※29文〜40文は、地名については原義と異なると思われる場合でも、現在一般に使用されている漢字で表記しています。
【原文カタカナ訳】 【語義考察】 【漢字読み下し】
アツタカミヨオイナムアヤ あつたかみよおいなむあや アツタ神 世を辞む文
マキムキノ ヒシロノコヨミ まきむきの ひしろのこよみ 纏向の 日代の暦 (景行天皇) ヨソヒハル ヤマトタケキミ よそひはる やまとたけきみ 四十一年春 ヤマトタケ君 (アスズ828年) キソチヨリ イタルオハリノ きそちより いたるおはりの 木曾路より 到る尾張の タケトメカ マコノムラシノ たけとめか まこのむらしの タケトメが 孫の連の (乎止与) ヰヱニイル ツマミヤスヒメ ゐゑにいる つまみやすひめ 家に入る 妻ミヤズ姫 (宮簀媛) ミヤコヨリ オクリテチチカ みやこより おくりてちちか 都より 送りて父が (乎止与) ヰヱニマツ イマキミココニ ゐゑにまつ いまきみここに 家に待つ いま君ここに ツキオコス つきおこす 月を越す (景行41年3月)
キミノタマハク きみのたまはく 君 宣給わく サカオリノ ミヤハムカシノ さかおりの みやはむかしの 「サカオリの 宮は昔の (ハラミサカオリ) ハラノミヤ ナオナカラエリ はらのみや なおなからえり ハラの宮 なお永らえり (ハラアサマ宮) ワカネカヒ ウツシテヒメト わかねかひ うつしてひめと 我が願ひ 写して姫と タノシマン ムラシモウサク たのしまん むらしもうさく 楽しまん」 連 申さく トミユキテ ヱカキウツサン とみゆきて ゑかきうつさん 「臣 行きて 絵描き写さん」 キミヱヱス きみゑゑす 君 微笑す
ムラシクタリテ むらしくたりて 連 下りて サカオリノ ミヤオクワシク さかおりの みやおくわしく サカオリの 宮を詳しく ヱニウツシ カヱコトスレハ ゑにうつし かゑことすれは 絵に写し 返言すれば
ヤマトタケ アラフルカミノ やまとたけ あらふるかみの ヤマトタケ あらぶる神の (イブキ神) アルオキキ ツルキトキオキ あるおきき つるきときおき 荒るを聞き 剣 解き置き (ムラクモ) カロンシテ イタルカミチニ かろんして いたるかみちに 軽んじて 到る神方に (伊吹山) ニキテナク ユキスクミチニ にきてなく ゆきすくみちに 和幣無く 行き過ぐ道に イフキカミ ヲオロチナシテ いふきかみ をおろちなして イブキ神 大蛇 成して ヨコタワル よこたわる 横たわる
カミトハシラス かみとはしらす 神とは知らず ヤマトタケ オロチニイワク やまとたけ おろちにいわく ヤマトタケ 蛇に曰く コレナンチ アレカタカミノ これなんち あれかたかみの 「これ汝 あれかた神の ツカヒナリ アニモトムルニ つかひなり あにもとむるに 使ひなり あに求むるに タランヤト フミコエユケハ たらんやと ふみこえゆけは 足らんや」 と 踏み越え行けば イフキカミ ツララフラシテ いふきかみ つららふらして イブキ神 氷降らして カオウハフ かおうはふ 活を奪ふ
シイテシノキテ しいてしのきて 強いて凌ぎて オシアユミ ワツカイテユク おしあゆみ わつかいてゆく 押し歩み 僅か出で行く ココロヱヒ モユルコトクニ こころゑひ もゆることくに 心酔ひ 燃ゆる如くに アツケレハ イツミニサマス あつけれは いつみにさます 熱ければ 泉に冷ます サメカヰヤ さめかゐや さめが井や (醒井)
ミアシイタムオ みあしいたむお 御足傷むを ヤヤサトリ オハリニカエリ ややさとり おはりにかえり やや悟り 尾張に帰り ミヤツメノ ヰヱニイラステ みやつめの ゐゑにいらすて ミヤツ姫の 家に入らずて イセノミチ オツノヒトマツ いせのみち おつのひとまつ 伊勢の道 尾津の一松 コレムカシ ホツマクタリノ これむかし ほつまくたりの これ昔 ホツマ下りの ミアエトキ トキオクツルキ みあえとき ときおくつるき 御饗時 解き置く剣 マツノネニ オキワスレシカ まつのねに おきわすれしか 松の根に 置き忘れしが ナカラエリ カレニアケウタ なからえり かれにあけうた 永らえり 故に上げ歌 (捧歌・讃歌)
オワスレト タタニムカエル おわすれと たたにむかえる 『負忘れど 直に迎える (そのままに) ヒトツマツ アハレヒトマツ ひとつまつ あはれひとまつ 一つ松 天晴れ ヒトマツ ヒトニセハ キヌキセマシオ ひとにせは きぬきせましお 人にせば 衣着せましを (「為る」の未然形) タチハケマシオ たちはけましお 太刀佩けましを』
イササカニ ナクサミユケト いささかに なくさみゆけと いささかに 慰み行けど (伊坂) アシイタミ ミヱニマカレハ あしいたみ みゑにまかれは 足傷み 見えに曲がれば 目にも明らかに ミヱムラソ ツヱツキサカモ みゑむらそ つゑつきさかも 見え村ぞ 費え尽き境も (三重村) (杖衝坂) ヤヤコエテ ノホノニイタミ ややこえて のほのにいたみ やや越えて 能褒野に傷み オモケレハ トリコヰタリオ おもけれは とりこゐたりお 重ければ 虜五人を (津軽・陸奥の国造5人) ウチニヤリ カシマミコトノ うちにやり かしまみことの 宇治に遣り カシマ尊の (伊勢) (オオカシマ) ソエヒトソ そえひとそ 添人ぞ
