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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第141回 [2024.4.1]

第二六巻 産が屋 葵桂の文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 うがやあおいかつらのあや (その3)
 産が屋 葵桂の文 https://gejirin.com/hotuma26.html
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 しはしはめせと とよたまは みつやおいてす
 あくるとし おおゑすへらき わけつちの あおひかつらお
 そてにかけ みやにいたれは ひめむかふ

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 しばしば召せど トヨタマは ミヅ社を出ず
 明くる年 大上皇 ワケツチの 葵・桂を
 袖に掛け 宮に到れば 姫 迎ふ

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■ミヅ社 (みづや:水社・水舎・水屋) ■宮(みや)
ミヅハメの社ミヅハの宮」 の略です。


■太上皇 (おおゑすべらぎ)
オオヱキミ(太上君)の換言です。ニニキネを指します。


ワケツチ (分土)
川に 「分けられる土地」 の意で、カモ(賀茂)・カアヒ(河合)の同義語です。
ですから “ワケツチの葵・桂” とは 「賀茂葵・賀茂桂」 の別表現です。


■葵・桂 (あおひ・かつら)
“葵と桂” は 「女男・夫婦・陰陽・月日」 を象徴する草木です。
葵が 「女・陰・月」 で、桂が 「男・陽・日」 です。
ここでは 「ウツキネ&トヨタマ姫の夫婦」 を 「桂葉と葵葉」 にたとえています。

 桂の葉と葵の葉は 形がよく似ていますが、 ▶桂葉の画像 ▶葵葉の画像
 桂の木が高くそびえるのに対し、葵は地表近くに低く留まります。
 そのため天地創造の際、上って天となった陽を 「桂」 に、
 下って地となった陰を 「葵」 になぞらえたものと考えられます。

この夫婦は “和つ日月” ですが、トヨタマ姫が離れている現状は、
和つ日と和つ月に分離しているため、日月(陽陰)が融合した時に生じる
相乗効果が発揮されない状況にあります。このことを心に留めておいて下さい。

 

【概意】
しばしば召せども トヨタマ姫はミヅ社を出なかった。
明くる年、太上皇は賀茂の葵と桂を袖に掛けて社に到れば、
トヨタマ姫も迎え入れる。



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 ときにはおもち これいかん とよたまこたえ あおひはそ
 またこれいかん かつらはそ
 いつれかくるや またかけす

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 時に葉を持ち 「これ如何ん」 トヨタマ答え 「葵葉ぞ」
 また 「これ如何ん」 「桂葉ぞ」
 「いづれ欠くるや」 「まだ欠けず」

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【概意】
時に太上君は葉を持って 「これは何だ?」
トヨタマは答えて 「葵の葉です」
また 「これは何だ?」
トヨタマ姫: 「桂の葉です」
  太上君: 「どちらか欠けたかな?」
トヨタマ姫: 「まだ欠けてはいませぬ」



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 なんちよおすて みちかくや
 ひめはおそれて かかねとも なきさにおよく あさけりに
 はらはひのはち かさぬみは あにのほらんや

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 「汝 世を棄て 道 欠くや」
 姫は畏れて 「欠かねども 渚に泳ぐ 嘲りに
 腹這ひの恥 重ぬ身は あに上らんや」

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■世を棄つ (よおすつ)
“世” は 「下」 が原義で、「下界・地上世界・物質界・この世」 をいいます。
この世は 「陽と陰のエネルギーが和合して現象する (形として現れる) 世界」 です。
そのため “現世(うつしよ)” とも呼ばれます。
“世を棄つ” とは、「陰陽(男女・夫婦)が和合する この世のならいを棄てる」 という意味です。


■道欠く (みちかく)
“道” は ここでは 「夫婦の道・男女の道」 をいいます。これは言葉を替えれば、
妹背の道陽陰の道陽陰和る道」 であり、つまり 「陰陽和合の道」 です。
“道欠く” は 「陰陽 (男女・夫婦) の和合の道を欠く」 という意です。
したがって “世を棄つ” と “道欠く” は 同じことを言ってるわけです。


