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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第183回 [2024.9.19]
第三三巻 神崇め疫病治す文 (2)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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崇神天皇-1-2
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かみあがめゑやみたすあや (その2)
神崇め疫病治す文 https://gejirin.com/hotuma33.html
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ゐとしゑやみす なかはかる むとしたみちる
ことのりに たしかたしかれ つとにおき つみかみにこふ
ふたみやお さらにつくらせ
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五年 疫病みす 半ば枯る 六年 民散る
言宣に 「治しがたし 故 つとにおき 罪 神に乞ふ」
二宮を 新に造らせ
―――――――――――――――――――――――――――――
■疫病す (ゑやみす)
「流行り病に遭う」 という意です。
★疫病み
(ゑやみ)
ヲヱ(‘瘁ゆ’
の連用形)+ヤム(病む)
の短縮 “ヱヤム” の名詞形で、
「曲り・逸脱・異常・不調」 などが原義です。
★す (為)
スル(為る)
の短縮形で、「合う/合わす」 が原義です。
今の国文法では スル(為る) の終止形とします。
■民散る (たみちる)
「民が 御上/中央政府の治めから離脱する」、
つまり 「天下の法に従わなくなる」 の意と考えます。
■つとにおく
「始めに戻る・原点に帰る」 という意で、更に返る(さらにかえる)
の換言です。
ツト は ツツ(伝つ)
の名詞形で、ツト(苞)・ツド(都度)
と同源です。
「回転・回帰・更新・繰り返し・毎」
などが原義で、この場合は
「回帰/帰還する所・出発点・原点・もと」
などを意味します。
オク は オクル(送る) の母動詞で、「回る/回す・返る/返す」
などが原義です。
■罪 神に乞ふ (つみかみにこふ)
「誤りを神に尋ねる」 という意です。 ▶罪 ▶乞ふ
■二宮を新に造らす (ふたみやおさらにつくらす)
さきに天皇は宮を造って、トヨスキ姫
をして アマテル神(=ヤタ鏡)
を カサヌヒ
に纏らせ、
ヌナギ姫 をして オオクニタマ(=ヤヱ垣剣)
を 山辺の里
に纏らせましたが、
その 「2神の宮を造り直す」 という意です。
アマテル神は カサヌヒに トヨスキ姫に 纏らしむ
オオクニタマは ヌナキ姫 山辺の里に 纏らしむ 〈ホ33ー1〉
【概意】
崇神5年、疫病に遭い半数が枯れる。崇神6年、民が離散する。
君は
「治めがたし。しかれば原点に帰り、誤りを神に尋ねる」
と言宣し、
2神の宮を造り直させて、
―――――――――――――――――――――――――――――――
むとせあき おおくにたまの かみうつし なつきそむかよ
あすのよは あまてるかみの みやうつし
とよのあかりの いろもよし いさともかみは くたります
いろのつすうた いさとほし ゆきのよろしも おほよすからも
―――――――――――――――――――――――――――――――
六年秋 オオクニタマの 神移し 九月十六日夜
明すの夜は アマテル神の 宮移し
訪の明かりの 色も良し いざとも神は 下ります
色の十九歌
『いざ遠し 往きの宜しも おほよすがらも』
―――――――――――――――――――――――――――――――
■明すの夜 (あすのよ)
「翌夜」 です。 ▶明す
■訪の明かり (とよのあかり)
「(夜間の) 移動のための灯し火」 という意です。
トヨ(▽訪) は トフ/トユ(訪ふ)
の名詞形で、「往き来・めぐり・移動・運び」
などが原義。
