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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第94回 [2023.12.15]
第十七巻 神鏡ヤタの名の文 (7)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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かんかがみやたのなのあや (その7)
神鏡ヤタの名の文 https://gejirin.com/hotuma17.html
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はたれかみ はるなすすみて ををんつけ
そらかみのれと すめらかみ つけなておらは おやおやや
あらこききてん おささすり あらさねたける これうんつ
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ハタレ頭 ハルナ進みて 大御告げ
「空神 宣れど 皇尊 告げなでおらば 親々や
新子 利きてん 長 擦り 新実 猛る これ倦づ」
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■ハタレ頭 (はたれかみ)
70万のハタレマを司る頭目は 9000人もいたわけですが、
ここに言うのは 「六ハタレの全軍を統べる大親分・総大将」
を指します。
■ハルナ
上の “ハタレ頭” の通称です。
ハルナは ハル(治る)+ナ で、「治める者・統べる者」
を意味します。
ナは ヲキナ(翁) や オサナ(幼)の
ナ と同じで、「〜なる者」 を表します。
ハルナはハタレの大親分であったため、その言葉遣いをフォーマルなものでなく、
やや低俗で庶民的なものにして、元ハタレの雰囲気を演出しています。
■大御告げ (ををんつげ)
“告げ” の最上級の尊敬/謙譲語で、
この場合は 「アマテル大御神に対しての告げ」
をいいます。 ▶ををん
■空神 (そらかみ)
「空(うつほ)の神・目に見えないカミ(上・尊)」
という意で、
“陽陰の心派” “陽陰の見付け”
の換言です。すなわち 「風神と埴神」
をいいます。
空は陽陰の 心派の 常に巡れど 見えなくて 〈ホ17-3〉
■宣る・告る (のる)
“空神宣れど” は
「陽陰の心派が犯人をその長に告げたとしても」
という意で、
これはアマテルの次の文言に対してのものです。
品により 陽陰より君に 告げあるぞ 〈ホ17-6〉
■皇尊 (すめらかみ・すべらかみ)
「国家を統べる御上」
という意で、「中央政府の君・国家君主」 をいいます。
★皇 (すめら・すべら)
スメルの名詞形で、スメルは スベル(統べる)、シメル(締める)
などの変態です。
「まとめ・統治、またそれを行う者」 が原義です。“スメ/スベ”
ともいいます。
「中央政府/朝廷の君」 をいう場合に “皇”
を当てています。
“皇尊告げなでおらば” は 「皇君が御言宣(命令)を下さないならば」
という意です。
これは、空神からの告げにより
長が犯人とその犯行を知っても、本人の自白以外の
証拠はないため、「皇君が御言宣して、こうした場合の対処法を法制化しなければ」
という意味です。そんなことは不可能なわけですが。
■親々 (おやおや・をやをや)
「両親・二親」 をいいます。 ▶親・祖
(をや)
通常は “をやをや”
と表記するところですが、元ハタレの言葉ですから、
わざとフォーマルな表記とせず、“おやおや”
としているものと考えます。
■新子 (あらこ)
さきにアマテルが、曲松の若芽を アラコ(新木)
と表現したことに合せて、
「人の若芽」 をアラコ(新子)と表現しているのでしょう。
「すでに曲った親から生える、まだ曲ってない新芽」
を意味します。
■利きてん (ききてん)
「きっと利口になるだろう・悪賢くなるにちがいない」
などの意です。
キク(利く)+テン/テム(助動詞)で、キクは
ここでは 「気転が利く」
の意。
このキクの名詞形が キキ(利き)
です。
■擦る・摩る
(さする)
サス(▽擦す)+スル(擦る・摩る) の同義語短縮で、両語とも
「それる/そらす」 が原義です。
ここでは 「(目を)そらす・ごまかす」 などの意です。
■新実 (あらさね)
サネ(実・核)は
「中心・本質」 が原義で、この場合は 「心」
の換言です。