キヒタケヒコハ きひたけひこは キビタケヒコは ミヤコチエ ノホセモフサク みやこちえ のほせもふさく 都方へ 上せ申さく ソノフミニ そのふみに その文に
ハナヒコモフス はなひこもふす 『ハナヒコ申す トミムカシ ミコトオウケテ とみむかし みことおうけて 臣 昔 御言を受けて ホツマウチ アメノメクミト ほつまうち あめのめくみと ホツマ打ち 天の恵みと (天皇) イツニヨリ アラフルカミモ いつにより あらふるかみも 稜威により あらぶる守も マツロエハ フツクヲサメテ まつろえは ふつくをさめて 服えば 悉く治めて イマココニ カエレハイノチ いまここに かえれはいのち 今ここに 帰れば命 ユフツクヒ コヒネカワクハ ゆふつくひ こひねかわくは 夕付く日 乞ひ願わくは イツノヒカ ミコトカエサン いつのひか みことかえさん いつの日か 御言返さん 御言に対する返言せん ノニフシテ タレトカタラン のにふして たれとかたらん 野に臥して 誰と語らん 野に臥す身で 誰と語るというのでしょう オシムラク マミヱヌコトヨ おしむらく まみゑぬことよ 惜しむらく まみえぬことよ 結ばぬ アメノノリカナ あめののりかな 陽陰の法かな』
フミトメテ キミイワクワレ ふみとめて きみいわくわれ 文留めて 君 曰く 「我 キツオムケ コトナレハミオ きつおむけ ことなれはみお 東西を平け 事成れば身を ホロホセル カレラヤスマス ほろほせる かれらやすます 滅ぼせる 彼ら休ます ヒモナキト ナツカハキシテ ひもなきと なつかはきして 日もなき」 と ナツカハギして ハナフリオ ミナワケタマヒ はなふりお みなわけたまひ ハナフリを 皆 分け賜ひ ウタヨメハ アツタノカミト うたよめは あつたのかみと 「歌詠めば アツタの神と (熱治の神) ハヤナルト ユアミハオカエ はやなると ゆあみはおかえ 早なる」 と 湯浴み 衣を替え サニムカヒ ヒトミイナムノ さにむかひ ひとみいなむの 南に向ひ 人身辞むの (伊勢) ウタハコレソト うたはこれそと 歌はこれぞと
アツタノリ あつたのり --- 熱治宣 --- イナムトキ キツノシカチト いなむとき きつのしかちと 『辞む時 東西の使方と タラチネニ ツカエミテネト たらちねに つかえみてねと 父母に 仕え満てねど サコクシロ カミノヤテヨリ さこくしろ かみのやてより サコクシロ 神の八手より (天元の八押手) ミチウケテ ウマレタノシム みちうけて うまれたのしむ 道受けて 生れ楽しむ 人生を楽しむ カエサニモ イサナヒチトル かえさにも いさなひちとる 還さにも 誘ひちどる <天に> 渡す カケハシオ ノホリカスミノ かけはしお のほりかすみの 懸梯を 登り 霞の 登り あの世の タノシミオ クモヰニマツト たのしみお くもゐにまつと 楽しみを 雲居に待つと ヒトニコタエン ひとにこたえん 人に答えん』
モモウタヒ ナカラメオトチ ももうたひ なからめおとち 百歌ひ ながら眼を閉ぢ カミトナル かみとなる 神となる
ナスコトナクテ なすことなくて なすこと無くて <主を失った一行は> どうすることもできずに イトナミス ウタハオハリエ いとなみす うたはおはりえ 営みす 歌は尾張へ 過ごす 熱治宣はミヤズ姫のもとへ
キヒノホリ フミササクレハ きひのほり ふみささくれは キビ上り 文捧ぐれば キビタケヒコは都に上り スヘラキハ ヰモヤスカラス すへらきは ゐもやすからす 皇は 気も安からず アチアラス ヒメモスナケキ あちあらす ひめもすなけき 味あらず 終日嘆き ノタマワク ムカシクマソカ のたまわく むかしくまそか 宣給わく 「昔クマソが ソムキシモ マタアケマキニ そむきしも またあけまきに 背きしも まだ総角に ムケエタリ マテニハヘリテ むけえたり まてにはへりて 平け得たり 左右に侍りて タスケシニ ホツマオウタス たすけしに ほつまおうたす 助けしに ホツマを打たす ヒトナキオ シノヒテアタニ ひとなきお しのひてあたに 人なきを 忍びて仇に イラシメハ アケクレカエル いらしめは あけくれかえる 入らしめば 明け暮れ帰る ヒオマツニ コハソモナンノ ひおまつに こはそもなんの 日を待つに 此はそも何の (何に対する) ワサハヒソ ユクリモナクテ わさはひそ ゆくりもなくて 災ひぞ 縁もなくて アカラメス タレトミワサオ あからめす たれとみわさお 天から召す 誰と御業を ヲサメンヤ モロニノリシテ をさめんや もろにのりして 治めんや」 諸に宣して カミオクリ かみおくり 神送り
