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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第32回 [2023.8.19]
第七巻 遺し文 清汚を直つ文 (6)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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のこしふみさがおたつあや (その6)
遺し文 清汚を直つ文 https://gejirin.com/hotuma07.html
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ことのりお もろかはかりて
あめもとる おもきもしむの なかはへり ましわりさると
すかさあを やゑはゐもとむ したたみの さすらやらいき
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言宣を 諸が諮りて
天戻る 重きも親の 半ば減り “交わり去る” と
空かさ天男 八方這いもとむ 下回みの さすら遣らいき
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■言宣 (ことのり)
コト(言)+ノリ(宣)
で、「言葉を述べること・宣言」 です。
この場合は 差使が伝えた 「ムカツ姫の言葉」
をいいます。
ムカツ姫より 差使に
「ウケモノ祈り よみがえす ハナコの四百割 償のえば 清汚を明せよ」 〈ホ7-5〉
■天戻る (あめもどる)
「ぐるっと一周りしてスタート地点に戻る」
ことをいいます。
天 (時計の12時) をスタートした時計の針が、360度を1周して
天 (12時) に戻るということです。
この場合は 犯した罪が 360クラ以上
であることを意味します。 ▶クラ(回)
■親 (しむ)
ここでは 「親族殺害分の罪」 という意です。
ソサノヲが死なせてしまったハナコは
アマテルの側室ですから、
ソサノヲにとっては義理の姉に当たります。
■交わり去る (まじわりさる)
大きく4つに分れる公の刑罰の内、2番めに重い刑です。
ソサノヲは髪・爪抜きを受刑しても、まだ720クラの罪が残っていましたが、
ハナコが蘇生して400クラが減じられると320クラになり、270〜359クラには
「交わり去る」 の刑が適用されます。
■空かさ天男 (すかさあを)
「すかされた親王・地位を外された皇子」 という意です。
皇族から外され、人との交わりを禁じられる ソサノヲ
を指します。
スカサ は スカス(透かす・空かす)
の名詞形です。
アヲ(天男) は 「御上の男子」、つまり 「皇子・親王」
をいうものと考えます。
■八方這いもとむ (やゑはゐもとむ・やえはいもとむ)
ヤエ(八方) は ヤモ(八方)
の換言で、「あちこち這いまわる」 という意です。 ▶エ
(方)
★モトム (▽回む)
マドフ(惑ふ)
の変態で、モトオル(回る・廻る)
と同義です。
「往き来する・うろうろする・回る・徘徊する」
などの意です。
■下回み・下民 (したたみ)
タミ は タム(回む)
の名詞形で、シタタミ(下回み) は 「下を這いまわるもの」
を意味します。
そしておそらくこれが 「民」 の原義で、つまり シタタミ(下回み)
の略が タミ(民) と考えます。
やはり 民の身分に落とされた ソサノヲ を指します。
■さすら遣いき (さすらやらいき)
サスラ+ヤラフ(遣らふ)+キ(=けり)
で、サスラ は サスラフの刑
の略と考えます。
ですから 「サスラフの刑に追いやるなり」
というような意味になるかと思います。
★遣らふ
(やらふ)
ヤル(遣る)+アフ(零ふ)
の短縮で、アフ は アフル(溢る)
の母動詞です。
ヤル は 「回す・往き来させる」、アフ は
「そらす・外す・あぶれさす」 などが原義です。
【概意】
言宣を諸守が協議して、360度を一周する重罪も、
親族殺害分が免除されて半分ほどに減り、“交わり去るの刑”
となる。
すかされた親王は、あちこちを這い回る “下回み”
の、サスラの刑に追いやるなり。
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ををんかみ しろしめされは あまてらす
ひとのおもても たのしむに みちすけのうた
あはれ あなおもしろ あなたのし あなさやけ おけ
さやけ おけ あはれ おもしろ さやけ おけ あなたのし
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大御神 知ろし召されば 和照らす
人の面も 楽しむに みちすけの歌
『天晴れ あな面白 あな楽し あな明やけ 可笑
明やけ 可笑 天晴れ 面白 明やけ 可笑 あな楽し』
