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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第140回 [2024.3.30]
第二六巻 産が屋 葵桂の文 (2)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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うがやあおいかつらのあや (その2)
産が屋 葵桂の文 https://gejirin.com/hotuma26.html
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かねてかつてか もうさくは
きはうふみやお なのそきそ うつきもちより なそゐかは
ひことうかやの うふゆあく のこるのりなり
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かねてカツテが 申さくは
「キは産宮を な覗きそ 四月十五日より 七十五日は
日ごと産が屋の 産湯上ぐ 遺る宣なり」
―――――――――――――――――――――――――――――
■キ (木)
これは キミ(木実)の キ(木)で、夫婦の
「夫」 を意味します。
■産宮 (うぶみや)
ウブヤ(産屋)、ウガヤ(穿屋)
の換言です。
■覗く・臨く (のぞく)
ノス(▽和す・乗す・載す)+ソク の短縮で、ソクは ソグフの母動詞。
両語とも 「合う/合わす」 が原義で、この場合は
「見る・目にする・目に入れる」 などの意です。
■四月十五日 (うつきのもち)
この日が 「新生の御子の誕生日」
ということだと思います。 ▶ウツキ ▶モチ
【概意】
かねがねカツテが申すのは、
「夫は産宮を覗くなよ。4月15日(御誕生の日)より75日は
毎日 “産が屋の産湯”
を捧げるからで、昔からの言い習わしなり。」
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ほたかみは ほそのをきるも はらののり
ものぬしならす くわのゆみ ははやひきめそ
こやねかみ いみなかかえて かもひとと
ははよりなきさ たけうかや ふきあわせすの なおたまふ
―――――――――――――――――――――――――――――
ホタカミは 臍の緒 切るも ハラの法
モノヌシ鳴らす 桑の弓 ハハ矢 退き穢ぞ
コヤネ尊 斎名考えて “カモヒト” と
母より “ナギサ タケ ウガヤ フキアワセズ”
の 名を賜ふ
―――――――――――――――――――――――――――――
■ホタカミ
ホタカミとタケツミヒコは
トヨタマ姫の供として、九州より随行しています。
“ホタカミ” の名は、この人が
「新生御子の臍の緒を切ったこと」 に由来します。
ホタ(絆)+カミ(▽離み) で、ホタ/ホダ(絆)は
ヘタ(蔕)・ヘソ(臍)・ホゾ(蔕・臍)の変態です。
カミは カリ(刈り)の変態で、「切ること・切る者」
を意味します。
■ハラの法 (はらののり)
ニニキネが 「ホツマ国にいた時代に発祥したならわし」
をいい、 ▶ホツマ国
ハラミの例(ためし)、ニハリの例、陽陰の御孫の例、陽陰の法、…
… などとも呼びます。
この場合は 「斑竹を使って臍の緒を切る作法」
をいいます。
★斑竹 (まだらだけ)
アシツ姫が身の潔白を示そうと火をつけた、埋室(うつむろ)の焼け跡に
生えてきたという 「まだら模様の竹」 をいいます。
昔この 埋室囲む 竹焦げて 棄つれば生える 斑竹 〈ホ27〉
■モノヌシ
■桑の弓 (くわのゆみ)
オオモノヌシが 征夷大将軍 (汚穢を祓う総大将)
の証として、
ハハ矢と共に皇君より預る 「陽陰のかご弓」
を指します。 ▶汚穢
イフキヌシとソサノヲが、六ハタレ蜂起の元凶であるサホコチタル国の
マスヒトやオロチらを根絶した際、タカマでは弓弦を打ち鳴らします。
このことが元になっているのか、悪霊退散のまじないとして桑の弓を
打ち鳴らして(「打ち平らす」のモノザネ)、ハハ矢を射る風習がありました。
弦打・弓弦打・鳴弦
などと呼ばれ、また 桑弧蓬矢
の風習もありました。
■退き穢・蟇目 (ひきめ)
ヒキ(引き・退き)+メ(▽穢) で、「汚穢の退散」
を意味します。
後世には 音が鳴る 鏑矢(かぶらや)を、蟇目(ひきめ)