トキニオモムロ ときにおもむろ 時に骸 ナルイトリ イツレハモロト なるいとり いつれはもろと なる霊鳥 出づれば諸と ミササキノ ミヒツオミレハ みささきの みひつおみれは 御陵の 御棺を見れば カンムリト サクトミハモト かんむりと さくとみはもと 冠と 笏と御衣裳と トトマリテ ムナシキカラノ ととまりて むなしきからの 留まりて 空しき殻の (1.空の棺) (2.亡骸) シライトリ オヒタツヌレハ しらいとり おひたつぬれは 白霊鳥 追ひ尋ぬれば ヤマトクニ コトヒキハラニ やまとくに ことひきはらに 大和国 琴弾原に オハヨエタ オキテカワチノ おはよえた おきてかわちの 尾羽四枝 置きて河内の フルイチニ マタヨハオツル ふるいちに またよはおつる 古市に また四羽落つる ソコココニ ナスミササキノ そこここに なすみささきの 其所此所に 成す御陵の シラトリモ ツヒニクモヰニ しらとりも つひにくもゐに 白鳥も つひに雲居に トヒアカル とひあかる 飛び上がる
オハハアタカモ おははあたかも 尾羽はあたかも カミノヨノ ヨハキシソコレ かみのよの よはきしそこれ 上の世の 世掃きしぞこれ 御上の治めの キツモミナ タセハマカレル きつもみな たせはまかれる 東西もみな 治せば罷れる [起尽] (「罷る」の連体形) 満つれば欠ける アメノリソ あめのりそ 陽陰法ぞ
コノキミヒシロ このきみひしろ この君 日代 (オウス) スヘラキノ フノミコハハハ すへらきの ふのみこははは 皇の 二の御子 母は (景行) イナヒヒメ シハスノモチニ いなひひめ しはすのもちに イナヒ姫 十二月の十五日に モチツキテ モチハナナシテ もちつきて もちはななして 餅つきて 餅花成して フタコウム ヲウスモチヒト ふたこうむ をうすもちひと 双子生む ヲウス モチヒト トハコウス ハナヒコモコレ とはこうす はなひこもこれ 弟はコウス ハナヒコもこれ アメノナソ あめのなそ 上の名ぞ
ヒトナルノチニ ひとなるのちに 人成る後に クマソマタ ソムケハコウス くまそまた そむけはこうす クマソまた 背けばコウス ヒトリユキ オトメスカタト ひとりゆき おとめすかたと ひとり行き 乙女姿と ナリイリテ ハタノツルキテ なりいりて はたのつるきて なり入りて 肌の剣で ムネオサス タケルシハシト むねおさす たけるしはしと 胸を刺す タケル 「しばし」 と (トリイシカヤ) トトメイフ ナンチハタレソ ととめいふ なんちはたれそ 止め言ふ 「汝は誰ぞ」 ワレハコレ イサスヘラキノ われはこれ いさすへらきの 「我はこれ いざ皇の コノコウス このこうす 子のコウス」
タケルカイワク たけるかいわく タケルが曰く ヤマトニハ ワレニタケタハ やまとには われにたけたは 「ヤマトには 我に長けたは (日本) ミコハカリ カレミナツケン みこはかり かれみなつけん 御子ばかり 故 御名付けん キキマスヤ ユルセハササク ききますや ゆるせはささく 聞きますや」 許せば捧ぐ ヤマトタケ ミコナオカエテ やまとたけ みこなおかえて "ヤマトタケ" 御子 名を替えて ウチヲサム アメノホマレヤ うちをさむ あめのほまれや 打ち治む 天の誉れや (中央政府)
ヤマトタケ イマスノマコノ やまとたけ いますのまこの ヤマトタケ イマスの孫の タンヤカメ フタチイリヒメ たんやかめ ふたちいりひめ タンヤが姫 フタヂイリ姫 (オオタンヤワケ) (両道入姫) ウムミコハ イナヨリワケノ うむみこは いなよりわけの 生む御子は イナヨリワケの (稲依別王) タケヒコト タリナカヒコノ たけひこと たりなかひこの タケヒコと タリナカヒコの (足仲彦) カシキネト ヌノオリヒメト かしきねと ぬのおりひめと カシキネと ヌノオリ姫と (布忍入姫) ワカタケソ わかたけそ ワカタケぞ (稚武)
キヒタケヒコカ きひたけひこか キビタケヒコが アナトタケ ウチツマニウム あなとたけ うちつまにうむ アナトタケ 内妻に生む (穴戸武媛) タケミコト トキワケトナリ たけみこと ときわけとなり タケミコと トキワケとなり (武卵王) (十城別王)
オシヤマカ オトタチハナオ おしやまか おとたちはなお オシヤマが オトタチバナを (弟橘姫) スケツマニ ワカタケヒコト すけつまに わかたけひこと 典侍妻に ワカタケヒコと (稚武彦王) イナリワケ アシカミカマミ いなりわけ あしかみかまみ イナリワケ アシカミカマミ (稲入別命) (蘆髪蒲見別) タケコカヒ イキナカタワケ たけこかひ いきなかたわけ タケコカヒ イキナカタワケ (健貝児王) (息長田別王) ヰソメヒコ イカヒコラウム ゐそめひこ いかひこらうむ ヰソメヒコ イカヒコら生む (五十目彦王) (伊賀彦王)
オハリカメ ミヤツヒメマタ おはりかめ みやつひめまた 尾張が姫 ミヤツ姫また (オトヨ) ノチノツマ タケタトサエキ のちのつま たけたとさえき 後の妻 タケダとサエキ (武田王) (佐伯王) フタリウム ソヨヲヒメアリ ふたりうむ そよをひめあり 二人生む 十四男一女あり
