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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第162回 [2024.6.20]
第二九巻 タケヒト ヤマト打ちの文 (4)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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神武天皇-1-4
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たけひとやまとうちのあや (その4)
タケヒト ヤマト打ちの文 https://gejirin.com/hotuma29.html
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たかくらやまの ふもとには
ゑしきかいくさ いはわれの かなめによりて みちふさく
すへらきいのる ゆめのつけ
かみおまつれよ かくやまの はにのひらてに ひもろけと
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タカクラ山の 麓には
兄シギが軍 イハワレの 要に寄りて 道 塞ぐ
統君祈る 夢の告げ
「神を祭れよ 香山の 埴の枚手に ヒモロケ」 と
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■タカクラ山 (たかくらやま:高座山・高倉山)
「神の座す山・神の鎮まる山」 を意味します。
タカクラ山は 日本各地にたくさん
ありますが、この場合は ミモロ山
の換言です。
ミワ山(三輪山・神山)、また アオカキ山(▽阿汚垣山)
とも呼ばれます。
タカ(高・貴) は カミ(上・尊・神)
の換言、クラ(座)
は 「座所」 の意です。
カミクラ(神倉)、カンクラ(神座)、ミクラ(御座・神座)
などとも換言されます。
■兄シキ (ゑしき)
「大和国のシキ県を治める県主」 です。 ▶シキ県 ▶県主
ウガ主 (ウダの県主)
の場合と同じく “兄と弟”
の2人の県主がいて、これは “兄” の方です。
記紀には 兄師木/兄磯城、旧事紀には
志貴県主兄磯城
と記されます。
■イハワレ (磐余)
イハ/イワ(岩・磐)
は 「結んで凝ったもの」 が原義で、この場合は ヤマ(山)
の換言です。
ワレ(割れ)は 「割れ目・境目・間」
です。ですからイハワレは 「山と山の境目・山間」
を意味します。
これは 「三輪山と天香久山の山間の地」 をいい、後には 磐余(いわれ)
という地名になります。 ▶地図
イハワレにはもう1つ別の意味もあり、少し後に出てきます。
■要 (かなめ)
カナ(▽要・▽兼)+メ(目・▽間)
で、「肝要な所・要所・要害」 を意味します。
■神を祭る (かみおまつる)
■香山の埴 (かぐやまのはに)
「天香山の土」
です。この山の麓に大和国を自領とするカグヤマ朝廷の都があります。 ▶天香山
ですから “香山の埴”
を手に入れることを、大和国の領地を手中に収める モノザネ
とするわけです。
■枚手 (ひらで)
ヒラ(平)+アテ(当て)
の短縮で、「平らな当て物・平たい皿」 をいいます。
この場合は 「香具山の埴で造った平たい土器」 です。
“平” は 「(大和国の)平定」
を意味するモノザネでしょう。
【概意】
タカクラ山(=ミモロ山)の麓には、兄シギの軍が山あいの要害に集まって道を塞ぐ。
統君が祈れば夢の告げ、「神を祭れよ。香山の埴の平皿に神饌を供えて」
と。
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かみのをしえに なさんとす
おとうかしきて しきたける かたきあかしも みなこはむ
きみおおもえは かくやまの はにのひらての ひもろけに
あめつちまつり のちうたん
うかしかつけも ゆめあわせ
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神の教えに 和さんとす
弟ウガ司来て 「シキ長 カダキ別司も みな拒む
君を思えば 香山の 埴の枚手の ヒモロケに
天地まつり 後 討たん」