■渚に泳ぐ嘲り (なぎさにおよぐあさけり)
カモ船が難波して渚に落ちた姫は、孕む御子の命を救わんがため、
猛心を奮い起こして海を泳ぎました。それに対する世間の嘲笑をいいます。 ▶渚

 カモ破れて 姫もタケスミ ホタカミも 渚に落ちて 溺るるを
 猛き心に 泳がせば 〈ホ26ー2〉


■腹這ひの恥 (はらばひのはぢ)
出産後、裸・腹這いの姿で休んでいる産屋を、夫に覗かれた恥をいいます。

 君 松原に 進み来て 産屋 覗けば 腹這ひに 装ひ無ければ 戸臍引く
 音に寝覚めて 「恥づかしや」 〈ホ26ー2〉


あに (豈)

 

【概意】
「汝は世のならいを棄て、妹背の道を欠くのか?」
姫は畏れながら 「欠かぬとしても、渚に泳ぐ嘲りに
腹這いの恥をも重ねる身が、どうして宮に上れましょうや。」



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 これはちに にてはちならす しかときけ
 こおうむのちは ちなみたつ なそゐかにたす
 つつします さらたちたせす かつてかみ かねてもふすお
 のそくはち なんちにあらす

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 「これ恥に 似て恥ならず しかと聞け
 子を生む後は 因み絶つ 七十五日に治す
 つつしまず 更立ち足せず カツテ尊 かねて申すを
 覗く恥 汝にあらず」

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■因み絶つ (ちなみたつ)
チナミ(因み)は 「交わり・結び・関係」 などが原義です。
ここでは 「男女の交わりを絶つ・性行為を控える」 ことをいいます。


■七十五日に治す (なそゐかにたす)
タス(▽治す)は 「足らし助けて調える」 ことを意味します。
ですから 「出産後の75日で母の体調を調えて治す」 という意です。

 かねてカツテが 申さくは 「キは産宮を な覗きそ
 四月十五日より 
七十五日は 日ごと産が屋の 産湯上ぐ 遺る宣なり」 〈ホ26ー2〉


つつしむ (慎む・謹む)

■更立ち (さらだち)
「再起・更生・回復・リハビリ」 などをいいます。
サラ(更・新)は 「改め・新た・再」などを意味します。
タチ(立ち・起ち)は 「発起・起動・開始」 などの意です。


■足せず・▽達せず (たせず)
「足らさず・充足せず・満たさず・成し遂げず」 などの意です。

 

【概意】
「これ恥に似て恥ならず。しかと聞けよ。
子を生む後は夫婦の因みを絶って75日に母体を療養する。
それに留意せず、回復も充分でないのを、
カツテ尊が予ねて申すにもかかわらず覗く恥、汝にあらず。」



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 たつのこは ちほうみにすみ たつたしる
 ちほやまにすみ たつふると
 ちほさとにすみ つくはなる みいきさとりて きみとなる

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 「竜の子は 千年海に住み タツタ知る
 千年山に住み 立っ振ると
 千年里に住み “付く離る” 三生き悟りて 君となる」

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■千年 (ちほ)
チ(千)+ホ(穂) で、“穂” は マサカキが1年に伸ばす枝の長さです。
1穂=1年 であるため、チホに “千年” と当てています。


■タツタ
タツ(立つ・▽達つ)の名詞形 “タタ” の音便で、「成長して達するさま」 が原義です。
この場合は 「頂点・極限・限界」 などを意味します。


■立っ振る (たっふる・たっぷる)
タツ(立つ・▽達つ)+フル(振る・▽奮る) の連結 “タチフル” の音便です。
両語とも 「高まる・栄える・熟す・満ち至る・極まる」 などが原義です。
おそらくこの名詞形が “たっぷり” です。


