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一から学ぶほつまつたえ講座 第109回 [2024.2.1]
第二一巻 ニハリ宮法定む文 (1)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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にはりみやのりさだむあや (その1)
ニハリ宮法定む文 https://gejirin.com/hotuma21.html
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にはりみやのりさだむあや
ふそむすす そなゑふそみほ やよはつひ
きよひとみこの みことのり
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ニハリ宮法定む文
二十六鈴 十七枝二十三穂 三月初日
キヨヒト御子の 御言宣
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■ニハリ
本文中で説明します。
■宮法 (みやのり) ■宮造り法 (みやづくりのり)
「宮の造り方・都の建設方法」 です。 ▶宮
■二十六鈴十七枝二十三穂 (ふそむすずそなゑふそみほ) ▶数詞
真榊(=鈴木)による暦法で、1鈴=6万年、1枝=60年、1穂=1年
です。
ウビチニ&スヒヂの時代に植え継ぎが500回の限界に達し、累計年数が
一旦リセットされていますので、この暦の起点はその頃と考えられます。
以来ホツマに暦年の記載されている出来事を振り返ると、次の通りです。
・21鈴125枝31穂 | アマテル誕生。 | ・21鈴126枝58穂 | アマテル即位。 | ||
・22鈴505枝1穂 | トヨケ帰天。 | ・24鈴999枝60穂 | 六ハタレ蜂起。 | ||
・25鈴93枝37穂 | カシマ直ち開始。 | ・25鈴100枝11穂 | オシホミミ即位。 | ||
・25鈴100枝28穂 | アマノコヤネ結婚。 | ・25鈴130枝58穂 | アマテル下り居。 | ||
・26鈴16枝41穂 | テルヒコ大和国へ。 |
■三月初日 (やよはつひ)
ヤヨは ヤヨイの略です。
■キヨヒト・ニニキネ
キヨヒトは
オシホミミとタクハタチチ姫の次男ニニキネの斎名です。
陽陰御孫(あめのみまご)とも呼ばれ、記紀には
邇邇藝命/瓊瓊杵尊
などと記されます。
ヤソキネ─タカキネ─タクハタチチ姫┐ ├クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ) サクラウチ─セオリツ姫┐ │ │ ├ニニキネ(斎名キヨヒト) ├オシホミミ┘ イサナギ┐ │ ├─アマテル─┘ イサナミ┘
■御言宣 (みことのり)
兄のテルヒコが大和国に下った時から、82年後に発せられたニニキネの御言宣です。
ニニキネはこの時点ではまだ皇の第2子の身分でしかありませんから、
その言葉を “御言宣”
と称えるのはかなり異例なことです。
兄テルヒコの場合に比べると、その取り扱いに大きな差があると感じざるをえません。
【概意】
ニハリ宮法定む文
26鈴17枝23穂の3月初日、キヨヒト御子の御言宣。
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おおものぬしか をやのくに いつもやえかき のりをさむ
そのもとのりは さきかみの いさおしなれは
われもこと たてんとよもお めくるうち よきのおゑたり
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「オオモノヌシが 親の国 イヅモ八重垣 和り治む
その基範は 前守の 功なれば
我も殊 立てんと四方を 巡る内 良き野を得たり」
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■オオモノヌシが親の国 (おおものぬしがをやのくに)
“オオモノヌシ” は 2代目の
「クシヒコ」 です。“親”
は 「オホナムチ」
を指し、
“国” は 「イヅモ」
をいいます。
イサナギ ┌ソサノヲ─オホナムチ (初代モノヌシ) ├──-┤ ├───クシヒコ (2代モノヌシ) ┌イサナミ └アマテル──タケコ │ │ ├──ミホヒコ (3代モノヌシ) │ │ トヨケ┴ヤソキネ──タカキネ───────ミホツ姫
■イヅモ八重垣 (いづもやゑがき)
