⇦前の講座          目次           次の講座⇨ 

 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

一から学ぶ ほつまつたえ講座 第17回 [2023.7.28]

第四巻 日の神の瑞御名の文 (5)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ひのかみのみづみなのあや (その5)
 日の神の瑞御名の文 https://gejirin.com/hotuma04.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

―――――――――――――――――――――――――――――
 ひさかたの ひかりあれます ういなめゑ
 あゆきわすきに つけまつり
 みこひたさんと ふたかみの みこころつくす あまのはら
 そむほゐますも ひとひとそ おほすはめくみ あつきなり
―――――――――――――――――――――――――――――
 久方の 光 生れます 初嘗会
 天ユキ・地スキに 付け纏り
 御子養さんと 二尊の 実心つくす アマノハラ
 十六穂居ますも 一日とぞ 思すは恵み  篤きなり
―――――――――――――――――――――――――――――

■久方の光 (ひさかたのひかり)
久方(ひさかた) は 「久しい所・遠い所」 という意です。 ▶久方の (枕詞)
“久方の光” は 「はるか遠方の光」 という意味で、「日と月」 を意味します。
“久方の光生れます” は 「日と月の大神霊が地上にお生まれになります」 という意です。


■初嘗会 (ういなめゑ・うゐなめゑ)
ウイナメ(初嘗) は 「一年最初の行事」 、ヱ(会) は その 「機会」 を意味します。
新嘗会(にいなめゑ・さなめゑ)、埴スキの嘗会 とも呼ばれ、冬至 に行われました。

初嘗会については、説明が少なくて詳しくはわからないのですが、
埴の社(はにのやしろ) を設けて、そこに 「山海の幸を守る神々」 と、
アメトコタチ の1神である 「トの尊の神霊」 を纏ることが記されています。

 山海と ト尊霊は 埴スキの 嘗会に付けて 人草の 寿 祈るなり 〈ホ27-4〉

国君の即位後最初の初嘗会は 特に 大嘗会(おおなめゑ) と呼ばれ、
天ユキの宮に アメトコタチの9神、地スキの宮に ウマシアシカイヒコチの11神 を纏ります。


 ★嘗 (なめ・なゑ)・嘗事 (なめごと・なゑごと)
 ナメ(嘗・舐) は ナム(▽和む・並む・舐む) の名詞形で、
 「合わせ・治め・まつり」 などが原義ですが、さまざまな種類の “嘗” があります。
 ここに言う “嘗” は 「身に合わす事・する事」 の意で、つまりは 「行事」 です。
 コト(事)は コト(如) と同源で、「〜の如くのもの・〜の類」 が原義です。

 他にも 「国君の行う政治」 を 大嘗事(おおなめごと・うなめごと) と呼び、
 あるいは 「身体の治め・医療」 も 嘗事 と呼ばれています。
 したがって、ナメ/ナメゴト は マツリ/マツリゴト の換言と考えてOKです。


■天ユキ (あゆき)
大嘗会 (おおなめゑ:今に言う 大嘗祭) の時に 九星=アメトコタチ の神霊を纏る宮です。
ユキは 悠紀・斎忌・由基 と当て字されています。 ▶纏る

 ア(天)+ユキ(▽結き・) の ミヤ(宮) は、「天の神を収納する宮」 という意です。
 この場合 “天の神” とは 九星=アメトコタチ を指しますが、それはこの9神が
 “天つ事” (あまつこと:魂魄や生命に係る事柄) を世話するためです。

  天つ事 纏るトホカミ ヱヒタメの 八元の神の 守らせき  〈ホ22-1〉


■地スキ (わすき)
大嘗会 (おおなめゑ:今に言う 大嘗祭) の時に ウマシアシカイヒコチ神 を纏る宮です。
スキは 主基・須岐・次 と当て字されています。

 ワ(▽地)+スキ(挿き) の ミヤ(宮) は、「地の神を挿入する宮」 という意です。
 この場合 “地の神” とは ウマシアシカイヒコチ神 を指しますが、それはこの11神が
 地つ纏り (くにつまつり:人の日常生活に係る事柄) を世話するためです。

  地つ纏りは キツヲサネ 室十一神の 守らせき 〈ホ22-1〉


■付け纏る (つけまつる)
ツク(付く)+マツル(纏る) の同義語連結で、
天ユキの宮 と 地スキの宮 に、神々を 「付きまとわす・纏い付ける」 という意味です。

 天ユキの宮と地スキの宮を建てて神を纏るのは、大嘗会の祭礼儀式であり、
 通常の新嘗会では行われないのですが、久方の光が世に誕生した
 この新嘗会に限っては、特別に大嘗会と同じ祭礼儀式を行ったようです。


