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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第147回 [2024.4.13]
第二七巻 御祖神 船霊の文 (5)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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みをやかみふなたまのあや (その5)
御祖神 船霊の文 https://gejirin.com/hotuma27.html
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ふたかみは つねにたたすの とのにゐて
あまねくをさむ たみゆたか
さくすすなれは うえつきて なすすおよへと なおゆたか
―――――――――――――――――――――――――――――
二尊は 常に “糺の 殿” に居て
あまねく治む 民 豊か
幸鈴成れば 植え継ぎて 七鈴及べど なお豊か
―――――――――――――――――――――――――――――
■二尊 (ふたかみ)
“地の二尊”
の略です。
■糺の殿・正の殿・直の殿 (ただすのとの)
カモヒトが造り替えて都を移したタガ宮の
「皇居宮殿」 の名です。
“タダス” はおそらく タガ(治曲)
また フタカミ(二尊)
の換言です。
なお下鴨神社の祭神は “糺の神”
とも呼ばれます。
タダスは タダス(▽直す・正す)の名詞形で、「合わせ・直し・調え」
などが原義。
これは タガ(治曲)の タ(治)、フタカミ(二尊)の フタ(二・双・蓋)
の原義と同じです。
トノ(殿)は「立つさま・高きさま」を意味しますが、これは
カミ(上・尊) と同義です。
★二・双・蓋・札 (ふた・ふだ)
フツ(▽付つ)
の名詞形で、「合わせ・足し・直し・和合・調和・対」
などが原義です。
フツは “ふっつく”
の母動詞です。
【概意】
“二尊” は常に “糺の殿”
に居て、あまねく治めば民豊か。
幸鈴成れば植え継ぎて、7鈴に及べどなお豊か。
―――――――――――――――――――――――――――――
よそこのすすの こもそひゑ はつほきあゑの はつみかに
こやねもふさく きみはいま みをやのみちに をさむゆえ
ひとくさのをや あめつちの かみもくたれは みをやかみ
よよのみをやの つきこなし そふのきさきも いかなるや
―――――――――――――――――――――――――――――
四十九の鈴の 九百十一枝 初穂キアヱの 一月三日に
コヤネ申さく 「君は今 “御祖の道” に 治むゆえ
人草の祖 天地の 神も下れば 御祖尊
よよの御祖の 嗣子無し 十二の后も 如何なるや」
―――――――――――――――――――――――――――――
■四十九の鈴の九百十一枝初穂 (よそこのすずのこもそひゑはつほ) ▶数詞
真榊(=鈴木)による暦法で、1鈴=6万年、1枝=60年、1穂=1年
です。
ウビチニ&スヒヂの時代に植え継ぎが500回の限界に達し、累計年数が
一旦リセットされていますので、この暦の起点はその頃と考えられます。
ホツマに暦年の記載されている比較的最近の出来事を振り返ると、次の通りです。
・26鈴16枝41穂 | テルヒコ大和国へ。 | ・26鈴17枝23穂 | ニニキネがニハリ宮を建てる。 | ||
・29鈴501枝38穂 | ニニキネ三種を受け八州巡幸に出発。 | ・ちょうど30鈴頃 | 地上ほつま出現。 | ||
・31鈴333枝頃 | オシホミミ帰天。 | ・32鈴900枝23穂 | ミヅホ宮に遷都。 | ||
・36鈴34枝38穂 | ヒコホオデミ即位。 | ・42鈴850枝60穂 | ヒコホオデミ帰天。 | ||
・42鈴851枝2穂 | カモヒト即位。 |
ウガヤフキアワセズ(斎名カモヒト)の即位が 42鈴851枝2穂
ですので、
それ以後 7鈴59枝59穂(42万2559年) が経過しています。
■キアヱ
60年で一巡する 「干支の最初の年」 で、“初穂”
