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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第36回 [2023.9.4]
第八巻 霊還しハタレ打つ文 (3)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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たまかえしはたれうつあや (その3)
霊還しハタレ打つ文 https://gejirin.com/hotuma08.html
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むつのはたれは やまたあり ここちつかさに ななはかり
むれあつまりて かきやふり むらくもおこし ほのほふき
つふていかつち くにゆすり たみおゆすりて せめよする
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六つのハタレは ヤマタあり 九千司に 七ハカリ
群れ集りて 垣破り むら雲起こし 炎吹き
つぶて 雷 地 搖すり 民を揺すりて 迫め寄する
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■六つのハタレ (むつのはたれ) ■六ハタレ (むはたれ)
シムミチ、ハルナハハミチ、ヰソラミチ、キクミチ、ヰツナミチ、アヱノミチ
の
6つの ハタレ霊
と、それに干渉を受けて操られている
人や動物の軍団をいいます。
■ヤマタ (▽病曲/八岐)
ヤム(病む)+マツ(▽曲つ) の短縮 “ヤマツ”
の名詞形で、ヤマヒ(病) と同義です。
「逸れて外れるさま・並外れるさま・普通じゃないさま・異常」
などを意味します。
そしてそれを ヤマタ(八岐) にかけて、「8つに分岐する怪物」
を思わせるように、
意識的に仕向けていると考えます。イメージ誘導 です。
有名なヤマタノオロチもそうですし、アマテルの岩戸隠れ、山幸彦の龍宮行き
なども
そうですが、ホツマにはこうした “遊び心”
があちこちに見られます。そして読む者は
まんまとそれに引っかかるわけですが、そのファンタジー的な要素はおもしろいだけ
でなく、童話となって広く末永く伝承され、子供たちの記憶の奥深くにしっかり根付く
という効果があります。現に今の我々も、そうしたものを元として新たなファンタジーや
陰謀論を創作し、映画のネタにしたりして、楽しんだり儲けたりしているわけです。
★ハカリ (量・秤) ★マス (升・枡)
“ハカリ” は 100,000 を表す 数詞
です。“マス” ともいいます。
おそらく ハカリ は 「量り・秤」、マス は 「枡・升」
の意で、米や酒などのカウント
しにくい量 (無数量) をハカルのに、枡(マス)
を用いたことに関係すると考えます。
■垣 (かき)
カク(▽画く)
の名詞形で、「分け・隔て・限り・境界・囲み」
などを意味します。
カゴ(籠)、カキ(牡蠣)、カヰ(貝) などの変態です。
■むら雲 (むらくも)
「ムラムラとにわかに沸き起こる雲」 をいいます。 ▶むらむら
クモ(雲) は クマ(隈)
の変態で、「曲り・逸れ・外れ・不調/異常」
などが原義。
ヲヱ(汚穢) の換言です。
■炎 (ほのほ)
「陽の放つもの」 という原義で、「光・熱・匂い」
などをいいます。
ホ(穂)+の+ホ(放・発) で、ホ(穂) は 天地創造の過程
で上昇した ヲ(陽) の変態。
ホ(放) は 「放ち・放射」 を意味します。
■つぶて (飛礫・礫)
ツブ(粒)+ブツ(打つ・撃つ)
の短縮 “ツブツ” の名詞形で、「粒打ち」 の意。
ツブ(粒) は
ツム(詰む)・ツブ(禿ぶ)
の名詞形で、「凝縮したもの」 が原義です。
■雷 (いかつち)
イカツ(厳つ)+チ(霊)
で、「荒々しい神・きびしい神・こわい神」
などの意です。
【概意】
6つのハタレは並外れていた。
9千の司に70万人が群れ集って、垣を破ってむら雲を起し、炎を吹いて、
つぶてを飛ばし、雷を落として大地を搖すり、民を威しながら迫り来る。
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あまてるかみは さくなたり はやかはのせに みそきして
はたれやふるの ましないの たねおもとめて さつけます
もろかみうけて これおうつ
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アマテル神は さくなだり 速川の瀬に 禊して
“ハタレ敗る” の まじないの 種を求めて 授けます
諸守受けて これを打つ
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■さくなだり
サク(咲く・▽栄く・幸く)+ナダル(傾る)
の名詞形で、「激しく下るさま」 を意味し、
セ(背/瀬)
にかかる枕言葉です。これはアマテルが速川の瀬で禊していた時、
まるで滝を落ち下る水のように、急激に川下に流されたことに由来します。
