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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第170回 [2024.7.23]

第三一巻 直り神 ミワ神の文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 神武天皇-3-3

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 なおりかみみわかみのあや (その3)
 直り神 ミワ神の文 https://gejirin.com/hotuma31.html
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 わかひこに ゆみつくらせて まなうらに まかこのやしり
 きたわせて かんやゐみこに ゆきおはせ
 ぬなかわみこと ゑといたる かたおかむろの たきしみこ
 おりにひるねの ゆかにふす

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 ワカヒコに 弓造らせて マナウラに マカゴの鏃
 鍛わせて カンヤヰ御子に 靫 負わせ
 ヌナカワ尊 兄と到る カタオカ室の タギシ御子
 折に昼寝の 床に臥す

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■ワカヒコ
ワカ(▽和)ヒコ(彦) で、ワカは 「結び」 の意を表すものと思います。
ゆえに ユゲ(弓削) の換言、つまり 「弓製作の品部」 の通称と考えます。 ▶品部


■マナウラ
「鏃(やじり)の製作を担当する品部」 の通称と考えます。

 マ(真)+ナ(=の)+ウラ(心) で、「真っ心・肝心」 を意味し、
 これは ヤジリ(鏃:矢の肝心な部分) の換言と考えます。


■マカゴ
マカ(真赤)+カゴ の短縮で、カゴは カグ(迦具)の変態。
「真赤に熱するさま・赤熱」 を意味するのではないかと考えています。


鏃 (やじり)
ヤ(矢)+シリ(▽鋭・▽尖) で、シリは スリ(摩り・擦り・磨り)の変態、
スリは スルドシ(鋭し) の スルの名詞形です。「研磨した物・磨いて鋭くした物」 をいいます。


鍛ふ (きたふ)
キツ+タフ の同義語短縮で、キツは カツ(▽括つ)の変態、タフは タバ(束)の母動詞です。
「括って束ねる・締めて固める・凝り固める」 などが原義で、「かたくする」 ことを意味します。


カンヤヰ御子 (かんやゐみこ)

靫 (ゆき・ゆぎ)

ヌナカワ尊 (ぬなかわみこと)

■カタオカ室 (かたおかむろ)
タギシミミが サユの花見 と称して、2人の弟を招いていた室屋です。
ここはタギシミミの自宅だったと思われます。その場所は少し後に判明します。

 畝傍峰の サユの花見と 見合えして 室屋に召せば 〈ホ31ー2〉

 

【概意】
ワカヒコに弓を造らせ、マナウラに真赤に熱した鏃を鍛えさせ、
カンヤヰ御子に靫を負わせて、ヌナカワ尊が兄と到るカタオカの室。
タギシ御子は折に昼寝の床に臥していた。



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 すめみこやゐに のたまふは ゑとのたかひに きしらふは
 あつくひとなし われいらは なんちゐよとて
 むろのとお つきあけいれは あにいかり
 ゆきおひいると きらんとす

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 皇御子 ヤヰに 宣給ふは 「兄弟の互ひに 軋らふは
 関く人無し 我入らば 汝 射よ」 とて
 室の戸を 突き開け入れば 兄 怒り
 「靫負ひ入る」 と 切らんとす

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皇御子 (すめみこ)
今風に言えば 「皇太子」 で、ここでは カヌナカワミミ を指します。
スベラヲミコ、スベラギミコヲミコ、アミコ などとも呼ばれます。


■ヤヰ
カンヤヰミミ の略です。


■軋らふ (きしらふ)
キシル(軋る)+アフ(合ふ) の同義語短縮で、キシルは キソフ(競ふ)の変態。
「競い合う・張り合う・並び合う・匹敵/対抗する」 などの意です。


■関く人無し (あづくひとなし)
あぢきなし” と同義で、「かかわろうとする人はいない」 という意です。
“夫婦げんかは犬も食わない” と同じく、この場合は “兄弟げんかは誰も食わない” という意です。


■靫負ひ入る (ゆきおひいる)
「靫を背負ったまま入る」 という意で、これは
「武器(弓矢)を持って入る・攻撃を目的として入る」 ことを意味します。 ▶靫

 

【概意】
皇太子がカンヤヰ御子に宣給うは、
「兄弟の互いの競い合いに関わる人はいない。我が突入したら汝が射よ」 と、
室の戸を突き開けて入れば、兄は怒って 「靫負い入る」 と、斬らんとする。



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 やゐみこてあし わななけは すめみこゆみや ひきとりて
 ひとやおむねに ふたやせに あててころしつ
 おもむろお ここにおさめて みこのかみ

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 ヤヰ御子 手足 わななけば 皇御子 弓矢 引き取りて
 一矢を胸に 二矢背に 当てて殺しつ
 骸を ここに納めて “御子の神”