ですから 「新子の心」 をいいます。
余談ですが、おそらくシン(心・芯・真)は サネの変態です。
■猛る (たける)
新子の心が 「荒猛となる」 という意です。 ▶荒猛心
■倦づ・倦ず
(うんづ・うんず)
“倦む” と同義で、“うんざり”
の母動詞です。
【概意】
ハタレの大頭だったハルナが進み出て大御神に告げる。
「陽陰がその長に告げたとしても、皇が御言宣して
そうした場合の対処法を法制化せずにいるならば、
親々や新子はきっと悪賢くなるだろう。
長の目をごまかすようになり、新子の心は荒猛となる。
そうなると長はうんざりする。」
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あなとるすりら ねしけます さそあしなんと はにしらん
いやすりたける これふんた しゐはふすりも おたけんは
つらもかたるも わけらんや
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「侮るスリら ねじけ増す “さそ足 何ど 埴 知らん”
いや擦り猛る これ踏んだ しゐ生ふスリも お猛んば
面も語るも 分けらんや」
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■スリ (擦り・摩り・摺り)
スル(擦る・摩る)
の名詞形で、「すれ・ずれ・逸れ・反り・曲り」
などが原義です。
ここでは 「すれ者・逸れた者・曲りはずれた者・くせ者」
などをいいます。
スリ(掏摸)
も同源で、“あばずれ”
の ズレ も スリの変態です。
■さそ足 (さそあし)
サシアシ(差し足)
の変態で、スリアシ(摺り足)
ともいいます。
「床をさするように歩くこと」
をいい、これは先に出てきた “ぬき足”
の換言です。
★サソ
サス(▽擦す)の名詞形で、スリ(擦り・摩り・摺り)と同義です。
サス(▽擦す)+スル(擦る・摩る) の短縮が サスル(摩る・擦る)
です。
■何ど (なんど・など)
ナニト(何と)
の音便で、今風には 「なんで・どうして」
となります。
ナンド は ナド と詰まり、ナド は ナゼ(何故) や ナゾ(謎)
とも変じます。
“さそ足 何ど埴 知らん” は
「差し足からどうして埴神が知り得ようか」 の意で、
これは 三つ知る告げ
の 2に対応した発言です。
■いや擦り猛る (いやすりたける)
「いよいよすれて心が荒猛(=狡猾)となる」
という意です。
■しゐ生ふ (しゐばふ)
「下/末に生える」 という意です。
ですから “しゐ生ふスリ” は
「年少のすれ者・すれ始めの新子」 を意味します。
“しゐ生ふ” の変態 “すゑ生ふ” の名詞形が スワエ(楚・楉・杪)
で、別名シモト(楉)
です。
★しゐ (▽垂・▽末・▽下・魄)
スユ(饐ゆ)
の変態 “シユ” の名詞形で、「落ちるさま・下・末」
などが原義です。
ですから シヰ は スヱ(末) や シモ(下) の変態です。
“魄” は 天地創造の過程で下に降った
「陰」 を意味します。
■お猛んば (おたけんば)
「荒猛(=狡猾)になるだろうから」 という意です。
★お猛く・お焚く・お長く (おたく)
オツ(▽秀つ)+タク(長く・焚く) の短縮で、
両語とも 「高まる・勢いづく・いきり立つ・勇む」
などが原義です。
■面も語るも分けらんや (つらもかたるもわけらんや)
「表情や言動から(白黒を)判別できようか」
という意です。
これは 三つ知る告げ の
3に対応した発言です。
【概意】
「(倦んだ長を)あなどってスレ者たちはねじけを増す。
“差し足からどうして埴神が知り得ようか”
と、いよいよすれて狡猾となる。
これを踏まえた年少のすれ者も 狡猾になるだろうから、
被疑者の表情や言動から白黒を判別できようか。」
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すへかみそらに しらせぬは あらこすりなる
これみうん さそらききてん おのかへら
なんますこちに わさつけて そらつかまんと みちひねり
むたひたたかひ なしたれと まさくることは いかならん
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「皇尊 空に 知らせぬば 新子スリなる
これみうん サソら利きてん 己が侍ら
七十万九千に 技付けて 空 掴まんと 道ひねり
六度戦ひ なしたれど まさぐる如は 如何ならん」
