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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第139回 [2024.3.28]

第二六巻 産が屋 葵桂の文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 うがやあおいかつらのあや (その1)
 産が屋 葵桂の文 https://gejirin.com/hotuma26.html
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 みそむすす みそよゑみそや やよいもち
 わけいかつちの あまきみは もろとみめして みことのり
 むかしにはりの みやたてて たみつのために はらみやま
 なりてみそよろ たみおたす ついにしはかみ ほつまなる

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 三十六鈴 三十四枝三十八 三月十五日
 ワケイカツチの 天君は 諸臣召して 御言宣
 「昔 ニハリの 宮 建てて 田水のために ハラミ山
 成りて三十万 民を治す ついに地上 ホツマ生る」

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■産が屋 (うがや) ■葵桂 (あおいかつら)
本文中で説明します。


■三十六鈴三十四枝三十八 (みそむすすみそよゑみそや)  ▶数詞
真榊(=鈴木)による暦法で、1鈴=6万年、1枝=60年、1穂=1年 です。
ウビチニ&スヒヂの時代に植え継ぎが500回の限界に達し、累計年数が
一旦リセットされていますので、この暦の起点はその頃と考えられます。
ホツマに暦年の記載されている比較的最近の出来事を振り返ると、次の通りです。

・26鈴16枝41穂 テルヒコ大和国へ。 ・26鈴17枝23穂 ニニキネがニハリ宮を建てる。
・29鈴501枝38穂 ニニキネ三種を受け八州巡幸に出発。 ・ちょうど30鈴頃 地上ほつま出現。
・31鈴333枝頃 オシホミミ帰天 ・32鈴900枝23穂 ミヅホ宮に遷都


ワケイカツチの天君 (わけいかつちのあまきみ)

ニハリの宮 (にはりのみや)

■ハラミ山成る (はらみやまなる)
ハラミ山の裾野を田にするため、8湖を掘り、その土をハラミ山頂に積み上げ、
居雪の積もる8峰を造る事業の完成をいいます。 ▶ハラミの8湖 ▶ハラミ山頂の8峰

 ハラミ山から 四方を見て 「裾野は広し 水を埋み 裾野 田にせん」
 タチカラヲ 八方に掘らしむ 湖の名も 東はヤマナカと 東北はアス 北はカハクチと
 北西モトス 西はニシノウミ 西南キヨミ 南はシヒレウミ 東南はスト
 ニハリの民が 群れ来たり 湖掘り土を 峰に上げ “八房計り” と 天に応え 〈ホ24-4〉


地上ホツマ (しはかみほつま・しわかみほつま)

 

【概意】
産が屋 葵桂の文
36鈴34枝38穂の3月15日。
ワケイカツチの天君は諸臣を召して御言宣。
「むかしニハリの宮を建て、田水のためのハラミ山の事業も成りて、
30万年民を治せば、ついに “地上ホツマ” 生る。]



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 あまつひつきお うけつきて わけいかつちの かみとなる
 みそひよろとし をさむれは よはひもをいて
 わのひつき いまうつきねに ゆつらんと

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 「和つ日月を 受け継ぎて ワケイカツチの 尊となる
 三十一万年 治むれば 齢も老いて
 地の日月 今 ウツキネに 譲らん」 と

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和つ日月 (あまつひつき)

■ワケイカツチの尊 (わけいかつちのかみ)
ワケイカツチの天君 の換言です。
カミ(尊)
は カミ(上)が原義で 「上位/上流にある者」 を意味します。


■地の日月 (わのひつき)
原文テキストは ノヒツキ(天の日月) と記していますが、
ホツマの思想に鑑みて誤写と判断し、ノヒツキ(地の日月)に変更しています。
和つ日月世の日月 の換言です。

我が子つらつら 道行かば 日月の栄え 天・地と まさに際無し 〈ホ11-3〉
春の初日に 
世の日月 御子オシヒトに 譲りまし 天よりイセに 下り居ます 〈ホ19b-1〉