これは 樋(とよ・とひ)
と同源です。
■いざ
イサム(勇む)
の母動詞 “イス”
の名詞形で、「勢いの鋭いさま・活気に満ちるさま」
が原義です。
「よーし・いよーっ・いやーっ・えっさ・わんさか・いよいよ・いっそう」
みたいな感じです。
■色の十九歌 (いろのつずうた)
「状況を伝える十九歌」 という意です。
また 「先頭に ‘イ’、折返(=真中)に ‘ロ’
の音を綴る十九歌」 でもあります。 ▶十九歌
“色” は ここでは 「もよう・状況・旗色」
などを表します。
いさとほし ゆきのよろしも おほよすからも
【概意】
崇神6年秋の9月16日夜、オオクニタマの神を移し、
翌日の夜はアマテル神の宮移し。移動を照らす灯火の色も良し。
いざとも神は降臨され、状況を伝える十九歌。
『いや遠し めぐりのよろしも 覚えの優れも』
―――――――――――――――――――――――――――――
なほきさら みかみことのり
わかみをや ひらくもとひは さかんなり
わかよにあたり をえあるは まつりととかぬ とかめあり
けたしきわめて よるなりと
―――――――――――――――――――――――――――――
七年二月 三日 御言宣
「我が上祖 開く基は 盛んなり
我が代にあたり 瘁え粗るは 纏り届かぬ 咎めあり
けだし究めて 寄るなり」 と
―――――――――――――――――――――――――――――
■瘁え粗る (をえある)
ヲユ(瘁ゆ)+アル(粗る)
の連結で、両語とも 「曲る・逸脱する・異常/不調になる・病む」、
またその結果、「落ちる・劣る・衰える・枯れる」
などが原義です。
■纏り・祭・祀り (まつり)
この場合は 「神に対するケア」
をいいますが、この時代においては、
神罰を逃れ、ご利益を賜るために
「神にひれ伏して崇めること」 の意味合いが強いです。
■蓋し (けだし)
ケツ+シク(如く)
の連結 “ケタシク” から ‘ク’ を省いた ク語法
で、
ケツ は “きつい”
の キツ の変態。「行き着くさま・極まるさま・至るさま」
が原義です。
ここでは副詞として使われ、「きびしく・きっと・必ず・おおよそ」
などの意となります。
■寄る (よる)
ここでは、纏りの届かぬ原因に
「歩み寄る・近寄る・迫る」 という意です。
【概意】
崇神7年2月3日に御言宣。
「我が先祖が開く国家の基は盛んであった。
我が代にあたり曲り衰えるは、神への崇敬が行き届かぬ報いあり。
<その原因を> きっと究明して迫るなり」 と、
―――――――――――――――――――――――――――――
あさひのはらに みゆきして やもよろまねく ゆのはなの
ももそひめして のりこちに さつさつすうた
さるたみも つすにまつらて をゑにみたるさ
―――――――――――――――――――――――――――――
朝日の原に 御幸して 八百万招く 湯の花の
モモソ姫して 宣言に サツサ十九歌
『更る民も 綴に纏らで 汚穢に乱るさ』
―――――――――――――――――――――――――――――
■朝日の原 (あさひのはら)
「朝日神(=トヨケの神霊)
が纏られる区画」 の意で、
アマノマナヰ、マナヰの原、また
カサヌヒ、ヨサ
などとも呼ばれます。
トヨケの神霊を纏るこの地に、アマテルも辞洞を掘って世を辞んでいます。
崇神天皇が アマテルの神霊を宿すヤタ鏡を納めるために、2度に渡って宮を建てたのは、
この場所です。
我
世を 辞まんと サルタに穴を 掘らしむる マナヰに契る 朝日宮 同じ所 〈ホ28-3〉
アマテル神は カサヌヒに トヨスキ姫に 纏らしむ 〈ホ33ー1〉
■八百万 (やもよろ)
ここでは 「八百万の神」 をいいます。 ▶八百万神
■湯の花 (ゆのはな)
笹湯花 と同じです。
“八百万招く湯の花”
ですから、神を世に招く儀式の一つだったのでしょう。
■サツサ十九歌 (さつさつずうた)
「先頭に ‘サ’、折返(=真中)に ‘ツ’ 、最後に ‘サ’
の音を綴る十九歌」 です。 ▶十九歌
サツサ
には他の意味も込められていると思いますが、読み解けていません。
さるたみも つすにまつらて をゑにみたるさ
出だしの “さるたみ” の並びを逆にして、“みたるさ”