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■知ろし召さる (しろしめさる)
シロス(知ろす)+メス(召す)+ル(尊敬)
で、「知る」 の3重尊敬の表現です。
“聞し召す・聞し召さる”
と同義です。
しろす【知ろす】〈広辞苑〉
「しる」 の尊敬語。しらす。
■和照らす (あまてらす) ■和照る (あまてる)
「和(やわ)して照らす」 の意で、和して恵る(やわしてめぐる)
の換言です。
「ほどよく調えて恵む」
という意で、日月が地球を養って潤す如くに、
君が臣民を慈しむことをいいます。
現在 アマを “和”
と表す例はほとんどありませんが、
唯一 アマナウ(和ふ)
という語が辞書に載っています。
■みちすけ (▽見直)
ミツ(見つ)+スク(直く) の名詞形で、両語とも 「合う/合わす・直る/直す・調う/調える」
などが原義です。「(汚穢・曲が) 直り調うさま」
をいいます。
■あはれ (▽陽陰晴れ)
アワ(陽陰)+ハル(晴る・▽治る) の短縮 “アハル”
の名詞形で、
アワハル は アメハル(陽陰晴る)
の変態と考えます。
「直って治まるさま・汚穢隈が祓われるさま」
をいいます。
今に言う 天晴(あっぱれ) でしょう。しかし 哀れ(あわれ) とは別です。
■あな
甚だ(はなはだ)
の ハナ の変態で、「至って・極めて」 が原義です。
■面白 (おもしろ) ■面白し (おもしろし)
オム+シル(知る・領る) の同義語連結の名詞形で、オム は
オフ(負ふ) の変態です。
両語とも 「合う/合わす・寄る/寄せる」
が原義で、「心に寄せるさま・好奇心を持つさま」 を
いいます。シ(=如し)
を付ければ形容詞になります。
■明やけ (さやけ)
サユ(冴ゆ)+ケ(▽如・▽然)
で、「冴えるさま」 が原義です。
サヤケシ(明けし)
の語幹で、サヤカ(明か)・サワヤカ(爽やか)
などと同義です。
「まっすぐで曲りや曇りのないさま」 をいいます。
★か・け・げ・やか・らか (▽如・▽然)
“か” “け” “げ” は シク(如く)
の名詞形 シカ(然・爾)
の略で、
動詞や名詞に付いて 「〜のごときさま」
の意の名詞形をつくります。
先行する語によっては …やか …らか
となる場合もあります。
■可笑 (おけ)
おかし(可笑し)
の “おか” の変態です。
【概意】
それをお知りになると、大御神は天が下を和して照らす。
人々の表情も楽しめば、みちすけの歌。
『あっぱれ あな面白 あな楽し あな明やけ 可笑
明やけ 可笑 あっぱれ 面白 明やけ 可笑 あな楽し』
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あひともに ておうちのへて うたひまふ
ちわやふるとそ たのしめは
これかんくらに あまてらす ををんかみなり
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あひ共に 手を打ち伸べて 歌ひ舞ふ
「ちわやふる」 とぞ 楽しめば
これ上位に 和照らす 大御神なり
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■あひ共に (あひともに)
「合せて共に・諸共に・みんな一緒に」 などの意です。
■ちわやふる・ちはやふる
(▽幸振る・千早振る)
「幸いがめぐる・幸いをめぐらす」 などの意で、“和して恵る”
の換言です。
チワヤ/チハヤ+フル(振る) で、チワヤ/チハヤ は チワフ/チハフ(幸ふ)
の名詞形、
「勢いづくさま・栄えるさま・優れるさま・幸い」
などを意味します。
フル(振る) は 「回る/回す・めぐる/めぐらす・循環する/させる」
などの意です。
チハフ(幸ふ) は チフ+ハフ/ハユ(栄ふ・生ふ)
の短縮で、
チフ は チホ/チョウ (千穂・頂・長・超・跳)
の母動詞です。
チバ(千葉) なんかも チフ の名詞形だろうと思います。
■上位・上座 (かんくら)
カン/カミ(上・神)+クラ(座・▽位・▽比) で、
この場合は 「上位・上流・源流・源泉」
などの意を表します。
さきに出てきた カンクラ(神座)
と語源は一緒です。
【概意】
諸共に手拍子を打ち、また手を伸ばして歌い舞う。
「幸いがめぐり来る」 とて楽しめば、その幸いの源泉には
和して照らす大御神 の存在があったことを知る。
“天が下 明暗も紋無し”
の期間を経験して、
和照らす大御神のありがたみが骨身に沁みたということでしょう。
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さすらをは みことおうけて ねにゆかん
あねにまみゆる しはしとて ゆるせはのほる やすかはへ
ふみととろきて なりうこく
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「さすら男は 御言を受けて 根に行かん
姉にまみゆる しばし」
とて 許せば上る ヤスカワへ
文 轟きて 鳴り動く
