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一から学ぶ みかさふみ講座 第25回 [2022.9.5]

みかさふみ 還十二の后立つ文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 こゑそふのきさきたつあや (その3)
 還十二の后立つ文 https://gejirin.com/mikasa04.html
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 あめなかぬしの もはかりよ あめのめくりの もよとめち
 うまれまかるも ひとめくり
 ももよろとしの ことふきも ひのひめくりそ
 ひとくさの ならしふよほも ひめもすの もものふたきれ
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 アメナカヌシの 百ハカリ節 天の周りの 百万トメチ
 生れ罷るも 一巡り
 百万年の 寿も 日の一巡りぞ
 人草の 均し二万年も ひめもすの 百百の二切れ
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■アメナカヌシ (天中主)
ミナカヌシの別称です。

 ★ミナカヌシ (真中主・御中主)
 地球に現れた最初の人間で、クニトコタチの元祖です。
 アメナカヌシとも呼ばれ、記紀では “天御中主” と記されます。

  空 動きて 風となる 風 火となれば 地もまた 水 埴となる
  この五つ 交わり生れる 神人は アウワ現る ミナカヌシ 〈ミ6アヤ〉

 “アウワ現るミナカヌシ” とありますから、ミナカヌシは アメミヲヤ
 直接の顕現と考えられていたようです。ミナカはマナカ(真中)の変態です。


■百ハカリ節 (もはかりよ)
「1000万の年齢・1000万歳」 を意味します。
ヨは ヨ(節・代)を表します。

 ★ハカリ (量・秤)
 “ハカリ” は 100,000 を表す数詞です。“マス” ともいいます。
 おそらくハカリは 「量り・秤」、マスは 「枡・升」 の意で、米や酒などのカウント
 しにくい量 (無数量) をハカルのに、枡(マス)を用いたことに関係すると考えます。
 “百ハカリ” は 100×100,000=10,000,000 です。


■天の周り (あめのめぐり)
“アマノメグリ” も 3つほど異なる意味があり、紛らわしい用語の一つですが、
ここでは 「宇宙の外周」 を意味します。“タカマの原まわり” とも呼ばれます。

 外は タカマの原まわり 百万トメチ 〈ミ6アヤ〉


トメチ
語義は未解明ですが、これは距離の単位で、1トメチ=38里 です。
今日の 1里=3.9273km で計算すれば、1トメチ=約150km、
百万トメチ= 約1億5000万km ということになります。

 トメチとは 女の三十六踏む 畝は十イキ 百イキは町 三十六 里
 里三十八なり (360歩=1町 36町=1里 38里=1トメチ)  〈ミ6アヤ〉


一巡り (ひとめぐり)
「ひとまわり・一回転・一周・1サイクル」 です。


■百万年の寿 (ももよろとしのことぶき)
「100万年の寿命」 の意ですが、これは 「君の寿命」 をいいます。
時代によってその長さは変りますが、君/臣/民 の身分によって、
寿命に大きな差があったと記されています。

 万の齢の 尊・彦 やや千齢保つ 民も皆 クニトコタチの 後末なり〈ホ14-2〉

 
★寿 (ことぶき・ことほぎ)
 コト(殊)+フキ(噴き)/ホギ(祝ぎ) の同義語連結で、両語とも
 「高まり・進展・栄え・優れ・至り・達成・祝い」 などを意味します。
 ここでは 「寿命」 を意味し、“永らえ”  “齢”  “鈴” と同じです。

 
■人草 (ひとくさ)
“人” は 「君と臣」 をいいます。
“草” は アオヒトクサ(青人草/青人種) の略で、「民」 の別称です。
ですから “人草” は 今風に言えば、人民(じんみん)・臣民(しんみん) です。

 君と臣は一人前の 「人」 ですが、民は アオヒトクサ(青人種) と呼び、
 「いずれ人に育つ種(たね)・半人前」 と考えられています。


■均し二万年 (ならしふよほ)
「平均2万年 (の寿命)」 という意です。
ホ(穂)は 真榊 が1年に伸ばす枝の長さ(半寸)をいい、「年」 の同義語です。

 今の代は ただ二万年 生き均るる 〈ホ1-2〉

 
ひめもす (終日)
ヒメは ヒム(▽秀む)の名詞形で、「上がり・高まり・昇り」 の意です。
モスは モス(▽没す)の名詞形で、「下がり・低まり・沈み」 の意です。
ゆえに 「日出から日没・明け暮れ・朝から晩まで・一日」 を意味します。


■百百の二切れ (もものふたきれ)
モモ(百百)は 「100×100」 の意で、「1万」 と同じと思います。
“1万が2切れ” ですから、“二万年” を言い換えているのでしょう。

 しかしそうすると、1年=365日 で、2万年=7,300,000日 ですから、
 日数的にはおかしいです。でもまあ 人の生死は日の出没と同じだという
 喩えなので、これで納得することにします。他の解釈も思いつきませんし。