初代オオモノヌシ となった オホナムチ(斎名クシキネ)
をいいます。
■和り治む (のりをさむ)
ノル(和る)は “和り恵る”
のそれと同じで、「やわす・ほどよく調える」
などの意です。
ですから 「やわし治める・和の道に治める」
という意です。
生む子の斎名 クシキネは ことにやさしく 治むれば 〈ホ9-5〉
■基範 (もとのり)
モト(本・元・基)+ノリ(法・則・典・範)
で、「基礎となる方法・規範」 などの意です。
★モト (本・元・原・基・素)
モドル(戻る)の母動詞
“モツ” の名詞形で、モツは
「回る・一回りして還る・回帰する」
などが原義です。ですから
「回帰する所・源・原点・由来・由緒」
などの意を表します。
■前守 (さきかみ)
オホナムチの 「前のイヅモ国の守」 という意で、ソサノヲを指します。
“陽陰(和)の道以て民和ぐ”、これを初めにイヅモの国に施したのはソサノヲでした。
サホコ国 代えてイヅモの 国はこれ 陽陰の道以て 民 和ぐ 〈ホ9-5〉
■殊立つ (ことたつ)
「殊勲を立てる・並々ならぬ功を立てる」 という意です。
この場合は、ソサノヲがイヅモの国の基礎を築いて和し治めたように、
「新たに国を起こして民を養って育むこと」 をいいます。
★殊・異・別 (こと)
ここでは 「並外れた功績・殊勲」 などを意味します。
【概意】
「オオモノヌシの親の国(=イヅモ)は、イヅモ八重垣(=オホナムチ)が
和の道に治めたが、その基礎は前守(=ソサノヲ)の功なれば、
我もそうした殊勲を立てんと四方を巡る内、良き地を得たり。」
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ここにゐて たおひらかんと まつたつる なもにはりみや
ふとまにに みやつくりのり さためよと
おおものぬしに みことのり
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「ここに居て 治を開かんと まず立つる 名もニハリ宮
フトマニに 宮造り法 定めよ」 と
オオモノヌシに 御言宣
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■治 (た・ち・たち・つち) ■治を開く (たおひらく)
タ(▽治)は タス(足す・▽助す・▽養す)の名詞形で、
君や臣が 民を 「足らし助けて調えること」 をいいます。
“治を開く” とは 「そのためのシステムを立ち上げる」
という意味で、
つまりは 「民を養う 社会/都市/国 を開設する」
ことをいいます。
‘タ’ のオシテ 三光
円の 内に入る 足り助く法 天と父 ・・・ ・・・
‘タ’ も ‘ヲシ’ も
乳なきの親よ 鑑みて 助くる民は 子の如く 〈ホ17-2〉
■まず立つる名 (まづたつるな)
「前もって立てる名」 という意ですが、これは コトタツ(殊立つ)
にかけています。
つまり 「殊(こと)を立てるために、まずその言(こと)を立てる」
ということです。 ▶言立ち
これはフトマニ (48音・言葉)
が万物万象の源であることを利用しています。
■ニハリ・ニヰハリ (和治) ■ニハリ宮・ニハリの宮 (にはり[の]みや)
ニ(和)+ハリ(治) は、“和り治む”
の換言で、「和し治めるさま」 を意味します。
場所は後世の 常陸国の新治
に一致します。
なお “ニハリ/ニヰハリ” と “ニイハリ”
は意味が異なるので注意が必要です。
ニ(▽和・似)は ニユ(▽似ゆ)の名詞形で、「合・和・柔・和合」
などが原義です。
ハリ(治)は ハル(▽治る・晴る)
の名詞形で、「調い治まること・調え治めること」
を意味し、これは タ(治) と同義です。
鴨大神御子神主玉神社
(かものおおかみのみこかみぬしたまじんじゃ)
茨城県桜川市加茂部694。
現在の祭神:主玉神、太田田根子、別雷神
<筆者注> 社名の鴨大神と、祭神の別雷神は
どちらもニニキネを指します。
■フトマニ (太兆)
“フトマニに定む” は、「言葉の48音/48神に鑑みて定める」
ということですが、
これは平たく言えば 「語呂合わせ」 です。
【概意】
「ここに落ち着いて治を開かんと、すでに “ニハリ宮”
という名を立てたゆえ、
フトマニにより宮造りの法を定めよ」
と、オオモノヌシに御言宣。
このアヤでは建物の建築法や儀式について多く語られますが、
クシヒコは土地の浄化法 (埴纏り=地鎮)
についても詳細に定めており、
それはミカサの 埴纏りのアヤ
に多くが語られています。