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■さすら男 (さすらを)
「サスラフの刑
を受ける男」 の意で、ソサノヲ自身 を指します。
■御言 (みこと)
コト(言)
の尊敬語で、「国君またはそれに準ずる人の言葉」
をいいます。
この場合は 父イサナキの、次の御言です。
さきにタラチヲ 「ハナキネは 根の国・サホコ 領すべし」 〈ホ6-5〉
■姉 (あね)
「ヒルコ」 を指します。
霊の蝕(しむのむし) を持つソサノヲは、姉ヒルコと 御隈野の臣
の後見を受けていました。
「ハナキネは 根の国・サホコ 領すべし」
いまだヒルコと 御隈野の 臣が助けて 後の君 〈ホ6-5〉
■ヤスカワ
オモイカネ&ヒルコの夫婦は、ヤスカワ(=近江) の
タガ(多賀) で、
皇太子オシホミミの 御子守 を務めています。
■文轟く (ふみとどろく)
トドロク(轟く) は
「まわる・めぐる・往き来する・伝わる」
などが原義です。
ですから 「文が伝わる」 という意味です。
★文・記・碑 (ふみ)
フム の名詞形で、このフム は フル(振る) の変態です。
ですから
「振るもの・回すもの・往き来させるもの・伝え」
などが原義です。
また フミ は訛って ブン(文) にも転じます。
■鳴り動く (なりうごく)
ナル(鳴る)+ウゴク(動く) の連結で、やはり両語とも
「めぐる・往き来する・伝わる・響く」 などが原義です。
この場合は “ソサノヲ来たる” という情報が
「鳴りめぐる・鳴り響く」 ということです。
【概意】
「さすら男は、父の御言を受けて根の国へ行こう。
姉に一目まみえたい。しばしの猶予を」
と言うので許可すれば、
ソサノヲはヤスカワへ上って行く。
そのことを知らせる文が伝わり、現地にその情報が鳴りめぐる。
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あねはもとより さすらをか あるるおしれは おとろきて
おととのくるは さはあらし くにうはふらん
かそいろの よさしのくにお すておけは あゑうかかふと
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姉は本より さすら男が 粗るるを知れば 驚きて
「弟の来るは 直はあらじ 国奪ふらん
父母の 任の国を 捨て置けば 敢え窺ふ」 と
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■本より (もとより)
ここでは 「生れ付き」 という意です。
陽陰の節 の乱れる時に孕んだソサノヲの
先天的な霊の乱れ (=霊の蝕)
をいいます。
■粗るる (あるる)
アル(粗る) の連体形で、今風には “荒れる” です。
★粗る (ある)
アル(離る・散る)
と同一で、「離れる・逸れる・曲る・外れる」
などが原義です。
コースから外れると
たいていは脱落してアウトになるため、
「落ちる・劣る・衰える」 などの意にも使われます。
現在は 例えば 「荒れ地」 など、“粗” の意味にも
“荒” が当て字されています。
しかし両者の原義は実は正反対で、“荒” は
「勢い強きさま」、“粗” は 「勢い弱きさま」 です。
■直はあらじ (さはあらじ)
サ は サガ(清汚・直曲)
の サ(清・直)で、ここでは 「まっすぐ・素朴・純粋」
を表します。
“じ” は 否定の 「ず」 の推量形で、“あらじ” は
「あるまい・ないだろう」 の意です。
■らん
あらぬや (〜ではないのか?)
が、あらん → らん
と縮まったものです。
ですから元来は否定の疑問・反語ですが、それが推量の意に発展したものです。
また らん → ん
と縮まり、後世は らむ・む
へと転じます。
“奪ふらん” は 「奪うのではないか?・奪うんじゃね?」
という意味です。
■父母 (かぞいろ・かそいろ)
タラ の換言で、「父母・両親」 を意味します。 ▶タラ
カゾ は カス(▽上す) の名詞形で、「上るさま・陽」
を意味し、
イロ は “日の入り” の イリ(入り) や、オリ(下り)
の変態で、
「下るさま・陰」
を表すと考えます。
■任 (よさし)
ヨス(寄す)+シク(如く) の連結から “ク” を省いた ク語法
で、
「寄せ・差し向け・預け・ゆだね・任せ」
などを意味します。
よさし【任】〈広辞苑〉
(「寄さす」 から) (統治などの)委任。任命。
■敢え (あえ・あゑ)
アフ/アユ(合ふ/肖ゆ) の連用形で、アエテ(敢て)
と同じです。
ここでは 「(心を)合わせて・心して・意識的に・故意に」
などの意です。
打消の語を伴うと 「合わない・叶わない・〜できない」 の意となります。
【概意】
姉ヒルコは、ソサノヲが生れ付き蝕まれていることを知るため、
驚いて
「弟が来るのは何か裏がある。国を奪うのではなかろうか。
父母が委ねた国を捨て置いて 故意にこちらを窺う」 と。