サキノツマ ミナカレイマハ さきのつま みなかれいまは 先の妻 みな枯れ 今は ミヤツヒメ ヒトリアワント みやつひめ ひとりあわんと ミヤツ姫 一人 会わんと ハラミヨリ ココロホソクモ はらみより こころほそくも ハラミより 心細くも カケハシオ シノキノホレハ かけはしお しのきのほれは 懸梯を 凌ぎ上れば <木曾路の> ミヤツヒメ ネマキノママニ みやつひめ ねまきのままに ミヤツ姫 寝巻のままに イテムカフ ヒメノモスソニ いてむかふ ひめのもすそに 出で迎ふ 姫の裳裾に ツキヲケノ シミタルオミテ つきをけの しみたるおみて 月穢の 染みたるを見て ヤマトタケ ミシカウタシテ やまとたけ みしかうたして ヤマトタケ 短歌して
ヒサカタノ アマノカクヤマ ひさかたの あまのかくやま 『久方の 陽陰の橘山 トカモヨリ サワタリクルヒ とかもより さわたりくるひ 遠彼方より 岨渡り来る日 ホソタハヤ カヒナオマカン ほそたはや かひなおまかん 細嫋 腕を巻かん 細くてしなやかな身に トハスレト サネントアレハ とはすれと さねんとあれは とはすれど さねんと吾は オモエトモ ナカキケルソノ おもえとも なかきけるその 思えども 汝が着ける衣の ツキタチニケリ つきたちにけり 月立ちにけり』
ヒメカエシウタ ひめかえしうた --- 姫 返し歌 ---
タカヒカル アマノヒノミコ たかひかる あまのひのみこ 『高光る 和の日の御子 ヤスミセシ ワカオホキミノ やすみせし わかおほきみの 和みせし 我が大君の [八隅せし] アラタマノ トシカキフレハ あらたまの としかきふれは 新玉の 年が来ふれば (「来ふ」の已然形) ウヘナウヘナキミマチカタニ うへなうへなきみまちかたに 宜な宜な 君待ち難に 嬉し嬉しと 日の御子を待ちがたくて <心待ちにしてたら> ワカキケル オスヒノスソニ わかきける おすひのすそに 我が着ける 襲の裾に ツキタタナンヨ つきたたなんよ 月立たなんよ』 月が立ったんじゃないかな
ヤマトタケ オハヨリタマフ やまとたけ おはよりたまふ ヤマトタケ 叔母より賜ふ (ヤマト姫) ムラクモオ ヒメカヤニオキ むらくもお ひめかやにおき ムラクモを 姫が家に置き イフキヤマ いふきやま 伊吹山
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カエサノイセチ かえさのいせち 帰さの伊勢路
イタハレハ ミヤコオモヒテ いたはれは みやこおもひて いたわれば 都 思ひて
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ハシキヤシ ワキヘノカタユ はしきやし わきへのかたゆ 『愛し清し わきべの方ゆ
ああ麗しや 我家の方より クモイタチクモ くもいたちくも 雲 出立ち来も』 →38文 雲(汚穢隈)が空に立ち昇って来るかな。
ノコシウタ ミコヤウカラニ のこしうた みこやうからに 遺し歌 御子や親族に オリアイノ ツスハヤカタテ おりあいの つすはやかたて 折合の 十九歌は 館で イテタツハ タヒヤニアエル いてたつは たひやにあえる 出で立つは 旅屋に会える (「会ふ」の連体形) 館を去る人は旅先の宿に偶然に居合せた マロヒトト マヨヒノコサヌ まろひとと まよひのこさぬ 客人と 迷ひ残さぬ その個性をも知れぬ 多くの旅人の一人よ サトシウタ フカキココロノ さとしうた ふかきこころの 諭し歌 深き心の ミチヒキソコレ みちひきそこれ 導きぞこれ
ノホノニテ カミナルトキニ のほのにて かみなるときに 能褒野にて 神なる時に ノコシウタ ミヤツヒメエト のこしうた みやつひめえと 遺し歌 ミヤズ姫へと
アイチタノ オトメカトコニ あいちたの おとめかとこに 『アイチタの 乙女が床に ワカオキシ イセノツルキノ わかおきし いせのつるきの 我が置きし 妹背の連きの [伊勢の剣] タチワカルヤワ たちわかるやわ 断ち分るやわ』 [太刀]
コノワカハ イモセノミチハ このわかは いもせのみちは このワカは 妹背の道は ツラナリテ タチワカルレト つらなりて たちわかるれと 連なりて 断ち分るれど たとえ一時は別れようとも ツリノヲハ キレハセヌソト つりのをは きれはせぬそと 連りの緒は 切れはせぬぞと 二人を結ぶ縁は ミチヒキオ タツルアメノリ みちひきお たつるあめのり 導きを 立つる陽陰法 (=妹背の道)
ミヤスヒメ モタエタエイリ みやすひめ もたえたえいり ミヤズ姫 悶え 絶え入り ヤヤイケリ チチハハラミノ ややいけり ちちははらみの やや生けり 父はハラミの (連)(サカオリ宮) ヱオウツシ ミヤコニノホリ ゑおうつし みやこにのほり 絵を写し 都に上り ワカミヤノ ネカヒノママオ わかみやの ねかひのままお 若宮の 願ひのままを モウシアケ アイチタニタツ もうしあけ あいちたにたつ 申し上げ アイチタに建つ ミヤナリテ ワタマシコエハ みやなりて わたましこえは 宮成りて 渡座し乞えば ミコトノリ タタネコイハフ みことのり たたねこいはふ 御言宣 「タタネコ 斎ふ サヲシカト ムラシカフトノ さをしかと むらしかふとの 差使人 連 代殿 (オトヨ) ミコタチオ ミユキノソナエ みこたちお みゆきのそなえ 御子達を 神往きの供え」 (お供)