で締め括っています。
これはかつてアマテルがハタレを退治するために創った サツサつつ歌
と同じ手法です。
さすらても はたれもはなけ みつたらす
かかんなすかも てたてつき
かれのんてんも あにきかす ひつきとわれは あわもてらすさ 〈ホ8ー6〉
■更る民 (さるたみ)
「新たな民・新しく生まれる民」 の意です。 ▶更る
■綴に纏らで (つずにまつらで)
御上に 「一綴りにまつろわずに・皆が従うとは限らず」
などの意です。 ▶つず/つづ ▶纏る
■汚穢 (をゑ)
この場合は 汚穢モノ
をいうように思います。
【概意】
朝日の原に御幸して、八百万神を招く湯の花を行えば、
モモソ姫を介して、神の宣言の サツサ十九歌。
『新民も 一綴りに服わず 汚穢に乱るさ』
―――――――――――――――――――――――――――――
きみとふて かくおしゆるは たれかみそ
こたえてわれは くにつかみ おおものぬしそ
きみまつる ことしるしなし ゆあひして すかにいのりて
つけもふす われうやまえと うけさるや
―――――――――――――――――――――――――――――
君 問ふて 「かく教ゆるは 誰神ぞ」
答えて 「我は 地つ神 オオモノヌシぞ」
君 祭る こと徴なし 湯浴びして 清に祈りて
告げ申す 「我 敬えど 受けざるや」
―――――――――――――――――――――――――――――
■地つ神 (くにつかみ)
「地域の守り神」 をいいます。
神武天皇が オオミワの神並み
を建てて、歴代オオモノヌシの神霊を纏ってより、
オオモノヌシ神は 「大和国 (神武天皇以来の都) の地域神」
となっています。
社
造らせ 十月の二十日 纏るオオミワ 神並みぞ
神よりに名も “神山下 斎われ彦” の 天君と 〈ホ29-6〉
■オオモノヌシ ■オオモノヌシの神 (おおものぬしのかみ)
これは人ではなく、オオモノヌシの神=ミモロ神
をいいます。
オミケヌシ が言う 我が御祖神
とはこれです。
君 如何ん 我が御祖神 離れんや 〈ホ32-5〉
■祭る (まつる)
ここでは 「まつり上げる・敬う・あがめる」
などの意です。
■こと徴なし (ことしるしなし)
「特に知らせ無し」 という意です。 ▶こと(異・別・殊) ▶しるし(印・標・徴)
■湯浴び (ゆあび・ゆあみ)
「温水シャワー・入浴」 です。“ゆあみ” ともいいます。
これの目的は ミソギ(禊・身濯ぎ/水濯ぎ)
と同じです。
■清に祈る (すがにいのる)
「身心を健やかにして神と交わる」 という意です。 ▶清(すが) ▶祈る
■敬ふ (うやまふ)
マツル(祭る)
の換言で、「あがめる・崇拝する」 の意です。
【概意】
君は問いて 「このように教えるは何神ぞ?」
答えて 「我は地つ神のオオモノヌシぞ。」
君は <オオモノヌシ神を> 祭るが、特に徴なし。
湯浴みして清に祈りて告げ申す。「我
敬えど、受けてもらえぬのか。」
―――――――――――――――――――――――――――――
このよのゆめに われはこれ おおものぬしの かみなるか
きみなうれひそ たせさるは わかこころあり
わかはつこ おおたたねこに まつらさは
ひとしくなれて とつくにも まさにまつらふ
―――――――――――――――――――――――――――――
この夜の夢に 「我はこれ オオモノヌシの 神なるが
君な憂ひそ 治せざるは 我が心あり
我が裔 オオタタネコに 纏らさば
ひとしく和れて 遠つ地も まさに服ふ」
―――――――――――――――――――――――――――――
■裔 (はつこ)
ハツ(▽派つ・▽発つ)+ツク(継ぐ) の短縮 “ハツク”
の名詞形で、
ハツ は 「離れる・分れる・出る」
などが原義。「分派・派生・枝分れ・子孫」 をいいます。
はつこ【裔】〈広辞苑〉
血筋のすえ。子孫。後裔。末裔。
■オオタタネコ・ヲオタタネコ・タタネコ
オミケヌシ
の子で、斎名は スヱトシ です。
他文献には 意富多多泥古命 /
大田田根子命 / 大直禰古命 などと記されます。