昔
ハタレを 敗らんと 禊なす時 神の裳の 岩に懸かりて
ひた引けば 滝落ち下る “さくなだり” 〈ホ28-8〉
■速川の瀬 (はやかはのせ)
ハヤカハ(速川・早川) は 「流れの速い川・急流」 をいい、
セ(瀬) は この場合は、“川” の換言です。 ▶川
なので訳し方が難しいですが、「速川の流れ」
とでもしておきます。
★瀬 (せ)
セ(瀬) は セツ(▽接つ)
の名詞形で、「接する所・分け目・境界・際・節・限」
などを原義とし、セツ(節・切)・セチ(節)・セト(瀬戸)
などの短縮形です。
川や海なども 「陸地を分ける境界」 ですから、“瀬”
と呼ばれます。
■まじないの種 (まじないのたね)
ハタレを敗る言霊 (言葉のエネルギー)
を持つ、「素材・ネタ・モノザネ」 をいいます。
▶まじない ▶種 ▶モノザネ
【概意】
アマテル神は速川の流れに禊して、
“ハタレ敗る” のまじないの種を求めて授けます。
諸守はこれを受けて敵に打つ。
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はたれしむみち なすわさに やまかわあふれ うおろちか
ほのほおはきて おとろかす かなさきしはし たちかえり
あめにつくれは ををんかみ たまふかたすす わらひなわ
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ハタレシムミチ なす技に 山川あぶれ 大蛇が
炎を吐きて 驚かす カナサキしばし 立ち帰り
陽陰に告ぐれば 大御神 賜ふ “葛末” “蕨縄”
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■シムミチ
■なす技 (なすわざ)
邪霊シムミチが、その “神力”
によって放つ 「幻術・トリック」 です。
■あぶる・あふる
(溢る)
その状態が 「限度を越える・枠からはみ出す」
などの意で、アバル(暴る)
の変態です。
■大蛇 (うおろち)
ウ(大)+オロチ(蛇)
で、この場合は 「巨大なヘビ」 を意味します。
■立ち帰る
(たちかえる)
この タツ(立つ) は タダ(直)
の母動詞で、「すぐに帰る・ただちに戻る」 の意です。
■大御神 (ををんかみ)
■葛末 (かだすす)・末葛 (すすくず) ■蕨縄 (わらびなわ)
カダスス は 「葛の蔓の末」、ワラビナワ は
「蕨の根茎で作った縄」 をいいます。
この2つは シムミチを退治するために カナサキに授けた まじないの種
で、
アマテルが速川の瀬で禊して激流に流された後の、一連の偶然により得たものです。
カダは 葛(かつ・くず)
の変態。
スス は スス(煤す)
の名詞形で、スソ(裾)
の変態。「末・隅・下・端」 を意味します。
陽陰に祈れば 屑 流れ 蛇
足を噛む 追い詰めて 留まる蕨で 括り棄つ
裳裾の屑に 敗るゆえ 末葛
用い これを治す シムミチ敗る 器 得る 〈ホ28-8〉
【概意】
邪霊シムミチのなす幻術に、山川は暴れ、大蛇は炎を吐いて驚かす。
カナサキはしばし立ち返り、アマテル神に報告すれば、
大御神は “葛末” と ”蕨縄” を賜う。
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かなさきうけて せめくちの もろにさつけて ましなえは
はたれのものの わさならす
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カナサキ受けて 攻め口の 諸に授けて まじなえば
ハタレのモノの 技 成らず
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【概意】
カナサキはそれを受けて、最前線の諸兵に授け、
その言霊を打てば、邪霊の幻術はならず。
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にけんとすれと かみいくさ かちていけとる はたれまお
かわくひてりに つなきおき ついにいけとる はたれかみ
つつかにおきて みちものま しむにあつけて もろかえりけり
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逃げんとすれど 上軍 勝ちて生け捕る ハタレマを
乾く日照りに つなぎ置き ついに生け捕る ハタレ頭
ツツガに置きて 三千モノマ シムに預けて 諸
帰りけり
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■上軍 (かみいくさ)
「官軍・公儀の軍」 の意です。
カミ(上) は ここでは 御上
の意で、カミ(上) が カン(官) や コウ(公) に変形します。
★軍/戦 (いくさ)
イク(▽射く)+クス(▽交す) の短縮の名詞形で、イク は
イクフ(射ふ) の母動詞、
クサ は クサリ(鎖) の母動詞。どちらも
「合い・あたり・結び・交じわり」 などが原義です。
「合い結ぶさま・集合・群団」
の意と、「合い交わるさま・合戦・交戦」
の意があります。
X (エクス・イクス) も同源!?
