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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第74回 [2023.11.19]
第十五巻 食よろづ生り初めの文 (1)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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みけよろづなりそめのあや (その1)
食よろづ生り初めの文 https://gejirin.com/hotuma15.html
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みけよろつなりそめのあや
あめつちも のとけきときに あまてらす かみのみゆきの
ふたみかた みしほおあひて みそきなす
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食よろづ生り初めの文
天地も 和けき時に 和照らす 神の御幸の
フタミ潟 潮を浴びて ミソギなす
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■食よろづ生り初め (みけよろづなりそめ)
「食物や万物の起源」 という意味です。
★みけ (食)
★よろづ
(万)
ヨロ(万・▽色)+ツ(箇・個)
で、「万個」 が原義です。
ヨロ は 「10000」、また 「いろいろ・さまざま」
を意味し、
ツ は ス(数・子・素・州)
の変態で、「数えるもの・分かれるもの」 をいいます。
★初め (そめ)
ハジム(始む)
の母動詞 “シム” の名詞形 “シメ” の変態です。
ですから 「はじめ・端緒」 を意味します。
■天地も和けき時 (あめつちものどけきとき)
アメツチ(天地)
は 「陽と陰」 を表します。
ノドケキ(▽和けき) は
「調和して穏やかな如き」という意です。
よって 「陽と陰が和(やわ)して穏やかな時」
という意となります。
これはアマテルの重要な教えが
アマテル自身によって語られるアヤの
冒頭に置かれる 賛美感謝の前書き
です。
★のどけし (和けし・長閑し)
ノド(閑・和)+ケ(如・然)+シ(形容詞語尾)
で、“のどか”
の形容詞形です。
■和照らす神 (あまてらすかみ)
「和して恵る日月の神」
という意で、日月の大神霊の顕現である
アマテル神(斎名ワカヒト)の別名です。 ▶和照らす
天が下 和して恵る 日月こそ 晴れて明るき 民の父母なり 〈ホ7-4〉
■フタミ潟 (ふたみがた)
セオリツ姫が マフツの鏡
を置いた フタミの岩
がある海岸をいい、
フタ岩浦 とも呼ばれます。現在の
二見浦(ふたみがうら)
です。
イサワの宮はこの海岸の近くにあったことが推測されます。
二見興玉神社
(ふたみおきたまじんじゃ)
三重県伊勢市二見町江575。
現在の祭神:猿田彦大神(興玉神)、宇迦御魂大神
【概意】
食よろづ生り初めの文
陽陰ものどかで穏やかな時に、和して照らす神は
フタミ潟に御幸し潮を浴びて禊をなす。
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とものくすひか いふかさお あめにもふさく
ちちみかと やふさくるまの みゆきなす かみもけかれの
あるやらん ときにあまてる みことのり
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供のクスヒが 訝さを 陽陰に申さく
「父帝 八房車の 御幸なす 神も穢れの
あるやらん」 時に和照る 御言宣
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■クスヒ
■訝さ (いぶかさ)
イブカシ(訝し)の名詞形で、今風には
“訝しさ” です。
■申さく (もふさく)
モフス(申す)+シク(如く)
の連結から ‘シ’ をカットした ク語法
です。
■父帝 (ちちみかど)
クスヒの父であるアマテルを指します。
★帝・御門 (みかど)
イカツ(厳つ)
の変態 “ミカツ” の名詞形です。〈ミ・ヒ・イ・ヰ
は互いによく入れ替わる〉
「上/高/中心にあるさま」 が原義で、「御上・中央政府・朝廷・皇・皇宮」
などを表します。
ミコト(尊・命)、ミゴト(見事)
などの変態です。
■八房車・八房輦 (やふさぐるま)
霊鳥の出車(いとりのてぐるま)、八房輿(やふさこし)、御幸輿(みゆきこし)
の換言です。
■やらん
【概意】
供のクスヒが不思議に思ってアマテルに申すには、
「父帝は八房車で御幸をなす神。そんな神でも穢れることがあるのやら?」
時に和して照らす御言宣。
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なんちぬかたた もろもきけ
わかうまれねに あかもなく あをうけうまれ ねはきよく
うくめくたみに めもけかれ あしきうたゑに みみけかれ