と呼ぶようになります。 ▶画像
■コヤネ尊 (こやねかみ)
■カモヒト (鴨人・鴨仁)
新生御子の斎名です。 ▶斎名
■ナギサ (渚・波限・波瀲) ■タケ (猛・健・武)
この意味については次節で説明されます。
■ウガヤフキアワセズ (産が屋葺き合せず:斎名カモヒト)
「産屋の屋根を葺き合せずに (生まれた御子)」
という意で、トヨタマ姫がカモヒトに付けた名です。
記紀には 鵜葺草葺不合命/鸕鶿草葺不合尊
と記されます。 ▶ウガヤ
故 松原に 産屋葺く 棟合わぬ間に カモ着きて 早や入りまして 御子を生む 〈ホ26-1〉
アマテル─オシホミミ─ニニキネ┐ ├ヒコホオデミ カグツミ─マウラ─アシツ姫┘ ├──ウガヤフキアワセズ │ (斎名カモヒト) カナサキ───??───ハテツミ─トヨタマ姫
【概意】
ホタカミはハラの法に則り 斑竹で臍の緒を切る。
モノヌシは桑弓の弦を打ち鳴らし、ハハ矢を射て穢の退散ぞ。
コヤネ尊は斎名を考えて “カモヒト” と。
母よりは “ナギサ・タケ・ウガヤフキアワセズ”
の名を賜う。
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ゆえはちくらに かもわれて ひめもたけすみ ほたかみも
なきさにおちて おほるるお たけきこころに およかせは
たつやみつちの ちからえて つつかもなみの いそにつく
―――――――――――――――――――――――――――――
故はチクラに カモ破れて 姫もタケスミ ホタカミも
渚に落ちて 溺るるを 猛き心に 泳がせば
竜や蛟の 力得て 恙も和の 磯に着く
―――――――――――――――――――――――――――――
■チクラ
チク(▽契く)+クル(▽交る・▽括る) の同義語短縮 “チクル”
の名詞形です。
「合わせ・交わり・結び・互い違い」
などが原義で、チギリ(契り)の変態です。
この場合は 「海流の交わる所・潮目・潮境」
を意味します。
■カモ破る (かもわる)
「カモ船が難破する」 という意です。
これが御子の斎名 カモヒト の “カモ”
の由来です。
「九州からやって来て難破したカモ船に乗る御子」
を意味するのでしょう。
“ヒト” は皇位継承予定者に付される 斎名のノリ(▽和り)です。
■姫 (ひめ)
ヒコホオデミの内宮の
「トヨタマ姫」 を指します。 ▶内宮
カナサキ─??─ハテツミ┬トヨツミヒコ ├トヨタマ姫 ├タケツミヒコ └オトタマ姫
■タケスミ・タケツミ・タケツミヒコ
トヨタマ姫の弟のタケツミヒコの略称です。
ホタカミとタケスミは
トヨタマ姫の供として、九州より随行しています。
■渚 (なぎさ)
「往き来するさま・干満するさま・波打つさま」
などが原義で、
「波打つ水面・波打つ海」 を表します。ですから現在の意味とは異なります。
母トヨタマ姫が御子に名づけた ナギサ・タケ・ウガヤフキアワセズ
の
“ナギサ” はこれに由来し、「母が海に落ちたこと」
を意味します。
■猛き心に泳がす (たけきこころにおよがす)
「勇猛な心を奮い起こしてお泳ぎになる」 という意です。
オヨガスの “ス”
は 「尊敬」 を表します。
ナギサ・タケ・ウガヤフキアワセズ
の “タケ” は 「母が猛き心に泳いだこと」
に由来します。
★泳ぐ・游ぐ (およぐ)
オユ+ヨク の短縮で、オユは オル(折る)の変態、ヨクは
ユク(往く) の変態です。
両語とも 「行き来させる・折り返す・回す」
などが原義で、
「(手足や鰭を) バタバタ揺り動かす」
という意です。オヨギ(泳ぎ)の転が “お遊戯” です。
竜も出世する生き物で、はじめ 蛟(みづち)
と呼ばれる竜の子が 竜 となり、
その後 海に千年、山に千年、里に千年住むと、“三生き”
を悟って 竜の君 となるといい、
これを “コノシロの竜” “タッタの尊” “竜君”
“三揃の竜” などと呼びます。〈ホ26〉
またシナ国の伝説『述異記』には、
❝ 泥水で育った蝮(まむし)は五百年にして蛟(雨竜)となり、蛟は千年にして竜(成竜)となり、
竜は五百年にして角竜(かくりゅう)となり、角竜は千年にして応竜になり、年老いた応竜は
黄竜と呼ばれる ❞
と記されます。
■恙 (つつが)
この場合は 「難儀・受難・災難」 などの意です。
■和の磯 (なみのいそ)
「穏やかな沿岸」 を意味します。
★和・並 (なみ)
ナム(▽和む) の名詞形で、「平和・平穏・凪」
を表します。