の換言です。 ▶干支
■御祖尊 (みをやかみ)
アマテルがカモヒトに授けた称号 “御祖天君”
の換言です。
この心 万の纏りを 聞く時は 神も下りて 敬えば 神の御祖ぞ
この道に 国治むれば 百司 その道慕ふ 子の如く これも御祖ぞ
この後末 民を恵みて “我が子ぞ”
と 撫づれば還る 人草の 御祖の心 〈ホ27-4〉
■十二の后 (そふのきさき) ■十二の守
(そふのかみ) ■十二局 (そふつぼね)
皇君が備える12人の后です。 ▶つぼね(局)
それぞれの后は君の子を生むとランクが上がり、(乙下侍
→ 内侍 → 典侍)
皇太子を生んだ后が 内宮
(=御后・正妃) に上ります。
【概意】
49鈴911枝1穂キアヱの1月3日にコヤネの申さく、
「君は今 “御祖の道” に治むゆえ 臣民の祖であり、
天地の神さえも下って敬うゆえに “御祖尊”。
ゆくゆくを恵む太祖の嗣子無し、12人の后も如何なるものか。」
―――――――――――――――――――――――――――――
ときにあまきみ われおもふ そみすすをいて たねあらし
こもりもうさく よつきふみありとて
あまのおしくもに のりして よつきやしろなす
―――――――――――――――――――――――――――――
時に天君 「我思ふ 十三鈴老いて 種あらじ」
コモリ申さく 「代嗣文あり」 とて
アマノオシクモに 宣して 代嗣社 成す
―――――――――――――――――――――――――――――
ここは五七調が少々いびつなため、言葉の区切りを調整しています。
■天君 (あまきみ)
アマテルがカモヒトに賜った称号 “御祖天君”
の略です。
■十三鈴老ふ (そみすずをふ)
49鈴911枝1穂の時点で13鈴(=78万歳)ということは、
即位の時 (42鈴851枝2穂) すでに35万歳を越えていたことになります。
妬み煩ふ 胸の火が 折霊と生りて 子種噛む 障り除かん 代嗣文 〈ホ16ー6〉
■アマノオシクモ
■代嗣社 (よつぎやしろ・よつぎや)
代嗣子が生れないのは、邪霊の障りが原因と考えられていました。
そこで 代嗣として生れてくる予定の神霊を “代嗣社”
に収容保護し、
“代嗣文” の言霊により邪霊の障りを祓うようです。
建造場所が示されていませんが、この時オシクモはハラ宮に侍っているので、
ハラミ山かもしれません。 ▶ハラ宮 ▶ハラミ山
かつてイザナギ&イザナミ夫婦に代嗣御子の誕生を切望するトヨケは、
カツラキの霊鳥山 (出羽の鳥海山)
に代嗣社を建てて、自ら8千回の禊を行い、
尊き神霊の誕生を祈願しています。
【概意】
時に天君は 「我が思うに、13鈴も老いて種がないのだろう。」
コモリが 「代嗣文あり」
と申せば、アマノオシクモに御言宣して代嗣社を成す。
―――――――――――――――――――――――――――――
ときにおしくも なあてなし こやねふとまに うらなえは
やせひめよけん やひのゐは なかのやとなる
しのはらは ははとはらめる やのつほね
うちめはなかの くらいなり
―――――――――――――――――――――――――――――
時にオシクモ 「名当て無し」 コヤネ
フトマニ 占えば
「ヤセ姫 良けん 八一の謂は 中の ‘ヤ’ となる
“シのハラ” は 母と孕める ‘ヤ’ の局
内侍は中の 位なり」
―――――――――――――――――――――――――――――
■名当て・名宛 (なあて)
「名を当てること」 の意で、この場合は
「母となる者の名の指定」 です。
■フトマニ (太兆)
コヤネはここで “ヲヤマ” と “シハラ”
を選んだようです。
“ヲヤマ” は ヲヤ(祖・親)よりの連想、“シハラ” は
シのハラ(繁の腹)よりの連想と思います。
■占ふ (うらなふ)
■ヤセ姫 (やせひめ)
コヤネがフトマニに占って、天君の12人の后の中で、
「御子を孕む母」 として選んだ内侍です。 ▶内侍
■良けん (よけん)
「良からん」の換言です。今風には
「良いだろう」となります。
■八一 (やひ)
コヤネが選んだ “ヲヤマ” は フトマニ(=モトラツタエの文)の
「81番の歌」 です。
■謂 (ゐ)
ヰ(謂・意)は 「言うところ・いわれ・意味」