ソサノヲ────オホナムチ───クシヒコ──コモリ─┬カンタチ──フキネ (ヤヱ垣機) (初代オオモノヌシ) (2代) (3代) │ (4代) └ツミハ──┐ │ ┌──────────────────────────────┘ │ └クシミカタマ─アタツクシネ──タケイイカツ──建甕尻命 ・・・ ・・・ ┐ (5代) (6代) (食国臣初:以後世襲) タケミカジリ │ │ ┌─────────────────────────────────┘ │ └ミケヌシ─オミケヌシ─オオタタネコ <失脚・下野>
旧事紀は “建飯賀田須命の子”
と記しますが、建飯賀田須命 は タケイイカツ
と
同一人と考えられるため、カットしました。
■ひとしく和る (ひとしくなる)
御上/中央政府と 「一つにまとまる」 という意です。 ▶和る(なる)
これはさきの十九歌の中の “綴に纏らで”
の逆、つまり “綴に服ふ” と同義です。
更る民も 綴に纏らで 汚穢に乱るさ 〈ホ33-2〉
★ひとし (等し・一し)
ヒト(一)+し(▽如・▽然)
で、「一つの如し」 が原義です。
【概意】
この夜の夢に、
「我はこれ
オオモノヌシの神なるが、君よ心配するなよ。治まらぬ原因は我が想いにあり。
我が裔のオオタタネコに <我を>
纏らせば、国家は一つにまとまり、地方の国もまさに服う。」
―――――――――――――――――――――――――――――
はつきなか とはやかちはら めくはしめ
おおみなくちと いせをうみ みたりみかとに つけもふす
ゆめにかみあり たたねこお おおものぬしの いはひぬし
しなかおいちお おほやまと くにたまかみの いはひぬし
なさはむけへし
―――――――――――――――――――――――――――――
八月七日 トハヤがチハラ メクハシ姫
オオミナクチと イセヲウミ 三人 帝に 告げ申す
「夢に神あり タタネコを オオモノヌシの 斎主
シナガオイチを オホヤマト クニタマ神の 斎主
なさば平けべし」
―――――――――――――――――――――――――――――
■トハヤ
この人物については手がかりがありません。
トハヤという名から、「磯城の県主」
ではないかと憶測するのみです。
日本書紀は娘の名の一部として、“迹速”
と当てています。
クロハヤ──ハエ──ワカハヱ──ナガハヱ──オオメ ・・・ ・・・ トハヤ (推測)
■チハラメクハシ姫 (ちはらめくはしめ)
トハヤの娘です。日本書紀は父の名と合体させて、倭迹速神浅茅原目妙姫
と記します。
チハラ(茅原・千原) は 父の知行する 磯城県
の換言と考えています。
他の姫 (トト姫・モモソ姫・ワカヤ姫)
との混同が激しいです。
★メクハシ
メク+クハス(交はす)
の短縮 “メクハス”の名詞形で、メク は メグル(巡る・恵る)
の母動詞。
両語とも 「回す・巡らす・往き来させる・配る」
などが原義です。
■オオミナクチ
■イセヲウミ
「伊勢の国造」 を意味し、日本書紀には 伊勢麻績君
と記されます。
アメフタヱ や アメヒワケ
の子孫と考えています。
アメフタヱ──天波与命──アメヒワケ
・・・ ・・・ イセヲウミ (推測)
★ヲウミ (▽合績み)
オフ/ヲフ(合ふ)+ウム(▽結む・績む)
の短縮の名詞形で、
「結い合わす者・束ねる者・まとめる者」
を意味します。
神麻続機殿神社
(かんおみはたどのじんじゃ)
伊勢国多気郡。三重県松阪市井口中町字井出ノ里675。
現在の祭神:天八坂彦命
・【延喜式神名帳】麻続神社。御機殿(八尋殿)の鎮守の神をおまつりしているが、
古く麻績(おみ)氏がおまつりしていた社である。
■帝・御門 (みかど)
■斎主 (いはひぬし・いわひぬし)
同名の官職
もありますが、これは 「個別の神を纏る斎主」
をいうものと考えます。
■シナガオイチ・ナガオイチ
シ(‘する’ の連用形)+ナグ(和ぐ)+オイチ(大市)
で、「オイチを統べる者」 の意と考えます。
ナガオイチ とも呼ばれ、オイチ(大市) は 後に ハシ塚 (箸墓古墳)
が造られる行政区画です。
日本書紀には 市磯長尾市
などと記され、他文献によれば、
初代 大和国造シイネツヒコ(=ウツヒコ)
の7世の孫といいます。
シイネツヒコ─志麻津見─武速持─邇支倍─飯手─御物─シナガオイチ
