※29文〜40文は、地名については原義と異なると思われる場合でも、現在一般に使用されている漢字で表記しています。
【原文カタカナ訳】 【語義考察】 【漢字読み下し】
タケヒトヤマトウチノアヤ たけひとやまとうちのあや タケヒト ヤマト打ちの文
カンヤマト イハワレヒコノ かんやまと いはわれひこの カンヤマト イハワレヒコの スヘラキハ ミヲヤアマキミ すへらきは みをやあまきみ 皇は 御祖天君 (ウガヤ) ヨツノミコ ハハハタマヨリ よつのみこ はははたまより 四つの御子 母はタマヨリ アニミヤノ ヰツセハタカノ あにみやの ゐつせはたかの 兄宮の ヰツセはタガの ヲキミナリ をきみなり 皇君なり
ミヲヤアマキミ みをやあまきみ 御祖天君 ツクシタス ソトセヲサメテ つくしたす そとせをさめて ツクシ治す 十年治めて ヒタルトキ アマキミノニオ ひたるとき あまきみのにお ひたる時 和君の璽を (白矢のヲシデ) タケヒトニ サツケアヒラノ たけひとに さつけあひらの タケヒトに 授けアヒラの カミトナル キミミヤサキニ かみとなる きみみやさきに 神となる 君 ミヤサキに (タケヒト) タネコラト マツリトルユエ たねこらと まつりとるゆえ タネコらと 政 執るゆえ シツカナリ しつかなり 静かなり
カクヤマノトミ かくやまのとみ カグヤマの臣 (ニギハヤヒ) ナカスネカ ママニフルエハ なかすねか ままにふるえは ナガスネが 儘に振えば サハカシク ハラノヲキミハ さはかしく はらのをきみは 騒がしく ハラの皇君は (タケテル) カテトトム カレニナカスネ かてととむ かれになかすね 糧止む 故にナガスネ フネトトム オオモノヌシカ ふねととむ おおものぬしか 船止む オオモノヌシが (山崎関を封鎖) (クシミカタマ) ウタントス うたんとす 討たんとす
タカノヲキミハ たかのをきみは 多賀の皇君は (ヰツセ) オトロキテ ツクシニクタリ おとろきて つくしにくたり 驚きて 筑紫に下り <タケヒトらと> トモニタス モノヌシヒトリ ともにたす ものぬしひとり 共に治す モノヌシ一人 (クシミカタマ) タミヲサム トキニタケヒト たみをさむ ときにたけひと 民 治む 時にタケヒト (多賀皇君の代殿として) アヒラヒメ メトリウムミコ あひらひめ めとりうむみこ アヒラ姫 娶り生む御子 タキシミミ たきしみみ タギシミミ
キミトシヨソヰ きみとしよそゐ 君 歳四十五 モノカタリ ムカシノミヲヤ ものかたり むかしのみをや 物語り 「昔の御祖 タカムスヒ ヒタカミウミテ たかむすひ ひたかみうみて タカムスビ ヒタカミ生みて モマスヨホ スキテアマヒノ もますよほ すきてあまひの 一千万齢 過ぎて太陽の ヲヲンカミ アメナルミチニ ををんかみ あめなるみちに 大御神 陽陰和る道に (アマテル) タミオタス たみおたす 民を治す
ミコノオシヒト みこのおしひと 御子のオシヒト (オシホミミ) ユツリウク ミマコキヨヒト ゆつりうく みまこきよひと 譲り受く 御孫キヨヒト (ニニキネ) マタウケテ ワケイカツチノ またうけて わけいかつちの また受けて ワケイカツチの アマキミト アメノイワクラ あまきみと あめのいわくら 天君と あめの磐座 オシヒラキ イツノチワキニ おしひらき いつのちわきに 押し開き 逸のチワキに ヲサマリテ ミヲヤニツカフ をさまりて みをやにつかふ 治まりて 御祖に継がふ ミチアキテ みちあきて 道 開きて
ヒカリカサヌル ひかりかさぬる 光 重ぬる (栄光) トシノカス モモナソコヨロ としのかす ももなそこよろ 年の数 百七十九万 フチヨモモ ナソホヘルマテ ふちよもも なそほへるまて 二千四百 七十年経るまで (アマテルの誕生からウガヤの死まで) オチコチモ ウルハフクニノ おちこちも うるはふくにの 遠近も 潤ふ国の (他動詞) キミアリテ アレモミタレス きみありて あれもみたれす 君ありて あれも乱れず 少しも乱れず アメノミチ あめのみち 和の道」
