ヒルコ

→ 語義
  

蛭子 (昼子)。 
イザナキ夫婦の第一子。ヒルコは斎名と思われる。
別名:ワカ姫、ワカヒルメ、シタテル姫、タカテル姫、歳徳神、年の恵みの大御守、御歳神、ニフの尊。

ツクバのイサ宮で生まれる。昼に生まれたのでヒルコ。3歳になる年、父は42歳・母33歳の陽陰の節に当たり、その汚穢・隈が子に障るというのでイワクス船に乗せて流される。カナサキ夫妻に拾われ、西殿で育てられる。

アチヒコ(オモイカネ) と結婚し、タヂカラヲを生む。
ヤスカワ
アチヒコと共にオシホミミの守役を務める。 
ワカ歌と八雲琴の名手。 
各地の生田(イクタ)神社に、稚日女尊(ワカヒルメ) の名で祭られる。
タマツ宮で最期を迎え、ヒロタの地に葬られたもよう。
  

兵庫県西宮市大社町、廣田 (ヒロタ) 神社
兵庫県西宮市社家町、西宮 (ニシノミヤ) 神社
和歌山県和歌山市和歌浦中、玉津島 (タマツシマ) 神社
神戸市中央区下山手通、生田 (イクタ) 神社
兵庫県西宮市甑岩町、越木岩 (コシキイワ) 神社
奈良県御所市東持田字御歳山、葛木御歳 (カツラギミトシ) 神社
和歌山県伊都郡かつらぎ町大字上天野、丹生都比売 (ニウツヒメ) 神社
兵庫県豊岡市竹野町桑野本字稲蔵、
桑原 (クワハラ) 神社

  

                                  ┏クラキネ
                                  ┃
クニトコタチクニサツチトヨクンヌウヒチツノクヰオモタル ┣ココリ姫
            ┃          ┃          ┃
            ┃          ┗アメヨロヅアワナギイサナギ
            ┃             ↑  ┃       ┃
            ┃             ┃  ┗サクナギ   ┣ヒルコ
            ┃             ┗━━━┓      ┃
            ┣ハコクニキノトコタチアメカガミ┛      ┣アマテル
            ┃           ┃            ┃
            ┃           ┗ムスビ(2)┓       ┣ツキヨミ
            ┗ウケモチ             ┃       ┃
                                       ┏━━━━━━━━━┛       ┣ソサノヲ
                    ┃                               ┃
                                       ┗ムスビ(3)━ムスビ(4)━トヨケイサナミ
                                   ┃
                                   ┣ヤソキネ
                                   ┃
                                   ┣カンサヒ
                                   ┃
                                   ┗ツハモノヌシ
  
※クニトコタチは、ここではミナカヌシトホカミヱヒタメキツヲサネアミヤシナウの総称。

  

アワナギイサナギ
       ├───────────ヒルコ
    ┌イサナミ           │
    │               ├タチカラヲ
    │               ├ウワハル
 トヨケ┤               ├シタハル
    │               ├イキシニホ
    │               │
    └ヤソキネ───タカキネ───オモヒカネ
   
  

