⇦前の講座          目次           次の講座⇨ 

 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

一から学ぶ ほつまつたえ講座 第158回 [2024.6.7]

第二八巻 君臣 遺し宣りの文 (8)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 きみとみのこしのりのあや (その8)
 君臣 遺し宣りの文 https://gejirin.com/hotuma28.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

―――――――――――――――――――――――――――――
 さるたひこ みそきにあわの むなさわき ふとまにみれは
 ゐむのみは かかみゑゑなる なかひとり うれひありとて
 これまつり うけぬうれいと おとろきて うちにいたれは
 みかさやま なおはせのほる かすかとの

―――――――――――――――――――――――――――――
 サルタヒコ “禊に泡” の 胸騒ぎ フトマニ見れば
 “斎むの身” は 『鏡老なる 名が一人 憂ひあり とて
 これ纏り 受けぬ憂い』と 驚きて ウチに居たれば
 ミカサ山 なお馳せ上る カスガ殿

―――――――――――――――――――――――――――――

■禊に泡 (みそぎにあわ)
「川や海の水で禊している時に多くの泡が立つこと」 をいうと思われ、 ▶ミソギ
不吉の前兆として広く世に認知されていたものと考えます。努力が “水の泡” ということでしょうか。


■フトマニ見る (ふとまにみる)
「言葉を見る・言葉によって本質を知る」 という意です。 ▶フトマニ


■斎むの身 (ゐむのみ)
イム/ヰム(斎む)は 「合わす・直す・調える・清める」 などが原義です。
ですから 「身の清め」 をいい、つまり ミソギ(禊) の換言です。
ミソギの泡に胸騒ぎを覚えたサルタヒコは、“ミソギ” の換言の “ヰムノミ” という言葉で
占ったということでしょう。 ▶占ふ


■鏡老・鏡翁 (かがみゑゑ)
ヱヱは ヱユ(▽熟ゆ)の名詞形で、ヲヰ(老い)の変態です。
ですからヱヱは 「老熟の者・翁」 を意味します。
“鏡老・鏡翁” は、鏡の臣として3朝に仕えた 「アマノコヤネ」 を思わせます。 ▶鏡の臣


憂ひ (うれひ)
「曲り・逸れ・外れ・不調/異常」 などが原義です。 ▶憂ふ


■纏り受けぬ (まつりうけぬ)
マツリ(纏り)は 「取りまとめ・治め・手当・処置・ケア」 などを意味します。
ですから 「手当/処置を受け付けぬ・手の施しようがない」 という意です。


■ウチ (内・宇治)
アマテル最後の宮であった “サコクシロ、改め ”アマテル神のつ宮” の略称です。
後世は ウヂ(宇治) となります。
この時期のサルタヒコは、アマテルより3つの遺品を預ったことに鑑み、妹背の道を得ようと、
ウチで 八百継がふ守 の1人として 上翁 (=コヤネ) の教えを受けていたと考えられます。

 またサルタ 昔 授くる サカホコキ うつくしき鈴 ワイキタチ
 “かかんのんてん” 時待ちて 道 現せよ 〈ホ28-4〉


ミカサ山 (みかさやま)

■カスガ殿 (かすがとの)
ミカサ社 の別名です。 ▶ミカサ社

 

【概意】
サルタヒコは 禊して泡が立つことに胸騒ぎを覚え、フトマニを見れば、
“斎むの身” は『鏡老なる名の者が一人憂いあり。とてこれは纏りを受けぬ憂い』と、驚いて
ウチに居たればミカサ山に急ぎ、さらにカスガ殿へと馳せ上る。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 はやかりおさめ もなかゆえ ともにもにいり みこしなし
 あすひらおかに おくるとき さるたかこえは ゆるされて
 みこしあくれは さるたひこ われつねにこふ たまかえし
 おゐゑとふたゑ ひふみあり いまわれひとり うけさると
 ちちにそくやむ

―――――――――――――――――――――――――――――
 早や仮納め 喪中ゆえ 共に喪に入り 神輿成し
 明日ヒラオカに 送る時 サルタが乞えば 許されて
 神輿 開くれば サルタヒコ 「我 常に乞ふ 霊還し
 オヰヱとフタヱ 霊文あり 今 我一人 受けざる」 と
 散々にぞ悔やむ