■オホヤマトクニタマ (大和国魂)
オオクニタマ(大国魂)
の換言です。
【概意】
崇神7年8月7日、トハヤの娘のチハラメクハシ姫、
オオミナクチとイセヲウミの3人が帝に告げ申す。
「夢に神が現れ、タタネコをオオモノヌシ神の斎主に、
シナガオイチをオホヤマトクニタマ神の斎主となせば治まるべし」
と。
―――――――――――――――――――――――――――――
きみこれに ゆめあわせして ふれもとむ おおたたねこお
ちぬすえに ありとつくれは きみやそと ちぬにみゆきし
たたねこに たかこそととふ
―――――――――――――――――――――――――――――
君これに 夢合せして 触れ求む オオタタネコを
チヌスヱに ありと告ぐれば 君 八十と チヌに御幸し
タタネコに 「誰が子ぞ」 と問ふ
―――――――――――――――――――――――――――――
■夢合せ (ゆめあわせ)
■チヌスヱ
日本書紀は “茅渟県陶邑” と記します。後世は 和泉国
となります。 ▶チヌ
かつて スヱ
を治めていた スヱツミ
の娘の イクタマヨリ姫
は、
コモリ(斎名ミホヒコ)
の妻となって18男を生んでいます。
ですからコモリの子孫である タタネコ
は、スヱツミの家とは親戚関係です。
ミホヒコの妻 スヱツミが イクタマヨリ姫 十八子生む 〈ホ10-6〉
開化天皇がイキシコメを内宮に立てる際、それを諫めた オミケヌシは父と共に都落ち
しますが、その後この親子は親戚を頼って スヱ
に移り住んだものと推理しています。
オミケヌシの子 タタネコ が チヌスヱ で発見されたのは
そのためでしょう。
陶荒田神社
(すえあらたじんじゃ)
和泉国大鳥郡。大阪府堺市中区上之1215。
現在の祭神:高魂命、剣根命、八重事代主命
・大田々禰古命が祖先を祭るため、茅渟県陶邑に社を建てたのが起源とされる。
<筆者注> 剣根命 は
ヤスヒコ の孫。ヤスヒコ
の母はスヱツミの娘の ヤスタマ姫
です。
【概意】
君はこれに夢合せして、オオタタネコを求める触れを出す。
チヌスヱに居るとの報告を受けると、君は八十供を連れてチヌに御幸し、
タタネコに 「誰の子ぞ?」 と問う。
―――――――――――――――――――――――――――――
こたえには むかしものぬし すえすみか いくたまとうむ
ものぬしの おおみわかみの はつこなり
きみさかえんと たのしみて いきしこをして うらなはす
これまことよし よそかみお とえはふとまに 占悪ろし
―――――――――――――――――――――――――――――
応えには 「昔 モノヌシ スエスミが
イクタマと生む モノヌシの オオミワ神の 裔なり」
君 「栄えん」 と 楽しみて イキシコヲして 占わす
これまこと吉 よそ守を 問えばフトマニ 占悪ろし
―――――――――――――――――――――――――――――
■モノヌシ
3代オオモノヌシの コモリ(斎名ミホヒコ)
を指します。
■イクタマ
スエスミの娘の イクタマヨリ姫
の略です。
コモリの妻となって、男子のみ18人を生んでいます。
┌─────────┐ ├9.タケフツ ├10.チシロ ├8.ヤサカヒコ ├11.ミノシマ(ミゾクイ) ├7.ナラヒコ ├12.オオタ ├6.コセツヒコ ├13.イワクラ ├5.チハヤヒ ├14.ウタミワケ ├4.ヨテヒコ ├15.ミコモリ ├3.ヨシノミコモリ ├16.サギス スヱツミ─イクタマヨリ姫 ├2.ツミハ ├17.クワウチ ├──────┴1.カンタチ └18.オトマロ クシヒコ──コモリ
■イクタマと生むモノヌシ (いくたまとうむものぬし)
「コモリがイクタマヨリ姫と生むオオモノヌシ」
という意ですが、これは誰を指すのか、
けっこう難問です。コモリとイクタマの生んだ18男の中には、オオモノヌシはいないからです。
よってここは、「コモリとイクタマに連なる歴代のオオモノヌシ」
という意味に解釈する他は
ないかと思います。
