【原文カタカナ訳】      【語義考察】           【漢字読み下し】
 ワカノマクラコトハノアヤ   わかまくらことはあや     和の枕言葉の文
   
 モロカミノ カミハカリシテ  もろかみの かみはかりて    諸守の       守議して

 モノヌシカ マクラコトハノ  ものぬしか まくらことはの    モノヌシが     枕言葉の

 ユヱオトフ モロコタヱネハ  ゆゑとふ もろこたゑは    謂を問ふ      諸 答えねば

 アチヒコカ コレハミソキノ  あちひこか これみそきの    アチヒコが      「これはミソギの
                                 (オモヒカネ)

 フミニアリ モロコフトキニ  ふみあり もろこふときに    文にあり」      諸 乞ふ時に

 オモヒカネ コレトキイワク  おもひかね これときいわく    オモヒカネ     これ説き曰く
   
  
 フタカミノ オキツホニヰテ  ふたかみの おきつほて    二尊の       オキツボに居て

 クニウメト タミノコトハノ  くにうめと たみことはの    国生めど       民の言葉の

 フツクモリ コレナオサント  ふつくもり これなおさと    悉曇り        これ直さんと

 カンカヱテ ヰネナナミチノ  かんかゑて ゐねななみちの    考えて       五音七字道の
                                               (五・七調)

 アワウタオ カミフソヨコヱ  あわうたお かみふそよこゑ    アワ歌を      上二十四声

 イサナキト シモフソヨコヱ  いさなきと しもふそよこゑ    イサナギと     下二十四声

 イサナミト ウタヒツラネテ  いさなみと うたひつらねて    イサナミと     歌ひ連ねて

 ヲシユレハ ウタニネコヱノ  をしゆれは うたねこゑの    教ゆれば      歌に音声の

 ミチヒラケ タミノコトハノ  みちひらけ たみことはの    道 開け       民の言葉の
             [モ]

 トトノヱハ ナカクニノナモ  ととのゑは なかくにも    調えば       中国の名も

 アワクニヤ          あわくにや            アワ国
  
       ツクシニミユキ        つくしみゆき              ツクシに御幸

 タチハナオ ウヱテトコヨノ  たちはなお うゑとこよの    を        植えてトコヨの

 ミチナレハ モロカミウケテ  みちなれは もろかみうけて     成れば      諸守受けて
                                          (筑紫の国守)

 タミオタス タマノヲトトム  たみおたす たまのをととむ    民を治す      霊の結 留む
                                           その真心を留める

 ミヤノナモ ヲトタチハナノ  みやも をとたちはなの    宮の名も      復橘の

 アワキミヤ ミコアレマセハ  あわきみや みこあれませは    和来宮       御子生れませば

 モチキネト ナツケテイタル  もちきねと なつけいたる    モチキネと     名付けて到る
  
  
 ソアサクニ サクナキノコノ  そあさくに さくなきの    ソアサ国      サクナギの子の

 イヨツヒコ ウタニコトハオ  いよつひこ うたことはお    イヨツヒコ     歌に言葉を
                                          (アワ歌)

 ナラワセテ フタナオモトム  ならわて ふたもとむ    習わせて      二名を求む
                                                (「纏う」の意)

 アワツヒコ          あわつひこ            アワツヒコ
  
       ソサニタリテ        そさきたりて              ソサに来りて

 ミヤツクリ ツカニマス  みやつくり しつかゐます    宮造り        静かに結ます

 キシヰクニ タチハナウヱテ  きしゐくに たちはなうゑて    キシヰ国       植えて

 トコヨサト サキニステタル  とこよさと さきすてたる    トコヨ里      先に捨てたる

 ヒルコヒメ フタタヒメサレ  ひるこひめ ふたたひめさ    ヒルコ姫      再び召され
  

 ハナノモト ウタオヲシヱテ  はなもと うたをしゑて    木の下       歌を教えて
                                 (橘)

 コオウメハ ナモハナキネノ  うめは はなきねの    子を生めば     名もハナキネの

 ヒトナリハ イサチオタケヒ  ひとなりは いさちおたけひ    人態は       騒ちお猛び

 シキマキヤ          しきまきや            頻捲き
  
       ヨノクマナセハ        よのくまなせ              世の隈成せば

 ハハノミニ ステトコロナキ  ははに すてところなき    母の穢に      捨て所なき

 ヨノクマオ ワカミニウケテ  よのくまお わかみうけて    世の隈を      我が身に受けて
                                             (隈の宮)

 モロタミノ カケオツクナフ  もろたみの かけつくなふ    諸民の       欠けを償ふ
  
  
 ミクマノノ ミヤマキヤクオ  みくまのの みやまきやくお    御隈野の      御山木 焼くを

 ノソカント ウムホノカミノ  のそかと うむかみの    除かんと      生む火のの
                             <向い火を放って>