―――――――――――――――――――――――――――――

■仮納め (かりおさめ)
「仮の喪儀」 という意です。 ▶納む
語義的には少し違いますが、カリモガリ(仮殯)と同じと考えていいと思います。

 ★仮 (かり)
 カル(駆る・▽転る)の名詞形で、「往き来・回転」 を原義とし、
 「移ろうさま・一時的なさま」 を表します。


■神輿・御輿 (みこし)
ミ(▽上・御・神)コシ(輿) で、コシ(輿)の尊敬語です。
この場合は、神となったコヤネ(死んだコヤネ)を運ぶ輿であるため、“神輿” と当てています。


■ヒラオカ (▽翻送)
ヒラは ヒルガエル(翻る)の母動詞 “ヒル” の名詞形、オカは オクル(送る)の母動詞 “オク” の
名詞形で、両語とも 「回り/回し・還り/還し・回送・送還」 を意味します。
ヒラオカは 「送還の地・埋葬の地」 を意味する普通名詞で、この場合はオシホ(小塩)を指します。

 後にオシクモは河内に社を建て、そこにコヤネの神霊をオシホ(小塩)より
 招いて纏りますが、この社は “ヒラオカの社” と呼ばれました。〈30アヤ〉
 これが東大阪の 「枚岡神社」 であり、その地の名の由来ともなります。


霊還し (たまかえし)
ヰチチ(=ココトムスビ) がこの方法論を開発しています。
ですからその代嗣子のアマノコヤネは、霊還しの道における第一人者でした。


■オヰヱ (▽合穢)
オフ(合ふ)+ヰヱ の短縮で、ヰヱは ヲヱ(汚穢)の変態です。
「汚穢の治め・直し」 を意味し、これは オシクモ(▽治雲) の換言です。


フタヱ (二重・▽付合)

■霊文 (ひふみ)
コヤネが書いた 纏りの文(まつりのあや) の別名です。3つのコピー内の、
1つは日夜見を務めるフタヱに授け、もう1つは代嗣子のヲヰヱに授けたのでしょう。
この文には当然、“霊還し” の秘法についても記されていたと思われます。

 纏りの文を 三つ染めて 一つ持ち行き 日夜見なす フタヱに授け 〈ホ28ー4〉


散々 (ちぢ)

 

【概意】
すでに仮納めの段となっていた。
喪中ゆえ共に喪に入り、神輿を成して明日には墓地に送ろうという時、
サルタが乞えば許可されて、神輿を開ければサルタヒコは、
「我が常に乞う霊還し。オヰヱとフタヱは霊文あり。今 我一人受けざる」 と散々にぞ悔やむ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ときにかみ めおあきいわく
 なんちよく わすれすきたる みもすそよ こふはこれそと
 さつけます さるたうけとり とわんとす
 はやめおとちて こたえなし

―――――――――――――――――――――――――――――
 時に神 眼を開き曰く
 「汝よく 忘れず来たる 裳裾よ 乞ふはこれぞ」 と
 授けます サルタ受け取り 問わんとす
 早や眼を閉じて 応え無し

―――――――――――――――――――――――――――――

■神 (かみ)
「死んだはずのコヤネ」 です。


裳裾 (みもすそ・もすそ)
この場合は 「アマテル神の裳裾・アマテル神の裳裾を汲む者」 の意です。 ▶裳裾を汲め
妹背の道(=陽陰の道)を熱心に求めるサルタヒコを称えての表現と思います。

 

【概意】
時に神は眼を開いて曰く、
「汝、よく忘れず来たるアマテル神の裳裾よ。乞うはこれぞ」 と授けます。
サルタは受け取り、何かを尋ねようとするが、すでに眼を閉じて反応無し。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 みゆきことなり そののちに みもすそとえは さるたひこ
 むかしはたれお やふらんと みそきなすとき かみのもの
 いわにかかりて ひたひけは たきおちくたる さくなたり
 あめにいのれは くすなかれ はみあしおかむ

―――――――――――――――――――――――――――――
 神逝き事 成り その後に “裳裾” 問えば サルタヒコ
 「昔 ハタレを 敗らんと 禊なす時 神の裳の
 岩に掛かりて ひた引けば 猛落ち下る “さくなだり”
 陽陰に祈れば 屑 流れ 蛇 足を噛む

―――――――――――――――――――――――――――――

■神逝き事 (みゆきごと)
ミユキ(回往き)ゴト(如・事) で、「回帰の事・帰還の儀式・喪儀」 を意味しますが、
この場合は 「神に還る事・神へ回帰する儀」 の意であるため、“神逝き事” と当てています。


