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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第186回 [2024.10.10]

第三四巻 ミマキの代 ミマナの文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 崇神天皇-2-2

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 みまきのみよみまなのあや (その2)
 ミマキの代 ミマナの文 https://gejirin.com/hotuma34.html
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 ももそひめ おおものぬしの つまとなる
 よにはきたりて ひるみえす
 あけなはきみの みすかたお みんととむれは
 かみのつけ こといちしるし われあした くしけにいらん
 わかすかた なおとろきそと

―――――――――――――――――――――――――――――
 モモソ姫 オオモノヌシの 妻となる
 「夜には来りて 昼 見えず
 明けなば君の 御姿を見ん」 と留むれば
 神の告げ 「言 著し 我 あした 櫛笥に入らん
 我が姿 な驚きそ」 と

―――――――――――――――――――――――――――――

モモソ姫 (ももそひめ)

■オオモノヌシの妻となる (おおものぬしのつまとなる)
この オオモノヌシ は人間ではなく、オオモノヌシ神=ミモロ神 です。
ですから “妻となる” も、「霊的なパートナーとなる」 という意味です。 ▶つま


■明けなば (あけなば)
“明けんば” と同じで、「(夜が) 明けたならば」 という意です。
‘な’ は 未来・推量を表す ‘ん (ぬ・む)’ の未然形です。


■留む (とむ)
朝になれば去ってゆく神を 「引き留める」 という意です。


■言著し (こといちじるし)
「その言葉、いたく感動的である」 という意です。 ▶著し


■あした (明日/朝)
アス(▽明す)タ(手・▽方) で、「改まった所/時」 が原義ですが、
(1) 日が改まった 「翌日・明日」 をいう場合
(2) 夜が明けて一日が始まる 「」 をいう場合
(3) 1+2 で、「翌日の朝・明朝」 をいう場合
この3つがあり、ここでは(3)です。


櫛笥 (くしげ)

 ★笥 (け)
 ケ(食) と同源で、「食わせ・合わせ・入れ」 などが原義です。
 この場合は 「入れ物・容器」 を意味します。

 

【概意】
モモソ姫はオオモノヌシ神の妻となる。
「夜には来たるが 昼は見えない。夜が明けたら君の御姿を見たい」 と、
引き留めれば、神の告げ。
「言葉たいそう感じ入る。では明朝、我は櫛笥に入ろうぞ。
我が姿に驚かないでくれよ」 と。



―――――――――――――――――――――――――――――
 ももそひめ こころあやしく あくるあさ
 くしけおみれは こへひあり ひめおとろきて さけひなく
 おほかみはちて ひととなり なんちしのひす わかはちと
 おほそらふんて みもろやま

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 モモソ姫 心あやしく 明くる朝
 櫛笥を見れば 小蛇あり 姫 驚きて 叫び泣く
 大神恥ぢて 人となり 「汝 忍びず 我が恥」 と
 大空踏んで ミモロ山

―――――――――――――――――――――――――――――

あやし (怪し)
「半信半疑なさま」 をいいます。


■大神 (おほかみ・おおかみ)
“ミワ大神” の略です。 ▶ミワ大神


忍ぶ (しのぶ)

■大空踏む (おおぞらふむ)
「大空に紛れる・大空を飛ぶ」 などの意です。 ▶大空(おおぞら・おほぞら)
フム(踏む) は この場合は 「その場に身を置く」 の意です。


ミモロ山 (みもろやま)

 

【概意】
モモソ姫は半信半疑ながらも、明くる朝 櫛笥を見れば小蛇あり。姫は驚きて叫び泣く。
大神は恥じて人の姿となり、「汝はこらえず、我が恥」 と、大空に紛れてミモロ山へ。



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 ひめあほきはち つきおるに はしにみほとお つきまかる
 おいちにうつむ はしつかや ひるはひとてに よはかみの
 おおさかやまの いしはこひ もろあひつきて たこしかて

―――――――――――――――――――――――――――――
 姫仰ぎ 鉢 つき下るに 箸に陰没を 突き罷る
 オイチに埋む “はし塚” や 昼は人手に 夜は神の
 オオサカ山の 石運び 諸 相継ぎて 手輿かて

