひの
                                            (地)

 ハルヤキヌラン        はるらん          春や来ぬらん
  
 拙訳:霜月の冬至に一陽は巡り来る。世の願いである春はもうすぐやって来るだろう。
  
 『"" の嘗は北に 十一月の中 一陽を招けば 傾守 舵を北に率き 日を迎ふ』ミ7文
 『この初嘗は 今の宣 九星 纏りて 陽回りに 黒豆飯の 力添ふ』ミ7文
 『"" は北の三つの 一陽神 日の道 捧げ 北に返す  一陽伏せても 陽陰 陰活き "" の神をして 初嘗会ミ9文
 『垂に祝うは 陽回り備う 御祭 さゆりの胞衣の 神ぞ斎みける』フ117
  
  
 111. スヰサ         すゐさ

 ヰサハ キリソメノキオ  すのゐさは きりそめお    住の諌は      伐り初めの木を
                                (住いの調和)

 ナカハシラ カミハカシキノ  なかはしら かみかしきの    中柱        神は赤白黄の
                                       <バサラの>

 ユウニヰサメテ        ゆうゐさめて          木綿に斎めて
 
 拙訳:住いの調和は、初に切り出した木を大黒柱とし、バサラの神には赤白黄の幣を捧げて斎ふ。
 『木を伐るは キヤヱの日好し 手斧初め ネシヱ 礎 柱立て ・隅柱 南 向き  北・東・西 回り立つ』21文
 まず引き法は 地を平らし 赤白黄の木綿を 中に立て21文
 『敷き座す君の 永らえを 守るハサラの 守鎮め』ミ8文
 『央の痩けば 側屋・離屋も ハサラなせ 陽回転の 巡り あらねば』フ009
  
  
 112. スナワ         すなわ

 ナワノ ウムタマノヲノ  すのなわの うむたまのをの    衰の縄の      倦む霊の結の
                                 (貧の連続)

 ホシナレハ アメノマツリモ  ほしなれは あめのまつりも    欲なれば      の政も

 ホシヤウムラン        ほしうむらん          欲や生むらん
  
 拙訳:貧の連続によって倦んだ霊の結が起こす欲であるのだから、
    天の政(中央の政治)とてその良し悪しによっては、欲の原因と成りうる。
  
  
 113. シヤマ         しやま

 ヤマハ タオウケモチノ  やまは たおうけもちの    信の熟まば     饒ウケモチの
                                            (稲荷神)

 ヤツミミモ カセウホツミモ  やつみみも かせうほつみも    ヤツミミも     カセウホツミも
                                 (敬い・祭)

 チカラモルナリ        ちからもるなり          力 盛るなり
  
 拙訳:信仰心が高まれば、稲荷神の祭も、嘉祥の纏りも穂積の祭もその力を増すなり。
  
 『二月は 陰陽ほぼ和し 萌し生ふ 種浸し 祭る 稲荷神 乗弓開き』ミ7文
 『(四月) 月半ば 早開き祭る 稲荷神 末は葵の 夫婦祭ミ7文
 『先に五月雨 六十日降り 稲苗みもちに 傷む故 付くる御使人 居直りの祓  "カセフの纏り" なす』31文
 叢雲 蝕虫を 付くれば の 自らに 祓ひ "カセフの 纏り" なす 故 よみがえり 瑞穂充つ よりて "果実の 祭" なす』31文
  
  
 114. シハラ         しはら  

 ハラハ カミノフシミノ  しのはらは かみふしみの    繁の原は      上の伏し身の
                                  (葦原)       (二尊)

 タマクシオ アミノメクミノ  たまくしお あみのめくみの    霊串を       編みの恵みの
                                            [和みの恵み]

 ミヤコタツナリ        みやこたつなり          都 建つなり
  
 拙訳:葦原は、二尊がその御霊を人知れず編み込んて、国家を和して恵む中軸(都)が建つのである。
 参照:おのころ
  
 『"豊葦原の 千五百秋 瑞穂の田 あり 汝 行き 領すべし" とて 経と矛と 授け賜る』23文
 『ヲシテ 矛は逆矛 二尊は これを用ひて 葦原に オノコロを得て ここに下り』23文
 『ヤヒロの殿と 中柱 立てて回れば[恵れば] 央州 通るまことの 調の教え23文
 『かくぞ実心 尽し 以て 民も癒すく 和す国を オノコロ州と 名付くなり18文
 『千五百の葦も みな抜きて 田となし民も 賑えば ヰヤマト通る ヤマト23文
 『八一の謂は 中の "ヤ" となる "シのハラ"は 母と孕める "ヤ" の局  内侍は中の 位なり』27文
  