『陽陰の交ぐ合ひ なして子を 孕みて生める 名はヒルコ3文
『汚穢・隈に捨つ ヒルコ姫 いま慈しに 足り至り 陽陰の愛妹と ワカヒルメ3文
ソアサ国 サクナギの子の イヨツヒコ に言葉を 習わせて 二名を求む アワツヒコ5文
『先にタラチヲ "ハナキネは 根の国サホコ 領すべし" いまだヒルコと 御隈野の 臣が助けて 後の君』6文
ヤマトヤス宮 引き移し アメヤスカワの ヒルコ姫 御子オシヒトを 養します サホコ国 兼ね治む』6文
シタテル姫と アチヒコと 妹背を結びて 諸共に ここに治めて 生む御子は 斎名 シツヒコ タチカラヲかな』6文
『"流離男は 御言を承けて に行かん にまみゆる 暫し" とて 許せば 上る ヤスカワ方 文轟きて 鳴り動く』7文
は本より 流離男が 粗るるを知れば 驚きて "の来るは 清はあらじ 国 奪ふらん』7文
ソサノヲ曰く な怖れそ 昔 根の国 行けとあり とまみえて 後行かん 遥かに来れば 疑わで 稜威返しませ』7文
問わく "素心は何" その答え "に到る後 子を生まん 女ならば穢れ 男は清く これ 誓ひなり"』7文
が目に "なお汚しや その心 恥をも知らぬ 世の乱れ これ皆それの 誤ちと 思えばむせぶ はや帰れ"』9文
『この歌を に捧げて 八雲打ち 琴の奏を 授りて 歌に合せる イナタ姫 ついに貴妙 現れて 八重垣大人の 別歌ぞ』9文
『後に一姫を 生む時に 昼なれば名も ヒルコ姫
 年を越ゆれば タラチネの 四十二・三十三の 汚穢隈もミ1文
『その時に 西に侍ふ ヒルコ宮 皇子ヱビスの 謹みて 音声の初の 御教えを 聞かまほしげの 乞ひ願ひ』ミ和字
『ここにヒルコは 鋳物仕に 金紋鋳させ あまねくに 教ゆる御名も ワカヒルメ 和の功 大いなるかな』ミ和字
『守はタカテル シタテルの 年の恵みの大御守ミ逸文
ひたるの時に 賜ふ名は アユミテル姫に シタテルと サタタカ姫は タカテルと 授くる』ミ逸文
ワカタマツ宮 ヲシテ 残して 隠れます』ミ逸文

  

■かなり時代が下ってからヒルコに蛭子の文字を当て、蛭子はヱビスと読めるところから、クシヒコツミハヱミスと融合してえびす様として信仰されるようになったのだろう。

  

  

ワカヒメ

→ 語義
  

稚日女尊 (沸姫・若姫)。 
ヒルコの別名。押し草と祓いの歌によって、枯れた稲を「返らせた」ことによる名。
またアチヒコに恋心を「沸かせた姫」の意。
和歌
はワカ姫の名に因む。


和歌山県和歌山市和歌浦中、玉津島 (タマツシマ) 神社
神戸市中央区下山手通、生田 (イクタ) 神社
兵庫県西宮市甑岩町、越木岩 (コシキイワ) 神社
和歌山県伊都郡かつらぎ町大字上天野、丹生都比売 (ニウツヒメ) 神社
  

『それワカは ワカ姫の神 捨てられて "拾た" と育つ カナサキの』1文
『田の東に立ちて 押草に 扇ぐワカ姫 歌詠みて 祓ひ給えば 虫去るを』1文
太陽宮を 国懸となす ワカ姫の 心を留む タマツ宮 枯れたる稲の 若返る 沸の歌より 沸の国1文
タマツ御使 アチヒコを 見れば焦るる 沸姫の 沸の歌 詠み 歌見染め 思ひかねてぞ 進むるを』1文

つい取り見れば "キシイこそ 伴を身際に 琴の音[事の根]の 床[融]に我君を 待つそ恋しき"1文
『"沸姫の 歌もミヤビを 反さじ" と 申せば君の 御言宣 "カナサキが船 乗り受けて 夫婦なるなり"』1文
『三年慈くに 足らざれど 斎奇船に 乗せ捨つる 翁 "拾た"と 西殿に 養せば後に』3文
大御神 もて造る 六弦琴 賜ふワカ姫 六つに弾く カダ・フキ・カナデ・メガ・ハ・ヒレ9文
『後にワカ姫 ひたる時 八雲ヰススキ カダカキを 譲る 琴の音[言の根] タカ姫を タカテルとなし』9文
ワカ歌の クモクシ文は オクラ姫 授けて名をも シタテルと なしてワカ国 タマツ州 年稔神と 称えます』9文
ひたるの時に オモイカネ ワカ姫 共に 守り育つ ヨロマロ一人 側にあり』11文
は弱くて 水濯ぎ 稀れ  叔母更りませば 代の殿 政 執る故 ヨロマロを ヒタカミの守11文
『また ヒロタに行きて ワカ姫と 共に妹心 守るべし 我はトヨケと 背を守る 妹背の道なり』28文

  

  