オコソカニ コトヒキハラノ おこそかに ことひきはらの 厳かに 琴弾原の ミササキニ オチシオハヨツ みささきに おちしおはよつ 陵に 落ちし尾羽四つ フルイチノ オハヨツトモニ ふるいちの おはよつともに 古市の 尾羽四つ 共に モチキタリ ノホノノカフリ もちきたり のほののかふり 持ち来たり 能褒野の冠 サクミハモ ミタマケニイレ さくみはも みたまけにいれ 笏 御衣裳 神霊笥に入れ シラミコシ しらみこし 白神輿 (白霊鳥の輿)
ヒシロヨソヨホ ひしろよそよほ 日代四十四年 (景行天皇) ヤヨヒソヒ タソカレヨリソ やよひそひ たそかれよりそ 三月十一日 たそがれよりぞ ミコシユキ ノホノオヒカシ みこしゆき のほのおひかし 神輿行き 能褒野を東 モロツカサ カタムタヒマツ もろつかさ かたむたひまつ 諸司 かたむ灯燃 サキカリハ サカキニフソリ さきかりは さかきにふそり 先駆りは 榊に二十人 <の> ソエカフト サルタヒコカミ そえかふと さるたひこかみ 副代人 サルタヒコ神 ミカホアテ カフトヤタリハ みかほあて かふとやたりは 御顔充て 代人八人は ヤモトハタ やもとはた 八元幡
オオカフトノハ おおかふとのは 大代殿は (妻ミヤス姫の父) カムリミハ ミハシラモチテ かむりみは みはしらもちて 冠・御衣 御柱持ちて (御丈柱) トミヤタリ オシヤマスクネ とみやたり おしやますくね 臣八人 オシヤマ宿禰 (典侍妻オトタチバナ姫の父) カフリミハ ヨハキシモチテ かふりみは よはきしもちて 冠・御衣 世掃し持ちて (尾羽) トミムタリ キヒタケヒコモ とみむたり きひたけひこも 臣六人 キビタケヒコも (内妻アナトタケ姫の父) オナシマエ オオタンヤワケ おなしまえ おおたんやわけ 同じ前 オオタンヤワケ (前の妻フタヂイリ姫の父) カフリミハ ツルキササケテ かふりみは つるきささけて 冠・御衣 剣 捧げて (ムラクモ) トミソタリ とみそたり 臣十人
ミコシアオホヒ みこしあおほひ 神輿・天覆ひ (天蓋) ヲサノトミ イエハトミソリ をさのとみ いえはとみそり 長の臣 家侍人三十人 ミヲスエハ キヌフタナカレ みをすえは きぬふたなかれ 神尾末は 絹二流れ ヨタケヤタ ミコミヲスエニ よたけやた みこみをすえに 四丈八尺 御子 神尾末に (四十八尺) スカリユク アマテルカミノ すかりゆく あまてるかみの すがり行く アマテル神の ノコルノリ のこるのり 遺る法 (裳裾を汲め)
イワヒサヲシカ いわひさをしか 斎ひ差使 (タタネコ) トミソフリ ツキミユキモリ とみそふり つきみゆきもり 臣十二人 付き 神往き守り モロツカヒ ミナオクリユク もろつかひ みなおくりゆく 諸 継がひ 皆 送り行く ヨナカマテ カクムヨイタリ よなかまて かくむよいたり 夜半まで かく六夜到り ハラミヤノ オホマノトノニ はらみやの おほまのとのに ハラ宮の オホマの殿に (新ハラ宮) ミコシマス みこします 神輿座す
ヨニマスコトク よにますことく 世に座す如く ミヤスヒメ キリヒノカヰオ みやすひめ きりひのかゐお ミヤズ姫 鑽火の粥を モルヒラヘ イタタキサキニ もるひらへ いたたきさきに 盛る平瓮 頂き 先に イリマチテ ミマエニソナエ いりまちて みまえにそなえ 入り待ちて 神前に供え モウサクハ もうさくは 申さくは
コノミケムカシ このみけむかし 「この御供 昔 イフキヨリ カエサニササク いふきより かえさにささく 伊吹より 帰さに捧ぐ ヒルメシオ ミツカラカシキ ひるめしお みつからかしき 昼飯を 自ら炊ぎ マチオレト ヨラテユキマス まちおれと よらてゆきます 待ち居れど 寄らで行きます チチクヤミ イママタキマス ちちくやみ いままたきます 散々悔み 今また来ます キミノカミ ムヘウケタマエ きみのかみ むへうけたまえ 君の神 むべ受け給え アリツヨノ アヒチタニマツ ありつよの あひちたにまつ ありつ代の アヒチタに待つ キミカヒルメシ きみかひるめし 君が昼飯」
ミタヒノリ イサヨフツキノ みたひのり いさよふつきの 三度宣り 十六夜月の ホカラカニ シライトリキテ ほからかに しらいとりきて 朗光に 白霊鳥来て コレオハミ ナルシラクモニ これおはみ なるしらくもに これを食み 現る白雲に カミノコエ コタフツツウタ かみのこえ こたふつつうた 神の声 応ふ十九歌
アリツヨノ ハラミツホシキ ありつよの はらみつほしき 『ありつ代の 腹満つ欲しき 世にありし時の 腹を満たして欲しかった チリオヒルメシ ちりおひるめし 塵を放る飯』 汚穢隈を払う飯 →9文