  
 115. シキニ         しきに

 キニノ トホコニミツノ  しのきにの とほこにみつの    繁の熟の    経矛に充つの
                                        (「くに」 を導く枕詞)

 アラソヒモ アニカオロカニ  あらそひも あにおろかに    争ひも     上が疎かに
                                          (君)

 キモヤツムラン        きもつむらん          や潰むらん
                                  (臣)
  
 拙訳:勢力拡大をめぐる国守(臣)同士の抗争も、君がおろそかに放置するならば、
    政の要(臣)は、潰し合いによって失われてしまうだろう。
  
 『ヲシテ 矛は逆矛 二尊は これを用ひて 葦原に オノコロを得て ここに下り』23文
 五腑六臓も 地の道 中子は君ぞ は臣 は民よ  垣 は平らす 腑 副手』17文
 『勢の熟の 東・西・南に臣の 争ひも 西・南 長は病めて 熟や和ぐらん』フ019
 『勢の鋭りの 争う 充つの 地の殊 君が平へに 引きや散るらん』フ020
 『富の熟の 争う臣の 理を 和せば民の 振ゆぞ来にける』フ035
 『皇の塵の 民栄を消す 争ひの 乙が乱れば 主や散るらん』フ084
  
  
 116. シチリ         しちり

 チリノ ソシリモウソト  しのちりの そしりうそと    繁の塵の      謗りも嘘と

 オモヒクサ モノヌシナラテ  おもひくさ ものぬしなら    思ひ種       モノヌシならで
                                             (オホナムチ)

 モノヤチルラン        ものちるらん          モノや散るらん
                                (モノノベ)
  
 拙訳:"財など塵の如き" という非難も、嘘ではないかと思う種だ。
    だって実際オホナムチ以外にモノノベを束ねられる者はいないだろう。
  
 『財集めて 蔵に満つ 塵や芥の 如くなり』13文
 枝 しぼみて フトマニの "シチリ" は家漏り 激しくて 西北隅の国 見せしむる』10文
 『イツモ八重垣 オホナムチ 満つれば欠くる 理か 額を玉垣 内宮と これ九重に 比ぶなり』10文
 『またミカツチは 曲様 直ち 厳を現わす モノノベの 灘 和らに 戻すより 賜ふ尊部は カシマ尊10文
 『築く九重 玉垣の 内つの宮に 比べ越し』ミ逸文
 『卑の連の 末々に潤す ヲウナムチ 宮も肺も 噤みしの華』フ062
  
  
 117. シヌウ         しぬう

 ヌウハ モマワリソナウ  ぬうは もまわりそなう    垂に祝うは     陽回り備う
                                 (霜月)

 ヲンマツリ サユリノヱナノ  をんまつり さゆりのゑなの    御祭        さゆりの胞衣の
                                 (新嘗祭)

 カミソウミケル        かみうみける          神ぞ斎みける
  
 拙訳:霜月に祝うは、陽の巡り(一陽来復)に備える新嘗祭。
    ここでは調和の基のトの神を尊ぶのであるぞよ。
  
 『十一月の中 一陽を招けば 傾守 舵を北に率き 日を迎ふ この初嘗は 今の宣 九星 纏りて 陽回りに 黒豆飯の 力添ふ』ミ7文
 『"" は北の三つの 一陽神 日の道 捧げ 北に返す  一陽伏せても 陽陰 陰活き "" の神をして 初嘗会ミ9文
 『垂の尽るの 一陽は十一月に 巡り来て 充つの願ひの 春や来ぬらん』フ110
  
  
 118. シムク         しむく

 ムクハ カメモヒツキモ  むくは かめひつきも    繁の向くは     亀も日月も

 チヨニメノ カカヤクハナノ  ちよにめの かかやくはなの    千代に目の     輝く華の

 コロヤムクラン        ころむくらん          頃や迎くらん
  
 拙訳:繁栄が向いて来るのは、長命の亀でも永遠なる日月でもそうだが、
    倦まず弛まず地道な努力を連ねること千代を経て、輝く華の頃を迎えるのだろう。
  
 『人法も 十年ほぼ均る 三十の梁 五十は棟木の 功も 篤き恵みの 緩法を 必ず倦むな 早るなよ』17文
 『例ひ落ちても な恨めそ 陰の忠なせ この芽出る 故はアスカを 落ちた時』28文
 『忠を忘れず この故に 御孫に召され 忠なせば ついに鏡の となる』28文
 『回を得ては 思わぬ振ゆの 羨みも 努め和えてば やはり得るなり』フ007
 『繁の連るは 仕え尽くして 一日の 月満つ頃の 振ゆに遭うなり』フ126
  