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ものぬしうけて のりさたむ
まつそまおして きおきるは きやゑのひよし ておのそめ
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モノヌシ受けて 法定む
まず杣人をして 木を切るは キヤヱの日良し 手斧初め
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■モノヌシ
オオモノヌシの略で、クシヒコを指します。
イサナギ ┌ソサノヲ─オホナムチ (初代モノヌシ) ├──-┤ ├───クシヒコ (2代モノヌシ) ┌イサナミ └アマテル──タケコ │ │ ├──ミホヒコ (3代モノヌシ) │ │ トヨケ┴ヤソキネ──タカキネ───────ミホツ姫
■杣人 (そま)
ソハ(岨)+マ(身)
の短縮で、「山の身・山の者/物」 が原義と考えます。
★岨 (そは・そば・そわ)
ソビユ(聳ゆ)の母動詞
“ソフ” の名詞形で、「高み・高い所」 を意味します。
スワ(諏訪)の変態です。
■キヤヱ (きやゑ)
我が国本来の干支の表し方で、今の表し方では
甲辰 (きのえ・たつ) に当たります。
60日/60年で一周する41番目です。
1.キヤ+ヱ(上) で、キヤは キユ(消ゆ)の名詞形、またキユは
キル(切る)の変態。
ヱは 「上」 が原義です。これにより、木を
「切るに上々 (吉)」 の意となります。
2.キ(木)+ヤヱ
で、ヤヱは ハエ(生え・栄え)の変態。
これにより、切ってもまた 「木は繁茂」
の意となります。
■手斧初め (ておのぞめ)
「はじめて木を切り出す日に行う儀式」 をいい、“ちょうなはじめ”
という言葉が辞書にあります。
★手斧
(ておの・てうな・ちょうな)
テフ(丁)+オノ(斧) の短縮で、テフ(丁)は 今風には “チョウ”
と発音し、
「切断・分割」 が原義。オノ(斧・各)は オル(折る)の変態
“オヌ” の名詞形で、
これも 「切断・分割」 などの意です。ですから
テオノは 「切断器」 が原義です。
テオノは テウナ/チョウナ(手斧)と訛ります。
【概意】
モノヌシは御言宣を受けて 法を定める。
まずキコリをして木を切るのは キヤヱの日が良し(吉)。
この日に “手斧初め” の儀を行う。
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ねしゑいしすゑ はしらたて
なかすみはしら みなみむき きたひかしにし めくりたつ
しまからふかと なかすみに よりてさたむる
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ネシヱ 居し据え 柱立て
中・隅柱 南向き 北・東・西 巡り立つ
締・枯生門 中・隅に よりて定むる
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■ネシヱ
我が国本来の干支の表し方で、今の表し方では
壬午 (みずのえ・うま) に当たります。
60日/60年で一周する19番目です。
ネシ(寝し)+ヱ(上) で、ネシは 「落ち着け・鎮め」
の意で、ヱは 「上」 の意です。
これにより 「鎮めに上々 (吉)」 の意となります。
何を鎮めるのかについては 次の “居し据え”
でわかります。
■居し据え (いしすゑ・いしすえ)
「敷地の鎮め・調え」 を意味します。“埴纏り”
とも呼ばれ、今風に言えば 「地鎮」 です。
地均しから始まって、厄祓い、守護神のまとわせと、多段階の過程が含まれます。
イシ(居し)は イス(▽結す)の名詞形で、イス(椅子)の変態です。
何かを 「結びつける物/所・受ける土台」
を意味し、この場合は宮の 「敷地」 です。
スヱ(据ゑ)は 「落ち着かせ・鎮め・調え」
の意で、ネシヱの ネシ(寝し)と同義です。
他に 「家屋を据える敷地そのもの」
を意味する場合もあり、これがイシズヱ(礎)です。
現在はこちらの意味しか残っていません。
■柱立て
(はしらだて)
これはそのままの意です。祝いの儀式を行います。
★柱 (はしら)
ハシル(走る)の名詞形で、“走り”
の変態と考えてます。
「先んじるもの・はじめ・先発・先駆」
などが原義で、「はじめに立つもの」 をいいます。
■中・隅柱 (なかすみはしら)
中心に立てる 「中柱」 と、4隅に立てる 「隅柱」 です。 ▶中柱
文脈からすると、おそらくここで言ってるのは
個々の建物の柱ではなく、
宮(都・京)全体の敷地の中心と四隅に立てる柱です。不詳ですがオベリスク