御子・神子 (みこ)

養す (ひたす)

実心・真心 (みこころ)
 
■アマノハラ (▽陽陰の孕)・アマノハラミ (▽陽陰の孕み)
「日月の神霊を孕む所」 という意で、ハラミの宮 をいいます。 ▶陽陰(あま・あめ)

 現在の富士市の海岸部に、原・蒲原・吉原・厚原・原田・柏原 … など、「原」 の付く地名が
 やたら多く残ることから、ハラの宮があったのはその辺りではないかと推測しています。
 
 ★ハラミ (孕み) ★ハラ (▽孕)
 ハラミは ハラム(孕む) の名詞形で、ハラムは ハル(張る・貼る)+アム(編む) の短縮。
 両語とも 「合わす・含む・交ぜる・埋め込む」 などが原義で、ハルの名詞形が ハラ(孕) です。


■十六穂 (そむほ)
ホ(穂) は 「真榊が1年で伸ばす枝の長さ=半寸」 で、1穂=1年 です。 ▶真榊


■居ます・坐す・座す・在す (ゐます・います)
ヰ(‘居る’の連用形)+マス(尊敬)で、「おわす・おられる・いらっしゃる」 などの意です。


思す (おぼす)

 

【概意】
久方の光 (日月) が世に生れます初嘗会。
天ユキ・地スキの宮に 神々を纏い付け、
御子を育てんと、二尊の真心を尽すアマノハラ。
16年おられますも、たった1日のように思われるのは、
恵みの篤さを物語るなり。



―――――――――――――――――――――――――――――
 むかしたまきね ちかいして かつらきやまの やちみそき
 すみていとりの てくるまお つくりかつらの むかひとて
 はらみにつたふ あるかたち
―――――――――――――――――――――――――――――
 昔 タマキネ 誓いして 桂来山の 八千禊
 済みて霊鳥の 出車を 造り 桂の 迎ひとて
 ハラミに伝ふ ある形
―――――――――――――――――――――――――――――

タマキネ

■誓い (ちかい・ちかひ)
チガフ(違ふ) の名詞形で、「たがいちがいにすること・互いに交わすこと」 が原義です。
「約束・契約」 を意味し、チギリ(契り) の変態です。


 ★違ふ (ちがふ)・誓ふ (ちかふ)
 チグ+カフ(交ふ) の短縮で、チグは “ちぐはぐ” のチグです。
 「交差する/させる・互いに交わす」 などが原義で、チギル(契る) の変態です。


■桂来山 (かつらきやま)
尽き桂来の霊鳥山 の略です。

 これはどこの山かといいますと、出羽国の 鳥海山 です。
 鳥海山は古くは 鳥見(とりみ)山、大物忌(おおものいみ)山、
 比山/日山(ひのやま)、羽山、鳳山、などと呼ばれています。


■八千禊 (やちみそぎ)
トヨケが行った8千回の禊 をいいます。

 トヨケ自ら 禊して八千回契り 抜きんつる厳霊 神祈り通りてぞ 〈ホ4-2〉


■霊鳥の出車 (いとりのてぐるま)
「屋根に霊鳥が乗っている出車」 をいいます。

 ★霊鳥・斎鳥 (いとり)
 イ(霊)トリ(鳥) で、「神の鳥・聖なる鳥・尊い鳥」 を意味します。
 後世 シナ国の 鳳凰 と習合したようです。

 ★出車 (てぐるま)
 出車(てぐるま) は 「君や神の外出用の乗り物」 をいいます。
 後世は “出” は デ と濁るため、“手車“ と漢字がと当てられていますが、
 出車(いだしぐるま)
山車(だし・だんじり) と同じです。

 君の玉座である 高御座  ▶画像  を外出用の乗り物に仕立てたもので、
 屋根には鳳凰が乗るため、後には 鳳輦(ほうれん)  ▶画像  とも呼ばれます。
 また 神輿  ▶画像  は これを起源とします (本来は高御座と同じく八角形)。 

 ★車 (くるま)
 クル(▽転る)+マ
(=もの) で、「まわす物・往き来させる物・運搬具」 をいいます。
 “輿” や “駒” との区別はなく、したがって車輪の付いてる物に限りません。


■桂の迎ひ (かつらのむかひ)
「おかしらの迎え」 の意で、“おかしら” とは この場合、日月の神霊=アマテル を指します。
日と月は アウワ の、ア(太陽) と ワ(太陰) に相当します。

