【原文カタカナ訳】      【語義考察】           【漢字読み下し】
 ヤクモウチコトツクルアヤ   やくもうちことつくるあや     八雲打ち 琴造る文
                                  [八雲打]
  
 アラカネノ ツチニオチタル  あらかねの つちおちたる    あらかねの     地に堕ちたる

 サスラヲノ アメノオソレノ  さすらをの あめのおそれの    さすら男の     雨の虞の

 ミノカサモ ヌカテヤスマン  みのかさも ぬかやすま    蓑・笠も       脱がで休まん
 
 

 ヤトモナク チニサマヨヒテ  やとなく さまよひて    宿もなく      散にさまよひて
                                            散々に

 トカメヤル スリヤワコトニ  とかめやる すりやわことに    '咎め破る      すりやわ事' に
                                  反り曲った
 タトリキテ ツイニネノクニ  たとりきて ついねのくに    辿り来て      ついに根の国

 サホコナル ユケノソシモリ  さほこなる ゆけそしもり    サホコなる     弓削のソシ守
                                 サホコ国にいる

 ツルメソカ ヤトニツクムヤ  つるめそか やとつくむ    ツルメソが     家戸に噤むや
                                                  <騒ぎ出す>

 シムノムシ          しむのむし            血の虫
  
       サタノアレヲサ        さたあれをさ              サタ粗長

 アシナツチ ソヲノテニツキ  あしなつち そをてにつき    アシナツチ     添のテニツキ

 ヤメウメト オヒタチカヌル  うめと おひたちかぬる    八姫生めど      生ひ立ちかぬる

 カナシサハ          かなしさは            悲しさは
  
       ヒカワノカミノ        ひかわのかみ              簸川の上の
                                    (裏の意)  卑郷の上(アメオシヒ)の
 
 ヤヱタニハ ツネニムラクモ  やゑたには つねむらくも    八重谷は      常にむら雲
                                 汚穢の区域は       常に汚穢隈
 タチノホリ ソヒラニシケル  たちのほり そひらしける    立ち昇り      背に茂る
                                           上層部に蔓延る

 マツカヤノ ナカニヤマタノ  まつかやの なかやまたの    松・榧の       中に八岐の  
                                 曲り朽ちた者の       中に病曲の

 オロチヰテ ハハヤカカチノ  おろちて ははかかちの     居て       ハハカガチの
                                  愚霊居て         蝕霊や屈霊の

 ヒトミケト ツツカセラルル  ひとみけと つつからるる    人身供と      せらるる

 ナナムスメ ノコルヒトリノ  ななむすめ のこるひとりの    七娘        残る一人の

 イナタヒメ コレモハマント  いなたひめ これはまと    イナタ姫      これも食まんと
  

 タラチネハ テナテアシナテ  たらちねは なてあしなて    タラチネは     手撫で足撫で

 イタムトキ ソサノミコトノ  いたむとき そさのみことの    痛む時       ソサの尊の

 カントヒニ アカラサマニ  かんとひに あからさまにそ    上問ひに      あからさまにぞ

 コタヱケリ          こたゑけり            答えけり
  
       ヒメオヱンヤト        ひめ              「姫を得んや」 と

 イヤトイニ ミナハタレソト  いやといに みなたれそと    礼問いに      「御汝は誰ぞ」 と

 ウラトエハ アメノオトトト  うらとえは あめおととと    心問えば      陽陰の弟と
                                          (アマテル)

 アラハレテ チキリオムスフ  あらはれて ちきりむすふ    表われて      契りを結ぶ

 イナタヒメ          いなたひめ            イナタ姫
  
       ヤメルホノホノ        やめるほのほの              病めるの
                                        (「病む」の連体形)

 クルシサオ ソテワキサキテ  くるしさお そてわきさきて    苦しさを      袖脇裂きて

 カセイレハ ホノホモサメテ  かせいれは ほのほもさめて    風入れば       炎も冷めて

 ココロヨク ワラヘノソテノ  こころよく わらへそての    快く        童の袖の

 ワキアケソ          わきあけそ            脇明け
  
       ヒメハユケヤニ        ひめゆけやに              姫は弓削屋に
                                            (ツルメソの屋)