クシヒルオ マコトニオソレ くしひるお まことにおそれ 貴霊を まことに畏れ オカミサル オホマトノヨリ おかみさる おほまとのより 拝み更る オホマ殿より ミヤウツシ サヲシカニキテ みやうつし さをしかにきて 宮遷し 差使 和幣 ミコトアケ コノトキヲシカ みことあけ このときをしか 御言上げ この時御使 タタネコト オハリムラシト たたねこと おはりむらしと タタネコと 尾張連と (オトヨ) ニイハラノ オホマノカミト にいはらの おほまのかみと "新ハラの オホマの神" と ナツクナリ カミオクルトキ なつくなり かみおくるとき 名付くなり 神送る時 ヨオイナム チリヒルメシト よおいなむ ちりひるめしと "世を辞む 塵放る飯" と ノコルナリ のこるなり 遺るなり
イセニソエイル いせにそえいる 伊勢に添え入る ヱソヰタリ イヤマイアラス ゑそゐたり いやまいあらす ヱゾ五人 礼いあらず (津軽・陸奥の国造5人) ヤマトヒメ トカメミカトエ やまとひめ とかめみかとえ ヤマト姫 咎め 帝へ ススメヤル ミモロニオケハ すすめやる みもろにおけは 進め遣る ミモロに置けば (大神神社) ホトモナク キオキリタミオ ほともなく きおきりたみお ほどもなく 木を伐り民を サマタケル キミノタマワク さまたける きみのたまわく 妨げる 君 宣給わく (「妨ぐ」の連体形) ヱミシラハ ヒトココロナク ゑみしらは ひとこころなく 「ヱミシらは 人心無く オキカタシ ママニワケオク おきかたし ままにわけおく 置き難し」 ままに分け置く ハリマアキ アハイヨサヌキ はりまあき あはいよさぬき 播磨・安芸 阿波・伊予・讃岐 サエキヘソ さえきへそ 佐伯部ぞ
ヨソムホノハル よそむほのはる 四十六年の春 (アスズ833年) ナナクサノ ミアエニウタノ ななくさの みあえにうたの 七種の 御饗に歌の ヒカスヘル ワカタリヒコト ひかすへる わかたりひこと 日数経る ワカタリヒコと タケウチト ウチニマイラス たけうちと うちにまいらす タケウチと 内に参らず カレメシテ トエハモフサク かれめして とえはもふさく 故 召して 問えば申さく エラクヒハ アソヒタワムレ えらくひは あそひたわむれ 「笑楽日は 遊び戯れ コトワスル クルエトアラハ ことわする くるえとあらは 異忘る 狂え人あらば ウカカハン カレニミカキオ うかかはん かれにみかきお 窺はん 故に御垣を マモリオル まもりおる 守り居る」
キミキコシメシ きみきこしめし 君 聞こし召し イヤチコト アツクメクミテ いやちこと あつくめくみて 「いやちこ」 と 篤く恵みて ハツキヨカ ワカタリヒコオ はつきよか わかたりひこお 八月四日 ワカタリヒコを ヨツキミコ タケウチスクネ よつきみこ たけうちすくね 代嗣御子 タケウチ 宿禰 (成務天皇) ムネノトミ ミコトタケウチ むねのとみ みことたけうち 棟の臣 御子とタケウチ オナヒトシ おなひとし 同ひ歳
ヰソフホサツキ ゐそふほさつき 五十二年五月 スエヤカニ キサキイラツメ すえやかに きさきいらつめ 二十八日に 后イラツ姫 カミトナル ミオクリノリハ かみとなる みおくりのりは 神となる 神送り法は アツタノリ あつたのり アツタ法
オホタンヤワケ おほたんやわけ オホタンヤワケ (オウスの元妻フタヂイリ姫の父) ミケカシキ チリヒルメシト みけかしき ちりひるめしと 御供炊ぎ "塵放る飯" と モルヒラテ ヌノオシヒメニ もるひらて ぬのおしひめに 盛る枚手 ヌノオシ姫に イタタカセ ソフタンヤワケ いたたかせ そふたんやわけ 頂かせ 添ふタンヤワケ サキカリニ ツキハヒメミコ さきかりに つきはひめみこ 先駆に 次は姫御子 スケウチメ オシモアオメラ すけうちめ おしもあおめら 典侍・内侍 乙下・青侍ら ミソリソフ ツキモトモトノ みそりそふ つきもともとの 三十人添ふ 次 元々の ヤイロハタ やいろはた 八色幡
カミノトヨソヤ かみのとよそや 神宣詞四十八 (アワ歌)
ワケソメテ キヒノイヱトミ わけそめて きひのいゑとみ 分け染めて 吉備の家臣 分割して書留めて モチナラフ タテモノクモニ もちならふ たてものくもに 持ち並ぶ 奉物 "雲に カケハシト カスミニチトリ かけはしと かすみにちとり 懸梯" と "霞に千鳥" キヒハリマ ヱトノタケヒコ きひはりま ゑとのたけひこ 吉備・播磨 兄弟のタケヒコ ヨハキシオ マテニナラヒテ よはきしお まてにならひて 世掃しを 左右に並びて 白霊鳥の尾羽を (他動詞) ミハシラハ ウチミヤノトミ みはしらは うちみやのとみ 身柱は 内宮の臣 (身丈柱) <が> ミコシマエ ミコハミヲスエ みこしまえ みこはみをすえ 神輿前 御子は神尾末 神輿の直前に持つ ヲシカトハ ウツシヒノオミ をしかとは うつしひのおみ 御使人は 現し日の臣 (天皇) <故に> コシニノル モロオクリケリ こしにのる もろおくりけり 輿に乗る 諸 送りけり
アフミナカ ヤサカイリヒメ あふみなか やさかいりひめ 七月七日 ヤサカイリ姫 ウチツミヤ うちつみや 内つ宮