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わななく (戦慄く)
ワヌ+ナク(鳴く) の連結で、ワヌ は ハヌ(跳ぬ・撥ぬ・刎ぬ) の変態。
両語とも 「往き来する・振る・動く・響く・伝わる」 などが原義です。


骸 (おもむろ)

■ここ
カタオカ室 です。
カタオカは ヒラオカ の換言で、「送還・回送・埋葬」 を意味します。

 ★カタオカ
 カタは カタル(語る)の母動詞 “カツ” の名詞形で、「往き来・回し・返し/還し・伝え」
 などが原義です。この場合は 「(あの世への) 返し/還し」 という意味です。
 オカは オクル(送る)の母動詞 “オク” の名詞形です。ですから ヒラオカ の換言です。


■御子の神 (みこのかみ)
タギシ御子に捧げられた贈り名です。 ▶贈り名

 皇子神命神社 (みこのかみのみことじんじゃ)
 大和国十市郡。奈良県磯城郡田原本町多245。 
 現在の祭神:皇子神命
 ・多坐弥志理都比古神社(おおにいますみしりつひこじんじゃ)の摂社。
 <筆者注> この社が “カタオカ室” の跡ということになります。

 

【概意】
カンヤヰ御子は手足がわななけば、皇御子はその弓矢を引き取り、
一矢を胸に、二矢を背に当てて殺し、
亡骸をここに納めて “御子の神” と名を贈る。



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 かんやゐはちて うえなひぬ
 といちにすみて いほのとみ みしりつひこと なおかえて
 つねのおこなひ かみのみち あにかまつりも ねんころにこそ

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 カンヤヰ恥ぢて 諾ひぬ
 トイチに住みて イホの臣 “みしりつ彦” と 名を替えて
 常の行ひ 神の充ち 兄が纏りも 懇ろにこそ

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■諾ふ (うえなふ・うへなふ・うべなふ)
ウヘ(宜・諾)+ナフ(▽和ふ) で、「納得して受け入れる・承諾する」 などの意です。
この場合は、手足が震えて何もできなかった 「自分のふがいなさを認める」 ということです。
またそれゆえに 「皇太子の地位を納得して弟に譲る」 という意も含まれていると思われます。

 この時点においては、カヌカワミミが皇太子に決定しているわけですが、
 イホヒトという斎名が示すように、初めはカンヤヰミミが皇太子だったと考えられます。

  和つ君 一より十までを 尽すゆえ “ヒト” に乗ります 〈ホ4-5〉


■トイチ・トチ (弔方・十市)
トイ(弔)+チ(方) で、兄タギシミミの 「弔い(とむらい)の地」 の意と考えます。
トイは 弔上げ(といあげ) のトイです。

 トイチの名は 現在の 橿原市十市町 に残ります。ここは 皇子神命神社や
 多坐弥志理都比古神社がある、奈良県磯城郡田原本町多 のすぐ東隣りです。
 古くは “十市” と “多” は同じ地区を表す名だったと考えられます。


■斎の臣 (いほのとみ)
「神を斎む臣」 を意味します。

 ★斎 (いほ) ★意富・多・大・太 (おほ・おお)
 イホ(▽斎) は イフ の名詞形で、イフ は イム(斎む) の変態です。
 イワヒ(斎)イツキ(斎) ともいい、「神に仕えること・神にかしずくこと」 を意味します。
 また自分の斎名 “イホヒト” にもかけているのでしょう。
 イホ(斎) は オホ(意富・多・大・太) とも訛り、地名や氏族名となります。


■みしりつ彦 (みしりつひこ:身知りつ彦/神知りつ彦)
ミ(身/神)+シル(知る)+ツ(=たる)+ヒコ(彦) で、2つの意味を重ねます。
(1) 身のほど (自分のふがいなさ) を知りたる臣。
(2) 神を知りたる臣。 ▶神(み)

 多坐弥志理都比古神社 (おおにいますみしりつひこじんじゃ)
 大和国十市郡。奈良県磯城郡田原本町多569。 
 現在の祭神:神武天皇、神八井耳命、神沼河耳命、姫御神、太安万侶
 <筆者注> 多(おお)=斎(いほ) で、本来の祭神は みしりつ彦=カンヤヰミミ。


■神の充ち (かみのみち)
ミチは ミツ(見つ・充つ)の名詞形で、「見ること・守ること・充たすこと」 を意味します。
ですから 「神の面倒を見ること・神のお世話をすること」 をいい、斎(いほ) の換言です。


■兄が纏り (あにがまつり)
「兄タギシミミの神霊のケア」 という意で、纏り(まつり) も 斎(いほ) と同義です。


懇ろ (ねんごろ)

 

【概意】
カンヤヰ御子は恥じて自分のふがいなさを認めるのであった。
トイチに住みて、斎の臣の “身知りつ彦/神知りつ彦” と名を替えて、
常の行いは神の斎。兄の纏りも心を込めてぞ。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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