 カクシイレ サハヤスミノ  かくしいれ すさやすみの    隠し入れ      スサは優みの  
                                                柔和な

 ヒメスカタ ユツノツケクシ  ひめすかた ゆつのつけくし    姫姿        髻の黄楊櫛

 ツラニサシ ヤマノサスキニ  つらさし やまさすきに    面に挿し      山の桟敷に
                                  (面櫛)

 ヤシホリノ サケオカモシテ  しほりの さけかもして    八搾りの      酒を醸して
 
 マチタマフ          まちたまふ            待ち給ふ
  
       ヤマタカシラノ        やまたかしらの              八岐頭の

 オロチキテ ヤフネノサケオ  おろちて ふねのさけお     来て        八槽の酒を

 ノミヱイテ ネムルオロチオ  のみゑいて ねむるおろちお    飲み酔いて     眠る蛇を

 ツタニキル ハハカヲサキニ  つたきる ははかをさきに    寸に斬る      蝕霊が汚離きに

 ツルキアリ ハハムラクモノ  つるきあり ははむらくもの    剣あり        "ハハムラクモ" の
                                             (蝕霊放曇)

 ナニシアフ          なにしあふ            名にしあふ
  
       イナタヒメシテ        いなたひめて              イナタ姫して

 オオヤヒコ ウメハソサノヲ  おおやひこ うめそさのを    オオヤヒコ     生めばソサノヲ

 ヤスカワニ ユキテチカヒノ  やすかわに ゆきちかひの    ヤスカワに     行きて 「誓ひの

 ヲノコウム アカツトイエハ  をのこうむ かついえは    男の子生む      吾勝つ」 と言えば
  

 アネカメニ ナオキタナシヤ  あねに なおきたなしや    姉が目に      「なお汚しや
                                (ヒルコ)

 ソノココロ ハチオモシラヌ  そのこころ はちおもしら    その心       恥をも知らぬ

 ヨノミタレ コレミナソレノ  みたれ これみなそれの    世の乱れ      これ皆それの

 アヤマチト オモエハムセフ  あやまちと おもえむせふ    誤ちと       思えばむせぶ

 ハヤカエレ          はやかえれ            はや帰れ」
  
       ソサノヲハチテ        そさのをはち              ソサノヲ恥ぢて

 ネニカエル ノチオオヤヒメ  にかえる のちおおやひめ    に帰る      後 オオヤ姫

 ツマツヒメ コトヤソウミテ  つまつひめ ことやそうみて    ツマツ姫      コトヤソ生みて

 カクレスム          かくれすむ            隠れ住む
  
       タカマハムツノ        たかまむつの              タカマは 六つの

 ハタレカミ ハチノコトクニ  はたれかみ はちことくに    ハタレ醸み      蜂の如くに
                                ハタレが醸成して

 ミタルレハ カミハカリシテ  みたるれは かみはかりて    濫るれば       守議りして

 ハタレウツ          はたれうつ            ハタレ討つ
  
       キミハミソキノ        きみみそき              君は禊の

 サクナタリ ハタレヰトフノ  さくなたり はたれゐとふの    サクナタリ     ハタレいとふの
                              <呪いの>
 タネオヱテ ミヨヲサマレト  たねて みよをさまれと    種を得て      世 治まれど

 ミナモトハ ネノマスヒトニ  みなもとは ますひとに    源は        マスヒトに
                                            (アメオシヒ)