―――――――――――――――――――――――――――――

■鉢つき下る (はちつきおる)
これはまだ思案中ですが、「鉢 (=頭・ひたい) をついて低まる」 の意に解しています。
つまり 「がっくりのポーズ・謝罪のポーズ・土下座」 です。 _| ̄|○ 


■箸 (はし)
ハサム(挟む) の母動詞 “ハス” の名詞形で、「合わせ・はさみ」 が原義です。
「間にはさむもの」 をいいます。ですから ハシ(橋・梯・階) も同源です。


■陰没 (みほと・めもと)
「陰の凹み・女陰」 をいい、“めもと” とも呼ばれます。 ▶めもと
ミ(陰・女)+ホト(▽没) で、ホト は ボツ(没) の変態です。

 女尊には 生り成り足らぬ 陰没(めもと)あり 男尊の成りて 余るもの
 合わせて御子を 生まんとて みとの交ぐ合ひ なして子を 孕みて生める 
〈ホ3ー1〉


■オイチ (▽合市・▽逢市・大市)
オフ(合ふ・会ふ)イチ(市) の短縮で、「合わせの区域・結びの区域」 が原義です。
これは 「オオモノヌシ神と、神となったモモソ姫の、夫婦が結ばれる区域」 の意と考えます。


■はし塚 (はしつか)
モモソ姫の亡骸を納めた陵墓の名で、現在は 箸墓(はしはか) と呼ばれます。 ▶塚
“はし” は 「合わせ」 が原義ですので、やはり 「合わせの塚・結びの塚」 という意です。
これも 「オオモノヌシ神と、神となったモモソ姫の、夫婦が結ばれる塚」 の意味と考えます。
また “鉢つく”  “箸突く” の意も掛けられているかもしれません。

 ”箸墓” は、その表札には「倭迹迹日百襲姫命、大市墓」と書かれます。


■オオサカ山 (おおさかやま:▽合境山)
奈良県香芝市西部の穴虫峠付近 の丘陵を指すと考えられています。
日本書紀には “大坂山” と記されます。 ▶オオサカ


手輿 (たごし)
この場合は、石を運ぶための 「担架」 をいいます。 ▶輿


■かて (▽担て・▽駕丁)
カツグ(担ぐ) の母動詞 “カツ” の名詞形で、「負い・にない・かつぎ」 などが原義です。
この場合は 「かつぐこと/者」 をいい、“かて” から 駕丁(がてい) に転じたと考えます。

 

【概意】
姫は神を仰いでうずくまる時、箸で陰没を突き罷る。
オイチ に埋めて “はし塚” や。
昼は人手に、夜は神によるオオサカ山の石運びは、諸が相継いでの手輿かつぎ。



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 はかなるのうた
 おほさかも つきのかおそえ
 いしむらお たこしにこさは こしかてんかも

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 墓成るの歌
  『オホサカも 月の明を/継ぎの顔 添え
 石群を 手輿に越さば 越しかてんかも』

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■墓 (はか)
ハク(捌く) の名詞形で、ハク は ハコブ(運ぶ) の母動詞、
「往き来させる・回す・送る・還す」 などが原義です。
ですから 「送りの場所・還しの場所・埋葬地」 を意味します。 ▶送り


■オホサカ (▽合境)
「合わせの区画」 の意で、オオサカ山 の “オオサカ” と語義は同じですが、場所は違います。
この “オホサカ” は 「オオモノヌシ神と、神となったモモソ姫の、夫婦が結ぶ区画」 を意味し、
つまり オイチ(▽合市) の換言です。


■月の明を添ふ (つきのかおそふ) / 継ぎの顔添ふ (つぎのかおそふ)
2つの意味を重ねます。
1つは ”月の明を添ふ” で、それにより 「夜にも石が運べる」 ことを意味します。
すなわちこれは 「夜には神が石を運ぶ」 を言い換えたものです。
もう1つは ”継ぎの顔添ふ” で、「手輿で石を運ぶ人足の数を増やす」 という意です。


■越しかてん (こしかてん)
コス(越す)+カツ(堪つ・勝つ)+ン(推量) で、コス(越す)は 「移動する・運ぶ」 の意です。
ですから 「運びきれるだろう」 という意となります。

 かつ【堪つ・勝つ】〈広辞苑〉
 [自下二] 動詞の連用形について、その動作に堪(た)える、できるの意を表す。

 