ヨニハヤルウタ よにはやるうた 世に流行る歌
ノリクタセ ホツマチヒロム のりくたせ ほつまちひろむ 『乗り下せ ホツマ方 平む [宣 下せ] [ほつま道 広む] アマモイワフネ あまもいわふね 天下 斎船』 [天地も祝ふね]
シホツチノ ヲキナススメテ しほつちの をきなすすめて シホツチの 翁すすめて ニキハヤカ イカンソユキテ にきはやか いかんそゆきて 「ニギハヤか 如何んぞ行きて どうして行きて ムケサラン モロミコモケニ むけさらん もろみこもけに 平けざらん」 諸御子も 「げに 平定しないのか イヤチコト サキニヲシテノ いやちこと さきにをしての いやちこ」 と 「さきにヲシテの (天君の璽) (=白矢のヲシテ) コタエツラ キミスミヤカニ こたえつら きみすみやかに 答えつら 君すみやかに ミユキナセ みゆきなせ 御幸なせ」
アススキミヱノ あすすきみゑの アスズ キミヱの (51年) カンナミカ アミコミツカラ かんなみか あみこみつから 十月三日 太子自ら モロヒキテ ミフネノイタル もろひきて みふねのいたる 諸 率きて 御船の到る ハヤスヒト ヨルアマオフネ はやすひと よるあまおふね 速吸門 寄る海人小舟 アヒワケカ トエハクニカミ あひわけか とえはくにかみ アヒワケが 問えば 「地守 ウツヒコソ ワタノツリニテ うつひこそ わたのつりにて ウツヒコぞ 海の釣にて キクミフネ ムカフハミフネ きくみふね むかふはみふね 聞く御船 向かふは御船」 ミチヒクカ アヒトコタエテ みちひくか あひとこたえて 「導くか」 「あひ」 と答えて
ミコトノリ シイサホノスエ みことのり しいさほのすえ 御言宣 しい棹の末 モタシメテ フネニヒキイレ もたしめて ふねにひきいれ 持たしめて 船に引き入れ ナオタマフ シイネツヒコノ なおたまふ しいねつひこの 名を賜ふ シイネツヒコの
ヒクフネノ ウサニイタレハ ひくふねの うさにいたれは 引く船の 宇佐に到れば ウサツヒコ ヒトアカリヤニ うさつひこ ひとあかりやに ウサツヒコ "人あがり屋" に ミアエナス カシハテニヨル みあえなす かしはてによる 御饗なす 膳出に寄る ウサコヒメ タネコカツマト うさこひめ たねこかつまと ウサコ姫 タネコが妻と チチニトヒ ツクシノヲシト ちちにとひ つくしのをしと 父に問ひ 筑紫の治人と (ウサツヒコ) <タネコを>
アキノクニ チノミヤニコス あきのくに ちのみやにこす 安芸の国 チノ宮に越す <年も> ヤヨヒニハ キヒタカシマニ やよひには きひたかしまに 三月には 吉備高嶋に (アスズ52年) ナカクニノ マツリヲサメテ なかくにの まつりをさめて 中国の 政 治めて ミトセマス ウチニトトノヒ みとせます うちにととのひ 三年座す 内に調ひ ミフネユク アススヰソヰホ みふねゆく あすすゐそゐほ 御船行く アスズ五十五年 (ヲシヱ) キサラキヤ きさらきや 二月や
ハヤナミタツル はやなみたつる 早波立つる (他動詞) ミツミサキ ナモナミハヤノ みつみさき なもなみはやの 水みさき 名も "浪速の ミナトヨリ ヤマアトカワオ みなとより やまあとかわお 港" より 山後川を (山背川) サカノホリ カウチクサカノ さかのほり かうちくさかの 逆上り 河内草香の アウヱモロ ヤカタニイクサ あうゑもろ やかたにいくさ アウヱモロ 館に軍 トトノヒテ ととのひて 調ひて
タツタノミチハ たつたのみちは 龍田の道は
