⇦前の講座          目次           次の講座⇨ 

 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

徹底解説みかさふみ講座 第47回 [2023.4.1]

みかさふみ 埴纏りの文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 はにまつりのあや (その1)
 埴纏りの文 https://gejirin.com/mikasa08.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

―――――――――――――――――――――――――――――
 はにまつりのあや
 やつくりの のりはあまてる かみのよに
 あめのみまこの みことのり をこぬのかみの うなつきて
 にはりのみやの みやつくり のりおさたむる

―――――――――――――――――――――――――――――
 埴纏りの文
 屋造りの 法はアマテル 神の代に
 陽陰の御孫の 御言宣 ヲコヌの尊の うなづきて
 ニハリの宮の 宮造り 法を定むる

―――――――――――――――――――――――――――――

■埴纏り (はにまつり)
ハニ(埴)は 「土・土地」、マツリ(纏り)は 「手当・手入れ・ケア」 などの意です。
つまり 「土地の整備」 のことで、具体的には 「土地の物的・霊的な穢れの清め」 をいい、
今風に言えば 地鎮(ぢちん) です。

 
■陽陰の御孫の御言宣 (あめのみまごのみことのり)
陽陰の御孫” は ニニキネ を指します。


 アマテル(斎名ワカヒト)
     ├─────オシホミミ(斎名オシヒト)
 セオリツ姫(斎名ホノコ)  ├────クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
              ├────ニニキネ(斎名キヨヒト)
 タカキネ──────タクハタチチ姫(斎名スズカ)


その御言宣とは以下の通りです。

 「我も殊 立てんと四方を 巡る内 良き野を得たり ここに居て
 治を開かんと まず立つる 名もニハリ宮 フトマニに 宮造り法 定めよ」 と
 オオモノヌシ(=クシヒコ)に 御言宣              〈ホ21-1〉


■ヲコヌの尊 (をこぬのかみ:大地主の尊)
ニニキネが2代オオモノヌシのクシヒコに賜った尊名で、ヲコヌは “ヲコヌシ” の略です。
オオクンヌシ・ヲヲコヌシ・ヲヲクヌカミ・ヲコヌノカミ・クニヌシ など、呼び方には
いくつかのバリエーションがあります。クシヒコは斎名です。
他文献では オオクニヌシ(大国主) と記されますが、それはクシヒコではなくオホナムチの
別名とされています。


     イサナギ ┌ソサノヲ─オホナムチ (初代オオモノヌシ)
       ├──┤       ├───クシヒコ (2代オオモノヌシ)
    ┌イサナミ └アマテル──タケコ    │
    │                   ├─コモリ (3代オオモノヌシ)
    │                   │
 トヨケ┴ヤソキネ──タカキネ───────ミホツ姫


■ニハリの宮 (にはりのみや)
ニニキネが筑波山の麓に新規に建設した宮で、後の新治(にいはり)です。
少し前までは茨城県新治郡新治村に名が残っていましたが、現在は土浦市に
編入されました。JR水戸線には新治駅が現存しています。

 鴨大神御子神主玉神社 (かものおおかみのみこかみぬしたまじんじゃ)
 茨城県桜川市加茂部694。(常陸國新治郡)
 現在の祭神:主玉神、太田田根子、別雷神
 ・<筆者注> 鴨大神と別雷神はどちらもニニキネのことです。


■宮造り法 (みやづくりのり)
敷地の浄化法から、建設資材の調達法、実際の建設工事の方法、さらには火の用心、
棟上げ時の神纏りの法に至るまで、ヲコヌの尊は詳細に定めました。
驚愕するのは それらの儀式作法は今なお そのまま我国の建築に生きていることです。
このアヤではおもに敷地の整備について説かれますが、それ以降の過程については
ホツマの21アヤに詳しいです。

 

【概意】
埴纏りの文
屋造りの法は アマテル神の時代に 陽陰の御孫が御言宣。
ヲコヌの尊はうなずいて、ニハリの宮の宮造り法を定める。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 そのかみは くにとこたちの かみのよに
 むのたみめより むろやなる まつはおならし すきはしら
 むねおかつらに ゆひあわせ かやふきすみて このみはむ
 をしゑおたみに ならはせて くにとこたちの かみとなる

―――――――――――――――――――――――――――――
 その上は クニトコタチの 尊の代に
 ‘ム’ のタミメより 室屋生る まず地をならし 直柱
 棟をかつらに 結ひ合せ 茅葺き住みて 木の実食む
 教えを民に 習わせて “地床立” の 尊となる

―――――――――――――――――――――――――――――

■その上は (そのかみは)
ここでは 「その前は・その先は」 という意味です。


クニトコタチ (▽地疾立)


■‘ム’ のタミメ (むのたみめ)
タミメ(手見目)は 「手を組み合せて造る形」 をいい、
仏教伝来後は 「手印印相」 などと呼ばれます。
タミメを平面上に写したものが ヲシテ(押手) です。


■室屋 (むろや)
ムロ(室)は 「囲み・閉じた空間・区画・部屋」 などが原義です。
これを屋の初めとして、後に高度な ヤシロ(社)・ミヤトノ(宮殿) などが造られたため、
“室屋” には 「原始的な簡易住居」 というイメージがつきまといます。