 カクツチニ ヤカレテマサニ  かくつちに やかまさに    カグツチに     焼かれてまさに

 オワルマニ ウムツチノカミ  おわるに うむつちのかみ    終る間に      生む土の神

 ハニヤスト ミツミツハメソ  はにやすと みつみつはめそ    ハニヤスと     水 ミツハメ
  
  

 カクツチト ハニヤスカウム  かくつちと はにやすかうむ    カグツチと     ハニヤスが生む

 ワカムスヒ クヒハコクワニ  わかむすひ くひこくわに    ワカムスビ     頭はに

 ホソハソロ コレウケミタマ  ほそそろ これうけみたま    ソロ      これウケミタマ
  
  

 イサナミハ アリマニオサム  いさなみは ありまおさむ    イサナミは     アリマに納む

 ハナトホノ トキニマツリテ  はなとほの ときまつりて    花と火の      伽に纏りて
                                             (喪纏り)

 ココリヒメ ヤカラニツクル  ここりひめ やからつくる    ココリ姫      族に告ぐる
  
 イサナキハ オヒユキミマク  いさなきは おひゆきみまく    イサナギは     追ひ行き見まく
                                                会おうとするさま

 ココリヒメ キミコレナミソ  ここりひめ きみこれ    ココリ姫      「君これな見そ」

 ナオキカス カナシムユエニ  なおきか かなしむゆえに    なお聞かず     「悲しむ故に

 キタルトテ ユツノツケクシ  きたるとて ゆつのつけくし    来たる」 とて    髻の黄楊櫛

 オトリハオ タヒトシミレハ  おとりはお たひみれは    辺歯を       灯とし見れば

 ウチタカル イナヤシコメキ  うちたかる いなやしこめき    蛆たかる       「いなや醜めき

 キタナキト アシヒキカエル  きたなきと あしひきかえる    汚なき」 と     足退き帰る
  
  

 ソノヨマタ カミユキミレハ  そのまた かみゆきみれは    その夜また     '神行き'みれば

 カナマコト イレスハチミス  かなまこと いれはちみす    「要真         容れず恥見す

 ワカウラミ シコメヤタリニ  わかうらみ しこめたりに    我がうらみ     鬼霊八人に

 オワシムル          おわしむる            追わしむる」
  
       ツルキフリニケ        つるきふりにけ              剣振り逃げ

 エヒナクル シコメトリハミ  えひなくる しこめとりはみ    葡萄投ぐる      鬼霊 取り食み

 サラニオフ タケクシナクル  さらにおふ たけくしなくる    更に追ふ      竹櫛投ぐる

 コレモカミ マタオヒクレハ  これかみ またおひくれは    これも噛み     また追い来れば
  
 モモノキニ カクレテモモノ  ももに かくれてももの    の木に      隠れて桃の

 ミオナクル テレハシリソク  おなくる てれはしりそく    実を投ぐる     てれば退く

 エヒユルク クシハツケヨシ  えひゆるく くしはつけよし    葡萄ゆるく     櫛は黄楊よし

 モモノナオ オフカンツミヤ  もものお おふかんつみや    桃の名を      "穢神潰" や
   
  
 イサナミト ヨモツヒラサカ  いさなみと よもつひらさか    イサナミと     黄泉辺境

 コトタチス イサナミイワク  ことたち いさなみいわく    言立す       イサナミ曰く
  

 ウルワシヤ カクナササラハ  うるわしや かくなささらは    「麗しや       かく為さざらば  

 チカフヘオ ヒヒニクヒラン  ちかふへお ひひくひら    千頭を       日々にくびらん」
                                  (千守)
  

 イサナキモ ウルワシヤワレ  いさなきも うるわしやわれ    イサナギも     「麗しや 我

 ソノチヰモ ウミテアヤマチ  そのちゐも うみあやまち    その千五百     生みて誤ち
                                    (守)

 ナキコトオ マモル      なきことお まもる        無き事を      守る」
  
          ヨモツノ           よもつ                  黄泉の

 ヒラサカハ イキタユルマノ  ひらさかは いきたゆるの    辺境は       生き・絶ゆる間の

 カキリイワ コレチカエシノ  かきりいわ これちかえしの    限り結       「これ霊還しの

 カミナリト クヤミテカエル  かみなりと くやみかえる    なり」 と     悔みて帰る

 モトツミヤ          もとつみや            元つ宮
   
       イナシコメキオ        いなしこめきお              「穢・醜めきを

 ソソカント オトナシカワニ  そそかと おとなしかわに    濯がん」 と      オトナシ川に

 ミソキシテ ヤソマカツヒノ  みそきて やそまかつひの    ミソギして     八十曲つ霊の

 カミウミテ マカリナオサン  かみうみて まかりなおさん    神生みて       曲り直さん
 カンナオヒ オオナオヒカミ  かんなおひ おおなおひかみ    曲ん直霊      穢を直霊 神