■ハタレを敗らんと禊なす時 (はたれおやぶらんとみそぎなすとき)
アマテルが 「六ハタレを破る手立てを得ようと速川の瀬に禊した時」 をいいます。 ▶六ハタレ

 アマテル神は さくなだり 速川の瀬に 禊して
 “ハタレ敗る” の まじないの 種を求めて 授けます 〈ホ8ー3〉


ひた (直)

猛・滝・瀧 (たき)
タケ(猛・丈・長)の変態で、「勢いづくさま・荒々しいさま」 が原義です。
ここでは原義通りの意味であるため “猛” と当てています。


さくなだり
“猛落ち下る” の換言です。


■陽陰に祈る (あめにいのる)
まだ思案中ですが、「日月の太神霊と交わり同調する」 の意に解しています。 ▶陽陰 ▶祈る
日月の太神霊は アマテルの本霊です。


■蛇・蝮 (はみ)
ハフ(這ふ)の名詞形 “ハヒ(這ひ)” の変態です。
「這うもの」 が原義で、ハミ(蝮)ハハハブ(波布)ヘミ(蛇) = ヘビ(蛇) です。

 

【概意】
神還りの儀が済み、その後に “裳裾” を問えば、サルタヒコは曰く、
「むかしハタレを破らんと禊なす時、神の裳が岩に掛かりて、ひた引けば、
勢い余って落ち下る、神の “さくなだり”。
日月の神霊と交われば、裳裾の屑が流れ行き、蛇が足を噛む。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 おいつめて とまるわらひて くくりすつ
 もすそのくすに やふるゆえ すすくすもちい これおたす
 しむみちやふる うつわゑる
 みなみそきして うつわゑて むみちおやふり をさむたみ
 みなみもすその なかれなり

―――――――――――――――――――――――――――――
 追い詰めて 留まる蕨で 括り棄つ
 裳裾の屑に 破るゆえ 末葛 用い これを治す
 シムミチ敗る 器 得る
 穢禊して 器 得て 六ミチを破り 治む民
 みな裳裾の 流れなり」

―――――――――――――――――――――――――――――

■裳裾の屑に破る (もすそのくずにやぶる)
「裳の端が岩に引っ掛かることがきっかけとなって蛇を破った」 ことをいいます。


■末葛 (すすくず)
“末” は筆者の宛字ですが、ススは スソ(裾)の変態で、「下・末・隅」 を意味します。
ですから 「葛の末」 をいい、カダスス(▽葛末) とも呼ばれます。 ▶葛

 “裳裾(モスソ)の屑(クズ)” の、スソ(裾) に対して スス(末) を、
 クズ(屑) に対して クズ(葛) を語呂合せしているわけです。


■これを治す (これおたす)
“これ” は 「蛇のハタレ=シムミチ」 を指し、「蛇のハタレを退治する」 という意です。
同時に 「それが乱した世を治(なお)して民を治める」 の意もありそうです。


シムミチ
六ハタレの第一で、「錦蛇の霊の化け物」 です。これに立ち向かうカナサキに、
アマテルは “葛の末” と ”蕨縄” をまじないの種として授けます。 ▶まじないの種

 ハタレシムミチ なす技に 山川あぶれ 大蛇が 炎を吐きて 驚かす
 カナサキしばし 立ち帰り 陽陰に告ぐれば 大御神 賜ふ “
葛末” “蕨縄” 〈ホ8ー3〉


器 (うつわ)
この場合は 「シムミチを敗るまじないを形にした物品」 をいい、“まじないの種” の換言です。


■穢禊 (みなみそぎ)
ミナ(▽穢)ミソギ(禊) で、「汚穢/曲りの直し」 の意です。


■六ミチ (むみち)
六ハタレ の換言です。

 

【概意】
その蛇を追い詰め、目に留まる蕨で括って棄てる。
“裳裾の屑” により ”蛇” を破るゆえ、“葛の末” を用いて ”蛇のハタレ” を退治すべしと、
こうしてシムミチを敗る器を得る。穢禊して器を得て、六ミチを破り治める民。
すべては神の裳裾を源とする一連の流れなり。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 さるたあさかに すなとりの ひらこにかまれ おほるるお
 きみうすめして そことくに つふたつあはの さくとこに
 ひきあけさしむ わらにたす はひらおぬきて なまこなす

―――――――――――――――――――――――――――――
 サルタ アサカに 漁の ヒラコに噛まれ 溺るるを
 君 ウズメして 害解くに 粒立つ粟の 簀床に
 引き上げさしむ 藁に足す 肺を温きて 鈍 熟す