【概意】
 墓成るの歌
『オホサカ(=オイチ)も 月の明を添え、継ぎの顔を足し
  石群を手輿に運べば 運びきれるかも』



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 そひうつき そむかよみちの えひすむけ
 きみにつくれは くにやすく
 あきたたねこに おれかれの をとくまつりお
 はしつかに なせはかかやく のりのいち

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 十一年四月 十六日 四道の エビス平け
 君に告ぐれば 国やすぐ
 秋 タタネコに 折れ枯れの 緒解く纏りを
 “はし塚” に なせば輝く “のりの市”

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■四道 (よみち)
崇神10年10月22日に 四道の軍 を派遣した
「北陸道・東海道・山陽道・山陰道」 をいいます。

 「内は平けれど 外つ粗るる 四道の軍 発つべし」 と 二十二日に発つ 〈ホ34-1〉


■エビス・ヱビス (夷・戎・蝦夷)
「辺鄙にあって文明から外れた蛮族・未開の辺境人」 を意味し、アラヒト(粗人) の換言です。

 ヲヱ(‘瘁ゆ’ の連用形)+ヒス(▽卑す・▽鄙す) の短縮 ”ヱヒス” の名詞形。
 ヒス は イス(逸す) の変態で、両語とも 「離れる・逸れる・外れる」 などが原義です。


やすぐ (▽和ぐ・▽安ぐ)

■折れ枯れ (おれがれ)
「折れた人 枯れた人」 の意で、「四道の軍に敵対して命を落としたエビス」 をいいます。


■緒解く纏り (をとくまつり)
「霊の緒を解く処置/手当」 の意で、霊還し の換言です。 ▶霊の緒 ▶纏り
これは 「タマノヲが乱れて解けずに、陽元/陰元に還れない人霊が疫病を引き起こす」
という オオモノヌシ神の教え に従っての対応です。

・かわせ邪霊を 残りなく これ罪人の 魄 留む 疫病なすゆえ 〈ホ33ー3〉
・大臣カシマと タタネコと “
霊還し” 宣り 纏らしむ 故に明るき 〈ホ33ー3〉


■輝く (かがやく)
カグ(▽上ぐ)+ヤク(焼く) の連結で、カグ は コグ(焦ぐ) の変態。
両語とも 「上がる・高まる・勢いづく・栄える・熟す」 などが原義です。


■のりの市 (のりのいち:宣りの市/和りの市)
タタネコが 霊還しを宣る、「宣りの市」 という意に、「和りの市」 の意を重ねています。
ノリ(▽和り) は 「合わせ・結び」 が原義で、「合わせの市・結びの市」 の意になります。
つまり 「和りの市」 も オイチ(▽合市)オホサカ(▽合境) の換言というわけです。

 

【概意】
崇神11年4月16日、四道のヱビスの平定を君に報告すれば、国家は安泰となる。
秋 タタネコにより、折れ枯れの霊の緒を解く纏りを “はし塚” に行えば、
栄え輝く “のりの市” (=オイチ) であった。



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 そふやよいそひ みことのり
 あまつひつきお われつきて あめのおふひも やすからす
 めをあやまりて ついてせす ゑやみおこりて たみをえす

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 十二年三月十一日 御言宣
 「和つ日月を 我 継ぎて 陽陰の和ふ日も 安からず
 陰陽誤りて ついてせず 疫病 起りて 民 瘁えす」

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■陽陰の和ふ・陽陰の合ふ (あめのおふ)
「陽と陰が調和する」 という意で、アメハル(陽陰晴る) と同義です。


■陰陽誤る (めをあやまる)
“陽陰の和ふ” の反対で、「陽と陰が乱れる・陽陰が不調和となる」 という意です。 ▶あやまる
後先(あとさき)かかる”  “前後(まえうしろ)乱る” などとも換言します。
またこの状態を “陽陰の蝕み”  “陽陰の巡りの蝕み”  などと呼びます。


■ついて (▽対手)
ツイ(対・追)+テ(手) で、「対応・対処・手当て」 の意に解しています。
ツイ は ツキ(付き) / ツギ(継・次・注ぎ) の音便です。


疫病 (ゑやみ)

■瘁えす・汚穢す (をえす)
ヲユ(瘁ゆ)+ス(使役) で、ヲヤス(瘁やす) の変態です。 ▶汚穢
「曲げる・逸らす・外す・不調/異常となす・けがす」 などが原義。
これは、疫病により民の半数を死なせ、また離散させたことをいいます。

