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徹底解説みかさふみ講座 第14回 [2022.5.19]

みかさふみ 酒法の文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 さかのりのあや (その3)
 酒法の文 https://gejirin.com/mikasa02.html
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 まさかきの うゑつきゐもに みつるころ
 よつきのをかみ うひちにの すひちおいるる
 さいあひの そのもとおりは
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真榊の 植え継ぎ五百に 満つる頃
 代嗣の男尊 ウビチニの スヒヂを入るる
 最愛の そのもとおりは
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■真榊 (まさかき)
真榊は1年に1穂(半寸)枝が伸び、60年で3尺に伸びて極まり、同時に新たな
枝が生えます。6万年かけて3尺の枝が1000本になると、寿命が尽きて枯れる
という木です。ですから真榊の枝の数と長さを見れば時間の経過がわかります。
このため国家の公式の暦として利用されました。別名が鈴木(すずき)です。

マサカは 「回転・巡回・繰り返し」 が原義で、これはコヨミ(暦)の原義と同じです。
よってマサカキは 「暦の木」 という語義ですが、辞書に “真榊・真賢木” とあるため、
本講座でもそれをそのまま使ってます。

 
■植え継ぎ五百に満つる (うゑつぎゐもにみつる)
真榊は999枝60穂の年に種を植えて植え継ぎを行いますが、その植え継ぎも
500回が限度で、その後は稀に自生する別の苗木を探さねばならないようです。
また真榊の植継ぎは国君の専業とされました。そのため “五百継ぎ天の真榊” とも
呼びます。真榊を500回植え継ぐことは、6万年×500=3000万年 に相当します。
いつからの3000万年かといえば、トホカミヱヒタメ8尊の ヱの尊とトの尊の
二兄弟が協力して日本を治めていた時から数えた年数のようです。

 この鈴は 天地開く トコタチの 宮の真榊 “熟枝” 千枝に “幸鈴” となる
 植え継ぎの 五百に至れば 三百ハカリ 万歳満ちて “五百継ぎの 天の真榊”
 年の穂の 十年には五寸 六十年に 三尺伸ぶ ヱトの 一巡り 明くる年成る
 三尺の熟枝 なれば二兄弟(ゑと) キアヱより 枝と穂と数え   〈ホ28-1〉


■ウビチニ
トヨクンヌの後を継いで日本の国君となった尊です。
ここでは明記されていませんが、ホツマの18アヤには、
トヨクンヌの皇子(みこ)と記されています。

 トヨクンヌ 百余る子も 天に逝き 天並の八神 三十二神
 皇子ウビチニは モモヒナに 最愛なして   〈ホ18-2〉

トヨクンヌの時代まで男女の別は存在しなかったわけですから、
人類初の男性ということになります。
記紀には 泥土煮尊・宇比地邇神 と記されます。


■スヒヂ
ウビチニが妻とした女の名です。
トヨクンヌの時代まで男女の別は存在しなかったわけですから、
人類初の女性ということになります。
記紀には 沙土煮尊・須比智邇神 と記されます。
記紀では “スヒヂニ” ですが、ホツマ・ミカサでは “スヒヂ“ であることに
留意する必要があります。

 
■最愛 (さいあひ)
サイアヒは サヒアフ(▽触ひ合ふ・▽侍ひ合ふ)の名詞形で、
サヒアフは ソヒアフ(添ひ合ふ)の変態です。
ですからサイアヒは 「添い合い・結び付き・結合」 などの意です。

 ウビチニとスヒヂは人類初の夫婦となります。アダムとイヴの日本版
 と考えていいでしょう。この夫婦以降、国君は男女一対となります。

 
■もとおり (回り・廻り・▽基)
モトオル(回る・廻る)という動詞の名詞形です。これは 「めぐる・回る」
という意味ですが、なぜその名詞形が 「基」 の意になるのかといいますと、
「一回りして元へ戻る・回帰する」 という意味なのです。
そのためモトオリは 「戻る所・回帰する所・ホーム・源・根」 などの意を
表します。モト(基)・モトヰ(基)も同じです。