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あけまきし もすそおつかね はかまとし
ゐもにみすまる からまきて ちのりゐものり ひちにつけ
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総角し 裳裾を束ね 袴とし
五百瓊ミスマル 絡巻きて 千乗り・五百乗り 肱に付け
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■総角・揚巻
(あけまき)
アケ(開け・▽分け)+マキ(巻・▽環・▽髷) の意で、
「左右に分けて両脇で輪状に束ねる髪型」 をいいます。
みずら(角髪)
ともいい、少年の髪の結い方です。 ▶画像
■裳裾 (もすそ・みもすそ)
モ(裳)+スソ(裾) で、モ(裳) は 「下にまとう衣」
をいいます。
★裾 (すそ)
スサム(荒む)
の母動詞 スス(煤す)
の名詞形で、「下・末・隅・外れ・果て」
などを表します。
■袴 (はかま)
「2本に分かれるもの」 を意味します。
ハク(吐く・剥ぐ)+カム(▽離む・擤む) の短縮 “ハカム”
の名詞形で、
両語とも 「離す・分ける」 が原義です。
■五百瓊ミスマル (ゐもにみすまる)
ニ(瓊)
は ニタマ(▽熟玉・丹玉)
の略で、「優れた玉・珠・宝石」 をいいます。
ミスマル は 「多数を一つに結んだもの」
を意味します。 ▶画像
よって 五百瓊ミスマル とは 「500珠をつないだ 数珠(じゅず)」
です。
★ミスマル
(御統)
ミ(‘見る’ の連用形)+スマル(統まる)
の名詞形で、スマル は シバル(縛る) の変態。
両語とも 「合う・寄る・集まる・まとまる」 の意です。スバル(昴)
は スマル の変態です。
すまる【統まる】〈広辞苑〉
集まって一つになる。すばる。
■絡巻く (からまく)
カラム(絡む)+マク(巻く) の短縮です。
■千乗り (ちのり) ■五百乗り (ゐものり)
「1000本の矢が乗る靫」 と、「500本の矢が乗る靫」
をいいます。 ▶靫(ゆき) ▶靫の画像
ノリ には “箆入” の字が当てられています。
のり【箆入】〈広辞苑〉
(ノイリの約) 靫(ゆぎ)に入れる矢の箆の数量を示す語。
【概意】
髪を総角にして、裳裾を束ねて袴とし、
五百珠のミスマルを絡め巻き、千乗り・五百乗りの靫を肱に付け、
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ゆはすおふりて つるきもち かたにわふんて けちらして
いつのおたけに なしりとふ
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弓弭を振りて 剣 持ち カタニワふんで 蹴散らして
逸のお猛に なじり訪ふ
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■弓弭
(ゆはず)
弦 (つる) を結い合す 「弓の本体部分」 をいいます。
ユハス(▽結わす:=ゆわえる)
の名詞形ですが、現在は違う風に解されています。
なお ユミ(弓) は ユヒ(結ひ) の変態です。
■カタニワふんで (かたにわふんで)
「汚穢を吹き散らかして」 という意です。
カタニワ は ヲヱクマ(汚穢隈・汚穢曲)・アオ(阿汚)・イワ(忌)
などの換言です。
フンデ は フキテ(吹きて・噴きて)
の音便で、「めぐらす・配る・振りまく」 などの意です。
★カタニワ (▽傾萎) ★カタヲヱ (▽傾汚穢) ★カサクサ
(▽傾曲)
カタ は 「傾くさま・曲るさま・ガタガタなさま」
をいいます。
ニワ は ニブ(鈍)・ナヱ(萎え)・ヌバ(射干)
などの変態で、「鈍り衰えるさま」 を意味します。
ですから ヲヱ(汚穢)
の換言です。カタヲヱ・カサクサ などとも呼ばれます。
ソサノヲは 忌を蹴散らし なお怒る
君 恐れまし 結室に 入りて閉ざせば
天が下 明暗も紋無し 〈ホ7-4〉
■逸のお猛 (いつのおたけ)
「並外れた勢い・すさまじい威勢」 というような意です。
★稜威・厳・逸 (いつ・ゐつ・いす)
イツ(出づ/▽秀つ)・イス(逸す)
の名詞形で、
「秀でるさま・勢いのあるさま・突出するさま・はみ出るさま・逸れるさま」
などが原義です。
★お猛 (おたけ・おたき)
オツ(▽秀つ)+タク(長く・焚く) の名詞形で、イツ(稜威・厳)
の同義語です。
「勢い余るさま・いきり立つさま・勇むさま・激しさ・荒々しさ」
などを表します。
■なじり訪ふ (なじりとふ・なぢりとふ)
「すり寄る・にじり寄る・詰め寄る・じりじりと迫る」
などの意です。
ナジル(詰る)
は ナスル(擦る)・ニジル(躙る)
の変態で、「往き来する/させる」 が原義です。
トフ(問ふ・訪ふ)
も原義は同じですが、ここでは
「行く・来る・たずねる」 などの意です。
【概意】
弓弭を振りて剣を持ち、汚穢隈を吹き散らかしながら、
並外れた威勢でじりじりと迫り来る。
本日は以上です。それではまた!