■付く離る (つくはなる)
陽陰の 「付きと離れ」 をいい、“合ふ失す”  “和る離る”  “合ふ離る” “ツクバ/ツクマ” などの換言です。 

 これは 「合と離」 を繰り返すことで、陽陰(男女)の関係がしっくりと落ち着いてゆき、
 最後には一つに融合することを意味し、「陽と陰のふるまいの本質」 を表すものです。
 この世は 「陽陰の和合を身をもって知るための世界」 なれば、“和合(付く)” を知るには、
 対極の ”別離(離る)” も経験して知る必要がある、ということです。


■三生き (みいき)
「海の生き」  「山の生き」  「里の生き」 の3つをいいます。
海は 「下・地・陰」、山は 「上・天・陽」、里は 「中・陽陰の和合・人・地上」 になぞらえます。

これは、まず 「下 / 陰 / 地  の生き」 を知り、次に 「上 / 陽 / 天  の生き」 を知ったなら、
最後に 「中 / 陽陰の和合 / 地上 / 人  の生き」 を悟って完成する、ということを言ってます。

 この3つを、ホ17では カミ(上)ハニ(埴)シハカミ(地上)
 ホ23では ア(陽)ワ(陰)ヤ(和・結)、ミ1では ア(陽)ワ(陰)ト(人) と表しています。

 ・陽陰の心に 見るば 上・埴地上 この味を 人の身に領る 〈ホ17ー9〉
 ・アワ歌の ‘
’ は天と父 ‘’ は母ぞ ‘’ は我が身なり 〈ホ23ー7〉
 ・
(あわ) (と)に知れる 人の身の 四つを謹む 機の道 〈ミ1-2〉


君・木実 (きみ)
この場合は 「竜の君」 をいいます。
“竜君”  “三揃の竜”  “タツタの尊”  “コノシロの竜” などと呼ばれますが、
何故に君となるかと言えば、「木と実(=陽と陰)を統合した存在」 となったからです。

 

【概意】
「竜の子は、
海に千年住んでその限界を知り、
山に千年住んで満ち至ると、
里に千年住んで <陽陰の> “付く離る” を知り、
3つの生きを悟って <陽陰を統合する> 君となる。」



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 なんちなきさに おちんとす みたねおもえは
 たけこころ なしておよきて なからうる これはいきしる
 みやにたち ふりてあさけり まぬかるる これあいきしる

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 「汝 渚に 落ちんとす 御胤思えば
 猛心 なして泳ぎて 永らうる これ “地生き” 知る
 宮に立ち 振りて嘲り 免るる これ “天生き” 知る」

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■落つ (おつ)
この場合は 「没す・果てる・命を落とす」 などの意に解しています。


■地生き (はいき・わいき)
竜の子の “海に住む” に相当します。「下 / 陰 /地  の生き」 をいいます。


■宮に立ち振る (みやにたちふる)
「宮にて高まり栄える」 という意で、「御后として皇宮に入る」 ことをいいます。 ▶御后
“立ち振る” は “立っ振る” と同じです。


■天生き (あいき)
竜の子の “山に住む” に相当します。「上 / 陽 / 天の  生き」 をいいます。

 

【概意】
「汝は渚に没しようとしていた。しかし孕む御子を思えば
猛心を現して泳いで永らえる。これで “地生き" を知る。
御后として宮に立ち、嘲る者もいなくなる。これで “天生き” を知る。」



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 いまひとつ あおひかつらの いせおゑは ひといきさとる
 みつしれは たつきみことく かみとなる

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 「いま一つ 葵桂の 妹背を得ば “人生き” 悟る
 三つ知れば 竜君如く 神となる」

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■葵桂の妹背・葵桂の結 (あおひかつらのいせ)
「陰陽の和合・女男の和合・夫婦の結び」 などの意です。 ▶葵桂 ▶妹背・▽結


■人生き (ひといき)
竜の子の “里に住む” に相当します。「中 / 陽陰の和合 / 地上 / 人  の生き」 をいいます。
つまりこれは 「陰陽和合/夫婦和合の道に生きること・人の道に生きること」 です。