などを表します。
ですから 「“ヲヤマ” の言うところ」 という意です。
■中の ‘ヤ’ となる (なかのやとなる)
“ヲヤマ” は真中の音が ‘ヤ’ であるゆえに、
「中の屋となる=(子が宿る)おなかの屋となる」
と解いています。
■シのハラ (▽繁の腹)
「繁栄の腹」 という意で、チハラ(幸腹)と同じです。
★シ (▽繁・▽幸)
シノグ(凌ぐ)の母動詞
“シヌ” の名詞形で、チ(千・茅・父)の変態です。
「上にあるさま・高まるさま・栄えるさま・勝るさま」
などが原義です。
■母と孕める ‘ヤ’ の局 (ははとはらめるやのつぼね)
「母として “子を宿す屋” の局」 という意です。局は
「后」 の換言です。
■内侍は中の位 (うちめはなかのくらい)
ヤセ姫は内侍ですが、内侍は中位の后です。(上:典侍 中:内侍 下:乙下侍)
【概意】
時にオシクモは 「母の名の指定が無い」 と。
コヤネがフトマニに占えば、「ヤセ姫が良からん。」
「八一(=ヲヤマ)の意は、中が ‘ヤ’ ゆえ、“おなかの屋”
となる。
シのハラ(繁の腹)は、母として “子を宿す屋”
の局を意味する。
また内侍は中の位である <ゆえに “おなかの屋”
となるに好し>。」
―――――――――――――――――――――――――――――
としもわかはの やせひめお そひのきさきも みないはふ
おしくもきよめ よつきやに いのれはしるし
はらみゑて そゐつきにうむ ゐつせきみ
やせひめみやに いるるまに ついかみとなる
―――――――――――――――――――――――――――――
歳も若葉の ヤセ姫を 十一の后も みな祝ふ
オシクモ清め 代嗣社に 祈れば徴
孕み得て 十五月に生む ヰツセ君
ヤセ姫 宮に 入るる間に 潰い神となる
―――――――――――――――――――――――――――――
■若葉 (わかば)
ワカバヱ(若生え)
の短縮です。
■清む (きよむ)
この場合は 「子種を噛む邪霊の障りを祓い除く」
ことをいいます。
■徴・験 (しるし)
ここでは 「効き目・効能・霊験・ご利益」
などをいいます。
■ヰツセ (五瀬)・ヰツセ君 (ゐつせきみ・五瀬君)
ヰツ(五)+セ(瀬)+キミ(君:敬称)
で、誕生した子の名です。斎名は記されていません。
★瀬 (せ)
セ(瀬)は 「締め・節・区切り・区分」
などを意味しますが、季節の区切りである
3か月を “一瀬(ひとせ)” と呼ぶようです。ですから
五瀬=十五月 です。
■潰ふ・▽終ふ・▽遂ふ (つふ)
ツイエル(費える・弊える・潰える)の母動詞で、ツユ(潰ゆ)の変態、
「行き着く・極まる・終る・果てる」 などが原義です。ツイニ(終に・遂に)の
“つい” もこれです。
【概意】
歳も若葉のヤセ姫を 他の11人の后もみな祝福する。
オシクモは穢れを清め、代嗣社に祈れば霊験あり。
孕みを得て、15か月を経てヰツセ君を生む。
ヤセ姫は <産屋から> 皇宮に入れる間に
潰えて神となる。
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おちなくて ふれたつぬれは これのさき
かもたけすみと いそよりと そみすすまても こなきゆえ
わけつちかみに いのるよの ゆめにたまわる たまのなの
たまよりひめお うみてのち ひたしてよはひ そよすすに
たらちねともに かみとなる かあひのかみそ
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御乳無くて 触れ尋ぬれば これの先
カモタケスミと イソヨリと 十三鈴までも 子なきゆえ
ワケツチ神に 祈る夜の 夢に賜わる “タマ” の名の
タマヨリ姫を 生みて後 養して齢 十四鈴に
タラチネ共に 神となる “河合の神” ぞ
―――――――――――――――――――――――――――――
■御乳 (おち)
オチは オス(食す)
の名詞形で、「めし・食」 の意。
(意味としては 御乳
と同じですが、その場合は、ホツマでは
“をち”
と表すのが常であるため、この解釈を取っています。)
しかしここでは直感的に理解しやすい “御乳”
を当て字しています。