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汝ヌカタダ 諸も聞け
我が生れ 根に 垢もなく 太陽受け生まれ 根は清く
蠢く民に 目も穢れ 悪しき訴えに 耳穢れ
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■垢 (あか)
アカル(別る)の母動詞
“アク” の名詞形です。
「離れ・分れ・逸れ・外れ」 などが原義で、ケガレ(穢れ・汚れ)の同義語です。
■太陽 (あを)
太陽 (あひ・あまひ・うほひ・うひ・おおひ)
と同じで、「日」 の換言ですが、
ここでは その 「潤・エネルギー・霊・神霊」
をいいます。
これは アマテルが “我が上”
と呼んでいた 「日の太神霊」
の同義語です。
■清し (きよし)
■蠢く (うぐめく)
「回る・揺れる・振れる・震える」 などが原義で、
特に意味もなく 「動き回る・右往左往する」
ことを意味します。
ここでは
人生の意味も目的も知らず、虫や獣のようにただ餌を求めて
「動き回る・右往左往する・生存する」 さまをいいます。
【概意】
汝ヌカタタ、また皆も聞けよ。
我が生れは
根に垢もなく、日の太神霊を受けて生まれている。
しかしたとえ根は清くとも、蠢く民を見れば目も穢れるし、
悪しき訴えを聞けば 耳もやはり穢れるのである。
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はなもちならぬ をしゑくさ をさめさとせる こころはの
むはしそそきて みおしらけ ひをねにかえる かんかたち
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放持ちならぬ 教え種 治め諭せる 心派の
六端濯ぎて 身を白げ 陽尾根に還る 神形
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■放持ちならぬ (はなもちならぬ)
「放すことも持つこともできぬ」 という原義で、
「修得し難いが、かといって捨てるわけにもいかない」
という意と考えます。
現在では 「鼻持ちならぬ」
と解釈されています。
■治め諭せる (をさめさとせる)
「(教え種を) とりまとめて/アレンジして、理解させる」
という意です。
サトセルは サトス(諭す)の 「終止形+える」
の形の連体形です。
■心派・心葉 (こころば)
「中心からの枝分かれ」
というのが原義ですが、微妙に異なる多様な
意味に使われるため、理解しづらい言葉です。その都度説明しますが、
ここでは 心(=中子)から延びて主要臓腑につながる
目には見えない
情報ネットをいい、この別名が ミヤビ
です。 ▶心 ▶派・葉
詳しくは17アヤで説明されますが、心(=中子)は 心派(=ミヤビ)を介して
肉体の要である六臓 (六腑、五臓、五腑と呼ぶ場合もあり)
と連絡しています。
このため両者は緊密に結びつき、体の健康状態と心の健康状態は連動します。
★心派の六端 (こころばのむはし)
「心派(=ミヤビ)の6つの終端」 という意で、「6つの主要臓腑」
をいいます。
ナカゴ(心臓)、ユフ(肝臓)、ヨコシ(脾臓)、フクシ(肺)、ムラト(腎臓)、ヨクラ(膵臓)
の6つで、魄の根(しゐのね)・根の六臓(ねのむくら)・六宗(むむね)
とも呼ばれます。
■身を白ぐ (みおしらぐ)
「身をまっさらにする」 という意味です。
★白ぐ・精ぐ (しらぐ)
シル+アク(明く) で、シルは サル(▽更る)の変態。両語とも
「行き来させる・回す」 が
原義で、この場合は
「一周して元に返す・回帰させる・改める・新たにする」
などの意です。
★ミ (身/実・霊)
これまでは “ミ” に関して、「肉体」 に対しては “身”、「霊・たましい・心」
に対しては
“実” あるいは “霊”
と表してきましたが、アマテルの言葉の中での “ミ” は
両方となります。
つまり、人間を生かしめている 肉体的なシステム と
霊的なシステム を別個のものとはせず、
一つに統合されたシステムの 「表/裏・可視部/不可視部」
として考えなくてはなりません。
ゆえに ここに言う “身を白ぐ” も
「肉体と心の両方をまっさらにする」
という意味になります。
この場合は、身体の健康状態と心の健康状態は 心派(=ミヤビ)を介して連動しているため、
身体(主要臓腑)の健康を回復すれば、自動的に心の健康も回復する
という意味になります。
■陽尾根に還る神形 (ひをねにかえるかんかたち)
「陽の粋に還る中子(=心)」 という意で、
穢れた中子(=心)が濯がれて純粋な状態に回帰することをいいます。
★陽尾根 (ひをね)
ヲネ(尾根・▽央峰)は
「高み・頂き・中心・精髄・本質」 などを意味します。
ですから 「陽の精髄 ・陽の本質・純粋の陽」
などの意で、アヲ(太陽) や
ムネカミの換言です。
★神形 (かんかたち)
「(この世における) 神の現れ」 という意で、ここでは
「人の心(=中子)」 を意味します。
突然ですがここでクイズです。
1.心のことを “精神” とも言うが、その意味は?