―――――――――――――――――――――――――――――

■アサカ (▽上境・阿坂)
ア(▽上・天)+サカ(境) で、「至高の区画」 を意味し、アマテルの宮がある 「イセの国」 の換言です。
現在も三重県松阪市に阿坂町という名が残ります。アノ(▽上野・安濃) も同じです。


漁 (すなどり)

■ヒラコ (▽翻子)
ヒラコは ヒラク(▽翻く) の名詞形で、「ひらひらとひるがえる物」 をいうと考えます。
おそらく 「クラゲ」 でしょう。 ▶画像


■君 (きみ)
アマテル を指します。


ウズメ (渦侍)
この場合は 「サルタヒコが妻に賜った渦侍」 をいうのかなと思います。

 サルタを褒めて ミオの尊 好むウズメを 賜りて その名 表す 〈ホ24ー3〉


■害解く (そことく)
ソコは ソコナフ(損ふ・害ふ)のソコで、「損害・痛手・ダメージ」 などを意味します。
ですから 「溺れて受けたダメージを緩和する」 ということです。


■粒立つ粟の簀床 (つぶたつあはのさくとこ)
「粒立つ粟を敷いた床」 をいいます。 ▶粒立つ ▶画像

 ★簀床 (さくとこ)
 サク(簀)は サク(下ぐ)の名詞形で、シキ(敷き)の変態です。 ▶床
 ですから同義語の連結で、「下敷き・土台・基礎・ベッド」 などを意味します。

 ツブ(粒・円)は ツブサ(具・悉・備)ツブラ(円ら) と同義で、「完全」 を意味します。
 タツ(立つ)は 落ちた/劣った状態から 「起き上がる」 ことを意味します。
 つまり 「完全な状態に立ち上がる」 まじないの種として “粒立つ粟” を用いるわけです。
 サクトコ(簀床)は ソコトク(害解く)の語呂合せで、これも 「害を解く」 まじないの種として
 サクトコ(簀床)を用います。


■藁に足す (わらにたす)
「藁に合わせる・藁に覆う・藁を掛ける/かぶせる」 などの意でしょう。


■肺を温く (はひらおぬく)
ハヒラ=ハヒ(肺) と考えて、「肺をぬくめる」 の意に解しています。


■鈍熟す (なまこなす)
ナマ(鈍)は ナマル(鈍る)の名詞形で、「鈍った状態・不活発な状態」 をいいます。
コナス(熟す)は 「高める・活気づける・すぐる・至らす」 などが原義です。

 

【概意】
<あるいはまたこんなこともあった。>
サルタが伊勢で漁をしていて、ヒラコに噛まれて溺れるを、
君はウズメをして害を除くに、粒立つ粟を敷いた床に引き上げさせる。
また藁に覆って肺を温め、不活発な状態を高める。


 この部分は、“裳裾の屑” の語呂合わせから、“葛の末” をハタレを破るまじないの種
 としたアマテルの、他のまじないの種の例を紹介しているのだと思います。
 つまり “裳裾” を説明する別の一例です。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 さきにかくやま なかすねは みをやすへらき みこなきお
 おしくもいのる そのふみお こえとさつけす まかるのち
 あまのたねこは このふみお みかさにこめて きみのとも
―――――――――――――――――――――――――――――
 さきにカグヤマ ナガスネは 御祖皇 御子なきを
 オシクモ祈る その文を 乞えど授けず 罷る後
 アマノタネコは この文を ミカサに籠めて 君の供

―――――――――――――――――――――――――――――
  
■カグヤマナガスネ ■カグヤマの臣ナガスネ (かぐやまのとみながすね)
「カグヤマ宮のナガスネヒコ」 という意です。カグヤマ宮は 「アスカ宮」 の別名です。 
ニギハヤヒがこの宮の君で、ナガスネはその重臣です。ナガスネは かつてのアスカ朝廷の
左の臣を務めたフトタマの孫です。 ▶ニギハヤヒ ▶ナガスネヒコ ▶フトタマ

 カグヤマ宮の初代の君であったクシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)は 実子に恵まれず、
 後継者が未定なまま世を去りました。そのためアマテルが、ホノアカリの長男クニテルを
 代嗣と定め、“ニギハヤヒ” の名を賜います。