ウガシが告げも 夢合せ
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■神の教えに和す (かみのをしえになす)
「夢で告げられた神の教えに合わす/沿う」
という意です。 ▶和す
■弟ウガ司 (おとうがし)・弟ウケ司 (おとうけし)
ウダの県主の弟の方です。 ▶ウダ ▶ウガ司 ▶兄/弟
弟ウケ司(おとうけし)とも呼ばれます。
■シキ長 (しきたける)
“兄シキ” の換言です。 ▶シキ(磯城)
記紀には 八十建/八十梟帥(やそたける)
と記されます。
★タケル
(建・梟帥・▽長)
タケル(長ける)
がそのまま名詞化したもので、「長けた者・長(をさ)」
を意味し、
「主・司・守」 などの換言です。またこの場合はさらに
「長じた者・兄」 の意も重なります。
■カダキ別司 (かだきあかし)
カダキ(葛城)+アカ(分・別)+シ(司)
で、カダキ/カツキは カツラギ(葛城)の換言です。
アカ(▽分・▽別)は ワケ(分け・別)の変態です。したがってこれは
「葛城の県主」 の換言です。 ▶県主
★アカ (▽分・▽別)
アク(開く・空く)の名詞形で、アクは ワク(分く・別く)の変態。
ですから ワケ(分け・別)
と同じです。
■天地祭る (あめつちまつる)
“神を祭る”
の換言で、御利益を得るため 「神を崇める・祭り上げる」
ということです。
この時代になると天地/陽陰も、本来の意味が薄れ、
「神々・神仏」
程度の意味で用いられているのではないかと思います。
■夢合せ (ゆめあわせ)
「夢の照合・夢の一致」
という意で、複数の人が同じ夢を見ることをいい、
これにより正夢であることの確認としたようです。後世は意味が変わります。
【概意】
神の教えに沿わんとする時、弟ウガ司が来て、
「磯城の長も葛城別司も みな拒む。君を思えば、
香具山の埴の平皿に神饌を供えて天地を祭り、その後に打つべし」
と。
ウガ司の告げも夢合せ。
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しいねつひこは みのとかさ みおもつうかし
をちうはの たみのすかたて かくやまの みねのはにとり
かえことは みよのうらかた ゆめゆめと つつしみとれと
みことのり
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「シイネツヒコは 蓑と笠 箕を持つウガ司
老翁・老婆の 民の姿で 香山の 峰の埴取り
返言は みよの占形 ゆめゆめと つつしみ取れ」 と
御言宣
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■シイネツヒコ
■みよの占形 (みよのうらかた)
「命運を占うもの・運命を左右するもの」
という意です。 ▶占形
★みよ (▽回・▽巡・▽運)
ミル(回る)の変態
ミユ(回ゆ)の名詞形で、「めぐり・往き来・回転・運び」
などを原義とし、
この場合は 「めぐりあわせ・事の運び・運・命運」
などを意味します。
■ゆめゆめ
(努努・▽斎斎)
ユメは ユムの名詞形で、ユムは イム(斎む)の変態です。
「心を込めるさま・大切にするさま・つつしんで行うさま」
を表し、セツセツ(切切)
と同義です。
【概意】
「シイネツヒコは蓑と笠、ウガ司は箕を持ち、
老翁・老婆の民の姿で 香具山の峰の埴取り。
その返言は命運を占うもの、切々と心して取れ」
と御言宣。
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ちまたにあたの みちおれは しいねつひこか いのりいふ
わかきみくにお さたむなら みちもひらけん かならすと
たたちにゆけは あたもみて さまおわらひて よけとふす
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ちまたに仇の 満ち居れば シイネツヒコが 祈り言ふ
「我が君 国を 定むなら 道も開けん 必ず」 と
直ちに行けば 仇も見て 様を笑ひて 避け通す
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【概意】
道筋に仇があふれておれば、シイネツヒコが念じ言う。
「我が君が国を平定する <運命>