■触れ尋ぬ (ふれたづぬ)
「世間にお触れを出して オチツモ(=乳母)を募集する」
ということです。 ▶オチツモ
■カモタケスミ ■イソヨリ
賀茂(=河合)の県を領するタケスミ&イソヨリ姫の夫婦です。
カナサキ─??─ハテスミ┬トヨツミヒコ ├トヨタマ姫 ├タケスミヒコ──┐ └オトタマ姫 ├─タマヨリ姫 クシヒコ │ ├──コモリ │ ミホツ姫 ├──────┬1.モトメ │ ┌18.トヨリ姫 │ ├2.タマネ姫 │ ├17.アワナリ姫 アチハセ─シラタマ姫 ├3.イソヨリ姫┘ ├16.ワカネ姫 ├4.ムレノ姫 ├15.ハザクラ姫 ├5.ミハオリ姫 ├14.アサ姫 ├6.スセリ姫 ├13.ムメチル姫 ├7.ミタラシ姫 ├12.ハモミ姫 ├8.ヤヱコ姫 ├11.ミチツル姫 ├9.コユルキ姫 ├10.シモト姫 └─────────┘
■ワケツチ神 (わけつちかみ:分土神)
ワケツチ(分土)は カモ(賀茂)・カアヒ(河合)の換言です。 ▶賀茂 ▶河合
これはトヨタマ姫が ワケツチ山に纏った
「ニニキネの神霊」 をいいます。 ▶神山
トヨタマは ワケツチ山に 喪 四十八 年の纏りも みあえなす 〈ホ26ー4〉
■タマヨリ姫 (たまよりひめ)
カモタケスミ&イソヨリ姫の夫婦に生れた姫です。
ワケツチの神霊(みたま)により 賜(たま)わる姫ゆえ、タマヨリ姫(霊寄姫)です。
記紀には 玉依毘売/玉依姫
と記されます。
■養す (ひたす)
■河合の神 (かあひのかみ)
神となったカモタケスミ&イソヨリ夫婦の贈り名です。
その神霊は河合神社に纏られました。
河合神社
(かわいじんじゃ)
京都府京都市左京区下鴨泉川町59、賀茂御祖神社内摂社。
現在の祭神:玉依姫命
・延喜式は 鴨川合坐小社宅神社 と記す。
<筆者注> 当初の祭神はカモタケスミ&イソヨリ姫の夫婦で、この社が賀茂御祖神社の前身。
【概意】
御乳が無いため触れ尋ねていると、これに先立ち、
カモタケスミとイソヨリ夫婦は 13鈴(78万年)までも子が無いため
ワケツチ神に祈ると、その夜に子を賜わる夢を見る。
そのゆえに “タマ” の名を付けたタマヨリ姫を養した後、
齢14鈴(84万歳)にて両親ともに神となる。“河合の神” ぞ。
―――――――――――――――――――――――――――――
たまよりは もまつりなして たたひとり わけつちかみに
またもふて ゆふささくれは うつろいか うたかひとわく
ひめひとり わけつちかみに つかふかや こたえしからす
―――――――――――――――――――――――――――――
タマヨリは 喪纏りなして ただ一人 ワケツチ神に
また詣で 結 捧ぐれば ウツロイが 疑ひ問わく
「姫一人 ワケツチ神に 仕ふかや」 答え 「然らず」
―――――――――――――――――――――――――――――
■疑ふ (うたがふ)
「(心が) 行き来する・揺れる・迷う」 などが原義で、アヤシム(怪しむ)
と同義です。
■仕ふ (つかふ)
ツカフは 仕ふ・支ふ・使ふ・連ふ・遣ふ・番ふ・継がふ
などと当てられますが、
いずれも原義は 「付く/付ける」 です。ここでは
「俗世を捨てて神に仕える」 という意味です。
【概意】
タマヨリは喪儀を行い、ただ一人でワケツチ神にまた詣でて
和幣を捧げると、ウツロイがあやしんで問うには、
「姫は独り身のままワケツチ神に仕えるかや?」 答えて
「しからず。」
―――――――――――――――――――――――――――――
またとわく よにちなむかや ひめこたえ
なにものなれは おとさんや われはかみのこ なんちはと
いえはうつろゐ とひあかり なるかみしてそ さりにける
―――――――――――――――――――――――――――――
また問わく 「世に因むかや」 姫答え
「何者なれば 脅さんや 我は尊の子 汝は」 と
言えばウツロヰ 飛び上がり 鳴神してぞ 去りにける
―――――――――――――――――――――――――――――
■世に因む (よにちなむ)
「俗世と交わる・俗世に染まる」 という意です。 ▶因む
“独り身で神に仕ふ”
の反対で、「世間並みに結婚して子を生む」
ということです。
【概意】
また問うは、「俗世に染まるかや?」