 五年 疫病す 半ば枯る 六年 民散る 〈ホ33ー2〉

 おやす【瘁やす】ヲヤス 〈広辞苑〉
 [他四] (ヲユ(瘁ゆ)の他動詞形) 毒気や妖気などで人を悩まし、また、まどわす。

 おゆ【瘁ゆ】ヲユ 〈広辞苑〉
 [自下二] 妖気などで苦しむ。病み疲れる。悩む。

 

【概意】
崇神12年3月11日、御言宣。
「和つ日月(=皇位)を我が継ぎてより、陽陰の調和する日々も平穏ならず。
陰陽が乱れて対処もせずにおれば、疫病が起りて民を穢す。」



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 つみはらわんと あらためて かみおうやまひ をしえたれ
 やをのあらひと いまなれて もろたのしめは かんかえて
 おさといとけの みちもあけ たみにおおする いとまあけ
 ゆはすたすえの みつきとめ たみにきはせて そろのとき

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 「罪 祓わんと あらためて 神を敬ひ 教え垂れ
 八方の粗人 今 慣れて 諸 楽しめば 考えて
 幼と稚の 貢も空け 民に負する 暇 空け
 弓弭・手末の 貢 止め 民 賑はせて そろの時」

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罪 (つみ) ■祓ふ (はらふ)

■教え垂る (をしえたる)
“民を治す法は神の纏り” という 「教えを全国に下す」 ということです。

 民治す教え “神纏り” やや汚穢更れど 外つ国 粗人 法を まだ迎けず
 故 四方に治人 遣はして 
法 教えしむ 
〈ホ33ー3〉


粗人 (あらひと)

■慣る・平る・均る・▽和る (なる)
ナラス(平す・均す)、ナラブ(並ぶ) などの母動詞で、
「和合する・調和する・平均化する・並ぶ・馴染む」 などが原義です。


楽しむ (たのしむ)

■幼と稚の貢も空く (おさといとけのみちもあく)
非常に難しい箇所ですが、この時代の課税基本は人頭税だったと仮定して、
「(人頭税における) 子供への課税を控除する」 という意に解しています。

オサ(▽幼) と イトケ(▽稚) は 現在は意味の区別がありませんが、
古くは 年少者と稚児 を区別する、行政上の分類があったのかもしれません。

 ★いとけ (▽稚)
 イト+ケ(如・然) で、イト は イトシ(愛し) のそれです。
 「いとしげ/かわいげなさま」 が原義で、「あどけない子」 を意味します。
 
 ★貢 (みち・みつき)
 ミツグ(貢ぐ) の母動詞 ミツ(▽見つ・▽充つ) の名詞形で、「合わせ・供え・(御用の)足し」
 などが原義です。そのためここでは “貢” と当て字しています。

日本書紀は 「長幼の次第(ついで)、及び課役の先後を知らしむ」 と記していますが、この後に
続く文言からも、民の負担を軽減して経済の活性を図ろうとする政策であることは明らかです。


■民に負する暇 (たみにおおするいとま)
「租税として民に課す労役の時間」 をいいます。後に言う 「雑徭」 です。 ▶おおす ▶雑徭


弓弭の貢/調 (ゆはずのみつき) ■手末の貢/調 (たすえのみつき)
日本書紀は、「この時に初めて弓弭・手末の調を課す」 と記しており、
「止める」 とするホツマの言い分とは正反対です。


■そろの時 (そろのとき)
「実りの時・充ち足りた時・豊かな時代」 などの意です。 ▶そろ

 

【概意】
「その罪を償わんと改めて神を敬い、神を纏る教えを国家に敷き、
八方の粗人も今は慣れ、諸民も楽しめば、考えて、
年少者と幼児にかける貢も控除し、民に負わせる労役時間を空け、
弓弭と手末の貢を止め、民を賑わせて、実りの時を<迎えよう>。」



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 なおりてやすく このみよお はつくにしらす みまきのよ
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 直りて安ぐ この代を “果つ国領らす ミマキの代”
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安ぐ・和ぐ (やすぐ)

代 (みよ・よ)

■果つ国 (はつくに)
ハツ(果つ) は ハテル(果てる) の母動詞で、「おしまいになる・終る」 という意です。
ですから “果つ国” は 「終った国・亡びた国」 を意味します。