 ★桂・鬘・葛 (かつら)
 カツ(▽上つ・▽活つ・勝つ)+ラ(‘在る’の名詞形の略で場所を表す) で、
 「上にある所・栄える所・勝る所・頭」 などが原義。カシラ(頭) の変態です。
 この場合は 「上・頭・トップ・御上(おかみ)」 などを意味します。


ある形 (あるかたち)

 

【概意】
昔 タマキネはアメノミヲヤに誓いして、桂来山で八千回の禊を行う。
それが済むと霊鳥の出車を造り、“おかしらの迎え” とて、
ハラミの二尊にそれまでの経緯を伝えに来る。



―――――――――――――――――――――――――――――
 ふたかみゆめの ここちにて あひみたまえは
 とよけにて あめみこひたす ものかたり
 めすてくるまお ひたかみゑ みゆきのきみは やふさこし
 おちつもはへる けたこしも みなけたつほの やまてみや
―――――――――――――――――――――――――――――
 二尊 夢の 心地にて 会ひ見給えば
 トヨケにて 陽陰神子 養す 物語り
 召す出車を ヒタカミへ 御幸の君は 八房輿
 オチツモ侍る 方輿も みなケタツボの ヤマテ宮
―――――――――――――――――――――――――――――

■陽陰神子・陽陰御子 (あめみこ)
「太陽と太陰 (日と月) の神霊の分け身」 という意味で、アマテルを指します。 ▶みこ


■出車 (てぐるま)
斎鳥の出車 に同じです。


ヒタカミ

■御幸の君 (みゆきのきみ)
アマテル を指します。 ▶御幸 ▶君

 君にはさまざまなレベルがあり、そのトップは地上においては国君ですが、
 アマテルの場合は天界も含めてのトップです。アウワ の ア(太陽) と ワ(太陰) ですから。


■八房輿 (やふさこし)
「八形の移動具」 という意で、斎鳥の出車 の別名です。
これは 「八を恵る」 という意の モノザネ です。 ▶恵る


 ★房・総 (ふさ)
 フシ(節) の変態で、ヤフサ(八房) は 「八区分・八角」 を意味します。 ▶八角

 ★輿 (こし)
 コス(越す) の名詞形で、「行き来させる物・まわす物・移動具・運搬具」 をいい、
 クルマ(車) の換言です。


■オチツモ (▽御乳つ母)
オチ(▽食)+ツ(=の)+モ(▽妹) で、充ちつ姫 の換言。後に言う 「乳母」 です。

 オチは オス(食す) の名詞形で、「めし・食」 の意。
 (意味としては 御乳 と同じですが、その場合は、ホツマでは
 “をち” と表すのが常であるため、この解釈を取っています。)
 モは イモ(妹) の略で、「女・姫」 を意味します。


■方輿 (けたこし)
ケタ(方)+コシ(輿) で、「四角形の輿」 をいいます。
君が乗る八角形の輿に対し、「君以外の者が乗る輿」 をいうのでしょう。


ケタツボ (方壺)

■ヤマテ宮 (やまてみや:▽和宮)
ヤマテ は ヤマト(和) の変態で、「和合・調和」 を意味します。
ヤマテ宮は 「陽陰(日月)和合の宮」、つまり 「アマテル神の宮」 という意味です。
アマツミヤ(陽陰つ宮・和つ宮)、アメノミヤ(陽陰の宮・和の宮) とも呼ばれます。

 

【概意】
二尊は夢でも見ているような心地で会見されると、
トヨケの方で日月の神子を養育するという話であった。
召す出車をヒタカミへ向けて発つ。
八房輿に乗る御幸の君も、方輿に侍るオチツモも、
みなケタツボのヤマテ宮に着く。



―――――――――――――――――――――――――――――
 みこのひかりの てりとほり やもにこかねの はなさけは
 ひのわかみやの わかひとと とよけゐみなお たてまつる
 ふたかみおそれ わかみやに むへそたてしと あめにあけ
 おきつのみやに かえります
―――――――――――――――――――――――――――――
 神子の光の 照り通り 八方に黄金の 放さけば
 日の若宮の “ワカヒト” と トヨケ斎名を 奉る
 二尊畏れ 「我が宮に むべ育てじ」 と 上に上げ
 オキツの宮に 帰ります
―――――――――――――――――――――――――――――