ヰソミホホツミ ゐそみほほつみ 五十三年八月 ミコトノリ カエリオモエハ みことのり かえりおもえは 御言宣 「返り思えば 思い返してみても ヤムヒナシ コウスカムケシ やむひなし こうすかむけし 止む日無し コウスが平けし きりがない クニメクリ ナサントイセニ くにめくり なさんといせに 国巡り なさん」 と 伊勢に ミユキナリ みゆきなり 御幸なり
オハリツシマニ おはりつしまに 尾張ツシマに イタルトキ ムラシムカエハ いたるとき むらしむかえは 到る時 連 迎えば (尾張連) コノコトク トモニオホマノ このことく ともにおほまの 子の如く 共にオホマの ミヤニイリ ミツカラツクル みやにいり みつからつくる 宮に入り 自ら造る ニキテタテ イワクヲヤコノ にきてたて いわくをやこの 和幣奉て 曰く 「親子の ユクリナフ ワカレアワネハ ゆくりなふ わかれあわねは 縁 無ふ 別れ会わねば 交わり無く ワスラレス ミツカラキタリ わすられす みつからきたり 忘られず 自ら来たり ニキテスト ヤヤヒサシクソ にきてすと ややひさしくそ 和幣す」 と やや久しくぞ イタマシム いたましむ いたましむ =いたわしむ・いとおしむ
ソノヨノユメニ そのよのゆめに その夜の夢に ツシマモリ シライトリナル つしまもり しらいとりなる ツシマ杜 白霊鳥なる 白霊鳥となって現れる ヤマトタケ やまとたけ ヤマトタケ
イワクヲヲカミ いわくををかみ 曰く 「大神 (アマテル) →7文 ソサノヲニ イワクイカンソ そさのをに いわくいかんそ ソサノヲに 曰く "如何んぞ クニノソム アメノリナセハ くにのそむ あめのりなせは 国望む 陽陰法なせば <こそ> クニノカミ ヲシエノウタニ くにのかみ をしえのうたに 国の守" 教えの歌に
アメカシタ ヤワシテメクル あめかした やわしてめくる 『天が下 和して恵る [巡る] ヒツキコソ ハレテアカルキ ひつきこそ はれてあかるき 日月こそ 晴れて明るき タミノタラチネ たみのたらちね 民の父母』 (国守は民の父母 23文)
コレトケス ツミニオツルオ これとけす つみにおつるお これ解けず 罪に落つるを イフキカミ ヒキテカミトス いふきかみ ひきてかみとす イフキ守 引きて守とす ニニキネハ コノココロモテ ににきねは このこころもて ニニキネは この心以て ホツマヱテ アマキミトナル ほつまゑて あまきみとなる ホツマ得て 天君となる シハカミホツマの国を得て ウラヤミテ カリノヲヤコソ うらやみて かりのをやこそ 羨みて 仮の親子ぞ <ソサノヲは> 景行の御子として生まれる
ミコトウケ キツムケカエル みことうけ きつむけかえる 御言受け 東西平け還る 天に還る今、こうして カミシツカ マミエテホソチ かみしつか まみえてほそち 上・賤が まみえて臍ち (天皇とオウス) (中和し) アツサタス タラチノメクミ あつさたす たらちのめくみ 熱さ治す 親の恵み ウマサルヤ オリカソエウタ うまさるや おりかそえうた 倦まざるや」 折り数え歌
ワカヒカル ハラミツニシキ わかひかる はらみつにしき 『我が光る はらみつ錦 アツタカミ モトツシマハニ あつたかみ もとつしまはに アツタ神 元つしま衣に オレルカヒカワ おれるかひかわ 折れるか ヒカワ』
「わかひかる」: 「るかひかわ」 「はらみ」 : 「つしま」 「にしき」 : 「しまは」 「あつた」 : 「ひかわ」
ミタヒノヘ シツノスカタニ みたひのへ しつのすかたに 三度宣べ 賎の姿に クモカクレ くもかくれ 雲隠れ
キミサメイワク きみさめいわく 君 覚め曰く カミノツケ ワレハイヤシキ かみのつけ われはいやしき 「神の告げ "我は賎しき (ヤマトタケ) ヒカワカミ モトニカエルト ひかわかみ もとにかえると ヒカワ神 元に返る" と メクミコル マヨヒオサトス めくみこる まよひおさとす 恵み凝る 迷いを諭す シメシナリ しめしなり 示しなり」
ムカシイワクハ むかしいわくは 「昔 曰くは ヒトハカミ カミハヒトナリ ひとはかみ かみはひとなり 人は神 神は人なり (賤) (尊) ナモホマレ ミチタツノリノ なもほまれ みちたつのりの 名も褒まれ 道立つ典の その名を尊ばれ 人生道の模範を示す カミハヒト ヒトスナホニテ かみはひと ひとすなほにて 神は人 人 素直にて 神は初めから 賤が曲がることなく 神ではなく元は賤 ホツマユク マコトカミナリ ほつまゆく まことかみなり ほつま行く まこと神なり」 調和の道を進む これぞ真の神なり
ツケニヨリ ナモアツタカミ つけにより なもあつたかみ 告げにより 名もアツタ神 ミヤスヒメ イツキニクラヘ みやすひめ いつきにくらへ ミヤズ姫 斎に比べ <を> 伊勢の斎宮に比し カンヌシモ ミヤツカサナミ かんぬしも みやつかさなみ 神主も 宮司並み 伊勢の宮司と同格