  神の教えは 「ハラ宮の クニテルを嗣 “和照らす ニギハヤヒ君”」 〈ホ27-2〉

 アマテル─┐
      ├オシホミミ┐
 セオリツ姫┘     ├┬クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
            ││
 タカキネ──チチ姫──┘└ニニキネ ┌──────ホノアカリ(斎名ムメヒト・2代ハラ皇君)
               ├───┼ホノススミ   │
 カグツミ───マウラ───アシツ姫 └ヒコホオデミ  ├─┬クニテル(ニギハヤヒ)
                            │ └タケテル
 ソサノヲ──オホナムチ──クシヒコ──コモリ───タマネ姫
                           (2女)
 ニニキネ─ホノアカリ┐
           ├┬─────クニテル(ニギハヤヒ)
 コモリ──タマネ姫─┘└タケテル   │
                    ├ウマシマチ
 タカキネ─フトタマ─??┬ナガスネヒコ │
            └─────ミカシヤ姫
 


■御祖皇 (みをやすべらぎ)
ミヲヤアマキミ(御祖天君) の換言です。


■オシクモ祈るその文 (おしくもいのるそのふみ)
「代嗣文」 をいいます。 ▶代嗣文(よつぎふみ)
御祖天君も長らく子に恵まれず、おおかた諦めかけていた時、コモリが 「代嗣文がある」 と提言し、
これを受けてオシクモに、代嗣社を建てて “代嗣文” により代嗣子の誕生を祈ることを命じます。
その霊験により誕生するのがヰツセの御子です。

 時に天君 「我思ふ 十三鈴老いて 種あらじ」 コモリ申さく 「代嗣文あり」 とて
 アマノオシクモに 宣して 代嗣社 成す … … オシクモ清め 代嗣社に 祈れば徴 孕み得て
 十五月に生む ヰツセ君 〈27アヤー5〉


■罷る後 (まかるのち)
この場合はナガスネヒコが 「帰る後」 という意です。 ▶罷る


アマノタネコ

■ミカサ (▽神交・三笠・御葢)
この場合は 「ミカサ社」 の略です。 ▶ミカサ社


■君の供 (きみのとも)
「若君タケヒトの御供」 という意です。 ▶タケヒト
九州に巡幸していた御祖天君は現地で最期を迎えますが、その直前に
皇太子のタケヒトと大御守のタネコを呼んで、最後の御言宣をします。 ▶大御守

 タケヒトは 歳十五なれば 我が代り タネコが助け 治むべし 〈ホ27ー8〉

 

【概意】
さきにカグヤマ宮のナガスネは、御祖皇に御子がないのを
オシクモが祈った “代嗣文” を乞うてきたが、授けなかった。
ナガスネが帰る後、アマノタネコはこの文をミカサ社に籠めて君の供。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 なかすねひこは そのくらお ひそかにあけて うつしとる
 くらとみつけて これおつく たねこおとろき きみにつく
 さをしかやれは みここたえ くらとかわさは われしらす
 これにあらけて ことしろは いよにととまる

―――――――――――――――――――――――――――――
 ナガスネヒコは その蔵を ひそかに開けて 写し盗る
 蔵人見つけて これを告ぐ タネコ驚き 君に告ぐ
 差使遣れば 御子答え 「蔵人が業は我 知らず」
 これにあらけて コトシロは イヨに留まる

―――――――――――――――――――――――――――――

■蔵人 (くらと・くらど)
ミカサ社の 「倉庫の管理人」 をいうのでしょう。


差使 (さをしか)
この場合は 「九州にいる皇代理のタケヒトが、カグヤマ宮のニギハヤヒに差し向けた勅使」 です。


■御子 (みこ)
ニギハヤヒ を指します。

 ニギハヤヒが、アマテルやニニキネの血を受け継ぐ正統な後継者であることを示すために、
 あえて “御子” と表現しているものと考えます。


あらく (散去く・散く・粗く)
「中央政府とカグヤマ政府の協力関係が破綻して、反目する関係になった」 ことをいいます。

 アル(離る・散る)+アク(空く・開く) の短縮で、両語とも 「離れる・分れる」 が原義です。
 今風に言えば “あらける” です。


■コトシロはイヨに留まる (ことしろはいよにとどまる)
コトシロヌシの ツミハは “八重コトシロ” の異名を持つように、各地に出向いて政務の要所を
締めていましたが、中央政府の管轄地だけでなく、カグヤマ(=アスカ)の宮にも通っていました。

・故にツミハを コトシロと アスカの宮に 侍らしむ 〈ホ27ー1〉
・名も “
ツミハ八重 コトシロ” が ミシマに到り ハラに行き またミシマより イヨに行く 〈ホ27-6〉

それがこの度の両政府の分裂騒動で、ツミハはアスカの宮の応援には行けなくなり、
自らが主である四国の政庁(=コトシロが館イブキの宮)に留まります。

 