ウツキネ・ヒコホオデミ
ニニキネとアシツ姫の三つ子の3男 ヒコホオデミの斎名です。
“シノ宮”  “山サチ彦” とも呼ばれます。 ▶シノ宮 ▶山サチ彦

 アマテル─┐
      ├オシホミミ┐
 セオリツ姫┘     ├┬クシタマホノアカリ
            ││
 タカキネ──チチ姫──┘└ニニキネ  ┌ホノアカリ(斎名ムメヒト)
                ├───┼ホノススミ(斎名サクラギ)
 カグツミ───マウラ──┬アシツ姫  └ヒコホオデミ(斎名ウツキネ)
             │
             └イワナガ

 兄スセリとのサチ替え事件により、シホツツに導かれて九州に行きます。
 そこで兄の鉤を取り返して事件を解決した後、曽於国の領主ハテツミの
 トヨタマ姫を娶ってそのまま九州に居付き、父ニニキネの九州開発事業を
 引き継いで行います。よってこの時点ではウツキネは九州に居ます。

 

【概意】
「和つ日月を受け継いで、ワケイカツチの尊となる後、
また31万年を治むれば、齢も老いて、地の日月(=皇位)を今ウツキネに譲らん」 と。



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 をしかいたれは みそふかみ したひおしめと
 みことのり さたまるうえは
 よろとしお いはひてのちの みゆきこふ

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 御使到れば 三十二守 慕ひ惜しめど
 「御言宣 定まる上は
 万歳を 祝ひて後の 御幸乞ふ」

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御使 (をしか)
この場合は 「ウツキネに皇位を譲る旨を伝える天君の勅使」 です。


■三十二守 (みそふかみ)
三十二県の守」 の換言です。


万歳 (よろとし)

 

【概意】
天君の御使が到着すると、九州の地守らはウツキネを慕って別れを惜しめど、
「御言宣の定まった上は、その栄達を祝いて、後の御幸を乞う。」



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 しかふねとえは わにかいふ おおかめならは つきこえん
 かもはひとつき おおわには ささともふせは
 のたまはく ちちめすときは さはかなり
 われはおおわに ひめはかも あとにおくれと

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 シガ 船問えば ワニが言ふ 「オオカメならば 月越えん
 カモは一月 オオワニは 些々」 と申せば
 宣給わく 「父召す時は さはかなり
 我はオオワニ 姫はカモ 後に送れ」 と

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シガ

■ワニ (鰐)
これは船の名ではなく人です。おそらくは シガ、ホタカミ、ハテツミらの枝姓でしょう。
シガに船を問われてることと、“ワニ” という名から、海運を業とする氏族の長と思われます。

   
■オオカメ・オカメ ■カモ ■オオワニ
それぞれ カメ(亀船)カモ(鴨船)ワニ(鰐船) の別称です。

 オオ/オは オフ(覆ふ) の名詞形で 「覆い・包み」 を意味します。
 これは カメ(瓶・亀) と同義であり、また ホ(帆)とも同義です。


些些細・小 (ささ)
「わずか・ちょっと・すこし・少々」 などの意です。


■さはか (▽騒か)
サハ(▽騒)+カ(▽如・▽然) で、「騒立つさま・慌しいさま・忙しいさま」 を意味します。
サハ/サワは “さわさわ” “そわそわ” などの変態です。

 

【概意】
シガの守が船を問えば、ワニが言う。
「オオカメなら一月を越えよう。カモは一月。オオワニは少々」 と申せば、
「父が召す時は急用なり。我はオオワニで、姫はカモにて後に送れ」 と。



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 おおわにお しかのうらより つなときて
 はやちにきたの つにつきて いささわけより みつほまて
 みかえりあれは あまきみも とみもよろこふ

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 オオワニを シガの浦より 綱 解きて
 早ちに北の 都に着きて イササワケより ミヅホまで
 御帰りあれば 天君も 臣も喜ぶ

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■シガの浦 (しがのうら)
「シガ海の浦」 という意です。 ▶シガ海

 ★浦・末 (うら)
 ウル(▽棄る)の名詞形で、ウルは アル(離る・散る)の変態です。
 「離れ・別れ」 などが原義で、「分れ目・際・果て・境界」 を意味します。
 ですから、“浜”  “ウト” などの換言です。 ▶浜 ▶ウト


■綱解く (つなとく)
“艫綱” を解いて、「船を出航させる」 ことをいいます。 ▶艫綱


早ちに (はやちに)

北の都・北都 (きたのつ・きたつ)