領らす (しらす)

■ミマキ
ミ(‘回る’ の連用形)+マク(巻く) の連結  “ミマク” の名詞形で、
両語とも 「回る/回す・一回りして還る/還す・回帰する/させる」 などが原義です。
この場合は 「巻き返し・改め・改革・更新・革新」 などを意味します。

 

【概意】
直って安まるこの時代を “果てた国を治める 巻き返しの代” と。



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 たみたのしめは きみやすく きさきもおえて
 すけやさか といちにもふて うむみこは とちにいりひめ
 ふそむとし ねつきはつひに みまきひめ しきにうむみこ
 とよきひこ いむなしきひと

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 民 楽しめば 君 安く 后も生えて
 典侍ヤサカ 十市に詣で 生む御子は トチニイリ姫
 二十六年 十一月初日に ミマキ姫 磯城に生む御子
 トヨキヒコ 斎名シキヒト

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■君安く后も生ふ (きみやすくきさきもおふ)
「君の心が安らかとなり、その結果 后も生い茂る」 という意です。
各種ストレスによる精神面の衰弱は、男性の生殖能力を減退させると 16アヤに語られます。

 国守などは 民のため 心尽して 油減り 子種まれなり
 高き身は 下が羨み 叶はねば 掟を恨み 君 謗る これも仇なり 
〈ホ16ー6〉


■ヤサカ
ヤサカフリイロネ の略です。
これ以前に ヤサカイリヒコ(斎名オオキネ) を生んでいます。


トイチ・トチ (弔方・十市)

■トチニイリ姫 (とちにいりひめ)
ヤサカフリイロネ が生んだ 崇神天皇の3女です。
記紀には 十市之入日売命 / 十市瓊入姫命 と記されます。


ミマキ姫 (みまきひめ)

 
■トヨキヒコ・トヨキイリヒコ ■シキヒト
内宮のミマキ姫 が生んだ 崇神天皇の3男で、斎名 シキヒト です。
記紀にはは 豊木入日子命 / 豊城入彦命・豊城命 と記されます。 ▶トヨキ

 

【概意】
民が生活を楽しめば君の心も安まり、后も生い茂って、
典侍のヤサカフリイロネがトイチに詣でて、生む御子はトチニイリ姫。
崇神26年11月1日にミマキ姫が磯城に生む御子は、トヨキヒコの斎名シキヒト。



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 ふそことし はつひをうとに
 きさきまた うむみこいくめ いりひこの いむなゐそさち
 みそやとし あきはつきゐか
 きさきのと くにかたうちめ うむみこは ちちつくわひめ 
 よそむつき すえやかこうむ いかつるの いむなちよきね

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 二十九年 初日ヲウトに
 后また 生む御子イクメ イリヒコの 斎名ヰソサチ
 三十八年 秋八月五日
 后の妹 クニカタ内侍 生む御子は チチツクワ姫
 四十年一月 二十八日 子生む イカツルの 斎名チヨキネ

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■后 (きさき)
内宮(=正妃)の ミマキ姫 を指します。

 
■イクメイリヒコ ■ヰソサチ
ミマキ姫 が生んだ崇神天皇の4男で、斎名 ヰソサチ です。
記紀には 伊久米伊理毘古伊佐知命 / 活目入彦五十狭茅天皇 と記されます。
後の 第11代垂仁天皇 です。


■クニカタ内侍 (くにかたうちめ)
ミマキ姫 の妹で、崇神天皇の内侍です。 ▶内侍


■チチツクワ姫 (ちちつくわひめ)
クニカタ姫 が生んだ崇神天皇の4女 です。
日本書紀には 千千衝倭姫命 と記されます。

 
■イカツル ■チヨキネ
クニカタ姫 が生んだ崇神天皇の5男で、斎名 チヨキネ です。
日本書紀には 五十日鶴彦命 と記されます。

 

【概意】
崇神29年元日ヲウトに后がまた生む御子は イクメイリヒコの斎名ヰソサチ。
崇神38年秋の8月5日、后の妹のクニカタ内侍が生む御子はチチツクワ姫、
崇神40年1月28日に生む御子はイカツルの斎名チヨキネ。