【概意】
ナガスネヒコはその蔵をひそかに開けて写し盗る。
蔵人はこれを見つけて九州のタネコに告げば、タネコは驚いてタケヒト君に告ぐ。
タケヒトが勅使を遣れば、カグヤマの御子は答え、「蔵人が言うところの所業は、我は関知せず。」
これにより両政府は分裂状態となり、コトシロ(=ツミハ)は伊予に留まる。


 この時にナガスネヒコによる騒動が始まり、タケヒトとタネコは都へは帰れず、
 そのまま九州に留まることになります。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 そのつまは いせにもふてて
 さるたひこ たたらなすおは みにいたり そこてひめうむ
 そのつまに とりあけさせて おくりゆく ことしろえめは
 さるたひこ たたゆるひめの なはたたら いすすひめなり

―――――――――――――――――――――――――――――
 その妻は イセに詣でて
 サルタヒコ タタラなすをば 身に到り そこで姫生む
 その妻に 取り上げさせて 送り行く コトシロ笑めば
 サルタヒコ 称ゆる姫の 名は “タタラ イスズ姫” なり

―――――――――――――――――――――――――――――

■その妻 (そのつま)
ツミハの妻の 「タマクシ姫」 をいいます。ツミハの弟のミシマミゾクイの娘です。


■イセに詣づ (いせにもふづ)
「妹背の神(=アマテルの神霊)に参詣する」 という意です。
アマテルの最後の宮だった サコクシロ内、改め アマテル神の内つ宮 に詣でたのでしょう。
現在の伊勢内宮の場所です。

 そこでサルタヒコは妹背の道を学びながら、アマテルより預かった
 サカホコキ、うつくしき鈴、ワイキタチ の3宝を守っています。


■タタラなす (▽爛なす・▽称なす)
ここでは 「敬う・尊ぶ・称える・祝う」 などの意で、タタラは カンホギ(神祝)の換言です。 ▶タタラ
具体的には 「アマテル神を称える宣詞を捧げる」 ということでしょう。


■身に到る (みにいたる)
「アマテルの神霊がタマクシ姫の身体に到る」 ということです。


■その妻 (そのつま)
これは 「サルタヒコの妻」 を指します。


■コトシロ
コトシロヌシの 「ツミハ」 を指します。

 
■タタライスズ姫・タタラヰスズ姫・タタラヰソスズ姫
タマクシ姫が生んだ姫で、クシミカタマの妹です。
日本書紀には 姫蹈鞴五十鈴姫(ひめたたらいすずひめ) と記されます。
「アマテル神をタタラなして生れる再来の姫」 という意味であるようです。

 コモリ┬ツミハ───────┐┌クシミカタマ(斎名ワニヒコ)
    │(2男)        ├┼クシナシ(斎名ナカヒコ)
    └ミゾクイ─タマクシ姫┘└タタライスズ姫
     (11男)

 
 ★イスズ・ ヰスズ・ヰソスズ (▽妹背鈴・五十鈴)
 イソ/ヰソ+スズ(鈴)、またその短縮形です。
 イソ/ヰソは イス/ヰス(結す)の名詞形で、イセ(妹背)の変態、この場合は
 「妹背の神・アマテル神」 を意味します。スズ(鈴)は 「回転・回帰・帰還・循環」 などが原義です。
 ですから 「妹背の神の回帰・再来」 という意となります。

 

【概意】
ツミハの妻タマクシ姫はイセに詣でると、
サルタヒコがアマテル神を称える祝詞を捧げる時に、
神の霊験がタマクシの身に到り、そこで姫を生む。
妻に取り上げさせて 母子をイヨに送って行き、コトシロが笑めば、
サルタヒコは 「称える姫の名は “タタライスズ姫” なり」 と。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 なかすねか われおたつれは いちさわく かれにはらみの
 みこふれて ほつまひたかみ かてふねお のほさぬゆえに
 たかのみや つくしのみやに ゆきゐます

―――――――――――――――――――――――――――――
 ナガスネが 我を立つれば 市 騒ぐ 故にハラミの
 御子触れて ホツマ・ヒタカミ 糧船を 上さぬゆえに
 タガの宮 ツクシの宮に 行き居ます

―――――――――――――――――――――――――――――

■我を立つ (われおたつ)
我を立てる(がをたてる)と同義です。
ナガスネが、主君であるニギハヤヒの意向を無視して(傀儡化して)、
自分の思うままに政治を動かしていることをいいます。