ナラヒエス イコマコユレハ ならひえす いこまこゆれは 並び得ず 生駒 越ゆれば 対応できず <よって> ナカスネカ イクサオコシテ なかすねか いくさおこして ナガスネが 軍 起こして ワカクニオ ウハワンヤワト わかくにお うはわんやわと 「我が国を 奪わんやわ」 と クサエサカ タタカヒアワス くさえさか たたかひあわす 孔舎衛坂 戦ひ合わす ヰツセミコ ヒチオウタレテ ゐつせみこ ひちおうたれて ヰツセ御子 肱を撃たれて ススミヱス すすみゑす 進み得ず
スヘラキフレル すへらきふれる 統君 触れる (「ふる」の連体形) ハカリコト ワレハヒノマコ はかりこと われはひのまこ 計り事 「我は日の孫 ヒニムカフ アメニサカエハ ひにむかふ あめにさかえは 日に向ふ 陽陰に逆えば シリソキテ カミオマツリテ しりそきて かみおまつりて 退きて 神を祭りて ヒノママニ オソハハアタモ ひのままに おそははあたも 日のままに 襲わば仇も ヤフレント ミナシカリトテ やふれんと みなしかりとて 敗れん」 と 皆 「然り」 とて ヤオエヒク アタモセマラス やおえひく あたもせまらす 八尾へ退く 仇も迫らず
ミフネユク みふねゆく 御船行く
チヌノヤマキテ ちぬのやまきて 茅渟の山城で ヰツセカル キノカマヤマニ ゐつせかる きのかまやまに ヰツセ枯る 紀の竃山に オクラシム ナクサノトヘカ おくらしむ なくさのとへか 送らしむ 名草のトベが コハムユエ ツミシテサノエ こはむゆえ つみしてさのえ 拒むゆえ 詰みして狭野へ
クマノムラ イワタテコエテ くまのむら いわたてこえて 熊野村 磐盾越えて (船上からの景観の描写) オキオコク ツチカセフネオ おきおこく つちかせふねお 沖を漕ぐ 旋風 船を タタヨハス イナヰイサチテ たたよはす いなゐいさちて 漂わす イナヰイ騒ちて アメノカミ ハハワタカミヤ あめのかみ ははわたかみや 「和の尊 母 海守や <父は>
イカカセン クカニタシナメ いかかせん くかにたしなめ 如何がせん 陸にたしなめ マタウミト イルサヒモチノ またうみと いるさひもちの また海」 と 往る "垂没の ウミノカミ ミケイリモマタ うみのかみ みけいりもまた 海の神" ミケイリもまた サカナミノ ウミオウラミテ さかなみの うみおうらみて 逆波の 海を恨みて カミトナル かみとなる 神となる
スヘラキミコモ すへらきみこも 皇御子も ツツカナク ユクアラサカニ つつかなく ゆくあらさかに 恙なく 行く荒坂に イソラナス ニシキトコハミ いそらなす にしきとこはみ イソラ和す ニシキド拒み ヲエハケハ ミナツカレフシ をえはけは みなつかれふし 汚穢吐けば みな疲れ臥し ネフルトキ タカクラシタニ ねふるとき たかくらしたに 眠る時 タカクラシタに ユメノツケ ゆめのつけ 夢の告げ
タケミカツチニ たけみかつちに タケミカツチに ミコトノリ クニサヤケレハ みことのり くにさやけれは 御言宣 「国 騒やければ (アマテル) ナンチユケ カミニコタエハ なんちゆけ かみにこたえは 汝 行け」 神に答えは ユカストモ クニムケツルキ ゆかすとも くにむけつるき 「行かずとも 国平け剣 クタサント カミモウメナリ くたさんと かみもうめなり 下さん」 と 神も 「宜なり」 ミカツチノ フツノミタマオ みかつちの ふつのみたまお 「ミカツチの 直の神霊を クラニオク コレタテマツレ くらにおく これたてまつれ 倉に置く これ奉れ」 アヒアヒト あひあひと 「あひあひ」 と
タカクラシタカ たかくらしたか タカクラシタが ユメサメテ クラオヒラケハ ゆめさめて くらおひらけは 夢覚めて 倉を開けば ソコイタニ タチタルツルキ そこいたに たちたるつるき 底板に 立ちたる剣 ススムレハ キミノナカネノ すすむれは きみのなかねの 進むれば 君の長寝の ヲヱサメテ モロモサムレハ をゑさめて もろもさむれは 汚穢覚めて 諸も覚むれば イクサタチ いくさたち 軍立ち