みたいなものだったのかもしれません。
■南向き (みなみむき)
これは 「正面/正門を南に向ける」 という意と思います。
■巡り立つ (めぐりたつ)
このメグル(巡る)は 「順を追う」 という意です。
ですからまず南の隅柱を立て、その後 北・東・西 の
「順に立てる」 ということです。
個々の建物の柱立てについても、これに準じたと推測されます。
■締 (しま) ■九門 (こかど)
シマ(▽締)は シメ(締め・閉め)の変態で、カド(門)の換言です。
後に示されますが、宮 (=都・京) の東西南北の4辺には、各9つの門が設けられ、
これをコカド(九門)と総称します。 ▶九門(きゅうもん)
■枯生門 (からふかど)
南辺中央に設置される 「正門」 の別名です。
後世には 「羅生門/羅城門・南大門」
などとも呼ばれます。
なにゆえ “カラフ門”
と呼ぶかについては、後に説明があります。
参考に 平安京の構造図 を見て下さい。その規模は 東西約4.5km、南北約5.2km です。
【概意】
ネシヱの日に “居し据え”(=地鎮) と “柱立て”
を行う。
初めに中柱を立て、隅柱は宮の正面が南を向くようにするべく
まず南の柱、北・東・西と順次立てる。
各門と枯生門(=正門)の場所は
中柱と隅柱の位置によって定める。
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むねあけは つあゑにいはひ あかこわゐ
そみかしはあめ ひとつきと やかしはあもと むねにすゑ
もちみもむそむ ゆみやそえ
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棟上げは ツアヱに祝ひ 赤こわ飯
十三膳 陽陰 日と月と 八膳 天元 棟に据え
餅三百六十六 弓矢添え
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■棟上げ
(むねあげ)
これをもって建物の基本構造の完成となります。
■ツアヱ
我が国本来の干支の表し方で、今の表し方では
丙子 (ひのえ・ね) に当たります。
60日/60年で一周する13番目です。
ツア+ヱ(上) の、ツアは ツイ(遂)の変態で、
「上がり・至り・完遂・完成」 などを意味します。ヱは
「上」 の意です。
これにより 「完成に上々 (吉)」 の意となります。
■赤こわ飯 (あかこわゐ)
今に言う 「赤飯」 です。アカ(赤・▽明)は
「明け・あがり・完成」 を表します。
★こわ飯・強飯
(こわゐ)
コワヰは カヰ(粥)の発音母体で、「(生米でなく)
火を通して炊いた飯」 をいいます。
これはカシミケ(炊食)とも呼ばれ、神に対する
「かしこみ」 を表すモノザネです。
後世、“こわ飯” は 「硬く炊いた飯」、“粥” は
「ゆるく炊いた飯」 の意に誤解されます。
また後世、“ごうはん”
の読みが生じ、縮まって “ごはん”
になったと考えています。
“はん” は 食み(はみ) の変化でしょう。
■十三膳 (そみかしは) ■陽陰 (あめ) ■日と月と (ひとつき)
「日(太陽)と一年の12の月」
に対する尊敬のお供えとする、合計 「13膳の赤飯」 です。
“陽陰” は “日と月”
を言い換えているだけです。
★膳 (かしは)
「盛り上げ・尊敬・祝賀・もてなし」 などが原義で、
この心を 「膳・料理・ごちそう」
を提供することで形にします。
カス(▽上す・▽活す)+シフ(▽繁ふ) の短縮 “カシフ”
の名詞形で、
カスは カシグ(炊ぐ)の母動詞、シフは シュウ(秀・祝)の母動詞です。
両語とも 「上げる・勢いづける・敬う・致す」
などが原義です。
また カシハ(膳)は 嘉祥(かせふ・かしょう)の変態で、御饗(みあえ)の同義語です。
■天元 (あもと)
「天元神の8柱」 をいいます。 ▶天元神
■弓矢 (ゆみや)
これは棟上げの祝において、屋根に立てる弓と矢をいいます。
これは今日でも行われていて、「破魔弓・破魔矢」
と呼ばれます。 ▶画像
2組の弓矢の一方を 「天の弓矢」、もう一方を
「地の弓矢」 と呼ぶようです。
【概意】
棟上げはツアヱの日に祝い、
13膳の赤飯を陽陰、すなわち 日と12の月とに、
8膳を天元の8神に捧げるため棟に据える。
またそれに366個の餅と弓矢を添える。
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はしらにまつる ゐくらのゐ としのりたまめ むわたのな
みなひとよみき さいおふる むねとはしらね つちおうつ