■竜君 (たつぎみ)
「竜の極み・竜の頂点」 の意で、“三揃の竜”  “タツタの尊”  “コノシロの竜” などとも呼ばれます。
何故に君となるかと言えば、「木と実(=陽と陰)を統合した存在」 となったからです。


神 (かみ)
カミ(神)は 「上」 が原義で、「人の上位にある存在・形而上の存在」 をいいますが、
この場合は 「肉体を持つ人間としての制約を超越した人」 と考えていいと思います。

 

【概意】
「いま一つ 葵桂(=陽陰)の和合を得れば “人生き” を悟る。
この3つを知れば、竜が君となる如く 人は神となる。」



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 たつきみいかん
 たつはひれ みつしるゆえに うろこきみ
 かんつみおにお みつしれは ひとはかみなり
 ひめははち おちいりいわす

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 「竜君 如何ん」
 「竜はひれ 三つ知る故に 鱗君
 上つ身 おにを 三つ知れば 人は神なり」
 姫は恥ぢ 怖ぢ入り言わず

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■ひれ (▽卑・▽低)
ヒレフス(平伏す)の母動詞 “ヒル” の名詞形で、「下にあるさま・劣るさま」 を意味します。
ここでは 「(人に比して) 劣るもの・低劣な生き物」 をいいます。


■鱗君 (うろこきみ)
「ウロコの生き物の君 (極み・頂点)」 という意です。


■上つ身 (かんつみ)
「上の者・上位の存在」 という意で、この場合は 万物の霊長たる 「人間」 をいいます。


■おに (▽下)
“生き” の換言です。

 オニは オヌの名詞形で、オヌは オル(下る)の変態、「下り・落ち・劣り」 などが原義で、
 この場合は 「この世 (下界・地) に下ること」 を意味しますが、それは 「生き」 と同義です。


■怖ぢ入る (おぢいる)
恐れ入る” と同義で、「気が引ける・気後れする・恐縮する」 などの意です。

 

【概意】
トヨタマ姫:「竜君とは如何に?」
  太上君:「竜は劣る存在なれば、生きを3つ知るゆえに鱗君。
      その上位の存在が生きを3つ知るとなれば、人は神なり。」
姫は恥ぢ、恐縮して沈黙する。



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 みほつひめ みゆきおくりて ここにあり
 とえはよろこひ こたえとふ みほつうなつき
 おおゑきみ こころないため たまひそよ
 きみとひめとは ひとつきと むつましなさん もふすとき

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 ミホツ姫 御幸送りて ここにあり
 問えば喜び 応え問ふ ミホツうなづき
 「太上君 心な傷め 給ひそよ
 君と姫とは 日と月と 睦まじなさん」 申す時

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ミホツ姫 (みほつひめ)・ミホ姫 (みほひめ)
ニニキネの母タクハタチチ姫の姉妹です。


■問ふ (とふ) ■応え問ふ (こたえとふ)
これは普通の “問ふ・訪ふ” とは少し意味が異なります。 ▶とふ
トフ(問ふ・訪ふ)は 「めぐる/めぐらす・配る・送る」 などが原義で、
この場合は 「気を配る・意識を向ける」 などの意を表します。

 つまり太上君がミホツ姫に意識を向け (視線を送り)、それに応えて
 ミホツ姫も大上君に意識を向けた (視線を返した) ということです。


■日と月 (ひとつき)
これも 「陽と陰」 が原義で、「妹背・葵桂・木実・夫婦」 などの換言ですが、
ウツキネ&トヨタマ姫の夫婦は特に、「和つ日月・和つ君/木実」 でもあります。


■睦まじ (むつまじ:名詞)
形容詞 “睦まじ” の名詞形です。
人や物事に 「直結一体化するさま・融合して一つになるさま・一途なさま」 を表します。

 “君と姫とは日と月と 睦まじなさん” は、
 ‘付く離る’ しながら、陽と陰は最後に結び付く運命にあるのですから、
 和つ日月であるウツキネ君とトヨタマ姫も いずれ一つに結びますよ。というような意味です。