ヤマチケワシク やまちけわしく 山道 険しく スエタエテ ノニシチマヒテ すえたえて のにしちまひて 饐え絶えて 野にしぢまひて スヘラキノ ユメニアマテル すへらきの ゆめにあまてる 統君の 夢にアマテル カミノツケ ヤタノカラスオ かみのつけ やたのからすお 神の告げ 「八尺のカラスを ミチヒキト サムレハヤタノ みちひきと さむれはやたの 導き」 と 覚むれば八尺の カラスアリ オオチカウカツ からすあり おおちかうかつ カラスあり 老翁が穿つ (八尺カラス) アスカミチ イクサヒキユク あすかみち いくさひきゆく "アスカ道" 軍 率き行く ミチヲミカ ミネコエウタノ みちをみか みねこえうたの ミチヲミが 峰越えウタの ウカチムラ うかちむら ウカチ村
ウカヌシメセハ うかぬしめせは ウカ主召せば アニハコス オトハモウテテ あにはこす おとはもうてて 兄は来ず 弟は詣でて ツケモフス アニサカラエト つけもふす あにさからえと 告げ申す 「兄 逆らえど ミアエシテ ハカルクルリオ みあえして はかるくるりお 見合えして 計るくるりを (調査) (からくり) シロシメセ しろしめせ 知ろし召せ」
カレニミチヲミ かれにみちをみ 故にミチヲミ サカスレハ アタナスコトオ さかすれは あたなすことお 探すれば 仇なす言を オタケヒテ ナンチカツクル おたけひて なんちかつくる お猛びて 「汝が造る ヤニオレト ツルキヨユミト やにおれと つるきよゆみと 屋に居れ」 と 剣よ弓と セメラレテ イナムトコナキ せめられて いなむとこなき 攻められて 辞む所なき アメノツミ オノカクルリニ あめのつみ おのかくるりに 陽陰の詰み 己がくるりに (自然の結末) マカルナリ まかるなり 罷るなり
オトハモテナス おとはもてなす 弟はもてなす 仲をとりもつ キミトミモ きみとみも 君・臣も <それによりて> ヨシノヲノヱノ よしのをのゑの 吉野峰の縁の
ヰヒカリモ イワワケカミモ ゐひかりも いわわけかみも ヰヒカリも イワワケ守も イテムカフ いてむかふ 出で迎ふ
タカクラヤマノ たかくらやまの タカクラ山の フモトニハ ヱシキカイクサ ふもとには ゑしきかいくさ 麓には 兄シギが軍 イハワレノ カナメニヨリテ いはわれの かなめによりて イハワレの 要に寄りて 集って ミチフサク スヘラキイノル みちふさく すへらきいのる 道 塞ぐ 統君祈る ユメノツケ カミオマツレヨ ゆめのつけ かみおまつれよ 夢の告げ 「神を祭れよ カクヤマノ ハニノヒラテニ かくやまの はにのひらてに 香具山の 埴の平手に ヒモロケト ひもろけと ヒモロケ」 と
カミノヲシエニ かみのをしえに 神の教えに
ナサントス オトウカシキテ なさんとす おとうかしきて 和さんとす 弟ウカシ来て 合わそうとする シキタケル カタキアカシモ しきたける かたきあかしも 「磯城長 葛城分司も ミナコハム キミオオモエハ みなこはむ きみおおもえは みな拒む 君を思えば カクヤマノ ハニノヒラテノ かくやまの はにのひらての 香具山の 埴の平手の ヒモロケニ アメツチマツリ ひもろけに あめつちまつり ヒモロケに 天地祭り ノチウタン ウカシカツケモ のちうたん うかしかつけも 後 討たん」 ウカシが告げも (弟ウカシ) ユメアワセ ゆめあわせ 夢合せ
シイネツヒコハ しいねつひこは 「シイネツヒコは ミノトカサ ミオモツウカシ みのとかさ みおもつうかし 蓑と笠 箕を持つウカシ ヲチウハノ タミノスカタテ をちうはの たみのすかたて 翁・婆の 民の姿で カクヤマノ ミネノハニトリ かくやまの みねのはにとり 香具山の 峰の埴採り カエコトハ ミヨノウラカタ かえことは みよのうらかた 返言は みよの占形 ユメユメト ツツシミトレト ゆめゆめと つつしみとれと 努々と 謹しみ採れ」 と ミコトノリ みことのり 御言宣