 ヨルナレハ イフキトヌシニ  よるなれは いふきとぬしに    因るなれば     イフキトヌシに

 ウタシムル          うたしむる            討たしむる
  
       ウナツキムカフ        うなつきむかふ              頷き向ふ

 ヤソツツキ サホコノミヤノ  やそつつき さほこのみやの    八十続き       サホコの宮の

 アサヒカミ ヲカミテイタル  あさひかみ をかみいたる    アサヒ神      拝みて到る

 イツモチノ ミチニタタスム  いつもちの みちたたすむ    イツモ方の     道にたたずむ

 シタタミヤ          したたみや            下民や
  
       カサミノツルキ        かさみのつるき              笠・簑・剣

 ナケステテ ナニノリコチノ  なけすてて なにのりこちの    投げ捨てて     なに宣り言の

 オオマナコ ナンタハタキノ  おおまなこ なんたたきの    大眼        涙は滝の

 オチクタル トキノスカタヤ  おちくたる ときすかたや    落ち下る      時の姿や

 ヤトセフリ          とせふり            八年ぶり
  
       オモイオモエハ        おもいおもえは              「思い思えば

 ハタレトハ オコルココロノ  はたれとは おこるこころの    ハタレとは     驕る心の

 ワレカラト ヤヤシルイマノ  われからと ややしるいまの    我から」 と     やや知る今の

 ソサノヲカ クヤミノナンタ  そさのをか くやみのなんた    ソサノヲが     悔みの涙
  

 オチオイノ シムノアヤマチ  おちおいの しむあやまち    「叔父・甥の      シムの誤ち
                                            (親族)

 ツクノエト ナケキウタフヤ  つくのえと なけきうたふや    償のえ」 と     嘆き歌ふや
  
  
 アモニフル アカミノカサユ  あもにふる みのかさ    『上下に振る     吾が実のかさゆ

 シムノミキ ミチヒハサマテ  しむのみき みちはさま    シムの幹      三千日挟まで
                                  (統)

 アラフルオソレ        あらふるおそれ          あらぶるおそれ
  
  
 カクミタヒ キモニコタエテ  かくみたひ きもにこたえて    かく三度      肝に応えて

 ナサケヨリ サスカニヌルル  なさけより さすかぬるる    情より       さすがに温るる

 イフキカミ シムノツクハエ  いふきかみ しむつくはえ    イフキ守      シムの蹲え
                                                <に>

 トモナンタ コマヨリオリテ  ともなんた こまよりおりて    共涙        駒より降りて

 ソサノヲノ テオヒキオコス  そさのをの ひきおこす    ソサノヲの     手を引き起す

 シムノヨリ          しむのより            シムの寄り
                                   (血の絆)
  
       アイヱルコトハ        あいゑること              「阿 癒える事は
 
 ノチノマメ イサオシナセハ  のちのまめ いさおしなせは    後の忠       功 成せば

 ハレヤラン ワレオタスケテ  はれやら われたすけて    晴れやらん     我を助けて

 ヒトミチニ マスヒトウタハ  ひとみちに ますひとうたは    一途に       マスヒト打たば

 マメナリト          まめなりと            忠なり」 と
  
       ウチツレヤトル        うちつれやとる              打ち連れ宿る

 サタノミヤ ノリオサタメテ  さたのみや のりさためて    サタの宮      法を定めて

 ハタレネモ シラヒトコクミ  はたれねも しらひとこくみ    ハタレ根も     シラヒトコクミ 
                                 (アメオシヒ)

 オロチラモ ウチヲサメタル  おろちも うちをさめたる    オロチらも     打ち治めたる
                                (モチコハヤコ)

 オモムキオ アメニツクレハ  おもむきお あめつくれは    主向きを      陽陰に告ぐれば
                                          (アマテル)
  
  
 タカマニハ ユツウチナラシ  たかまには ゆつうちならし    タカマには     弦 打ち鳴らし
                                             (「討ち平らす」にかける)

 ウスメミノ カナテルオミテ  うすめみの かなてるて    ウズメ身の     奏でるを見て

 ヲヲンカミ クワモテツクル  ををんかみ くわもてつくる    大御神       もて造る

 ムユツコト タマフワカヒメ  むゆつこと たまふわかひめ    六絃琴       賜ふワカ姫

 ムツニヒク カタフキカナテ  むつひく かたふきかなて    六つに弾く     カダ・フキ・カナデ
                                              (葛 ・ 蕗 ・ 奏)

 メカハヒレ          めかはひれ            メカ・ハ・ヒレ
                                 (茗荷・葉・領巾)