姫は答えて、「何者なれば脅さんや。我は尊の子、汝は?」
と、
言えばウツロヰは飛び上がり、雷鳴を響かせて去るのであった。
―――――――――――――――――――――――――――――
あるひまたいて みそきなす しらはのやきて のきにさす
あるしのおけの ととまりて おもはすをのこ うみそたつ
みつなるときに やおさして ちちというとき やはのほる
わけいかつちの かみなりと よになりわたる
―――――――――――――――――――――――――――――
ある日また出で 禊なす 白羽の矢 来て 軒に刺す
主のオケの とどまりて 思わず男の子 生み育つ
三つなる時に 矢を指して 「父」 と言う時 矢は昇る
「ワケイカツチの 神なり」 と 世に鳴り渡る
―――――――――――――――――――――――――――――
■白羽の矢 (しらはのや)
“白羽の矢が立つ”
の本来の由来を説明するものだと思います。
■オケ・ヲケ (▽汚)
オカス(犯す)の母動詞 “オク”
の名詞形で、「曲り・逸れ・外れ・異常」
などを原義とし、
ヨケ(避け・除け)、ヨコ(横・▽汚)
などの変態です。この場合は 姫の 「生理・月経」
いいます。
■ワケイカツチの神 (わけいかつちのかみ)
“ワケイカツチの皇神”
の略で、「ニニキネの神霊」 をいいます。
【概意】
ある日また <ワケツチ山に>
出かけて禊をなすと、白羽の矢が来て軒に刺す。
すると主の生理が止まり、はからずも男の子を生み育つ。
3歳の時に矢を指して 「父」 と言う時、矢は天に昇る。“ワケイカツチの神なり”
と世に鳴り渡る。
―――――――――――――――――――――――――――――
ひめみこお もろかみこえと うなつかす
たかののもりに かくれすむ
わけいかつちの ほこらなし つねにみかけお まつるなり
―――――――――――――――――――――――――――――
姫・御子を 諸守乞えど 頷かず
高野の森に 隠れ住む
ワケイカツチの 祠 成し 常に御影を 祀るなり
―――――――――――――――――――――――――――――
■高野の森・▽治曲野の森 (たかののもり)
今に言う 御蔭山(みかげやま)
と考えられます。
タカノは 「治曲野」
で、「曲りを直して田とした野」、つまり
「ニニキネの土木治水事業により田とした野」
を意味するものと思います。
ですから山背をいうわけですが、鴨川と高野川に挟まれる区域を
特に “カモ” と呼び、
高野川の東側の比叡山の麓の地を 特に “タカノ”
と呼んだかと考えてます。 ▶山背
■ワケイカツチの祠 (わけいかつちのほこら)
ワケイカツチの神霊を括る 「依代・神座」 です。
★ホコラ (祠) ★ホクラ (神庫)
「尊きものを括る施設」 をいい、この場合は
「神の依代・神座・やしろ」 をいいます。
ホ(穂・秀・火)+コラ で、ホ は ヒ(秀・火・霊) の変態、カミ(上・尊・神)
と同義です。
コラ は クラ(座・蔵)、コリ(梱)
などの変態で、「括り」 が原義です。
■御影・神影
(みかげ)
「神の映し」 という意で、ミタマ(神霊)
の換言です。
カゲ(影) は ウツシ(移し・映し・写し)
が原義で、「投射・投影」を意味します。
タマヨリ姫がワケイカツチの御影を祭った祠が 後の “御蔭神社” と考えられます。
御蔭神社
(みかげじんじゃ 旧名:出雲高野神社)
京都府京都市左京区上高野東山207、賀茂御祖神社境外摂社。
現在の祭神:賀茂建角身命荒魂、玉依日売命荒魂
<筆者注> 本来の祭神はワケイカツチ神(別雷神)。
【概意】
姫と御子を諸守は乞えども頷かず、高野の森に隠れ住む。
ワケイカツチの祠を成し、常に神影を祀るなり。
―――――――――――――――――――――――――――――
みふれによりて もふさくは
ひゑのふもとに ひめありて ちちよきゆえに
たみのこの やするにちちお たまわれは たちまちこゆる
―――――――――――――――――――――――――――――
御触れによりて 申さくは
「ヒヱの麓に 姫ありて 乳良きゆえに
民の子の 痩するに乳を 賜われば たちまち肥ゆる
―――――――――――――――――――――――――――――