なら、道も開けよう必ず」 と。
脇目も振らず行けば、仇も見てその様を笑って避けて通す。
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かれにかくやま はにとりて かえれはきみも よろこひて
いつへおつくり にふかわの うたにうつせる あさひはら
あまてるとよけ ふまつりは みちおみそまた
かんみまこ あめまひかひこ あたねして
わけつちやまの みをやかみ みかまつらせて あたおうつ
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故に香山 埴 取りて 帰れば君も 喜びて
斎瓮を造り ニフ川の ウダに写せる 朝日原
アマテル・トヨケ 二祭は ミチオミぞ また
カンミ孫 アメマヒが曾孫 アタネして
ワケツチ山の 御祖神 三日祭らせて 仇を討つ
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■斎瓮 (いつへ・いんべ・いわひべ)
斎(いつ・いん/いむ/いみ・いわひ)は 「斎く/傅くこと・いつくしむこと」
をいい、
ヘ/べ(瓮・瓶)は
「容器・かめ・びん」 です。ですから
「神を斎くための容器」 が原義です。
これは 「神に捧げる水や酒を入れるかめ」 をいい、別名が
須恵器・陶器
です。
斎瓮の製作に携わった氏族が 後の インベ(斎部/忌部)氏 と考えられます。
■ニフ川のウダ (にふかわのうた)
「丹生川の端・丹生川の際」 という意です。 ▶ウダ
ニフ川(丹生川)は、現在の宇陀川支流の 笠間川
です。
ニフ(▽和ふ・▽似ふ)は
この場合、「合わせ・写し・似せ」 の意と思います。
■朝日原 (あさひはら)
トヨケとアマテルの神霊が纏られている、「朝日宮を写した領域」
という意味です。 ▶原
日本書紀は “菟田川の朝原(うだのかわのあさはら)”
と記しています。
宇陀市榛原雨師字朝原(あさはら)がその場所と考えられ、そこには丹生神社があります。
丹生神社 (にふじんじゃ)
奈良県宇陀市榛原雨師366。(旧:宇陀郡榛原雨師字朝原)
現在の祭神:高龗神
<筆者注>
本来の祭神はアマテルとトヨケだったはず。通称は朝原宮。
■二祭・付祭 (ふまつり)
フ(付・二)+祭(まつり) で、「合わせ祭ること」
をいいます。
■ミチオミ・ミチヲミ
■カンミ ■アメマヒ ■アタネ
カンミは カンミムスビの略で、6代タカミムスビのヤソキネをいいます。
アメマヒは アマメヒトツの略で、ヤヱ垣の剣を造った鍛冶です。
アタネは 後の賀茂の県主で、旧事紀に 阿多根命
と記されます。
■ワケツチ山の御祖神 (わけつちやまのみをやかみ)
賀茂のワケツチ山に纏られる
「ニニキネの神霊=別雷の神」 をいいます。 ▶ワケツチ山 ▶御祖
■三日祭らす (みかまつらす)
ワケツチ山に纏られるニニキネの神霊を写して、3日間祭らせたということです。
この祭場が 宇陀市榛原高井の伊豆神社
ではないかと思います。
祭神の伊豆大神とは、ヰツヲヲカミ(逸大尊)の神霊をいうのでしょう。
伊豆神社
(いずじんじゃ)
奈良県宇陀市榛原高井504。
現在の祭神:伊豆大神
【概意】
しかれば香山の埴を取りて、帰れば君も喜んで、
斎瓮を造り、ニフ川の端に “朝日原” を写し、
アマテルとトヨケの二神を合せ祭るはミチオミぞ。
また カンミの孫のアメマヒの、曾孫のアタネをして
ワケツチ山の御祖神を3日祭らせて仇を打つ。
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くにみかおかに いくさたて つくるみうたに
かんかせの いせのうみなる いにしえの
やえはいもとむ したたみの あこ
よよあこよ したたみの いはひもとめり うちてしやまん
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国見が丘に 軍立て 作る御歌に
『カンカセの 妹背の生み成る いにしえの
八方這いもとむ 下回みの天子
よよ天子よ 下回みの い這ひもとめり 打ちてしやまん』
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ここは五七調が少々いびつなため
言葉の区切りを調整しています
■国見が丘 (くにみがおか)