  
       ソノコトノネハ        そのことのねは              その事の根
 イサナキノ カキノカタウツ  いさなきの かきかたうつ    イサナギの     垣の打つ 

 イトススキ コレオミスチノ  いとすすき これすちの    糸すすき      これを三筋の

 コトノネソ カタチハハナト  ことのねそ かたちはなと    琴の根ぞ      形は "ハナ" と
                                                 (「突出」の意で"糸薄"と
                                              "琴のネック"を指す)

 クスノハオ カタカキトウツ  くすお かたかきうつ    葛の葉を      "葛掻き" と打つ
                                葛葉形の胴により
  

 ヰスコトハ ヰクラニヒヒク  ゐすことは ゐくらひひく    五筋琴は      五座に響く
                                           [五臓]

 ネオワケテ ワノアハウタオ  わけて わのあはうたお    音を分けて     地のアワ歌を
                                 (五母音)

 ヲシユレハ コトノネトホル  をしゆれは ことのねとほる    教ゆれば      言の根通る

 イスキウチ          いすきうち            "濯ぎ打ち"
  
       ムスチノコトハ        すちことは              六筋の琴は

 ヱヒネフル オロチニムツノ  ゑひねふる おろちむつの    酔ひ眠る      折霊に六つの
                                  曲り衰える     (六ハタレ)

 ユツカケテ ヤクモウチトソ  ゆつかけて やくもうちとそ    絃かけて       "八雲打ち" とぞ
                                              (穢隈討ち)

 ナツクナリ カタフキカナテ  なつくなり かたふきかなて    名付くなり     葛・蕗・奏

 メカハヒレ コレモテタテノ  めかはひれ これてたての    茗荷・葉・領巾    これも手立ての

 ナニシアフ          なにしあふ            名にし負ふ     
  
       ヤマタアカタオ        やまたあかたお              八岐県を

 モチタカニ タマエハアワノ  もちたかに たまえあわの    モチタカに     賜えば阿波の

 イフキカミ          いふきかみ            イフキ守
  
       モロカミハカリ        もろかみはかり              諸守議り

 ソサノヲカ ココロオヨスル  そさのをか こころよする    ソサノヲが     心を寄する

 シムノウタ ミノチリレハ  しむうた みのちりひれは    統の歌       実の塵放れば  
                                           (心)

 カハキエテ タマフヲシテハ  かはきえて たまふをしては    カハ消えて     賜ふヲシテは
                                 (曲・汚)

 ヒカハカミ          ひかはかみ            ヒカハ尊
                                  (放曲)
  
       ハタレネオウツ        はたれねうつ              「ハタレ根を討つ

 イサオシヤ ソコニモトヰオ  いさおしや そこもとゐお    功や        そこに基を

 ヒラクヘシ ヤヱカキハタモ  ひらくへし やゑかきはたも    開くべし」      八重垣旗も

 タマハレハ フタタヒノホル  たまはれは ふたたひのほる    賜はれば      再び上る
                                         再び臣として宮に上る
  
 アメハレテ ウヤマイモフス  あめはれて うやまいもふす    陽陰晴れて     敬い詣す

 クシヒヨリ スカハニキツク  くしひより すかはきつく    貴霊より       清郷に築く

 ミヤノナモ クシイナタナリ  みやも くしいなたなり    宮の名も      "クシイナタ" なり

 サホコクニ カエテイツモノ  さほこくに かえいつもの    サホコ国      代えてイヅモの

 クニハコレ          くにはこれ            国はこれ
  
       アメノミチモテ        あめのみちもて              陽陰の道以て
                                            (和の道)

 タミヤスク ミヤナラヌマニ  たみやすく みやならに    民 和ぐ       宮 成らぬ間に
                                  民をやわす

 イナタヒメ ハラメハウタニ  いなたひめ はらめうたに    イナタ姫      孕めば歌に
  
  
 ヤクモタツ イツモヤヱカキ  やくもたつ いつもやゑかき    八雲絶つ      イヅモ八重垣
                                  汚穢隈を絶つ    貴霊に侍る汚穢垣の司は
                                                