 「シツル」とほぼ同義。
  
  
 119. シエテ         しえて

 エテハ ヲキナカアミニ  ては をきなあみに    親を得ては    翁が網に
                                  (縁)      (シホツツ)

 ケヰノカミ アニシラヒケモ  けゐのかみ あにしらひけも    契の神      兄シラヒゲも

 チヱテヤワナリ        やわなり          鉤得て和成り
  
 拙訳:シホツツの翁に縁を得て、その目無し網に運が開けて "契の神"。
    その兄のスセリも鉤を取り戻して親睦が成る。縁とは奇なるものよ。
  
 『骸を イササワケ宮 "契の神" 故はに を得て めぐり開ける 鉤を得たり 角出の契ぞ 膳出は』27文
 『"我長く 弟の駒して 糧受けん" ここに許して 迎ひ船 宮に帰りて 睦みてぞ去る』25文
  
  
 120. シネセ         しねせ

 ネセハ ムシハムハハカ  ねせは むしはむははか    繁の寝せは    蝕む穢が
                                 (ソロ)

 ハヤカレカ ミツヤウラミテ  はやかれか みつうらみて    早枯か      瑞や恨みて

 シネセアムラン        しねせあむらん          萎稲 和むらん
                                    (収む)
  
 拙訳:稲の衰弱は、ミモチ病による早枯れだろうか。
    瑞穂を恨みながらしおれた稲を刈り入れることだろう。
  
  
 121. シコケ         しこけ

 コケノ ハトノマハケテ  しのこけの はとまはけて    直の倒けの    曲の真化けて

 ノトヤトツ ユヒネツノフム  のととつ ゆひねつふむ    和や絶つ     結い和つの踏む
                                  (調和)

 アミリタオシレ        あみりたしれ          炙り治を知れ
  
 拙訳:直の喪失である曲りが大化けすると心身の調和を絶つ。
    こんな時は "中和" の持つ効能を知りなさい。
  
 『ハタレとは にも居らず ならず 人のねぢけの 研ぎ優れ 凝り合て六つの ハタレ成る』8文
  
  
 122. シオレ         しおれ

 オレハ メクミアラワシ  おれは めくみあらわし    父の存は   恵み現し

 カノオレハ メカオツクシテ  おれは めかつくして    母の存は   冥加を尽くして
                                        (=恵)

 アノクタラナリ        あのくたらなり          老熟く父母なり
  
 拙訳:父の存在は恵みを現し、母の存在はその恵みを子に尽くす。
    そして老いぼれては一生を終える父母であるなり。
  
 『天より頂 地に編みて 連なり育つ 子の例し 父の恵みは 頂く天 母の慈し 載する埴』16文
  
  
 123. シヨロ         しよろ

 ヨロノ モスミハソロノ  しのよろの もすみそろの    親の寄の      睦みは繁の
                                (親の十五日祝)         (年)

 ヒトメクリ マナソロアミテ  ひとめくり まなそろあみて    一回り       胞衣・ソロ 和みて
                                           (   )

 ヨロノカンクラ        よろかんくら          万の神座
  
 拙訳:生けるも罷るも親族が集まる盂蘭盆の親睦は年の一周り。
    蓮の葉と飯を合せて各家に神座が設けられる。(蓮の葉を神座とする。)
  
 『(七月) 十五日は御祖と 生霊に 胞衣蓮食の 地・天 会えば 仰ぎ踊りて 気を受くる』ミ7文
 親の十五日祝 生御霊 贈る蓮飯 胞衣が典 仰ぎ踊れば 天気受くるミ9文
 『親に祝うは ソロ胞衣見つの 霊祭 隔に薄らぐ 形和うなり』フ101
  
  
 124. シソノ         しその

 ソノハ ツキノコマヒク  しのそのは つきこまひく    聳の園は      月の駒引く
                                 (シナノ)

 マメヤカモ ヰモカメクミノ  まめやかも ゐもめくみの    豆夜明も       陰が恵みの
                                           (月の夜霊波)

 カテヤアツラン        かてあつらん          糧や当つらん
                                 (芋)
  