2.“身” も “心” も “神” も、どうして “シン” ?
【概意】
修得し難く、かといって捨てて置けぬ教え種を苦心してまとめ、
臣民を諭しているうちに穢れる 心派の六端を濯いで、
身(心身)を回復すれば、 純粋な陽の状態に還る神形(=中子)。
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けのししはめは しむけかれ
よつなるししは かほすきて ちちみけかれて みもかるる
たとえはにこる みつかわく ししもにこれは かわきつく
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穢の肉食めば シム穢れ
四つ生る獣は 穢火過ぎて 縮み穢れて 身も枯るる
例えば濁る 水 乾く 肉も濁れば 乾き尽く
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■穢の肉 (けのしし)・穢肉 (けしし・がしし)
「穢れた肉」 の意で、具体的には 「鳥獣の肉」
をいいます。
★ケ・ガ (外・曲・▽穢) ★ケモノ (▽外物・獣)
“ケ” “ガ” は ケガレ(穢れ)を意味するため、“穢”
を当て字しています。
ケガレは 「逸れ・外れ・曲り」 が原義です。
「人から外れる生き物・外道の物・畜生」 が ケモノ(▽外物・獣)
です。
★シシ (肉/獣)
2種類あって、シシ(肉)は
“刺身” のサシの変態で、「(骨に)差す/添うもの」
が原義。
シシ(獣・猪・鹿)
は シス(失す)の名詞形で、「逸れたもの・外れたもの」
をいい、
ケモノ(▽外物・獣) の同義語です。
■シム (▽霊・▽血)
ここでは 「霊の汁=(主に)血」 をいうものと思います。
■四つ生る獣 (よつなるしし)
「4つの元素によって生ずるケモノ」 という意で、4つの元素とは
ウツホ(空)、カゼ(風)、ホ(火)、ミヅ(水)、ハニ(埴) の5元素の内の4つです。
人間は5元素すべてが備わることで生じています。
空・風・火と 水・埴の 交わり生れる ミナカヌシ〈ホ18〉
■穢火・曲火 (がほ)
「穢れた火・曲った火・有害な火」 という意です。 ▶ガ(穢)
この意味については本文中で説明されます。
■身 (み)
さきに述べましたように、今後は 「体と心の両方・心身」
を “身” と表記します。
■濁る水乾く (にごるみづかわく)
透明度が低い濁った水は、光熱を吸収しやすく蒸発が速いということです。
ニゴル(濁る)は 「交じる・紛れる・不純となる」
などが原義です。
【概意】
穢れた肉を食えば シム(霊汁・血)が穢れ、
4つの元素から成る獣は、穢れた火が過ぎて、
食えば体が縮み穢れて、ついには心身も枯れる。
例えば濁った水は乾きやすいように、人の肉も濁れば乾いて滅ぶ。
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きよなおはめは ちもきよく うしほのことし よよたもつ
あめのうむたみ このことく なかいきみんと
くいものの よしあしわくる なりそめお もろたみきけよ
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清菜を食めば 血も清く 潮の如し 万節保つ
陽陰の生む民 子の如く 長生き見んと
食い物の 良し悪し分くる 生り初めを 諸民 聞けよ
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■清菜 (きよな)
「清い菜・清めの菜」 の意です。 ▶清 ▶菜
これは特定の薬草名ではなく、薬効のある植物全般をいうものと思います。
■潮の如し (うしほのごとし)
海の水は常に干満を繰り返しているので、「いつも新鮮」
という意味です。 ▶潮
■万節 (よよ)
ヨ(▽万)+ヨ(節・代)で、「万年の期間」
をいいます。
■陽陰の生む民 (あめのうむたみ)
「アメノミヲヤ(陽陰の上祖)
が生んだ民」 という意です。
アマテルはアメミヲヤと同一視されています。
民も皆 クニトコタチの 後末なり その元ふつく アメミヲヤ 〈ホ14-2〉
■生り初め (なりそめ)
「生じる始め・起る始まり・起源」 という意です。
【概意】
清菜を食めば、血も清く潮の如し。万齢を保つ。
陽陰の生む民は我が子に同じ。その長生きを見たいがため、
食物の良し悪しを分かつ その起源を、諸民聞けよ。
本日は以上です。それではまた!