いくう【射ふ】〈広辞苑〉
射る。射かわす。
■ハタレマ ■モノマ
ハタレ+マ(身) で、マ は ミ(身)
の変態です。
ハタレのモノ
に憑依支配されて 「その手足となって動く身 (人や動物)」
をいいます。
モノマ とも呼ばれます。
ま【身】〈広辞苑〉
「み」 に同じ。四時祭式「大御(おおみ)―」
■ハタレ頭 (はたれかみ)
「ハタレマ の かしら」 をいいます。これは人間です。
ハタレ○○ というのがたくさん出てきます。
けっこう紛らわしいので、気をつけてください。
■ツツガ (恙)
■モノマ
ハタレのモノ のマ(身)
の略で、ハタレマ の換言です。
■シム (▽染・▽親)
ここでは 「馴染みの者・同類・たぐい」
の意で、「仲間・同朋・同業の者」 などを意味します。
【概意】
逃げんするも官軍が勝り、生け捕りにしたハタレマを
乾く日照りに縛り置き、<それを囮に>
ついに生け捕るハタレマの頭。
ハタレ頭は拘置所に置き、他の3,000人のモノマはその地の同朋に預けて、
諸は帰るのであった。
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しかるのち またはやきしは
おおはたれ ねのたてやまにあらはれて あのにいたれは
かみはかり ふつぬしやりて これおうつ
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しかる後 また早雉は
大ハタレ 根の立山に 現れて アノに到れば
守諮り フツヌシ遣りて これを打つ
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■根の立山 (ねのたてやま)
根の国 の 立山
です。関係あるかどうかわかりませんが、
これは クラ姫
が クラキネ
の亡骸を納めた山でした。
■アノ (安濃・▽天野・▽上野)
現在も 三重県津市に安濃町
という名が残っていますが、もともとは
「天の野・上の野」 の意で、「アマテルの坐す地」
、すなわち 「イセの国」 の別名です。
阿坂 (あさか:天の境)、また 阿拝国 (あえくに:三重県上野市の古名)
とも呼ばれました。
■フツヌシ
■打つ (うつ)
ウツは “撃つ・討つ”
などとも当て字されているため、「叩く・攻撃する」
のイメージに
捉えがちですが、「合わす・当たる/当てる・対応する」
などが原義です。
それゆえ (御上
が行う場合は特に)
「治める・鎮める・平定する・退治する」 などの意に
捉えるべきかと思います。
【概意】
しかる後 また急伝の使が、
「大ハタレが根の立山に現れてイセの国に到る」
と告げれば、
諸守は緊急に会議し、フツヌシを派遣してこれに対応する。
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ときにはたれの いそらかみ のやまおかゑて むらくもや
いくひかかやき おとろかし とけやはなせは ふつぬしか
てにとるときに ゆひやふれ まつはせかえり あめにつく
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時にハタレの イソラ醸み 野山を変えて むら雲や
幾日輝やき 驚かし 棘矢放せば フツヌシが
手に取る時に 指破れ まず馳せ帰り 陽陰に告ぐ
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■イソラ醸み (いそらかみ)
ヰソラミチ
の換言です。
カミ(醸み・▽上み) は 「熟成・成熟」 を表し、ミチ(満ち)
と同義です。
■幾日 (いくひ)
「幾つもの太陽」 の意と思います。
■棘矢 (とげや)
不詳ですが、「矢柄にトゲトゲの付いた矢」 でしょうか。
■馳せ帰る (はせかえる)
ハス(馳す)
は ハシル(走る) の母動詞で、「急ぐ・ハッスルする」
が原義です。
はせかえる【馳せ帰る】‥カヘル 〈広辞苑〉
かけて帰る。走って帰る。また、馬を走らせて帰る。
【概意】
時に邪霊のイソラミチは、<幻術で>
野山の景色を変じ、
むら雲を起こし、また幾つもの太陽を輝かせて驚かす。
また棘矢を放つため、フツヌシはそれを手で取る時に指を負傷。
ひとまず馳せ帰ってアマテル神に報告する。