┌ツミハ─────────クシミカタマ ソサノヲ──オホナムチ──クシヒコ(2代)──コモリ(3代) │ ↓〈養子〉 (初代オオモノヌシ) ├───┴カンタチ─フキネ(4代)─クシミカタマ(5代) スヱツミ─イクタマヨリ姫 │ │ ┌─────────────────────────────────────────┘ │ └アタツクシネ(6代)──タケイイカツ───建甕尻命 ・・・ ・・・ ┐ (食国臣初:以後世襲) タケミカジリ │ │ ┌──────────────────────────────┘ │ └ミケヌシ─オミケヌシ─オオタタネコ <失脚・下野>
■オオミワ神 (おおみわかみ)・オオミワの神 (おおみわのかみ)
オオ(皇)+ミハ/ミワ(▽見張)+カミ(神) で、「皇の守の神」
の意です。 ▶オオミワ
これは ミモロ神=オオモノヌシ神
の換言です。
■イキシコヲ
ヘソキネ
の子で、崇神天皇の母の イカシコメ/イキシコメ
の兄弟です。
記紀には 伊迦賀色許男命 /
伊香色雄 と記されます。
ホツマには説明がありませんが、この時の食国臣と思われます。 ▶食国臣
ニギハヤヒ─ウマシマチ─ヒコユキ┬イツモシコ ├イツシココロ─┬オオミナクチ └オオネ臣 └オオヤクチ─┬ウツシコヲ ├ウツシコメ └ヘソキネ─┬イキシコメ └イキシコヲ
【概意】
その応えには、
「昔
モノヌシのコモリが、スエスミのイクタマ姫と生む歴代モノヌシの、
オオミワ神(=オオモノヌシ神)の裔なり。」
君は 「栄えるぞ」 と楽しみて、イキシコヲをして占わす。
これまことに吉。他の守を問うとフトマニの占は凶であった。
―――――――――――――――――――――――――――――
めつきはつひに いきしこを やそひらかなし
これおもて おおたたねこお いわひぬし おおみわのかみ
なかおいち おおくにたまの いわひぬし
―――――――――――――――――――――――――――――
十月初日に イキシコヲ 八十平瓮 成し
これを以て オオタタネコを 斎主 オオミワの神
ナガオイチ オオクニタマの 斎主
―――――――――――――――――――――――――――――
■十月 (めつき)
■八十平瓮 (やそひらか)
「80枚の平たい器」 という意です。ヒラデ(枚手)
ともいいます。 ▶平瓮
ヤソ は ヤス(和す・安) の名詞形、ヒラカ は ヒラク(▽平く・開く)
の名詞形で、
国家が 「平和に発展してゆくこと」 を神に祈る モノザネ
なのでしょう。
かつて神武天皇は、“神を祭れよ 香具山の 埴の枚手に
ヒモロケ” という
夢の告げを受け、その通りに行って、敵軍との戦いに勝利しました。
以来、斎瓮は神への祈願に欠かせないものとなったようです。 ▶斎瓮
【概意】
十月初日にイキシコヲは八十の平瓮を造り、<これにヒモロケを据えて神に捧げ>
これを以て
オオタタネコをオオミワ神の斎主、ナガオイチをオオクニタマの斎主となす。
―――――――――――――――――――――――――――――
あまねくふれて かみあかめ かみなふみなす
かんへして やもよろかみお まつらしむ
ゑやみむけいえ そろみのり たみゆたかなり
―――――――――――――――――――――――――――――
あまねく触れて 神崇め 神名記 成す
神部して 八百万神を 纏らしむ
疫病 平け癒え ソロ実り 民 豊かなり
―――――――――――――――――――――――――――――
■神名記 (かみなふみ)
「神の名と纏られる社を記載した目録」 で、後に言う
「神名帳」 です。 ▶フミ
■神部・神侍 (かんべ)
カン(神)+ベ(侍・綜・部)
で、「神に仕えるモノノベ・神官」 をいいます。 ▶モノノベ
かんべ【神部】〈広辞苑〉
1.大和朝廷の祭祀に奉仕した神官。かむとも。
2.律令制で、神祇官に属して祭祀に奉仕した下級神官。定員三○人。
■八百万神を纏らしむ (やもよろかみおまつらしむ)
「八百万の神を宮・社に纏わせて崇める」
という意に解しています。
これにより、もともとは政庁・役所で、神を纏っていなかった宮や社にも、
ことごとく神が纏られて崇拝の対象となり、今日の状況につながります。 ▶宮 ▶社
■ソロ
【概意】
あまねく世に触れて神を崇め、神名記を作り、神職をして八百万神を纏らしめば、
疫病は平癒し、作物も実って民は豊かなり。
本日は以上です。それではまた!