チマタニアタノ ちまたにあたの ちまたに仇の ミチオレハ シイネツヒコカ みちおれは しいねつひこか 満ち居れば シイネツヒコが イノリイフ ワカキミクニオ いのりいふ わかきみくにお 祈り言ふ 「我が君 国を サタムナラ ミチモヒラケン さたむなら みちもひらけん 定むなら 道も開けん カナラスト タタチニユケハ かならすと たたちにゆけは 必ず」 と ただちに行けば アタモミテ サマオワラヒテ あたもみて さまおわらひて 仇も見て 様を笑ひて ヨケトフス よけとふす 避け通す
カレニカクヤマ かれにかくやま 故に香具山 ハニトリテ カエレハキミモ はにとりて かえれはきみも 埴 採りて 返れば君も ヨロコヒテ イツヘオツクリ よろこひて いつへおつくり 喜びて 斎瓮を造り (=陶器) ニフカワノ ウタニウツセル にふかわの うたにうつせる 丹生川の ウタに写せる (端) (「写す」の連体形) アサヒハラ アマテルトヨケ あさひはら あまてるとよけ 朝日原 アマテル・トヨケ フマツリハ ミチオミソマタ ふまつりは みちおみそまた 二祭は ミチオミぞ また カンミマコ アメマヒカヒコ かんみまこ あめまひかひこ カンミ孫 アメマヒが曾孫 アタネシテ ワケツチヤマノ あたねして わけつちやまの アタネして ワケツチ山の ミヲヤカミ ミカマツラセテ みをやかみ みかまつらせて 御祖神 三日祭らせて (伊豆神社) アタオウツ あたおうつ 仇を討つ
クニミカオカニ くにみかおかに 国見が丘に イクサタテ ツクルミウタニ いくさたて つくるみうたに 軍 立て 作る御歌に
カンカセノ イセノウミナル かんかせの いせのうみなる 『神かせの 妹背の生み成る [伊勢の海なる] イニシエノ ヤエハイモトム いにしえの やえはいもとむ いにしえの 八方這い回む シタタミノ アコヨヨアコヨ したたみの あこよよあこよ 下民の 皇子 弥々皇子よ [細螺] 皇子、また孫々の皇子よ シタタミノ イハヒモトメリ したたみの いはひもとめり 下民の い這ひ回めり ここにも下民(細螺)が 這い回っているぞ ウチテシヤマン うちてしやまん 討ちてしやまん』 叩いて潰してやろうか
コノウタオ モロカウタエハ このうたお もろかうたえは この歌を 諸が歌えば アタカツク シハシカンカフ あたかつく しはしかんかふ 仇が告ぐ しばし考ふ ニキハヤヒ サスラヲヨスト にきはやひ さすらをよすと ニギハヤヒ 「流離男 寄す」 と ソサノヲの境遇が迫り来ると オタケヒテ マタヒコトカモ おたけひて またひことかも お猛びて また一言交も さらに一言加え アメカラト イクサオヒケハ あめからと いくさおひけは 「天から」 と 軍を退けば (神武を正統と認めている) ミカタヱム みかたゑむ 御方笑む
ネツキユミハリ ねつきゆみはり 十一月七日 シキヒコオ キキスニメセト しきひこお ききすにめせと シギヒコを 雉子に召せど アニハコス マタヤルヤタノ あにはこす またやるやたの 兄は来ず また遣る八尺の カラスナキ アマカミノミコ からすなき あまかみのみこ カラス鳴き 「和尊の御子 ナンチメス イサワイサワソ なんちめす いさわいさわそ 汝 召す いさわいさわぞ」 ヱシキキキ イトウナスカミ ゑしききき いとうなすかみ 兄シギ聞き 「慈愛なす尊 ヲヱヌトキ アタカラストテ をゑぬとき あたからすとて 汚穢ぬ時 仇 枯らす」 とて [仇ガラス] ユミヒケハ ゆみひけは 弓引けば
オトカヤニユキ おとかやにゆき 弟が屋に行き キミメスソ イサワイサワト きみめすそ いさわいさわと 「君 召すぞ いさわいさわ」 と カラスナク オトシキオチテ からすなく おとしきおちて カラス鳴く 弟シギ怖ぢて カタチカエ カミノイトウニ かたちかえ かみのいとうに 容変え 「尊の慈愛に ワレオソル ヱヱナンチトテ われおそる ゑゑなんちとて 我 畏る」 「ええ汝」 とて ハモリアエ ママニイタリテ はもりあえ ままにいたりて 煽り炙え 随に到りて おだて上げ ワカアニハ アタストモフス わかあには あたすともふす 「我が兄は 仇す」 と申す