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きみかんかゑて いそらみち をこしとふきと たまはれは
ふつぬしもろと ゆかけして さらにむかいて やおもとむ
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君 考えて イソラミチ 粔籹と蕗と 賜われば
フツヌシ諸と 弓懸して 新に向かいて 矢を求む
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■粔籹・輿
(をこし・をこせ) ■蕗
(ふき)
これもアマテルの まじないの種
です。
どういう言霊を持つのかを示す記述は見当たりませんが、
ヲコシは “起し・熾し”、フキは “吹き・噴き”
のモノザネだろうと思います。
ヲコシ は ポップコーン の “ポップ”
と同じで、「発泡・噴出」 を意味します。
ですから フキ(吹き・噴き) と同義です。
■弓懸 (ゆがけ)
ユミガケ の短縮ですが、この ユミ は ユビ(指)
の変態です。
ですから本来は 「指懸け・手袋」 の意です。
■新に・更に (さらに)
ここでは 「あらためて・あらたに」という意です。 ▶さら
【概意】
アマテル君は考えて、イソラミチに対して粔籹と蕗とを賜わると、
フツヌシは諸と弓懸をして、あらためてハタレに向かい矢を求める。
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はたれおもえり やにあたり よみかえるかや いたまぬか
ふつぬしいわく ゆかけあり なんそいたまん うけよとて
ははやはなせは はたれとる ともにわらいて
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ハタレ思えり 「矢に当り よみがえるかや 痛まぬか」
フツヌシ曰く 「弓懸あり なんぞ痛まん 受けよ」
とて
ハハ矢放せば ハタレ取る 共に笑いて
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■思えり (おもえり)
オモフ(思ふ)+ナリ の短縮形です。
【概意】
ハタレは思うなり、「矢に当ってよみがえるかや。痛まぬか。」
フツヌシ曰く 「弓懸あり。どうして痛もうか。受けよ」
とて
ハハ矢を射れば、ハタレはその矢を手で取る。互いに笑って、
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みやけあり かみよりをこせ たまはれは
はたれよろこひ かみいかん わかすきしるや
またいわく なんちもしるや
こたゑねは わらつていわく ころすなり
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「みやげあり 神より粔籹 賜れば」
ハタレ喜び 「神 如何ん 我が好き知るや」
また曰く 「汝も退るや」
答えねば 笑って曰く 「殺すなり」
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■みやげ (土産)
「回す物・運ぶ物・伝える物」 などが原義で、ツト(苞)
の換言です。
ミ(‘回る’
の連用形)+ヤク の連結 “ミヤク” の名詞形で、ヤク は
ユク(往く・行く)
の変態。
両語とも 「回す・往き来させる・運ぶ・伝える」
などが原義です。
■退る (しる)
シリゾク(退く) の母動詞です。
ハタレの言葉 “我が好き知るや” の、シル(知る)
にしゃれての表現です。
【概意】
「みやげあり。神より粔籹を賜ったのでな。」
ハタレは喜んで 「神はどうして我が好物を知るや?」
またフツヌシ曰く 「汝も退るか?」
答えないので笑って曰く 「ならば殺すなり。」
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はたれいかつて なにゆえそ
なんちほこりて はくるゆえ いそらうつなり
なおいかり いわおけあけて ののしれは
ふつぬしをこせ なけいるる
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ハタレ怒って 「なにゆえぞ」