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■皇尊 (すべかみ・すめかみ)
スメラカミ/スベラカミ(皇尊)
と同じです。
「国家を統べる御上」
という意で、「国家君主・中央政府の君」 をいいます。
★皇・統 (すべ・すめ)
スベは スブ(統ぶ・総ぶ)の名詞形で、スメは
スベ や シメ(締め) の変態です。
「まとめ・統治、またそれを行う者」 が原義です。“スメラ/スベラ”
ともいいます。
「中央政府/朝廷の君」 をいう場合に “皇”
を当てています。
■空 (そら)
空(うつほ)
の換言で、この場合は 「人間が住む地上の空間」 をいい、
アメガシタ(天が下)と同じです。つまり
「天下・世・国・国家」 などをいいます。
■知らせぬば (しらせぬば)
「告げねば・号令しなければ・命令を下さなければ」
という意です。
■みうん
これはまだ思案中ですが、ミ(見)+ウム(熟む)
の音便で、
「面倒見て熟成させる・育成する」
などの意と考えています。
■サソ
サス(▽擦す)の名詞形で、「すれ・ずれ・逸れ・反り・曲り」
などが原義です。
この場合は 「すれ者・逸れた者・曲り外れた者・くせ者」
などをいいます。
ですから スリ(擦り)と同じです。またハタレも同じです。
■利きてん (ききてん)
■侍・綜 (へ・べ)
ヘル(綜る)、ヘス(圧す)
などの名詞形で、
「合わせ・添え・付き・ガイド・ガード」
などが原義です。
「侍る者・付く者・仕える者・守る者」 をいい、“部・衛・兵”
とも当てます。
■七十万九千 (なんますこち)
「六ハタレの軍勢の総員数」
をいいます。
ナナマスココチ、ナナハカリコチ、ナハカリコチ
とも表現されています。
マスは 「100,000」 を表す数詞で、ハカリともいいます。
■まさぐる
マス(申す・▽回す)+クル(繰る・▽転る)
の連結で、両語とも 「回る/回す・往き来する/させる」 を
原義とし、「還る/還す・繰り返す・元に戻る」
などの意を表します。
この場合は 「何度やっても元に戻る」
という意で、「失敗を繰り返す」 ことをいいます。
マサグル(弄る) も同源です。
■如何ならん (いかならん)
「如何にあらん・いかなることか・どうしてなのだろう」
などの意です。
【概意】
「ゆえに皇尊が天下に号令しないかぎり新子はすれ者となる。
これ(=すれた新子)を育成したハタレどもは
さぞかし悪賢いだろうと、
自分の兵70万9千に技を付けて、天下を掴もうと方法を工夫し、
6度の戦いをなしたれど、失敗を繰り返したのはどうしたわけだろう?」
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そのときかみは にこゑみて
またはなとるな たたこころ しつめてきけよ
おのかとき さかりあさむく むくひあり ゆえおきかせん
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そのとき神は にこ笑みて
「また跳躍るな ただ心 静めて聞けよ
己が鋭き 逆り欺く 報ひあり 故を聞かせん」
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■跳躍る (はなとる)
ハヌ(跳ぬ)+トル(▽躍る)
の連結で、「跳ねて躍る・勢いづく・興奮する」
などの意です。
ですから “跳躍るな” は 「興奮するなよ・静まれよ」
という意味ですが、
これにはアマテルのユーモアが入っています。
“跳ねて躍るさま” は “疾し激しのさま”
ですから 荒猛
と同じなのです。
そして荒猛は 「ハタレが持つ性質」 です。
ですから
「興奮してまた荒猛のハタレに戻らないでくれよ」
ということを、
ハタレの元大親分に冗談ぽく言ってるのです。
ヲシテ3書の中でアマテルのユーモアを垣間見せてくれる唯一の箇所です。
■鋭き・鋭 (とき)
トシ(利し・鋭し・疾し)の連体形の名詞化で、「明敏・利発・鋭利」
などを意味し、
キキ(利き)と同義です。
■逆り欺く (さかりあざむく)
サカル(逆る)+アザムク(欺く)
の同義語連結で、両語とも
「逆に行く・逆らう・背く・裏切る」 などの意です。
■報ひ (むくひ)
ムカヒ(向かひ)の変態で、「対応・対抗・反動・反作用」
などを意味します。
【概意】
そのとき神は にっこり笑み、
「また荒猛のハタレに戻るなよ。(^_-) ただ心を静めて聞けよ。
自分の鋭利さには それに逆らい背く反作用があるのだ。
その理由を聞かせよう。」
本日は以上です。それではまた!