トキニキミ トエハミナイフ ときにきみ とえはみないふ 時に君 問えば 皆言ふ トニサトシ ヲシエテモコヌ とにさとし をしえてもこぬ 「経に諭し 教えても来ぬ [弟] <なら> ノチウツモ ヨシトタカクラ のちうつも よしとたかくら 後討つも 良し」 と タカクラ →経矛法 オトシキト ヤリテシメセト おとしきと やりてしめせと 弟シギと 遣りて示せど ウケカハス うけかはす 肯わず
ミチヲミカウツ みちをみかうつ ミチヲミが撃つ オシサカト ウツヒコカウツ おしさかと うつひこかうつ オシサカと ウツヒコが撃つ (シイネツヒコ) オンナサカ ヱシキノニケル おんなさか ゑしきのにける オンナサカ 兄シキの逃げる クロサカニ ハサミテウテハ くろさかに はさみてうては クロサカに 挟みて撃てば タケルトモ フツクキレトモ たけるとも ふつくきれとも 長ども 悉く斬れども ナカスネカ タタカイツヨク なかすねか たたかいつよく ナガスネが 戦い強く アタラレス あたられす 当たられず
トキニタチマチ ときにたちまち 時に忽ち 忽然と ヒサメフル コカネウノトリ ひさめふる こかねうのとり 甚雨降る 黄金鵜の鳥 トヒキタリ ユハスニトマル とひきたり ゆはすにとまる 飛び来たり 弓弭に留まる ソノヒカリ テリカカヤケハ そのひかり てりかかやけは その光 照り輝けば ナカスネカ タタカヒヤメテ なかすねか たたかひやめて ナガスネが 戦ひ止めて キミニイフ きみにいふ 君に言ふ (タケヒト)
ムカシアマテル むかしあまてる 「昔 和照る (ここではオシホミミ) カミノミコ イワフネニノリ かみのみこ いわふねにのり 尊の御子 斎船に乗り (テルヒコ) アマクタリ アスカニテラス あまくたり あすかにてらす 天下り アスカに照らす ニキハヤヒ イトミカシヤオ にきはやひ いとみかしやお ニギハヤヒ 妹ミカシヤを キサキトシ ウムミコノナモ きさきとし うむみこのなも 后とし 生む御子の名も ウマシマチ ワカキミハコレ うましまち わかきみはこれ ウマシマチ 我が君はこれ ニキハヤヒ アマテルカミノ にきはやひ あまてるかみの ニギハヤヒ アマテル神の カンタカラ トクサオサツク かんたから とくさおさつく 尊宝 十種を授く アニホカニ カミノミマコト あにほかに かみのみまこと あに他に 神の御孫と イツハリテ クニウハハンヤ いつはりて くにうははんや 偽りて 国 奪はんや コレイカン これいかん これ如何ん」
トキニスヘラキ ときにすへらき 時に皇 コタエイフ ナンチカキミモ こたえいふ なんちかきみも 応え言ふ 「汝が君も マコトナラ シルシアランソ まことなら しるしあらんそ 真なら 璽あらんぞ」 ナカスネカ キミノユキヨリ なかすねか きみのゆきより ナガスネが 君の靫より ハハヤテオ アメニシメセハ ははやてお あめにしめせは 羽々矢璽を 天に示せば (タケヒト) カンヲシテ マタスヘラキモ かんをして またすへらきも 尊璽 また皇も カチユキノ イタスハハヤノ かちゆきの いたすははやの 歩靫の 出す羽々矢の カンヲシテ ナカスネヒコニ かんをして なかすねひこに 尊璽 ナガスネヒコに シメサシム ススマヌイクサ しめさしむ すすまぬいくさ 示さしむ 進まぬ軍 マモリイル まもりいる 守り居る