「汝ほこりて 化くるゆえ イソラ打つなり」
なお怒り 忌を蹴散けて 罵れば
フツヌシ 粔籹 投げ入るる
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■ほこりて化くる (ほこりてばくる)
ホコル は “誇る” と同一ですが、これは
「高まる・増長する・進展する」 などが原義です。
バクル は バク(化く)
の連体形で、今風には “化ける” です。
ですから 「増長して化ける」 という意味ですが、これは
「人が邪霊の干渉によって反り曲り、その程度が進んで化け物になる」
という意味です。
■イソラ
ここでは 「化けの原因であるイソラ」 という意味です。
■忌を蹴散く (いわおけあく)
「汚穢をまき散らす」 の意です。
イワ(▽忌)
は ヲヱ(汚穢) や アオ(阿汚) の換言です。
ケアク は ケル(蹴る)+アク(▽散く・▽分く) の連結で、“蹴散らす”
と同じです。
アク は アカル(散る・分る)
の母動詞です。
ソサノヲは 忌を蹴散らし なお怒る 〈ホ7-4〉
■罵る
(ののしる)
「鳴り響かす・大声でわめき立てる・怒鳴る」
などの意です。
ノヌ+シル で、ノヌ は ノル(宣る)・ナル(鳴る)
などの変態。
シル は スル(擦る) の変態。両語とも
「往き来する・めぐる・響く」 などが原義で、
ノノメク・ワメク・ドヨメク・トドロク
などの換言です。
【概意】
ハタレは怒って 「なにゆえぞ !?」
「汝は増長して化けてるだけだから、化けの源の邪霊を打つのよ。」
さらに怒り、汚穢をまき散らしてわめくため、フツヌシは粔籹を投げ入れる。
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はたれまうはひ あらそえり みかたはふきお たきいふす
はたれむせんて しりそくお おひつめしはる ちはたれま
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ハタレマ奪ひ 争えり 御方は蕗を 焚き燻す
ハタレ咽んで 退くを 追い詰め縛る 千ハタレマ
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■ハタレマ
■御方 (みかた)
ミ(御) は カミ(上・神) の略形で、「御上の方・官軍側」
という意です。 ▶御上
★方・片 (かた)
カツ(▽割つ) の名詞形で、「分割・区分・区画」
が原義です。
■ハタレ
この場合は “ハタレマ” の略です。
■咽んで (むせんで)
“むせびて” の音便です。
★むせぶ (咽ぶ)
ムス(咽す)+セブ
で、ムス は ムスブ(結ぶ) の母動詞、セブ は セム(迫む・逼む)
の変態。
「結ぶ・締まる・塞がる・詰まる」
などが原義で、ここでは 「息が詰まる」 の意です。
【概意】
ハタレマはそれを奪い争うなり。その間に御方は蕗を焚き燻す。
ハタレがむせて退いたところを追い詰め、千人のハタレマを拘束する。
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これもひるねと なおいさみ よもよりかこみ
いそらかみ ついにしはりて つつかなす
ちものものまも そのくにの しむにあつけて もろかえりけり
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これも昼寝と なお勇み 四方より囲み
イソラ頭 ついに縛りて ツツガなす
千百のモノマも その国の シムに預けて 諸 帰りけり
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■昼寝 (ひるね)
「昼寝のようにたやすいこと」 「退屈しのぎ」
みたいな意味だと思います。
■イソラ頭 (いそらかみ)
イソラ と ハタレ
は同義語で、この場合は ハタレ頭
の換言です。
■ツツガなす
「勾留する・拘置する・拘置所に入れる」
という意です。 ▶ツツガ
■モノマ
【概意】
これしきは昼寝のようなものと、さらに勇んで四方より囲み、
ついにハタレマのかしらを縛って拘置する。
1,100人のモノマも
その地の同朋に預け、諸は帰るのであった。
本日は以上です。それではまた!