イササワケ
この場合は イササワケ宮(伊奢沙別宮) をいい、これは 北の都(きたのつ:現在の敦賀) の別名です。
この宮の跡が気比神宮です。

 気比神宮 (けひじんぐう)
 福井県敦賀市曙町11-68。
 現在の祭神:伊奢沙別命 (別名:気比大神)


■ミヅホ (瑞穂/水圃/水辺)
時の国家首都である 「ミヅホの宮」 をいいます。


■天君 (あまきみ)
ワケイカツチの天君」 です。

 

【概意】
オオワニをシガの浦から出航させ、早々に北の都に着いて、
イササワケ宮よりミヅホ宮まで御帰りあれば、天君も臣も喜ぶ。



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 これのさき きさきはらみて つきのそむ
 かれにあとより かもおして きたつにゆかん
 わかために うふやおなして まちたまえ

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 これの先 后 孕みて 月臨む
 「故に後より カモをして 北都に行かん
 我がために 産屋を成して 待ち給え」

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これの先 (これのさき)

■月臨む (つきのぞむ)
産み月に当たる」 という意です。 産み月 ▶臨む


故に (かれに)

産屋 (うぶや)

 

【概意】
これに先立ち、
后のトヨタマ姫は懐妊して臨月に当たっていた。
「しかれば後からカモ船をして北都に行かん。
我がために産屋を成して待ち給え。」



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 かれまつはらに うふやふく
 むねあわぬまに かもつきて はやいりまして みこおうむ
 かつてはいすも みゆもあく うかやのゆとは このはなの
 しろきかにさく こはうのめ またあまかつら

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 故 松原に 産屋葺く
 棟合わぬ間に カモ着きて 早や入りまして 御子を生む
 カツテは椅子も み湯も上ぐ 産が屋の湯とは 木の花の
 白きカニ咲く 凝ウノメ またアマガツら

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故 (かれ)

■松原 (まつばら)
福井県敦賀市松島町の 「気比の松原」 をいうのでしょう。
かつては気比神宮の神苑でした。


■葺く・▽覆く (ふく)
ハク(佩く・接ぐ・矧ぐ)などの変態で、フク(服)の母動詞です。
「合わす・負わす・帯びさせる」 などが原義で、この場合は 「造る」 と同義です。


■棟合わぬ間に (むねあわぬまに)
「屋根が覆われぬうちに」 ということです。 ▶棟


カツテ・カツテ尊 (かつてかみ)

■椅子・倚子 (いす・いし)
イス(▽結す・▽居す) の名詞形で、「何かを置き据える土台」 をいいます。 ▶画像
この場合の用途は、妊婦の身体を安楽に支えるためだと考えられます。


み湯 (みゆ)
ミユの名詞形で、ミユは モユ(燃ゆ)の変態です。
「上げ・高め・揚げ」 が原義で、この場合は 「熱せられた水」 をいいます。
ミユ(み湯)・オユ(お湯) の略形が ユ(湯・油)です。
この場合は 「入浴用の湯」 をいいます。


■産が屋・穿屋 (うがや)
産屋(うぶや)の換言です。記紀は 鵜葺草/鸕鶿草 と当て字しています。

 ウガ(▽穿)+ヤ(屋) で、ウガは ウグ(穿ぐ)の名詞形です。
 「分け・欠け・空け」 などが原義で、この場合は 「分娩」 を意味します。
 “穿屋” では産屋のイメージから遠いので、筆者が “産が屋” と当てました。


■産が屋の湯 (うがやのゆ)・産が屋の産湯 (うがやのうぶゆ)
「産屋の湯・分娩室の湯」 という意で、「出産後の母子を癒すための湯」 をいいます。 ▶産湯

 平家物語長門本(国書刊行会蔵本)に、ウガヤの湯についての言及があります。
 天智 天武 持統 三代の帝の 御鵜葺湯 の水を汲たりける故に 御井寺と名付たり❞


木の花 (このはな)
「桜の花 または 梅の花」 をいうようです。


カニ
カヌ(▽交ぬ・兼ぬ)の名詞形で、「合わせ・まじり・濁り・不純」 などが原義です。
白きカニ咲く” は 「白い濁りが広がる」 という意です。

〈余談〉カニ(蟹) もおそらく同源で、カニ(蟹)=ハサミ(挟み・鋏) です。
    ハサミ(挟み・鋏)の原義は やはり 「合わせ・交え」 です。


■凝ウノメ・強ウノメ (こはうのめ)
「固体化した硫黄」、つまり 「湯の花」 のことです。

コハ(強)は コフの名詞形で、コフは コル(凝る)の変態。
「凝った・かたい・固形の」 という意味です。
ウノメは ユ(湯)+の+メ(▽穢) の転で、「湯の垢・湯の滓」 を意味し、
湯の花湯の泡」 などとも呼ばれます。