 

【概意】
太上君の御幸を送りにミホツ姫もここにあり。
視線を送ると喜んで視線を返すミホツ姫は、うなづきながら、
「太上君、心をお傷めなさいますな。君と姫とは日と月です。
いまに一つに結ぶことでしょう」 と申す時、



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 ををきみゑみて たけすみに とよたまたせと
 かわあいの くにたまわりて たにおいて
 むろつにかめの むかいまつ かといておくり みゆきなす

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 太君笑みて タケスミに 「トヨタマ養せ」 と
 川間の 地賜わりて 谷を出で
 室津にカメの 迎い待つ 門出送り 御幸なす

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■太君 (ををきみ)
太上君(おおゑきみ)太上皇(おおゑすべらぎ)と同じです。


タケスミ
姉トヨタマ姫と共に九州から上京し、姫の宮落ちにも随行しました。
この時もトヨタマ姫に付き添ってミヅハメの社に滞在しています。


■川間の地 (かわあいのくに)
山背の 「賀茂川と高野川に挟まれる地区」 いいます。 ▶山背
ワケツチ(分土)、カモ(賀茂) とも呼ばれます。
 
 ★川間 (かわあい) ★河合 (かあひ)
 「川の間の所・川と川に挟まる所・川と川が合流する所」 をいいます。


■谷 (たに)
ミヅハメの社(=貴船神社)は、貴船山と鞍馬山の谷間にあります。


■室津 (むろつ)
船津(ふなつ)の換言と考えます。ムロ(室)は 「入れ物・器」 の意で、フネ(槽・船)と同義です。
したがって “室津” も各地にありますが、最も有名なのは、兵庫県たつの市御津町室津港です。


カメ (亀)

 

【概意】
太君は笑みて 「トヨタマを養え」 と、
タケスミに川間(=河合)の地を賜わって谷を出て、
ムロツにカメ船の迎えが待つ門出を皆で送り、太君は御幸なす。



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 きみえををきみ のこしこと あにひつきてる
 ひとくさも かにはひやすそ わのきみも かにたみかるそ
 まつりこと こやねものぬし ともにたせ みやうちのたは
 みほひめと

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 君へ太君 遺し言
 「天に日月照る 人・草も 翳には冷すぞ
 地の君も 翳に民枯るぞ
 纏り事 コヤネ・モノヌシ 共に治せ
 宮内の治は ミホ姫」 と

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■翳・隈・曲・汚 (が)
このガ(曲・汚)は 「離れ・逸れ・外れ・曲り」 などが原義で、
この場合は 「曇り・隈」 を意味します。 ▶くも・くま
空が曇れば地を翳らすことから、ここでは “翳” と当てました。


■冷す (ひやす)
ヒユ(冷ゆ)ヤス(痩す) の短縮です。
この場合は自動詞で、ヒエル(冷える) と同義。
「下がる・低まる・衰える・果てる」 などが原義です。


■地の君・地の木実 (わのきみ)
地の日月」 という意で、和つ日月世の日月 の換言です。
八方の民を調えて照らす 「中央政府の君・皇君」 をいいます。
これは “天空に照る日月” に対する語です。


纏り事・政 (まつりごと)

 
コヤネ ■モノヌシ
ウツキネの次期中央政府における 左の臣右の臣に 2人を任命しています。


■宮内の治 (みやうちのた)
「皇宮内の治め」 という意で、「皇宮に仕える女官たちの管理」 をいいます。 ▶治
この管理者は 「局預り」 とも呼ばれ、江戸時代の 「大奥総取締」 に相当するかと思います。

 

【概意】
ウツキネ君へ太君の遺言。
「天に日月が照る。人や木草も天が曇れば衰えるぞ。
それに同じく、地の日月も その曇りに民は枯れるぞ。」
「纏り事はコヤネとモノヌシが共に治せ。宮内の治めはミホ姫」 と。

 

本日は以上です。それではまた!

 

 

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