【概意】
真榊の植え継ぎが500回に満ちる頃、
代嗣の男尊ウビチニの、スヒヂを妻に入れる結び付きの根源は、

 

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 こしくにの ひなるのたけの かんみやに
 きのみおもちて あれませは にわにうゑおく
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 越国の ヒナルの岳の 尊宮に
 木の実を以て 生れませば 庭に植えおく
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■越国 (こしくに)
“越根(こしね)の国” の略で、今の北陸地方をいいます。
現在の福井県・石川県・富山県・新潟県、少し古い言い方だと、
若狭・越前・加賀・能登・越中・越後です。

 ★越根の国 (こしねのくに・こゑねのくに)
 コシ/コヱ(越し/越ゑ)は 「巡り・回転」 が原義で、この場合は
 「太陽の巡回」 を意味します。ネ(根)は 「根源・原点・始点」 を表します。
 よって "越根の国" とは 「日の巡りの始点の国」 という意です。
 太陽は東から上って西に沈みますが、その始点は北です。
 ですから “越根の国” は 「北の国」、つまり 「北陸地方」 を指します。
 根の国(ねのくに)、根(ね)、還(こゑ)、越(こし) などと簡略されます。

 オオクニ宮を 造り替え 越根の国も サホコみな 民を治めて 静かなり〈ホ30-1〉

 
■ヒナルの岳の尊宮 (ひなるのたけのかんみや)
ヒナルは ヘナル(隔る)ヒナブ(鄙ぶ) の変態で、「離れる・外れる・端にある」
などが原義です。ですから “ヒナルの岳” は 「国外れにある山」 という意味です。
カンミヤ(上宮・官宮・▽尊宮) は 「御上の宮」 をいい、「皇宮」 と同じです。
“ヒナルの岳” は 福井県越前市の 日野山(795m) を指します。
越前富士とも呼ばれ、麓には4社の日野神社が存在します。

 日野神社 (ひのじんじゃ)
 福井県越前市荒谷町22-1。 
 現在の祭神:百日諾(ももひなぎ)命、百日册(ももひなみ)命、他

 
■木の実を以て生れます (きのみおもちてあれます)
「木の実の形を以て(=用いて)お生まれになる・木の実の姿で顕現なさる」
という意に解釈しています。

 重要:ホツマツタエ講座の2アヤの解説では、“木の実を持って(携えて)生れる”
 という意味に解していましたが、再考を重ねた末、解釈を変更しています。

 

【概意】
越国の外れにある山の尊宮に、
木の実の姿でご誕生になったため、
庭に植えおく。

 

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 みとせのち やよいのみかに
 はなもみも ももなるゆえに もものはな
 ふたかみのなも ももひなき ももひなみなり
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 三年後 三月の三日に
 花も実も 百成る故に 百の木
 二尊の名も 百雛木 百雛実なり
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■百成る (ももなる)
百(もも)は「繁栄・繁茂・たくさん・多数」の意。
ですから “百成る”は、「たくさん実る」 という意です。


■百の木・桃の木 (もものはな)
よって “百の木” は 「繁栄の木」 という意になります。
‘木’ は 「大地から放つ(はなつ)もの」 という意から “はな” とも呼びます。

 
■百雛木 (ももひなき) ■百雛実 (ももひなみ)
ウビチニとスヒヂの幼名です。モモ(百)は 「たくさん・繁栄」 の意。
ヒナ(雛・鄙)は 「下・末・隅にあるさま」 が原義で、ここでは 「幼いさま」 を
表します。名前の最後の キ(木)とミ(実) は、「男尊」 と 「女尊」 を表します。

 