 したがって 産が屋の湯 とは 「硫黄を湯に溶かした人工温泉」 です。
 硫黄は 湯泡(ゆあわ)の転で、古くはユノアワ・ユワともいいました。 ▶硫黄
 殺菌力が強く皮膚病に卓効があります。


アマガツ (天児・天倪・▽天形)

 

【概意】
それゆえ松原に産屋を造る。
屋根も覆われぬ間にカモ船が着き、早速お入りになって御子を生む。
カツテは椅子も み湯も捧ぐ。
産が屋の湯とは、木の花のように白い濁りの広がる 凝ウノメ(=硫黄)の湯。
またアマガツ類も。



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 いまみこの かにつははけは ここもあり
 すせりみやより みゆすすめ まくりとともに かにおたす
 かれなからえて そよすすの よわひうかわの みやほめて
 しらひけかみと なおたまふ

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 今御子の カニ唾 吐けば ココモあり
 スセリ宮より み湯すすめ 海人草と共に カニを治す
 故 永らえて 十四鈴の 齢 ウカワの 宮 褒めて
 “白髭神” と 名を賜ふ

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■今御子 (いまみこ)
イマ(今) は 「改まるさま・新たなさま」 が原義です。 ▶今
ですから 「新生の御子」 という意です。 ▶御子


■カニ唾 (かにつば)
「不純な排泄物・寄生虫がまじる便」 という意です。 ▶カニ
 
 ★ツバ・ツハ・ツワ (唾・鍔)
 ツフ の 名詞形で、ツフ は トフ(▽外ふ・▽遠ふ・飛ぶ) の変態。
 「放つもの・出るもの・飛び出るもの・放出・排出・突出」 などを意味します。


■ココモ
コゴム(屈む) の名詞形で、「曲って屈まるさま/もの」 が原義です。
これは 「回虫」 をいいます。 ▶画像
クサソテツの別称 コゴミ は これの変態です。 ▶画像


スセリ宮 (すせりみや)

■み湯 (みゆ)
この ”み湯” は 「スセリ草を煎じた薬湯」 をいいます。 ▶スセリ草
スセリ宮自身がスセリ草によって寄生虫症を癒して健康を保った経験から、
この薬湯をすすめたのでしょう。


■海人草 (まくり)
メクリ(捲り) や メグリ(回り・巡り) の変態で、「回転・改め・返し」 などを原義とし、
「改め・渫い・回復・改善」 などが本来の意です。
ここでは 「回虫駆除薬」 のマクリ をいい、辞書は “海人草・海仁草” と当て字します。

 “海人草・海仁草” は “カニクサ” に漢字を当てたものと考えられます。


■ウカワの宮 (うかわのみや)
スセリ宮 の別称です。ウカワ宮 の主である ホノススミ(斎名サクラギ) を指します。


■白髭神 (しらひげかみ)
ウカワの宮 (=スセリ宮・ホノススミ・海サチ彦・斎名サクラギ) の贈り名です。 ▶贈り名
白ひげのスセリ によって寄生虫症を癒し、14鈴(=84万年)もの長寿を得たことを称える名です。

 白髭神社 (しらひげじんじゃ)
 滋賀県高島市鵜川215。
 現在の祭神:猿田彦命、白鬚明神

 

【概意】
新生の御子は 不純な便を出し 回虫が見つかる。
スセリ宮よりスセリ草の薬湯をすすめ、海人草と共に不純を治す。
されば永らえて14鈴(84万年)の齢にまで達したウカワの宮を褒め、
後に “白髭神” と名を賜ふ。

 

本日は以上です。それではまた!

 

 

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