 

【概意】
アメナカヌシの1000万年の齢も、天の周りの100万トメチも、
世に人が生れて罷るのも、どれもみな “一回転” に違いなし。
君の100万年の寿命も、太陽の一回転と同じぞ。
臣民の平均2万年の寿命も、明け暮れ10000回の2切れぞ。


 人の寿命は、太古には1000万年の長さがあったのが、ウビチニの頃には
 100万年に減ったといい、その後増減を繰り返しながらも、短縮の一途を
 たどったようです。

  心ゆきすく 上の代は マス万年の 寿も
  ウビチニの代は 厳かに 飾る心の 寿も 百万年ぞ     〈ホ23-1〉

 その原因は多食、また特に鳥獣の肉食にあるといいます。
 (鳥獣の肉の弊害についてはホツマ15アヤに詳しいです)

 ・経る年 古より 月三食の 人は百万に 月六食の 人は二十万 〈ホ1-3〉
 ・愚かにて 肉味嗜み 早枯れし 百や二百ぞ たまゆらに 千・万あれども
  日々の肉 シナ君 “出でて 千齢見草 尋ぬ” と嘆く     〈ホ15-7〉

 しかしアマテルは、食にもよるが、人の心のあり方が主な原因だと語ります。

 ・食にもよれども 昔あり 万鈴も減り 百年より また万に増す
  これ(=心) 鈴を 結ぶ上(=源)なり             〈ホ23-1〉
 ・人草の食 繁るゆえ 生れ賢しく 永らえも 千齢は百齢と 萎り枯れて
  我が八十万も 百年も 世の楽しみは あい同じ       〈ホ27ー7〉



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 なかみしか いわすつらつら おもみれは
 みなかぬしより ゑのみよに ましへりひたひ
 とのよにも ことふきかわり くにみこと よたひかわりて
 とこたちの みよはかわらす もはかりよ
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 長短か 言わずつらつら 思みれば
 ミナカヌシより ‘ヱ’ の代に 増し減り一度
 ‘ト’ の代にも 寿 変り 地尊 四度変わりて
 トコタチの 代は変わらず 百ハカリ節
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■つらつら (▽連々)
ツル(連る)の名詞形の “ツラ” を連ねたもので、ツレヅレ(徒然)の変態です。
「連ねて・いく度も・かさねがさね・つくづく」 などの意を表す副詞です。
辞書は “熟々・倩々” と宛字しています。

 
■思みる (おもみる)
オム(▽負む・▽思む)+ミル(見る) の連結で、両語とも 「合わす」 が原義です。
「(心に)合せてみる・考えてみる」 などの意となります。
辞書には オモイミル(思ひ見る惟みる)オモンミル(惟みる) で載っています。


■‘ヱ’ の代 (ゑのみよ) ■‘ト’ の代 (とのよ)
・ホ・カ・ミ・・ヒ・タ・メ 8尊の 「ヱの尊の時代」 と 「トの尊の時代」 をいいます。
ヱの尊とトの尊の兄弟が、ヱト(干支・▽上下・▽兄弟) の語源です。

 ★代 (みよ)
 ミユ(見ゆ)の名詞形で、「合わせ・まとまり・結い」 などを原義とし、
 ここでは 「時間のまとまり・時代」 を表します。ヨ(代・節)の同義語です。

地球に生まれた最初の人間は ミナカヌシ と呼ばれます。続いて
ミナカヌシの御子として、ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ の8神が地上に
人として生れ、その次には キ・ツ・ヲ・サ・ネア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウ
11神が地上に人として生れます。


■増し減り (ましへり)
人の 「寿命の増減」 をいいます。


■地尊 (くにみこと)
人として地上に生れた 「キツヲサネ+アミヤシナウの11尊」 の総称で、
ワノミコト(▽地の尊)とも呼ばれます。
これに対し、地上に生れた 「ミナカヌシ+トホカミヱヒタメの9尊」 は
アメミコト(天尊)、アマカミ(天尊) と総称されます。

 天尊の神霊(みたま)は 天つ事(あまつこと:魂魄や生命に係る事柄)を纏るため
 “天尊” と呼ばれ、地尊の神霊は 地つ事(くにつこと:人の生活に係る事柄)を
 纏るため “地尊” と呼ばれます。

 天つ事 纏るトホカミ ヱヒタメの 八元の神の 守らせき
 地つ纏りは キツヲサネ 室十一神の 守らせき 〈ホ22-1〉


■トコタチ (▽疾立ち)
クニトコタチ をいいますが、このアヤでは ミナカヌシ・天尊・地尊 を
別個に扱っているため、(普通は ミナカヌシ+天尊+地尊 をクニトコタチ
とする場合が多い) ここでは 「クニサツチトヨクンヌ」 を指します。