 拙訳:信濃の国からは、八月十五日の望月が馬を引いてくる。
    九月十四日の豆名月にも、月の夜霊波に実る芋(坂井芋?)を持って来てくれるだろう。
  
 参照: 名所・旧跡を訪ねて ― 駒の里・望月 ―
  
 『日潤に生ゆる 潤の繁は 潤田の具え 夜潤波に 生ゆる和菜は 畑の種』15文
 『八月中 三陰に磨ぐ 芋の子の 多を祝いてミ7文
 九月は 大年告げる 菊の御衣 重ね   一夜酒 小望月には 豆を供ふ』ミ7文
 『八月中より 三陰の磨ぐ 熟小望月 芋果月ミ9文
 『九月 見付きの 菊菜咲き 大年 菊の 散綿子 ささげて祭る 栗見酒ミ9文
  
  
 125. シユン         しゆん

 ユンハ アラヤウフヤノ  しのゆんは あらやうふやの    萎の結は      新屋・産屋の

 オソワレモ ヒキメカフラノ  おそわれも ひきめかふらの    襲われも      蟇目鏑の

 シユンナスナリ        しゆんなすなり          直弓なすなり
  
 拙訳:衰えの治しは、新屋・産屋での物の怪の障りも、蟇目鏑の清めの弓を射るなり。
  
 『"渡座を 民も祝ふに 情けな" と ハハ矢を射れば シナトベに 吹き払ふ時 道を向ひ 共に入ります』21文
 『ホタカミは 臍の緒切るも ハラの法 モノヌシ鳴らす 桑の弓 ハハ矢 蟇目ぞ』26文
  
 参照:桑の弓
  
  
 126. シツル         しつる

 ツルハ カエクシテ  つるは つかえつくして    繁の連るは     仕え尽して
                                 (成果)

 イタチノ キミコロノ  ついたちの つきみつころの    一日の       月満つ頃の

 フユニアウナリ        ふゆあうなり          振ゆに遭うなり
  
 拙訳:結果というものは、仕え尽くした末についてくる。
    月の初めの尽力は、月の末頃に成果となって現れる、そういうものである。
  
 『人法も 十年ほぼ均る 三十の梁 五十は棟木の 功も 篤き恵みの 緩法を 必ず倦むな 早るなよ』17文
 『例ひ落ちても な恨めそ 陰の忠なせ この芽出る 故はアスカを 落ちた時』28文
 『忠を忘れず この故に 御孫に召され 忠なせば ついに鏡の となる』28文
 『天を得ては 思わぬ振ゆの 羨みも 努め敢えてば やはり得るなり』フ007
 『繁の向くは 亀も日月も 千代に目の 輝く華の 頃や迎くらん』フ118
  
  
 127. シヰサ         しゐさ

 ヰサハ ツマノモカリオ  しのゐさは つまもかりお    萎の勇は      妻のを
                                 [死の諌]

 ミクマノノ カミノヰサメノ  みくまのの かみゐさめの    御隈野の      神の諫めの

 アシソヒキケル        あしひきける          足ぞ退きける
  
 拙訳:弱気の勇め... 妻との別れに耐えられず追って行くイサナギ。
    しかしクマノ神の死してなおの諌めに、足を退くのである。
  
 『イサナギは 追ひ行き見まく ココリ姫 "君 これ な見そ" なお聞かず』5文
 『その夜また '神往き'みれば "要真  容れず恥 見す 我が恨み 鬼霊 八人に 追わしむる"』5文
 黄泉辺境 言立す イサナミ 曰く "麗しや かく為さざらば 千頭を 日々に縊らん"』5文
 『イサナギも "麗しや 我 その千五百 生みて誤ち 無き事を 守る"』5文
 『別れ惜しくと 妻送る 夫は逝かず 逝けば恥 鬼霊に追わす 善し悪しを 知れば足 退く 黄泉境5文
 『イサナミ曰く "誤たば 日々に千頭 殺すべし" イサナギ曰く "麗はしや 千五百の頭 生まん" とて』23文
 『生みて教える 調の道を 受けて治むる 千五百村 調の道 通り 大年の 瑞穂得るなり』23文
  
 参照:言立ち
  
  
 128. シナワ         しなわ

 シナワナル ヨロノウタカヒ  しなわなる よろうたかひ    撓なる       万の疑ひ
                                 (曲り)

 カニナシテ ネカヒモミツル  かになして ねかひみつる    曲和合して     願ひも充つる
                                              (他動詞)

 カミノナワ        かみしめなわ          神の注連縄
                                   (締め縄)
  
 拙訳:曲り・惑いである疑いの心で祈っても願いは決して叶わない。
    祈る者の心を鑑定してふるいに掛ける、これが注連縄である。
  
 『表の縄の 結うは障る多の 慎まやか とりゐに程を かくる枷縄』フ96
  
  

  

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