【概意】
三年後の三月の三日に、花も実もたくさんなるゆえに、“モモ(百)の木”
と名付け、二尊の名も モモヒナギ(百雛木)とモモヒナミ(百雛実) である。

 尊宮に出現した木の実を庭に植えたら、育った木が男君となり、
 その果実が女君となったという、衝撃的な男女の誕生説話ですが、
 旧約聖書のアダム&イヴの誕生説話に非常に近いものがありますね。
 そこでは アダムは土のちりで創られ、イヴはアダムのあばら骨から
 創られたと語られています。

 

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 ひなはまた ひとなるまえよ
 きみはその きのみによりて
 をかみはき めかみはみとそ なつきます
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 雛はまだ 人成る前よ
 君はその 木の実によりて
 男尊は ‘キ’ 女尊は ‘ミ’ とぞ 名付きます
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■雛 (ひな) ■人 (ひと)
ヒナ(雛・鄙)は 「下・末・隅にあるさま」 が原義で、ここでは 「幼いさま」 を
表します。ヒト(人)は ヒツ(秀づ・▽至つ)の名詞形で、「至るさま」 を表すと
考えていますが、ホツマの4アヤには次のような説話もあります。

 和つ君 一(ひ)より十(と)までを 尽すゆえ “ヒト” にのります 〈ホ4-6〉

この論に沿えば、ヒナは “一七” で、「一から七までの者・七分目の者」
ということになるのでしょう。

 
■人成る (ひとなる)
少年少女が 「成人する・一人前になる」 の意に使う場合が多いのですが、
この場合は 「モモの木と実が人間になる」 という意味であるように思います。
むしろ元来はこちらの意だったのかもしれません。
これは “イモ虫 (幼虫) が、似ても似つかぬ 蝶 (成虫) に昇華する” 感じに
近いのではないかと思います。

 

【概意】
雛はまだ人となる前よ。
君(キミ)は その “木の実” によって
男尊は ‘キ’、女尊は ‘ミ’ と名付きます。

 モモヒナ/モモヒナ の他にも
 イザナ/イザナの例があります。

 

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 ひとなるのちに やよいみか みきつくりそめ たてまつる
 ももとにくめる みきにつき うつりすすむる
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 人成る後に 三月三日 酒 造り初め 奉る
 桃下に酌める 酒に月 映り進むる
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■人成る後 (ひとなるのち)
これも 「モモの木と実が人間になった後」 の意に解しています。


■酒 (みき)
サケ(酒)の別名です。“ササケ” “ササ” とも呼びます。
本来は尊敬を表す語ではありませんが、君や神から下される酒は、
通例 ミキ(御酒・神酒) と呼ばれます。

 ミ(▽上)+キ(生) で、ミは カミ(上)の略形、
 キ(生)は 「純粋・上澄み・透明」 を意味し、「水」 の別称です。
 よってミキは 「高めた水・熟成した水」 が原義と考えます。

 
■酌める (くめる)
クム(酌む・汲む)の連体形で、クムはクフ(食ふ)の変態です。
「取る・入れる・注ぐ・取り込む」 などが原義です。

 
■酒に月 (みきにつき)
器に注いだ酒に逆さの月が映ります。
“酒注ぎ” と “逆月”。これが サカヅキ(杯・盃) の語源のようです。

 
■進むる (すすむる)
ススム(進む)の連体形が他動詞として独立したもので、
後世は ススメル(進める) になります。
ここでは 「気分を進める・気分を高める」 の意に解しています。

 

【概意】
人となった後の三月三日、造り初めの酒が献上され、
モモの木の下、酌む酒に月が映り、気分を進める。

 

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 めかみまつ のみてすすむる
 のちをかみ のみてましわる とこのみき
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 女尊まず 飲みて進むる
 後 男尊 飲みて交わる “融の酒”
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■融の酒 (とこのみき)
トコはトク(溶く・融く)の名詞形で、「(女男を)融和する酒」という意です。
トコミキ(床酒) や トコサカヅキ(床盃) も 奥にある意味はこれです。

 
■交わる (まじわる)
ここでは 「性交する」 の意です。

 

【概意】
まず女尊が飲んで気分を高揚させ、
その後に男尊が飲んで交わる “融の酒”。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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