■市 (いち)
イチ(市)は イツ(▽結つ)の名詞形で、「結び・寄り・集まり」 を原義とし、
「人の集まり・社会・コミュニティ・居住区」 などを意味します。マチ(町)と同じです。
ここでは特に 「民間・俗世間・市中」 を意味し、官/民と言う場合の 「民の側」 をいいます。


■ハラミの御子 (はらみのみこ)
ハラミ山の国(=ホツマ国)を治める ハラ皇君 を指します。
この時点でのハラ皇君は、ホノアカリ(斎名ムメヒト)か、あるいはその子の タケテル
ということになりますが、ニギハヤヒと同じく “御子” と呼ばれていますので、
一応 タケテル と考えたいと思います、ですが微妙です。ニギハヤヒとタケテルは実の兄弟です。

 アマテル─┐
      ├オシホミミ┐
 セオリツ姫┘     ├┬クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
            ││
 タカキネ──チチ姫──┘└ニニキネ ┌──────ホノアカリ(斎名ムメヒト・2代ハラ皇君)
               ├───┼ホノススミ   │
 カグツミ───マウラ───アシツ姫 └ヒコホオデミ  ├─┬クニテル(ニギハヤヒ)
                            │ └タケテル
 ソサノヲ──オホナムチ──クシヒコ──コモリ───タマネ姫
                           (2女)


■糧船を上さぬ (かてぶねおのぼさぬ)
オシホミミの遺言により、ハラ皇君(ニニキネ)とアスカ皇君(テルヒコ)の間で、
「アスカの不足はハラから償う」 という契約がかつて結ばれました。 ▶ハラカラ
この契約により、その後代のハラ皇君も ずっとアスカ国に食糧を援助していたようです。

“糧船を上さぬ” とは、この食糧援助を中止するということで、
これはナガスネの専横が目に余るアスカ政府に対する制裁措置だと思われます。

 この措置に対抗して ナガスネは 山崎の関 を封鎖し、淀川を利用した物や人の流通を
 ブロックします <29・30アヤ>。こうなると タガの宮 は半ば孤立無援の状態となるため、
 次に続く “タガの宮 ツクシの宮に 行き居ます” となるわけです。


■タガの宮 (たがのみや)
タガの皇君」 の換言で、ヰツセを指します。


■ツクシの宮 (つくしのみや)
タケヒトとタネコが滞在している ミヤサキ宮カゴシマ宮 をいいます。 ▶みやさき

 鹿児島神宮 (かごしまじんぐう)
 鹿児島県霧島市隼人町内2496。
 現在の祭神:天津日高彦穗穗出見尊、豊玉比賣命

 

【概意】
ナガスネが自分の思い通りに政治を動かすと、世間が騒ぎ出す。
そのためハラミの御子は触れを出し、ホツマ・ヒタカミからの糧船を上さぬようにすれば、
タガの宮のヰツセは九州の宮に転居します。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 おおものぬしは たかとのに ねのくにをさめ おおたおは
 ひうかかんとの そえものと なしてむすめの みらひめお
 めとりてうむこ たたひこか あたつくしねは おさななそ

―――――――――――――――――――――――――――――
 オオモノヌシは タガ殿に 根の国治め オオタをば
 日向代殿 副モノと なして娘の ミラ姫を
 娶りて生む子 タタヒコが アタツクシネは 幼名ぞ

―――――――――――――――――――――――――――――

■タガ殿 (たがとの)
「タガ皇君の代殿」 の略です。 ▶代殿
つまりオオモノヌシのクシミカタマが、ツクシの宮に避難した
タガの皇君(=ヰツセ)の代理として根の国を治めるということです。


■根の国治む (ねのくにをさむ)
中央政府の君の代理として、「根の国 (サホコを含む) を治める」 ということです。 ▶根の国

 どうして根の国だけなのか? おそらくこれは、中国の内でさえ、多くの国々はすでに、
 ナガスネがあやつるアスカ政府の側に寝返っていることを示すものだと思います。 ▶中国
 長期に渡って中央政府の君の不在が続く状況では無理もないと思います。


オオタ (▽生田)
コモリの12男です。クシミカタマにとっては、実父ツミハの弟で、叔父にあたります。


■日向代殿 (ひうがかんどの)
日向(=みやさき) にいる代殿」 という意で、御祖天君の臨終に “我が代り” と
御言宣を受けた タケヒト を指します。カンドノは コフドノ(代殿)と同じす。 ▶御祖天君

 タケヒトは 歳十五なれば 我が代り タネコが助け 治むべし 〈ホ27ー8〉


副モノ (そえもの)