■放さく (はなさく)
ハヌ(撥ぬ)サク(離く・放く) の同義語連結で、「放出する」 の意です。
ハヌ は ハナツ(放つ) の母動詞です。


■日の若宮・▽日の分宮 (ひのわかみや)
「太陽から分かれ出た皇太子」 という意です。

 ★若宮・▽分宮 (わかみや)
 「代嗣の御子・皇太子」 の換言です。 ▶代嗣
 ワカ(若) は ワク(分く・別く・湧く) の名詞形で、母体からの 「分かれ・湧出・派生」 が原義。
 ミヤ(宮) は ここでは 八方を照らす 「中心・中心的存在」 を意味します。


ワカヒト (分日人/若日人)

むべ・うべ (宜)

■育てじ (そだてじ)
ジ は 否定の “ズ” の推量・意志形です。ここでは 「育てられまい」 という意です。


上・天 (あめ)

■オキツの宮 (奥都の宮) ■オキツボ (奥壺)
「中央の都・中国の都・近江の都」 などの意で、オキツボ(奥壺) とも呼ばれます。
かつて二尊が国家再建の基盤とした、うきはしに得るオノコロ の換言です。
場所は、おおよそですが 比叡山東麓の琵琶湖に面した地域と推測されます。

 オキ は オク(奥) の変態で、「中・内・中央・中心」 を意味します。
 ツ(都・津) は ツボ(壺)・ツモ(積) の略で、「集積・集中・中心・要所」 をいいます。
 ですから 「中央の都・中国の都・近江の都」 などを意味します。 ▶中国 ▶近江 ▶宮
 ケタツボ (方壺:地方の都) に対しての、オキツボ (奥壺:中央の都) です。

 ★ツ (津 / 都)
 (1) チ(方)、テ(手)、ト(所・処) などの変態で、「区分・区画・場所」 を表します。
 (2) ツク(付く・着く) の名詞形で、「馬・船などの発着場・港・駅・宿場」 を表します。
 (3) ツボ(壺)、ツモ(積) の短縮で、「集中・集積」 を意味し、「都・都市」 を表します。

 

【概意】
<ヒタカミで> 御子の光が照り通り、八方に黄金が放出すれば、
日の分宮の “ワカヒト” と、トヨケは斎名を奉る。
黄金の放出を目の当たりにした二尊は畏れて、
「我が宮ではうまく育てられまい」 と先代に上げ、近江の宮に帰ります。



―――――――――――――――――――――――――――――
 あめみこまなふ あめのみち
 ひとりはんへる ふりまろは むよやそきねの よつきこそ
 たかみむすひの ゐつよきみ ひことにのほる あまつみや
―――――――――――――――――――――――――――――
 陽陰神子 学ぶ 陽陰の道
 一人侍る フリマロは 六代ヤソキネの 代嗣子ぞ
 タカミムスビの 五代君 日毎に上る アマツ宮

―――――――――――――――――――――――――――――

陽陰神子 (あめみこ)

陽陰の道・和の道 (あめのみち)

侍る (はんべる・はべる)

■フリマロ
後に7代 タカミムスビ となる タカキネ(=タカギ) の幼名です。

 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)    ┌クラキネ
 │          │           ├ココリ姫
 │          └アメヨロツ┬アワナキ─┴イサナキ┐
 │          (養子)↑  └サクナキ   (VII) ├ヒルコ
 │             └─────┐       ├アマテル
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ    ├ツキヨミ
 │      (初代)  │               ├ソサノヲ
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ┬イサナミ┘
               (2〜4代)   (5代)├ヤソキネタカキネ┬オモヒカネ
                        │ (6代)   (7代) ├ヨロマロ
                        ├カンサヒ     ├フトタマ
                        └ツハモノヌシ   ├タクハタチチ姫
                                  └ミホツ姫 


■六代ヤソキネ (むよやそきね)
6代タカミムスビの ヤソキネ です。


■代嗣子 (よつぎこ)
「治めを継ぐ子」 の意です。この場合は 「ヒタカミ国の治め」 です。 ▶代嗣


■タカミムスビの五代君 (たかみむすびのゐつよきみ)
トヨケ(斎名タマキネ) を指します。


■アマツ宮 (陽陰つ宮・和つ宮)
「陽陰(日月)を和合する宮」、つまり 「アマテル神の宮」 という意味です。
アメノミヤ(陽陰の宮・和の宮)、ヤマテミヤ(和宮)、日の神の宮 とも呼ばれます。

 ★アマツ (陽陰つ・和つ)
 アワス(合わす)、ヤワス(和す)、ヤマツ(▽和つ) などの変態で、「陽陰が和合する」 が原義です。
 アマツは アマツサエ(剰え) という言葉に、ヤマツは 名詞形の ヤマト(和・倭) に痕跡が残ります。

 