 クニトコタチは 対象となる神人の範囲が場合によって異なります。
 ミナカヌシ+8尊 を指す場合が一番多く、次に ミナカヌシ+8尊+11尊 を
 指す場合が多く、最も広義には クニサツチとトヨクンヌ までも含めます。

 

【概意】
その長短を言わず、つらつら考えてみるならば、
ミナカヌシから ‘ヱ’ の代に、寿命の増減が1度あり、
‘ト’ の代にも寿命は変っている。地尊の代には4度変って、
トコタチ(クニサツチとトヨクンヌ)の代は変化がなくて1千万年。



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 うひちによりそ いさなきに みかわり
 いまのひとくさの ひひたへますお つつしめと
 このなからえお おほすゆえ みちをしえるも
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 ウビチニよりぞ イサナキに 三変り
 「今の人草の 日々食べ増すを 謹め」 と
 子の永らえを 思すゆえ 道 教えるも
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  ここは五七調が少々いびつなため 言葉の区切りを調整しています

■謹む (つつしむ)
「合わす」 を原義とし、「心する・留意/注意する・直す・正す」
などの意を表します。

 
■子の永らえ (このながらえ)
「子の寿命」 という意味ですが、この “子” は実子をいうのではなく、
二尊が我が子のように慈しんで育てた 「臣と民」 をいいます。

 二尊受けて 親となり 民を我が子と 育つるに
 篤く教えて 人となす … …
 臣・民 子・孫 隔てなく 慈く・恵まん 思ひなり 〈ホ17-2〉


思す (おぼす)
「思ふ・覚ゆ」 の尊敬語です。

 

【概意】
ウビチニよりイサナキの時代には3度変り、
「今の人草の 日々食べ増すことを謹め」 と、
臣民の寿命を思われて、道を教えるにも〈二尊は御歌を成し〉

 

 ミナカヌシ─天尊─地尊─クニサツチ─トヨクンヌ―┐
                         │
       ┌―――――――――――――――――┘
       │
       └ウビチニ
          ├――――ツノクヰ
         スヒヂ     ├――――オモタル    イサナキ
               イククイ     ├ … (断絶) … │
                     カシコネ    イサナミ



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 あまかみの くわにめくらす はらのなの
 にかきにかたち かたくなし
 もよことふきお まもるへらなり
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 『天尊の 桑に周らす ハラの菜の
 苦きに形 堅くなし
 百万寿を 守るべらなり』
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■天尊 (あまかみ/あめみこと)
「ミナカヌシ+トホカミヱヒタメ8尊」 の総称ですが、この場合は
ハラミ山麓のトシタ国を治める 「トの尊」 を指すのでしょう。

 
■桑に周らす (くわにめぐらす)
「ハラミ山の桑の木の周りに植える」 という意と思います。

 
■ハラの菜 (はらのな)
「ハラミ山に生える草」 の意で、チヨミグサ(千代見草・千齢見草) の別名です。
寿命を延ばす薬草で、ホ菜・ハ菜・草 の3種があります。
中でもハホ菜は並外れて苦かったといいます。

 ★ハラミ山/ハラ山 (はらみやま/はらやま)
 「二尊が日月の神霊を孕む山」 という意ですが、もう一つ
 「オ菜・ハ菜・草 が生える山」 という意があります。

 百草あれど ハ・ラ・ミの三 こと優るゆえ 三草褒め “ハラミ山” なり
                             〈ホ24-7〉

“ハラミ” は 略して “ハラ” ともいいますが、
“ハラ” は後の世に 蓬莱(ほうらい) と呼ばれるものと同一のようです。

 【蓬莱】ほうらい  (D-大辞泉)
  ・中国の神仙思想に説かれる三神山の一。山東半島の東方海上にあり、
   不老不死の薬を持つ仙人が住む山と考えられていた。
   蓬莱山。蓬莱島。よもぎがしま。
  ・富士・熊野・熱田など霊山・仙境の称。

辞書の説明に言う “蓬莱山” は 「ハラ山・ハラミ山」 で、
“不老不死の薬” とは 「千代見草」 をいうのだろうと思います。

 ハラが ホウライに訛ったのなら、ホウレンもそうかもしれません。
 ポパイをパワーアップするホウレン草。その正体は千代見草だった!?
 なるほどナットク笑タイム! でした。^^;


■形 (かたち)
カタチ(形)は カタツ(▽固つ)という動詞の名詞形で、
「物質的な現れ・目に見えるさま」 を意味します。
ここでは 心に対しての 「からだ(体)・身体・肉体」 をいいます。


■べらなり
ベシ(可し)と同じと考えてOKです。ベラは ヘル(綜る)の名詞形で、
「(〜するのが状況に) 合うさま・そぐうさま」を表します。

 

【概意】
 『天尊の 桑にめぐらす ハラの菜の
 苦きに体 堅くして 百万寿を 守るべきなり』

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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