 
 ツマコメニ ヤヱカキツクル  つまこめに やゑかきつくる    妻籠めに      生え画造る
                                身籠る妻を籠めるため    産屋を造る             (産屋)

 ソノヤヱカキワ        そのやゑかきわ          その栄え堅磐』
                                その繁栄(国家と我家の繁栄)は限りなし
  
  
 コノウタオ アネニササケテ  このうたお あねささけて    この歌を      姉に捧げて
                                          (ワカ姫)

 ヤクモウチ コトノカナテオ  やくもうち ことかなてお    八雲打ち      琴の奏を
                                     <の>

 サツカリテ ウタニアワセル  さつかりて うたにあわせる    授かりて      歌に合せる

 イナタヒメ ツイニクシタエ  いなたひめ ついくしたえ    イナタ姫      ついに貴妙
                                               =貴霊

 アラハレテ ヤヱカキウチノ  あらはれて やゑかきうちの    現れて       八重垣大人の

 コトウタソ          ことうたそ            別歌ぞ
                                 [琴歌]
  
       ウムコノイミナ        うむこいみな              生む子の斎名

 クシキネハ コトヤサシク  くしきねは ことやさしく    クシキネは     異に和しく

 ヲサムレハ ナカレオクメル  をさむれは なかれくめる    治むれば      流れを汲める
                                              (「汲む」の連体形)

 モロカナモ ヤシマシノミノ  もろかなも やしましのみの    諸が名      ヤシマシの身の
 
 オホナムチ          おほなむち            オホナムチ
  
       ツキハオオトシ        つきおおとし              次はオオトシ

 クラムスヒ ツキハカツラキ  くらむすひ つきはかつらき    クラムスヒ     次はカツラキ

 ヒコトヌシ ツキハスセリメ  ひことぬし つきはすせりめ    ヒコトヌシ     次はスセリ姫

 ヰヲミメソ          そ            五男三女ぞ
  
       キミクシキネオ        きみくしきねお              君 クシキネを

 モノヌシニ タケコオツマト  ものぬしに たけこつまと    モノヌシに     タケコを妻と

 ナシテウム アニハクシヒコ  なしうむ あにくしひこ    なして生む     兄はクシヒコ

 メハタカコ オトハステシノ  たかこ おとすてしの    妹タカコ     弟はステシノ

 タカヒコネ          たかひこね            タカヒコネ
  
  
       クシキネアワノ        くしきねあわ              クシキネ アワの
                                                (アワ国)
 
 サササキニ カカミノフネニ  さささきに かかみのふねに    サササキに     鏡の船に  
     [テ]

 ノリクルオ トエトコタエス  のりくるお とえこたえ    乗り来るを     問えど答えず

 クヱヒコカ カンミムスヒノ  くゑひこか かんみむすひの    クヱヒコが     「カンミムスビの

 チヰモコノ ヲシヱノユヒオ  ちゐもの をしゑゆひお    千五百子の     教えの結ひを

 モレオツル スクナヒコナハ  もれおつる すくなひこなは    漏れ落つる     スクナヒコナは

 コレトイフ          これいふ            これ」 と言ふ
  
       クシキネアツク        くしきねあつく              クシキネ篤く

 メクムノチ トモニツトメテ  めくむのち ともつとめて    恵む後       共に努めて

 ウツシクニ ヤメルオイヤシ  うつしくに やめるいやし    現し地       病めるを癒し

 トリケモノ ホオムシハラヒ  とりけもの ほおむしはらひ    鳥獣         蝕虫払い

 フユオナス          ふゆなす            振ゆをなす
  
       スクナヒコナハ        すくなひこなは              スクナヒコナは

 アワシマノ カタカキナラヒ  あわしまの かたかきならひ    アワ州の      カダカキ習ひ

 ヒナマツリ ヲシヱテイタル  ひなまつり をしゑいたる    雛纏り       教えて至る

 カタノウラ アワシマカミソ  かたのうら あわしまかみそ    加太の浦      淡島神
  
 オホナムチ ヒトリメクリテ  おほなむち ひとりめくりて    オホナムチ     一人恵りて

 タミノカテ ケシシユルセハ  たみかて けししゆるせは    民の糧       獣肉許せば

 コヱツノリ ミナハヤカレス  こゑつのり みなはやかれ    肥え募り      みな早枯れす
  
 