アツマチエ ユケハサカムニ あつまちえ ゆけはさかむに 東方へ 行けば相模に ミアエナス マシテシオカミ みあえなす ましてしおかみ 御饗なす マシ・テシ 拝み ナキイワク ヒメホロホシテ なきいわく ひめほろほして 泣き曰く 「姫 滅ぼして (オトタチバナ) マミエヱス キミモナンタニ まみえゑす きみもなんたに まみえ得ず」 君も涙に トラカシハ サカキミスカタ とらかしは さかきみすかた トラガシハ さかき御姿 タテマツル たてまつる 奉る
キミミタマエハ きみみたまえは 君 見給えば ヤマトタケ イケルスカタニ やまとたけ いけるすかたに 「ヤマトタケ 生ける姿に (「生く」の連体形) アフコトク ヒトタヒアヒテ あふことく ひとたひあひて 会ふ如く 一度会いて ヨクニタル カレハメクロト よくにたる かれはめくろと 良く似たる」 故 "ハメクロ" と ソノサトオ ナツケタマワル そのさとお なつけたまわる その里を 名付け給わる カミスカタ オホヤマミネニ かみすかた おほやまみねに 神姿 大山峰に ヤシロナス やしろなす 社 成す
ミフネカツサエ みふねかつさえ 御船 上総へ アホノハマ ミサコヱハムオ あほのはま みさこゑはむお アホの浜 ミサゴ餌食むを タミニトフ アレハウムキト たみにとふ あれはうむきと 民に問ふ 「あれは海蛤と <言って> シツカハム ナマスモヨシト しつかはむ なますもよしと '賎' が食む 膾も良し」 と ヤマトタケは賤の姿に返る
ムツカリカ カマタスキシテ むつかりか かまたすきして ムツカリが 蒲襷して (六雁) トルウムキ ナマスニナシテ とるうむき なますになして 獲る海蛤 膾になして ススムレハ カシハトモヘト すすむれは かしはともへと 進むれば 膳伴部と ナオタマフ オホヒコノマコ なおたまふ おほひこのまこ 名を賜ふ オホヒコの孫 イワカナリ いわかなり イワカなり (磐鹿)
カシマカクラノ かしまかくらの カシマ神楽の シシマヒオ トエハトキヒコ ししまひお とえはときひこ 獣舞を 問えばトキヒコ コレムカシ イヨニワタリテ これむかし いよにわたりて 「これ昔 弥に渡りて シシハムオ ツチキミトリテ ししはむお つちきみとりて 獣ばむを 辻君 執りて 跳ね躍る獣を (仕込んで) タテマツル たてまつる 立て全つる」 (完成する)
キミタノシミノ きみたのしみの 君 楽しみの カクラシシ ヤヨロカシマニ かくらしし やよろかしまに 神楽獣 やよろ鹿島に アルカタチ サワリナカレト あるかたち さわりなかれと ある形 「障り無かれ」 と モテアソフ サルタノカミノ もてあそふ さるたのかみの もてあそぶ "猿治の尊" の ナニシアフ なにしあふ 名にしあふ
シハスニノホリ しはすにのほり 十二月に上り イセノクニ イロトノミヤニ いせのくに いろとのみやに 伊勢の国 愛妹の宮に (ヤマト姫の磯宮) オワシマス ヰソヨホナツキ おわします ゐそよほなつき 御座します 五十四年九月 ミソカニハ ヒシロノミヤニ みそかには ひしろのみやに 三十日には 日代の宮に カエリマスカナ かえりますかな 帰りますかな
コノトキニ ミワノタタネコ このときに みわのたたねこ この時に ミワのタタネコ ミヨノフミ アミテカミヨノ みよのふみ あみてかみよの 御代の文 編みて上代の (皇代記) ホツマチト ヨソアヤナシテ ほつまちと よそあやなして ほつま道と 四十文成して クニナツニ シメセハタカヒ くになつに しめせはたかひ クニナツに 示せば互ひ (オオカシマ) ミカサフミ ミハエシメシテ みかさふみ みはえしめして ミカサ文 見映え示して アイカタリ アラタニソメテ あいかたり あらたにそめて 相語り 新たに染めて <改訂し> フタヤヨリ アケタテマツル ふたやより あけたてまつる 二家より 上げ奉る
コノフミハ ムカシモノヌシ このふみは むかしものぬし この文は 昔 モノヌシ (クシミカタマ) ミコトノリ ウケテツクリテ みことのり うけてつくりて 御言宣 受けて作りて (ウガヤかタケヒト) アワミヤニ イレオクノチノ あわみやに いれおくのちの 阿波宮に 入れ置く 後の (琴平宮) ヨヨノフミ マチマチナレハ よよのふみ まちまちなれは 代々の文 まちまちなれば ミンヒトモ アラカシメニテ みんひとも あらかしめにて 見ん人も あらかじめにて ナソシリソ モモチココロミ なそしりそ ももちこころみ な謗りそ 百千試み ハルカナル オクノカミチエ はるかなる おくのかみちえ 遥かなる 奥の神道へ マサニイルヘシ まさにいるへし まさに入るべし
トキアスス ヤモヨソミホノ ときあすす やもよそみほの 時アスズ 八百四十三年の (景行56年) アキアメカ コレタテマツル あきあめか これたてまつる 秋天日 これ奉る ミワノトミ スヱトシオソレ みわのとみ すゑとしおそれ ミワの臣 スヱトシ 畏れ (オオタタネコ) ツツシミテソム つつしみてそむ 謹みて染む
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