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柱に纏る 五クラの五 年宣りタマメ 六ワタの七
皆 一夜酒 鉏を振る 棟と柱根 槌を打つ
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■柱に纏る (はしらにまつる)
マツル(纏る)は ここでは
「まとい付ける・添える・据える・供える」
などの意です。
■五クラ (ゐくら:五座/五臓)
「五クラの神」 の略で、“年宣り神” の
「キ・ツ・ヲ・サ・ネ の5神」 をいいます。
★年宣り神 (としのりかみ)
「年を告げる神」 の意で、干支の構成要素となっている
キ・ツ・ヲ・サ・ネ + ア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウ
11神 の総称の1つです。
この11神は別名が非常に多くて、五臓六腑(ゐくらむわた)とも呼ばれます。
トコタチの子の 年宣りのタマメ神 五臓六腑を 生み分ける 〈ホ21〉
■年宣りタマメ (としのりたまめ:歳徳玉女)
「年宣り神を生んだ母神」 です。
現在も “歳徳玉女大善神”
として、神社などでその御札が売られています。 ▶画像
■六ワタ (むわた:六腑)
「六ワタの神」 の略で、年宣り神の
「ア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウ の6神」 をいいます。
■鉏を振る (さいおふる)
サイ(鉏)
は サキ(鋘)の音便で、「鋤」
のことです。
これは 「サキ(幸)・サイワヒ(幸い)を振興する」
という意を形にした行為と考えます。
■槌を打つ (つちおうつ)
これは 「槌打の儀」 と呼ばれ、現在も行われています。 ▶動画
これはおそらく 槌を打つ=槌を交える=槌を交ふ(かふ)
に語呂合せして、
ツチカフ(培う)
という意を形にした行為なのでしょう。
【概意】
また五クラの神への5膳と、年宣りタマメと六ワタの神への7膳を柱に据える。
皆で一夜の酒宴を張った後、鉏を振り、棟と柱根に槌を打つ。
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ときにたくみは むのたみめ そののとことは あめつちの
ひらくむろやの かみあれは ゑやはよわかれ ぬしはなかかれ
かくみたひ のとしてもちお なけちらす
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時に匠は ‘ム’ のタミメ その宣言は 『天地の
開く室屋の 神あれば えやは弱かれ 主は長かれ』
かく三度 宣して餅を 投げ散らす
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■匠・工・巧み
(たくみ)
タクミは 「手組み」 が原義と考えています。
この場合は 大工(おおたくみ・だいく)
をいうものと思います。
我聞く いにし 尊の屋は ‘ム’ のタミメより ムロ屋建つ 〈ホ17-2〉
■宣詞 (のとこと)
■天地の開く (あめつちのひらく)・天地開く (あめつちひらく)
「陽陰が分れる・陽陰を分ける」 という意で、クニトコタチ、トコタチ
にかかります。
・天地開け 初む時に クニトコタチの 神孕み 〈ホ22〉
・この鈴は 天地開く トコタチの 宮の真榊 〈ホ28〉
■室屋の神 (むろやのかみ)
「室屋を造った神」 という意で、クニトコタチ、トコタチ
の換言です。 ▶室屋
・屋造りの 基はトコタチ ‘ム’
手結び 室屋造りて 〈ホ21〉
・クニトコタチの 尊の代に ‘ム’
のタミメより 室屋生る 〈ミ8-1〉
・クニトコタチの 室屋より 宮殿造る ハサラ民 〈ミ8-1〉
■えやは
(ゑやは)
反語の意を表し、「どうして…できようか、できるはずがない」
という意です。
■弱かれ (よわかれ) ■長かれ (ながかれ)
“弱からん/長からん” の換言と考えます。今風には “弱かろう/長かろう”
です。
文法的な構造は不明ですが、“遅かれ早かれ”
”善かれ悪しかれ”
などの言い方に残ります。
■餅を投げ散らす (もちおなげちらす)
“餅” は 「赤飯に添えて棟に供えた366個の餅」
をいうのでしょう。
これは 「餅まき・餅投げ・散餅銭の儀」
の名で現在も行われています。 ▶動画
【概意】
時に大工は ‘ム’ のタミメを結び、その宣詞は、
『天地を分ける室屋の神のあれば、どうして弱かろう、主の栄えは長かろう』
かく3度宣して餅を投げ散らす。
本日は以上です。それではまた!