タケヒトが
「大和国のカグヤマ宮を鳥瞰するために登った丘」 です。
現在の桜井市赤尾の 鳥見山(245m)
ではないかと考えています。
日本書紀は、天皇が登ったのは菟田の高倉山で、
“国見丘の上に八十梟帥(やそたける)がいた”
と記しています。
■軍立つ (いくさたつ)
「軍勢を配置する・布陣する」 という意です。
■カンカセの妹背の生み成る (かんかせのいせのうみなる)
“カンカセの妹背” は 「陽陰和合した男女/夫婦」
という意ですが、 ▶カンカセ
この場合は 「陽陰二尊・イサナキ&イサナミの二尊」
をいいます。 ▶陽陰二尊
ですからここは 「二尊が生み育てる」
という意味になります。
■下回み・下民 (したたみ)
■天子・上子 (あこ)
「上位にある子・御上の子」 の意で、この場合は
「皇族・皇子」 を意味し、
これはソサノヲの出自を表します。
アワナギ─イザナギ┐ ├1.ワカ姫 (斎名ヒルコ) ├2.アマテル (斎名ワカヒト) ├3.ツキヨミ (斎名モチキネ) ├4.ソサノヲ (斎名ハナキネ) トヨケ──イザナミ┘
空かさ天男 八方這いもとむ 下回みの さすら遣らいき 〈ホ7-6〉
■よよ天子 (よよあこ)
「いよいよの天子・さらなる皇子」 という意で、これはハラ皇君(=ホノアカリ)の皇子である
クニテル(=ニギハヤヒ)を指します。 ▶よよ
ニニキネ─ホノアカリ┐ ├┬─────クニテル(ニギハヤヒ) コモリ──タマネ姫─┘└タケテル │ ├ウマシマチ タカキネ─フトタマ─??┬ナガスネヒコ │ └─────ミカシヤ姫
■い這ひもとめり (いはひもとめり)
イヤ(弥)+ハヒモトム(這いもとむ)+リ(=なり) の短縮で、
「またしても這いまわるなり」 という意です。 ▶弥
■打ちてしやまん (うちてしやまん)
“しやまん” は シヤム(仕止む)+ン(意志) で、
シヤムは シトム(仕留む)の換言、シトムは
シヅム(鎮む)
の変態です。
ですから
「打って仕留めよう・打って鎮めよう・打って終らせよう」
などの意になります。
★しやむ
シユ+ヤム(止む・罷む)
の短縮で、シユは シム(締む)の変態です。
両語とも 「締める・閉じる・終らす・殺す」
などが原義です。
【概意】
国見が丘に軍を配置して作る御歌に
『カンカセの 妹背の生み成る
いにしえの 八方這いもとむ 下回みの天子
よよ天子よ 下回みの い這ひもとめり 打ちてしやまん』
『陰陽和合の夫婦が生み育てる
いにしえの八方を這いまわる下回みの皇子がいた
さらなる皇子よ、下回みがまたしても這いまわるなり
打ちて仕留めようぞ』
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このうたお もろかうたえは あたかつく
しはしかんかふ にきはやひ さすらをよすと おたけひて
またひことかも あめからと いくさおひけは みかたゑむ
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この歌を 諸が歌えば 仇が告ぐ
しばし考ふ ニギハヤヒ 「さすら男寄す」
と お猛びて
また一言かも 「天から」 と 軍を退けば 御方笑む
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■考ふ (かんがふ・かがふ)
カガヱル/カンガヱル(明暗得る)
を簡略した動詞と考えます。
■さすら男寄す (さすらをよす)
「さすら男の境遇が自分に押し寄せて来る」
という意です。 ▶さすら男
天(御上)の法に背いて
さすらひの下民に落とされたソサノヲと同じく、
いま天に刃向かう自分にも
その境遇が待っているという恐怖を表した言葉です。
■一言かも (ひことかも)
カモは カム(▽和む・▽交む・咬む)
の名詞形で、「咬ませ・添え・加え」 などの意です。
ですから 「一言加えて」 という意味でしょう。
■天から (あめから)
「御上から・中央政府から」 という意です。
したがってニギハヤヒ自身は、タケヒトが正統な中央政府の後継者であることを、
よく承知しているわけです。
【概意】
この歌を皆が歌えば、仇がその君に告げる。
ニギハヤヒはしばらく考えた後、「さすら男が迫り来る」
と叫び、
また一言、「天から」 と加えて、軍を退けば 御方は笑む。
本日は以上です。それではまた!