 開化天皇
   ├──────崇神天皇(ミマキイリヒコ・斎名ヰソニヱ)
 イカシコメ      ┃
            ┃             ┌(6)トヨキイリヒコ(斎名シキヒト)
            ┃             │
 オオヒコ───┬ミマキ姫[内宮]──────────┴(7)イクメイリヒコ(斎名ヰソサチ:垂仁天皇)
        │   ┃
        └クニカタ姫[内侍]─────────┬(8)チチツクワ姫
            ┃             │
            ┃             └(9)イカツル(斎名チヨキネ)
            ┃
 紀アラカトベ──トオツアヒメクハシ姫[内侍]────┬(1)トヨスキ姫
            ┃             │
            ┃             └(3)ヤマトヒコ(斎名ヰソキネ)
            ┃
 近江国造────ヤサカフリイロネ姫[大典侍]────┬(4)ヤサカイリヒコ(斎名オオキネ)
            ┃             │
            ┃             └(5)トチニイリ姫
            ┃
 尾張国造────オオアマ姫[中橋]──────────(2)ヌナギ姫



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 よそやとし はつそかをあゑ
 とよきみと いくめきみとに みことのり
 なんちらめくみ ひとしくて つきしることの ゆめすへし

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 四十八年 一月十日ヲアヱ
 トヨ君と イクメ君とに 御言宣
 「汝ら 恵み 等しくて 継ぎ領る事の 夢すべし」

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■トヨ君 (とよきみ) ■イクメ君 (いくめきみ)
それぞれ トヨキイリヒコイクメイリヒコ を指します。


■恵み (めぐみ)
ここでは 「生まれつきの能力・天性」 をいいます。

 
等し (ひとし)

 

【概意】
崇神48年1月10日ヲアヱ、トヨ君とイクメ君とに御言宣。
「汝らは天性が等しいゆえ、継ぎ領る事の夢を見るべし。」



―――――――――――――――――――――――――――――
 ともにゆあひし ゆめなして
 とよきもふさく みもろゑに きにむきやたひ ほこゆけし
 いくめもふさく みもろゑに よもになわはり すすめおふ

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 共に湯浴びし 夢なして
 トヨキ申さく 「ミモロ上に 東に向き八度 矛遊戯し」
 イクメ申さく 「ミモロ上に 四方に縄張り 雀 追ふ」

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湯浴び (ゆあび)

■ミモロ上 (みもろゑ)
「ミモロ山の上」 という意です。 ▶ミモロ山

 夢の舞台が ミモロ山 ということは、ミモロ神=オオモノヌシ神 の関与が推測されます。
 ミモロ山は アオカキ山タカクラ山神山 などの異名を持ちます。


■矛遊戯 (ほこゆげ)
「矛を振り回すこと」 をいいます。
ユゲ(遊戯) は ユク(往く) の名詞形で、「往き来・振り・回し」 が原義です。
幼稚園児の “おゆうぎ” もこれで、「手足を振り回すこと」 をいいます。

 ゆげ【遊戯】〈広辞苑〉
 ・遊び楽しむこと。ゆうぎ。

 

【概意】
共に湯浴びして夢を見て、
トヨキ申さく、「ミモロ山の上で、東を向いて八度 矛を振る。」
イクメ申さく、「ミモロ山の上で、四方に縄を張って雀を追う。」



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 きみこのゆめお かんかえて
 あにかゆめたた ひかしむき ほつまをさめよ
 おとはよも たみおをさむる よつきなり
 うそこかつみゑ みことのり
 ゐそさちたてて よつきみこ とよきいりひこ ほつまつかさそ

―――――――――――――――――――――――――――――――
 君 この夢を 考えて
 「兄が夢 ただ “東向き” ホツマ治めよ」
 「弟は “四方” 民を治むる 代嗣なり」
 四月十九日ツミヱ 御言宣
 ヰソサチ立てて 代嗣御子 トヨキイリヒコ ホツマ司ぞ

―――――――――――――――――――――――――――――――

ホツマ

ヰソサチ

■ホツマ司 (ほつまつかさ)
「ホツマ国全体を束ねる司」 をいいます。 ▶ホツマ国 ▶司

 

【概意】
君はこの夢を考えて、
「兄の夢は ただ “東向き”。さればホツマ(東)を治めよ。」
「弟は “四方” なれば、四方の民を治める代嗣である。」
4月19日ツミヱに御言宣。
ヰソサチを立てて代嗣御子、トヨキイリヒコはホツマの司ぞ。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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