 ウミテミオ イサキヨクシテ  うみてお いさきよくて    生みて身を     潔くして
 

 ノチイタル ツクシアワキノ  のちいたる つくしあわきの    後到る        筑紫アワキの
                                             (和来宮)

 ミソキニハ          みそきには            ミソギには
                                 (直し・調和)
       ナカカワニウム        なかかわにうむ              ナカ川に生む

 ソコツツヲ ツキナカツツヲ  そこつつを つきなかつつを    底ツツヲ      次 中ツツヲ

 ウワツツヲ コレカナサキニ  うわつつを これかなさきに    上ツツヲ      これカナサキに

 マツラシム          まつらしむ            纏らしむ
  
       マタアツカワニ        またあつかわ              またアツ川に

 ソコトナカ カミワタツミノ  そことなか かみわたつみの    底と中       上ワタツミの

 ミカミウム コレムナカタニ  かみうむ これむなかたに    三守生む       これムナカタに

 マツラシム          まつらしむ            纏らしむ
  
       マタシカウミニ        またしかうみ              またシガ海に

 シマツヒコ ツキオキツヒコ  しまつひこ つきおきつひこ    シマツヒコ     次 オキツヒコ

 シカノカミ コレハアツミニ  しかのかみ これはあつみに    シガの守      これはアヅミに

 マツラシム          まつらしむ            纏らしむ
  
       ノチアワミヤニ        のちあわみやに              アワ宮に

 ミコトノリ ミチヒキノウタ  みことのり みちひきうた    御言宣       導きの歌
                                    (トヨケ?)

 アワキミヨ ワカレオシクト  あわきみよ わかれおしくと    「アワ君よ      別れ惜しくど  

 ツマオクル ヲウトハユカス  つまおくる をうとゆか    妻送る        夫は逝かず

 ユケハハチ シコメニオハス  ゆけははち しこめおは    逝けば恥      鬼霊に追わす
                                      <イサナミが>

 ヨシアシオ シレハアシヒク  よしあしお しれあしひく    善し悪しを     知れば足退く
                                         <汝も>

 ヨモツサカ コトタチサクル  よもつさか ことたちさくる    黄泉境       言立ちさくる

 ウツワアリ          うつわあり            器あり」
                                 (成果)
  
       ミソキニタミノ        みそきたみの              ミソギに民の
                                           (直し・調和)

 トトノイテ イヤマトトホル  ととのいて いやまととほる    調いて       弥和 通る

 アシヒキノ チヰモノオタノ  あしひきの ちゐものおたの    葦引きの      千五百の生田の

 ミツホナル          みつほなる            瑞穂成る
  
       マトノヲシヱニ        まとのをしゑ              和の教えに
                                      <その葦原は>

 カカンシテ ノンアワクニハ  かかんて のんあわくには    かかんして     のんアワ国は
                                   始まって        伸びるアワ国は

 テンヤマト          てんやまと            てんヤマト
                                至りてヤマトとなる
  
       ヒキテアカルキ        ひきあかるき              引きて明るき
                                             [導きて]

 アノ ウタモサトレヨ  あしはらの うたさとれよ    朝原の       歌も悟れよ
                                          (アワ歌)
 
 マトミチノ トホラヌマエノ  まとみちの とほらまえの    和道の       通らぬ前の

 アシヒキノ マクラコトハハ  あしひきの まくらことはは    葦引きの      枕言葉は
                                  (下準備)

 ウタノタネ          うたのたね            歌の種
  
       アシヒキハヤマ        あしひきやま              『あしひき』は "やま"
                                                    (ヨモツとヤマトから来る)

 ホノホノハ アケヌハタマハ  ほのほのは あけぬはたまは    『ほのぼの』は    "あけ" 『ぬばたま』は

 ヨルノタネ シマツトリノウ  よるのたね しまつとり    "よる" の種     『しまつとり』の "う"

 オキツトリ カモトフネナリ  おきつとり かもふねなり    『おきつとり』    "かも" と "ふね" なり
  
  

 コノアチオ ヌハタマノヨノ  このあちお ぬはたまのよの    この味を      "ぬばたまの夜の
                                     <称して>

 ウタマクラ サメテアカルキ  うたまくら さめてあかるき    歌枕"        "覚めて明るき

 マエコトハ          まえことは            前言葉"
  
       ココロオアカス        こころあかす              心を明かす

 ウタノミチ ミソキノミチハ  うたのみち みそきのみちは    歌の道       ミソギの道は

 ミオアカス          おあかす            身を明かす     
                                  (形)
                                     <心身を調和する> 
 ヤマトノミチノ              やまとのみちの              和の道の
 
 オオイナルカナ        おおいなるかな          大いなるかな
 

 

  

 

   

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