【概意】
陽陰神子は 陽陰の道 (和の道) の道を学ぶ。
一人そばに侍るフリマロは、タカミムスビ6代ヤソキネの代嗣子ぞ。
タカミムスビ5代の君は、日ごと和つ宮に上る。



―――――――――――――――――――――――――――――
 わかひとふかく みちおほす あるひのとひに
 まことなお ゐみなとたたゑ あねにみつ われはよつなり
 これいかん たまきねいわく
―――――――――――――――――――――――――――――
 ワカヒト深く 道を欲す ある日の問ひに
 「真名を 斎名と称え 姉に三つ 我は四つなり
 これ如何ん」 タマキネ曰く
―――――――――――――――――――――――――――――

斎名 (いみな・ゐみな・いむな・ゐむな)

 ★斎む (いむ) ★斎 (いみ)

■姉 (あね)
ヒルコ を指します。


如何ん (いかん)
いかに” の音便変化です。ここでは 「どうして?」 の意です。


タマキネ

 

【概意】
ワカヒトは深く道を求めた。ある日の問いに、
「真名を斎名と称え、姉は3音、自分は4音である。これは何故か?」
タマキネが言うには、



―――――――――――――――――――――――――――――
 ゐみなには たらによつきに なとのりと あわせよつなり
 あまつきみ ひよりとまてお つくすゆゑ ひとにのります 
 きねとひこ うしものりなり
―――――――――――――――――――――――――――――
 斎名には 親に代継ぎに 名とノリと 合わせ四つなり
 和つ君 一より十までを 尽すゆえ “ヒト” に乗ります
 “キネ” と “ヒコ” “ウシ” もノリなり
―――――――――――――――――――――――――――――

■親に代継ぎに名とノリ (たらによつぎになとのり)
これは タラ(親) が “名” に、代継ぎが “ノリ” に対応しているようです。
つまり “名” は 名付け親が自由に考えて付けますが、“ノリ” は その子が
その代で受け継ぐ立場・続柄 を表すようなものを付けるみたいです。
そのため 名の2音+ノリの2音で、4音となります。

 ★ノリ (乗り・▽和り)
 ノル(乗る・▽和る) の名詞形で、「合わせ・添え・付け・足し」 などが原義です。
 ノリ には ヒト・ヒコ・キネ・ウシ などの種類があります。


■和つ君 (あまつきみ)
日月のように、地を 「和して調える君」 という意で、
「国君・中央政府の君」 の別名です。 ▶和つ(あまつ) ▶きみ(君 / 木実)

 和つ日月(あまつひつき)、和照らす君(あまてらすきみ)、
 和して恵る日月(やわしてめぐるひつき) などとも呼ばれます。

 

【概意】
斎名は、親と代継ぎに、名とノリを対応させるため4つとなる。
和つ君は ヒ(一)からト(十)までを尽すゆえ、“ヒト” に乗ります。
“キネ”  “ヒコ”  “ウシ” などもノリである。



―――――――――――――――――――――――――――――
 めはのらす ふたをやふたつ をにうけて こおうむゆえに
 なにこひめ またこなにひめ なにおとも おなにともつく
―――――――――――――――――――――――――――――
 女は乗らず 二親二つ 男に受けて 子を生むゆえに
 “何子姫” また “子何姫” “何小” とも “小何” とも付く
―――――――――――――――――――――――――――――

 

【概意】
女は乗らず、二親から2つ、そして男に受けて子を生むゆえに、
◯子姫 とか 子◯姫、また ◯小 とか 小◯ とも付ける。



―――――――――――――――――――――――――――――
 めのなみつ をのなのりよつ
 たたゑなは いくらもつけよ
 ゐみなとは しむにとほれは まことなるかな
―――――――――――――――――――――――――――――
 女の名三つ 男の名・ノリ四つ
 称え名は 幾らも付けよ
 斎名とは シムに通れば 真なるかな
―――――――――――――――――――――――――――――

称え名 (たたゑな)
君が臣に授ける 称号・尊称 をいいます。
カミナ(尊名)・カンベ(尊部) とも呼ばれます。


■シム (▽染・▽親)
シム(染む) の名詞形で、シム は ソム(染む)・ソフ(添ふ) の変態です。
多くの意味がありますが、この場合は 「馴染みの人・親しむ人・親族」 を表します。
シム の転訛したものが 親(しん) だと考えられます。

 

【概意】
女の名は3つ、男の 名+ノリ は4つ。
称え名は幾らも付けるがいい。
斎名とは身内に通る名なれば、真なるかな。

 

本日は以上です。それではまた!

 

⇦前の講座          目次           次の講座⇨