ワカヒルメ

→ 語義
  

稚日女尊 (分日霊妹/吾が退る女)。 
ヒルコの別名。
汚穢隈に捨てられたヒルコは、西殿でカナサキ夫妻に養育され、あめ晴れてアマテルの妹のワカヒルメとなる
「ワカヒル」は「分日霊」でアマテルのこと。「メ」は妹。
(実際には姉であるが、最高位にある和つ君の兄弟姉妹の場合、年上であっても弟・妹とするようである。景行天皇とヤマト姫の間にも同様の例が見られる。)

もう一つ「我がひる女」で “自分が相手に譲って和を求める女” という意があり、これはニフノカミ (和の守・柔の守) と同義。
  

和歌山県和歌山市和歌浦中、玉津島 (タマツシマ) 神社
神戸市中央区下山手通、生田 (イクタ) 神社
兵庫県西宮市甑岩町、越木岩 (コシキイワ) 神社
和歌山県伊都郡かつらぎ町大字上天野、丹生都比売 (ニウツヒメ) 神社
  

★『書記』神代上第七段一書第一「稚日女尊(わかひるめのみこと)、斎服殿(いみはたどの)に坐(ま)しまして、神之御服(かむみそ)織りたまう」 (■これはセオリツ姫ホノコの妹、ワカサクラ姫ハナコである。)
  

『汚穢・隈に捨つ ヒルコ姫 いま慈しに 足り至り 陽陰の愛妹と ワカヒルメ3文
ヲヲナムチ アメヤスカワの ワカヒルメ 問えば答えの 教え草 押して扇げば たちまちに 蝕虫去にて』ミ逸文
『ここにヒルコは 鋳物仕に 金紋鋳させ あまねくに 教ゆる御名も ワカヒルメ 和の功 大いなるかな』ミ和字

  

  

シタテルヒメ

→ 語義
  

下照姫 (仕立てる姫)。 
ヤスカワアチヒコと共にオシホミミの守役を務めたヒルコの別名。
皇太子オシホミミを「仕立てる姫・育てる姫」の意。
この名は後にオクラ姫に譲られる。
  

ヤスカワの シタテル姫と 陽陰晴れて』1文
シタテル姫と アチヒコと 妹背を結びて 諸共に ここに治めて 生む御子は 斎名 シツヒコ タチカラヲかな』6文

アマクニタマの オクラ姫 これも捧げて 仕えしむ シタテル姫は 二青侍 召して楽しむ 八雲打ち9文
『後にワカ姫 ひたる時 八雲ヰススキ カダカキを 譲る 琴の音[言の根] タカ姫を タカテルとなし』9文
ワカ歌の クモクシ文は オクラ姫 授けて名をも シタテルと なしてワカ国 タマツ州 年稔神と 称えます』9文
『尊はタカテル シタテルの 年の恵みの大御守』ミ逸文

  

  

シタテルヒメノヲシエクサ

  
下照姫の教え種。 
シタテル姫が行った、穢虫を祓うまじない。 

押草 (檜扇の花葉をヒノキ製の扇に貼り付けたもの) で扇ぎながら、
タネハタネ ウムスキサカメ マメスメラノ ソロハモハメソ ムシモミナシム1文
と360回歌う。

重要な点はこの歌が三十二音であるということで、三十二は祓いの歌だという。
オホナムチはこの効果に感じ入って、娘のタカコをシタテル姫に奉っている。 
時代が下ると「カセフの纏り」と名づられて恒例行事となる。
  

【田扇】たあふぎ −広辞苑より−
伊勢市楠部の伊勢神宮の田植の神事に用いる扇。また、そのとき頒布する扇。これで田を扇げば害虫を生ぜず、産婦がいる家の柱にかけると安産するという。
  