■御触れ (みふれ)
さきに発した 「乳母募集の御触れ」 です。
■ヒヱ
「ヒヱの山」 をいいます。 ▶ヒヱの山
【概意】
御触れによりて申すには、
「ヒヱ山の麓に姫ありて、その乳の良きゆえに
民の痩せた子に乳を賜われば、たちまち肥える。
―――――――――――――――――――――――――――――
これむかし かみのこなれと かくれすむ
もりにゐいろの くもおこる いつもちもりと なつくなり
もろかみこえと まいらねは さおしかなされ しかるへし
―――――――――――――――――――――――――――――
これ昔 尊の子なれど 隠れ住む
森に五色の 雲起る “出雲路森” と 名付くなり
諸守乞えど 参らねば 差使なされ しかるべし」
―――――――――――――――――――――――――――――
■出雲路森 (いづもぢもり)
これはまだ思案中ですが、イヅ(出づ/五)+モ(▽雲)+ヂ(方・路)+モリ(森)
で、
「五色の雲の出づる方の森」 の意と考えます。これは “高野の森”
の別名のようです。
■差使 (さおしか)
差使は皇君の代理人であるため、その言葉は御言宣と同じです。逆らえば重罪となります。
■しかるべし
(然る可し)
シク(如く)+あるべし
の短縮です。
【概意】
この姫は もとは尊(カモヒトの母の弟)の子なれど
森に隠れ住む。
その森には五色の雲が起るため “出雲路森”
と名づくなり。
諸守が乞いても参らねば、差使を遣わしなされ。しかるべし。」
―――――――――――――――――――――――――――――――
ときにいわくら うかかいて つかいおやれと きたらねは
みつからゆきて まねけとも うなつかぬよし かえことす
わかやまくいか もふさくは をしかとならて こぬゆえは
わけつちかみお つねまつる めせはまつりの かくるゆえなり
―――――――――――――――――――――――――――――――
時にイワクラ うかがいて 使いを遣れど 来たらねば
自ら行きて 招けども 頷かぬ由 返言す
ワカヤマクイが 申さくは 「御使人ならで 来ぬ故は
ワケツチ神を 常
祀る 召せば祀りの 欠くるゆえなり」
―――――――――――――――――――――――――――――――
■イワクラ
コモリの13男で、「宮内の治」 を担います。 ▶宮内の治
┌─────────┐ ├9.タケフツ ├10.チシロ ├8.ヤサカヒコ ├11.ミノシマ(ミゾクイ) ├7.ナラヒコ ├12.オオタ ├6.コセツヒコ ├13.イワクラ ├5.チハヤヒ ├14.ウタミワケ ├4.ヨテヒコ ├15.ミコモリ ├3.ヨシノミコモリ ├16.サギス スヱツミ─イクタマヨリ姫 ├2.ツミハ ├17.クワウチ ├──────┴1.カンタチ └18.オトマロ クシヒコ──コモリ
巨勢山坐石椋孫神社
(こせやまにいますいわくらひこじんじゃ)
奈良県橿原市鳥屋町998。
現在の祭神:石椋孫神 (いわくらひこのかみ)
・鳥居の額は「巨勢山坐石椋孫神社」となっており。地図では石椋神社となっている。
地元では春日神社と称している。
■うかがふ (窺う・伺う)
■ワカヤマクイ (▽分山構い)
ヤマクイ(山構い)
の換言です。ヒヱ山の麓 (高野/出雲路)
を治める領主と考えられます。
ワカヤマ(▽分山) は 「大日山を分けた(写した)山」という意です。 ▶太陽山・大日山
古事記は 若山咋神 または
大山咋神
と記し、両者を別人として扱っていますが、同一人です。
ソサノヲ ├──オオトシクラムスビ─┬オキツヒコ イナタ姫 │ └ヤマクヒ (古事記からの推測)
日吉大社 (ひよしたいしゃ)
滋賀県大津市坂本本町5-1-1。
現在の祭神:[東本宮] 大山咋大神、[西本宮] 大己貴大神
・かつては日吉社(ひえしゃ)と呼ばれていた。
■御使人 (をしかど)
差使(さおしか)の換言です。
【概意】
時にイワクラが様子をうかがって使いを遣れども来たらぬゆえ、
自ら行きて招くも、承知しなかった経緯を返言する。
ワカヤマクイが申すには 「御使人でなければ来ぬ理由は、
ワケツチ神を常に祀るため、召せばその祀りが欠けるからなり。」
本日は以上です。それではまた!