■ミラ姫 (みらひめ)
オオタの娘です。クシミカタマはこの叔父の娘を妻に娶ります。
旧事紀には 日向賀牟度美良姫(ひむかのかむとみらひめ) と記されます。

 大川上美良布神社 (おおかわかみびらふじんじゃ)
 高知県香美市香北町韮生野243-イ。
 現在の祭神:大田々祢古命
    合祀:大物主命、活玉依比賣命、陶津耳命、櫛御方命
       飯肩巣見命、美良比賣命、健甕槌命

 
■タタヒコ ■アタツクシネ
クシミカタマとミラ姫に生れた男子で、斎名がタタヒコです。
アタツクシネは幼名とのことですが、それがそのまま通称になっています。
旧事紀には 阿田都久志尼命(あたつくしねのみこと) と記されますが、
父のクシミカタマと混同されています。

               ┌─────────┐
               ├9.タケフツ    ├10.チシロ
               ├8.ヤサカヒコ   ├11.ミノシマ(ミゾクイ)
               ├7.ナラヒコ    ├12.オオタ─────ミラ姫
               ├6.コセツヒコ   ├13.イワクラ     │
               ├5.チハヤヒ    ├14.ウタミワケ    │
               ├4.ヨテヒコ    ├15.ミコモリ     ├アタツクシネ(斎名タタヒコ)
               ├3.ヨシノミコモリ ├16.サギス      │
 スヱツミ─イクタマヨリ姫  ├2.ツミハ──┐  ├17.クワウチ     │
        ├──────┴1.カンタチ │  └18.オトマロ     │
 クシヒコ──コモリ            └───────────クシミカタマ
                      

 久米御縣神社 (くめのみあがたじんじゃ)
 奈良県橿原市久米町786。 
 現在の祭神:高皇産霊神、大来目命、天櫛根命
 <筆者注> 天櫛根命はアタツクシネではないかと思います。

 

【概意】
ゆえにオオモノヌシのクシミカタマが、タガ皇君の代殿として根の国を治め、
オオタを日向代殿(=タケヒト)の副モノとなして、オオタの娘のミラ姫を、
クシミカタマが娶りて生む子は斎名タタヒコ、アタツクシネは幼名ぞ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ちちのつみはも かみとなる あすすゐそとし かんなつき
 やそよよろみち よそやなり ことしわにひこ もものやつ
 いもといすすは とおゐつつ ともにもにいり よそやのち
 あはのあかたに おさむのち みつからしるし このふみお
 やしろにおくは ゐつこのためか

―――――――――――――――――――――――――――――
 父のツミハも 神となる 上鈴五十年 十月
 八十四万三千 四十八なり 今年ワニヒコ 百の八つ
 妹イスズは 十五つ 共に喪に入り 四十八後
 阿波の県に 納む後 自ら記し この文を
 社に置くは 何時のためか

―――――――――――――――――――――――――――――

  この部分はホツマツタヱのここまでの編者である
    クシミカタマのあとがき的な記です。


上鈴 (あすず)

ワニヒコ

イスズ (いすず)

四十八 (よそや)

■阿波の県に納む (あはのあがたにおさむ)
父ツミハを四国の 「阿波の県に葬る」 ということです。 ▶納む


■自ら記しこの文 (みづからしるしこのふみ)
28アヤまでのホツマツタヱの原稿となる書です。
クシミカタマが自ら記したこの文をもとにして、
後に子孫のオオタタネコがホツマツタヱ全40巻をまとめます。


■社 (やしろ)
「四国を総括する政庁宮」 で、ツミハの宿舎でもあった “コトシロが館” をいいます。
イブキの宮とも、阿波宮とも呼ばれ、この社の跡が金刀比羅宮です。

 金刀比羅宮 (ことひらぐう)
 香川県仲多度郡琴平町字川西892番地1。 
 現在の祭神:大物主神
 境内社 事知神社(ことしりじんじゃ):積羽八重事代主神


■何時 (ゐづこ・いづこ)
イヅ(何)コ(処) で、コ(処)は 「区分・区画」 が原義です。
ここでは空間の区分ではなく、「時間の区分」 を言うため “何時” と当てています。

 

【概意】
上鈴50年10月、父のツミハも神となる。84万3048歳であった。
この年ワニヒコは108歳。妹イスズは15歳。
共に喪に入り、48日を終えて阿波の県に納む後、
自ら記したこの文をこの社に置くは、いずれの時のためか。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

⇦前の講座          目次           次の講座⇨