from神名備
当社の例祭は七月十四日に行われ、一般に「那智の火祭」といわれています。これは豪壮な松明の燃えさかる御火の行事から名付けられたものですが、もとは旧暦六月十四日の神事で、正式には「扇会式例祭」または「扇祭」といいます。
十四日は、早朝礼殿の前に神輿を飾り立て、神輿の下部に「ひおうぎ」の花を飾りつけます。午前十時本杜大前の儀に続いて、十一時より大和舞・田楽舞の奉納。その後、御田植式が行われます。午後一時より扇神輿渡御式となりますが、まず礼殿にて発輿祭を行った後、宮司以下神輿の前に列立一拝この問警蹕、御神霊を神輿に迎えます。次に扇指し、神役全員石崖の上から御滝本に向かって、「ザアザアホウ」と大声に発声すること三度。この間礼殿にて太鼓を乱打します。
★『古語拾遺 (葛木御歳神社の由緒より)
大地主神、田 作りましし日に、牛の肉を以て田人に食わしめ給いき。時に御歳神の子、その田に至まして、饗に唾きて還りまして、ありさまを父に告げましき。御歳神、怒りまして、いなごをその田に放ち給いしかば、苗の葉たちまちに枯れ損われて、 篠竹のごとなりき。ここに大地主神、片巫(かたかんなぎ) [志止々鳥]・肱巫(ひじかんなぎ) [今の俗のカマワ及米占なり] をして、その由を占い求めしむるに、御歳神 祟りを為す。宜しく 白猪・白馬・白鶏を献りて、その怒りを和め奉るべしと申すに、 教えのまにまに謝(の)み奉ります時に、御歳神 答え給わく、実に吾が意ぞ。宜しく麻柄を以てカセを作りてカセぎ、 すなわちその葉を以て祓い、天押草 以て押し、烏扇 以て扇ぐべし。もし如此して出で去らずば、宜しく牛の宍をもて溝口におき、男茎の形を作りて加え、[是、其の心をまじなう故なり] ツスダマ・蜀椒(なるはじかみ)・呉桃葉(くるみ)、また塩をもてその畔に班置(まきお)くべしと宣いき。すなわち、その教えのまにまに為しかば、苗の葉また茂りて、年穀(たなつも)豊稔(ゆたか)なりき。これ今、神祇官に白猪・白馬・白鶏もて御歳神を祭ることの縁なり。
( ■この話での「大地主神」はオホナムチで、「御歳神」はワカ姫 (歳徳神) であるように思われる。)
  

『その押草は ぬばたまの 花はほのぼの 明らす花の 赤きは日の出 ヒアフギの 板もて作る 扇して 国 守り治む 教え種1文
稲蝕虫 クシキネ 馳せて これを問ふ シタテル姫の 教え種 習い帰りて』9文
ヲヲナムチ 天ヤスカワの ワカヒルメ 問えば答えの 教え草 押して扇げば たちまちに 蝕虫去にて』ミ逸文

  

  

タカテルヒメ

→ 語義
  

高照姫。
タカテルは「(日が)高く照る」の意で、つまり「ヒルコ(昼子)」の言い換えと思われる。
この名は後にタカコに譲られる。
  

『尊はタカテル シタテルの 年の恵みの大御守』ミ逸文
『後にワカ姫 ひたる時 八雲ヰススキ カダカキを 譲る 琴の音[言の根] タカ姫を タカテルとなし』9文
ワカ歌の クモクシ文は オクラ姫 授けて名をも シタテルと なしてワカ国 タマツ州 年稔神と 称えます』9文
ひたるの時に 賜ふ名は アユミテル姫に シタテルと サタタカ姫は タカテルと 授くる』ミ逸文
ワカタマツ宮 ヲシテ 残して 隠れます』ミ逸文

  
  

ニフノカミ

→ 語義
  

丹生の神。仁布の神。(和・柔の守)。 
ヒルコが御柱木に歌を委ねて、神から賜った名前だという。何神かは不明。

和歌山県伊都郡かつらぎ町大字上天野、丹生都比売 (ニウツヒメ) 神社
兵庫県豊岡市竹野町桑野本字稲蔵、
桑原 (クワハラ) 神社
  

★『丹生都比売神社由緒』丹生都比賣大神は、天照大神の御妹神で、また稚日女尊とも申し上げる。
  

和道に 心つくせ と 和の守 陽陰の教えに やや覚めて 和し笑はす』ミ和字
御柱木 和心移す 器物 その神形に 進め乞ふ 深き旨ある 染札を 委せ 賜る 和の守ミ和字
『ここにヒルコは 鋳物仕に 金紋鋳させ あまねくに 教ゆる御名も ワカヒルメ 和の功 大いなるかな』ミ和字

  

  

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