■直柱 (すぎばしら)
スギ(▽直)は スグ(直ぐ)の名詞形で、「まっすぐ・曲りのないさま」 をいいます。
杉(すぎ) の原義はこれだと思います。


棟 (むね)
ミネ(峰)の変態で、「高み・頂」 を意味します。この場合は 「屋根」 と同じです。


かつら (鬘・桂)
カツ(▽上つ・勝つ)+ラ(場所を表す) で、「上部・頭部」 を意味します。
カシラ(頭)の変態です。この場合は 屋根で覆う前の建物を最上部をいいます。


■地床立の尊 (くにとこたちのかみ)
“クニトコタチ” の語義の別解釈で、トコを “床” とし、「土台」 の意に解します。
つまり 「地上生活の土台を立てた尊」 の意を ここでは表しているように思えます。

 

【概意】
その前は、クニトコタチの尊の時代に ‘ム’ のタミメより室屋が生る。
まず地をならして直柱 <を立て>、棟を頭部に結い合せて茅で葺き、
そこに住んで、木の実を食む。
その教えを民に習わせて “地床立” の尊となる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 これよりさきは あめつちの なりてあれます みなかぬし
 ふそよにうめる たみくさの あなにすまえは ひとならす
―――――――――――――――――――――――――――――
 これより先は 天地の 成りて生れます ミナカヌシ
 二十代に生める 民草の 穴に住まえば 人ならず
―――――――――――――――――――――――――――――

■天地の成る (あめつちのなる)
陽が上って天となり、陰が下って地となる」 ことをいいますが、
ここでは特に 「地球が創造された」 ことを意味します。


ミナカヌシ (真中主・御中主)


■二十代 (ふそよ)
ミナカヌシと、天の8尊 ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ と、地の11尊 キ・ツ・ヲ・サ・ネ
+ア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウ の、「二十尊の時代」 と考えるよりほかありません。
そうすると、前段に出てきたクニトコタチは クニサツチかトヨクンヌ だと
いうことになります。

 ミナカヌシ─天の8尊─地の11尊─クニサツチ─トヨクンヌ┐
 ←……… クニトコタチ  ………→            │
 ←………………  最広義のクニトコタチ …………… ……→│
                             │
       ┌―――――――――――――――――――――┘
       │
       └ウビチニ
          ├――――ツノクヰ
         スヒヂ     ├――――オモタル
               イククイ     ├ … (断絶) … イサナキ
                     カシコネ        │
                               イサナミ


■民草 (たみくさ)
アオヒトクサ(青人種・青人草) と同じです。

 

【概意】
これより前の、天地の成りて生れますミナカヌシを始祖とする
二十尊の時代が生んだ民草は、穴に住まえば人にあらず。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 くにとこたちの むろやより みやとのつくる はさらたみ
 ゐためたたるの おりあれは これのそかんと おほすなり
―――――――――――――――――――――――――――――
 クニトコタチの 室屋より 宮殿造る ハサラ民
 傷め祟るの 折あれば これ除かんと 思すなり
―――――――――――――――――――――――――――――

■ハサラ民 (はさらたみ:地更民)
現在この名は残っていないので、なんとも言えないのですが、
ハ(地・土)+サラ(更・浚)+タミ(民) で、「土地を改める民」 の意と考えます。
つまり土木建設工事において 「土地の浄化・改善を専門職とする民」 を
いうものと思います。


■傷め祟るの折 (ゐためたたるのおり)
ハサラ民が浄化したはずの土地や その上に建てた宮殿が、
住む人に 「害をなし障りとなる場合」 という意です。

 

【概意】
クニトコタチの室屋以来、宮殿造りに携わるハサラ民であるが、
彼らが清めたはずの土地が 人に障って害をなす場合があるため、
<オコヌの尊は> これを除こうと思われたのであった。


  以降はオコヌの尊の言葉です。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 はさらのたみよ まさにしれ まつひきのりは はおならし
 かしきのゆうお なかにたて ましろのゆうお きねにたて
 かしろのゆうお つさにたて あしろのゆうお きさにたて
 きしろのゆうお つねにたて としのりたまめ やまさかみ
 をころのかみも はにまつり としつきひひの もりはこれ
―――――――――――――――――――――――――――――
 ハサラの民よ 正に知れ まず曳法は 地を平し
 赤白黄の木綿を 中に立て 真白の木綿を 東北に立て
 赤白の木綿を 西南に立て 青白の木綿を 東南に立て
 黄白の木綿を 西北に立て 年宣りタマメ ヤマサ神
 ヲコロの神も 地に纏り 年月日々の 守はこれ
―――――――――――――――――――――――――――――

■曳法 (ひきのり)
「土地の曲りを直す方法・土地の穢れを祓う方法」 をいいます。

 このヒク(引く・曳く・牽く)は、広辞苑B-Bの 「平らにする・ならす」 の意で、
 この場合は、土地の 「かたよりをならす・曲り/異常を直す」 ということです。
 これは ハヒキ(地曳) と呼ばれ、現在は ヂビキ(地曳) と呼ばれていますが、
 「物理的な直し」 と 「霊的な直し」 の両方があります。