ネンコロオシル ねんころおしる 懇を知る ニキハヤヒ ワカナカスネカ にきはやひ わかなかすねか ニギハヤヒ 「我がナガスネが ウマレツキ アメツチワカヌ うまれつき あめつちわかぬ 生れ付き 天地分かぬ カタクナオ キリテモロヒキ かたくなお きりてもろひき 頑を」 斬りて諸率き マツロエハ キミハモトヨリ まつろえは きみはもとより 服えば 君は本より クニテルノ マメオウツシミ くにてるの まめおうつしみ クニテルの 忠を映し見 (ニギハヤヒ)
イハワレノ コヤニヘオネリ いはわれの こやにへおねり 磐余の 籠屋に方を練り (方策)
トシコエテ コセノホフリヤ としこえて こせのほふりや 年越えて 巨勢のホフリや (上鈴56年) (=葛) ソフトヘト ヰノホフリラモ そふとへと ゐのほふりらも 層富トベと 吉野ホフリ等も ツチクモノ アミハルモノオ つちくもの あみはるものお 土蜘蛛の 網張る者を ミナコロス みなころす みな殺す
タカオハリヘカ たかおはりへか 高尾張侍が セヒヒクテ アシナカクモノ せひひくて あしなかくもの 背低くて 足長蜘蛛の オオチカラ イワキオフリテ おおちから いわきおふりて 大力 穢気を振りて ヨセツケス タカノミヤモル よせつけす たかのみやもる 寄せ付けず 多賀の宮守る ウモノヌシ クシミカタマニ うものぬし くしみかたまに ウモノヌシ クシミカタマに ミコトノリ モノヌシカカエ みことのり ものぬしかかえ 御言宣 モノヌシ考え クスアミオ ユヒカフラセテ くすあみお ゆひかふらせて 葛網を 結ひ 被らせて ヤヤコロス ややころす やや殺す
スヘヲサマレハ すへをさまれは 統べ治まれば ツクシヨリ ノホルタネコト つくしより のほるたねこと 筑紫より 上るタネコと モノヌシニ ミヤコウツサン ものぬしに みやこうつさん モノヌシに 「都 移さん クニミヨト ミコトオウケテ くにみよと みことおうけて 地 見よ」 と 御言を受けて メクリミル カシハラヨシト めくりみる かしはらよしと 巡り見る 「橿原よし」 と モフストキ キミモヲモヒハ もふすとき きみもをもひは 申す時 君も思ひは オナシクト アメトミオシテ おなしくと あめとみおして 同じくと アメトミをして ミヤツクリ みやつくり 宮造り
キサキタテント きさきたてんと 「后 立てん」 と モロニトフ ウサツカモフス もろにとふ うさつかもふす 諸に問ふ ウサツが申す (ウサツヒコ) コトシロカ タマクシトウム ことしろか たまくしとうむ 「コトシロが タマクシと生む (ツミハ) ヒメタタラ ヰソススヒメハ ひめたたら ゐそすすひめは 姫 タタラ ヰソスズ姫は クニノイロ アワミヤニマス くにのいろ あわみやにます 国の色 阿波宮に座す (琴平宮) コレヨケン スヘラキヱミテ これよけん すへらきゑみて これ好けん」 統君 笑みて キサキトス きさきとす 后とす
コトシロヌシオ ことしろぬしお コトシロヌシを <后の父の> (ツミハ) ヱミスカミ マコノクシネオ ゑみすかみ まこのくしねお "ヱミス神" 孫のクシネを アカタヌシ ヤシロツクラセ あかたぬし やしろつくらせ 県主 社 造らせ メノフソカ マツルオオミハ めのふそか まつるおおみは 十月の二十日 祭る大三輪 (アスズ56年) カンナミソ かんなみそ 神奈備ぞ
カンヨリニナモ かんよりになも 神寄りに名も 大三輪神に因みて名も カンヤマト イハワレヒコノ かんやまと いはわれひこの "神山下 祝われ彦" の (=三輪山下) アマキミト アマネクフレテ あまきみと あまねくふれて 天君と あまねく告れて (和君) トシサナト カシハラミヤノ としさなと かしはらみやの 年サナト 橿原宮の (上鈴58年) ハツトシト ミヨカンタケノ はつとしと みよかんたけの 初年と 御代カンタケの 元号 神武 オオイナルカナ おおいなるかな 大いなるかな
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