 ソハホムシ クシキネハセテ  そはほむし くしきねはせて    稲蝕虫       クシキネ馳せて
                                             <ヤスカワのヒルコの許に>

 コレオトフ シタテルヒメノ  これとふ したてるひめの    これを問ふ     シタテル姫の
                                            (ヒルコ)

 ヲシエクサ ナライカエリテ  をしえくさ ならいかえりて    教え種       習い帰りて

 シクサニ アフケハホヲノ  をしくさに あふけほをの    押草に       扇げば蝕の

 ムシサリテ ヤハリワカヤキ  むしさりて やはりわかやき    虫去りて       やはり若やぎ

 ミノルユエ ムスメタカコオ  みのるゆえ むすめたかこお    実る故       娘タカコを

 タテマツル          たてまつる            奉る
 
       アマクニタマノ        あまくにたま              アマクニタマの

 オクラヒメ コレモササケテ  おくらひめ これささけて    オクラ姫      これも捧げて

 ツカエシム シタテルヒメハ  つかえしむ したてるひめは    仕えしむ      シタテル姫は

 フタアオメ メシテタノシム  ふたあおめ めしたのしむ    二青侍       召して楽しむ

 ヤクモウチ          やくもうち            八雲打ち
  
       オホナムチニハ        おほなむちには              オホナムチには

 クシヒコオ オオモノヌシノ  くしひこお おおものぬしの    クシヒコを     オオモノヌシの

 カワリトテ コトシロヌシト  かわりとて ことしろぬしと    代りとて      コトシロヌシと

 ツカヱシメ オノハイツモニ  つかゑしめ おのいつもに    仕えしめ      己はイヅモに
                              <御上に>

 ヲシユルニ ヒフミムモヤソ  をしゆるに ひふみむもやそ    教ゆるに      一二三六百八十

 フタワラノ ヒモロケカソエ  たわらの ひもろけかそえ    二俵の       ヒモロケ数え
                                (123,682俵)
  

 タネフクロ ツチツチカフ  たねふくろ つちつちかふ    種袋        槌は培ふ

 ヲンタカラ ウヱタスカテモ  をんたから うゑたすかても    御宝        飢え治す糧も
                                  (民)

 クラニミツ アメカセヒテリ  くらみつ あめかせひてり    倉に満つ      雨・風・日照り

 ミノラネト アタタラクハリ  みのらと あたたらくはり    実らねど      アタタラ配り
                              <たとえ>

 ウヱサセス          うゑさせ            飢えさせず
  
       ノチニワカヒメ        のちわかひめ              後にワカ姫

 ヒタルトキ ヤクモヰススキ  ひたるとき やくもゐすすき    ひたる時      八雲五濯ぎ

 カタカキオ ユツルコトノネ  かたかきお ゆつることのね    カダカキを     譲る 琴の根
                                               [言の根]

 タカヒメオ タカテルトナシ  たかひめお たかてるなし    タカ姫を      タカテルとなし

 ワカウタノ クモクシフミハ  わかうたの くもくしふみは    ワカ歌の      クモクシ文は

 オクラヒメ サツケテナオモ  おくらひめ さつけおも    オクラ姫      授けて名をも

 シタテルト ナシテワカクニ  したてると なしわかくに    シタテルと     なしてワカ国

 タマツシマ トシノリカミト  たまつしま としのりかみと    タマツ島      年乗り神と

 タタヱマス          たたゑます            称えます
  
       イツモヤヱカキ        いつもやゑかき              イツモ八重垣

 オホナムチ ヤヱカキウチテ  おほなむち やゑかきうちて    オホナムチ     生え画内で

 タノシムル モモヤソヒタリ  たのしむる ももやそひたり    楽しむる      百八十一人
                                (「増やす」の意)

 コニミツルカナ        みつるかな          子に満つるかな

  

  

 

  

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