■地を平す (はおならす)
これは 土地の 「物理的な直し」 で、土地の凸凹を平して石ころや草などを
取り除くことをいいます。これを行った後に 「霊的な直し」 を行います。

 
■赤白黄の木綿 (かしきのゆう・かしきのゆふ)
ユウ/ユフは ここでは “木綿” と宛字しましたが、ユフ(結ふ)の名詞形で、
「結う物・結った物」 が原義です。神と人/天と地を結うモノザネとしての
結った物 (=織物) をいい、別名が ニキテミテグラヌサ などです。

カシキは カシク(炊ぐ)の名詞形で、「上げる・立てる・称える・尊ぶ」 ことを
意味します。それゆえ神を尊ぶモノザネとして 「カシキ(赤白黄)の織物」 を
使うわけです。またカシキは カシコ(畏)の変態です。


■年宣りタマメ (としのりたまめ:歳徳玉女)
タマメの語義は未解決ですが、「年宣り神を生んだ神」 をこう呼びます。
“年宣り神” とは 「年を告げる神」 の意で、干支の構成要素となっている
キ・ツ・ヲ・サ・ネ+ア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウ 11神 の総称の一つです。
この11神は別名が非常に多くて、五臓六腑(ゐくらむわた) とも呼ばれます。

 トコタチの子の 年宣りのタマメ神 五臓六腑を 生みあける 〈ホ21-3〉

年宣りタマメは 「年宣り11神のマネージャー」 と考えて良いと思います。
現在も “歳徳玉女大善神” として、神社などでその御札が売られています。[画像]


■ヤマサ神 (やまさかみ:八将神)
“年宣り神” の11神を 干支の守として養成する過程で生れた8神です。
御上二尊は8神に名を賜い、自然災害から人の日々の生活を守る任務を与えます。

 その十一神を ヱト守と 編み養うて 八御子生る 上二尊の 御言宣
 これに賜わる 一兄の名は ウツロヰの神 次の名は シナトベの神
 三つの名は カグツチの神 四つの名は ミヅハメの神 五つの名は ハニヤスの神
 六つの名は ソロ大歳の 力守る ヲヲトシ神と 称えます 七名は陰の 基 領ける
 スヘヤマズミの 神となる 八妹の神は 火の鎮め 立つ波治む タツタ姫
 各々御名を 賜わりて 暦を守る ヤマサ神なり
 〈ホ22-1〉

 1.ウツロヰ  (空)  2.シナトベ  (風)  3.カグツチ  (火) 
 4.ミヅハメ  (水)  5.ハニヤス  (土)  6.オオトシ  (豊作) 
 7.スヘヤマズミ  (治水・治山)  8.タツタメ  (鎮火・鎮浪) 

“ヤマサ” の語義も未解決ですが、後代には “八将神” と当てられて、暦と方位の
吉凶を司る神になっています。


■ヲコロの神・オコロの神 (をころのかみ・おころのかみ)
ニハリ宮の建設中、その工事現場に炎を吐く生き物が現れます。これがヲコロです。
クシヒコが話を聞くと 「カグツチがハニヤスに竜を産ませようとしたが、竜にならず
捨てられて、地の穴で憂いている。できれば人間にして欲しい」 と言います。

ヲコロ/オコロとは、今に言う モグラ(土竜) です。
モグラの別名にウゴロモチというのがありますが、ウゴロの変態がヲコロです。

クシヒコがニニキネに報告すると、

 オコロの神よ  春は竈 九尺底にあれ 夏は門 三尺底にあれ
 秋は井戸 七尺底にあれ 冬は庭 一尺底にあれ  
 新宮の 敷き座す地を いかすりて 一振なせよ 〈ホ22-2〉

このように御言宣して、“ヲコロの神” と名を授け、土地の守り神としたのです。
後世は “土公神” と呼ばれています。


纏る (まつる)
この場合は 神を土地に 「まとわすからみつける」 という意です。

 
■年月日々の守 (としつきひびのもり)
「常の守り・通常の守り・普段の守り」 という意です。
これはすなわち 「年宣りタマメ神・ヤマサ神・オコロの神」 をいいます。

 

【概意】
ハサラの民よ正に知れ。まず曳法は地をならし、
赤白黄の木綿を中央に立て、真白の木綿を東北に立て、赤白の木綿を西南に立て、
青白の木綿を東南に立て、黄白の木綿を西北に立てて、
年宣りタマメとヤマサ神、またオコロの神も土地に纏わす。通常の守はこれ。


 現代の地鎮祭でも似たようなことをやっています。
 ❝土地の四隅に青竹を立て、その間を注連縄で囲って祭場となし、斎主たる神職のもと、
 建設業者・設計者・施主らの参列の上で執り行う。祭壇の左右に、青・黄・赤・白・黒の
 五色絹の幟に榊をつけた 「真榊」 を立てる
場合もある。❞ [wikipedia 地鎮祭 より抜粋]

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

⇦前の講座          目次           次の講座⇨