ナム は ナラス(均す・平す) の母動詞 “ナル”
の変態です。
★磯 (いそ)
イス(▽結す) の名詞形で、「むすび・合わせ・やわし」
などが原義です。
この場合は
「合わせ目・接する所・添う所・沿い・沿岸」
などを意味します。
イス は ユスフ(結ふ)
の母動詞 “ユス” の変態です。
【概意】
その故は、潮の目にカモ船が難破し、
姫もタケスミもホタカミも 波打つ海に落ちて溺れるを
猛き心を奮い起こしてお泳ぎになれば、竜や蛟の力を得て、
難儀しながらも穏やかな磯に着く。
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つりふねよりそ みほさきの わにゑてここに つくことも
みたねおもえは なきさたけ ははのみこころ あらはるる
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釣舟よりぞ ミホサキの ワニ得てここに 着くことも
御胤思えば “渚” “猛” 母の実心 表るる
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■ミホサキ
現在の 「美保関」 をいうではないかと思います。 ▶地図
■御胤 (みたね)
この場合はトヨタマ姫が孕んでいる
「ヒコホオデミの御子」 を指します。
【概意】
釣舟によりミホサキに行き、そこでワニ船を得てここ(北の都)に着くことも、
御胤を思えばこそであった。ナギサ(渚)、タケ(猛)、母の真心が表れる。
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きみまつはらに すすみきて うふやのそけは はらはひに
よそひなけれは とほそひく おとにねさめて はつかしや
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君 松原に 進み来て 産屋 覗けば 腹這ひに
装ひ無ければ 戸臍引く 音に寝覚めて 「恥づかしや」
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■君
ヒコホオデミ(斎名ウツキネ)を指します。
■松原 (まつばら)
ここにトヨタマ姫の産屋があります。
■進み来る (すすみくる)
“進む” はここでは 「心を進める」 の意です。
ですから 「心を弾ませて来る・心を躍らせて来る」
という意です。
■戸臍・枢
(とぼそ)
ト(戸・門)+ホソ(臍)
の連結で、両語とも 「結び・締め・綴じ・閉じ」
などが原義です。
「(内と外の) 結び・閉め・つなぎ」、つまり 「扉・ドア」
をいいます。
■恥づかし (はづかし)
ハヅ(▽外づ・恥づ)+ツク(突く)+シ(▽如・▽然)
の短縮で、
ハヅ・ツクは 両語とも
「離れる・逸れる・外れる・突き出る」 などが原義です。
ですから 「自分が はみ出し者 のように感じるさま」
を表す形容詞です。
【概意】
君は心を躍らせながら松原に来て、産屋を覗けば、
腹這いで よそおいも無いため、戸を閉じる。
その音に姫は寝覚めて、「恥ずかしや。」
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おとたけすみと みなつきの みそきしてのち
うふやてて をにふにいたり みこいたき みめみてなてて
はははいま はちかえるなり まみゆおり もかなとすてて
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弟タケスミと 六月の 禊して後
産屋出て ヲニフに到り 御子抱き 御面・御手 撫でて
「母は今 恥ぢかえるなり まみゆ折 もがな」
と捨てて
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■タケスミ
■六月の禊 (みなつきのみそぎ)
陰暦6月30日に行われた 大祓(おおはらえ)
の別名です。 ▶六月 ▶禊
夏越祓、六月祓
などとも呼ばれます。
・清みの小川に 禊して 茅の輪に正す 六月や 民永らふる 祓なりけり 〈10アヤー6〉
・ホゾチ・茅の輪に 抜け尽くる 穢の祓ぞ 〈ミ7-4〉
・六月末は いよ乾き 桃に幸纏る
茅の輪抜け ヰソラを祓ふ 六月や 〈ミ9-2〉
■ヲニフ (遠敷・小丹生)
福井県小浜市の 遠敷(おにゅう)
に名が残ります。 ▶地図
ここには若狭姫神社があり、“遠敷大名神”
としてトヨタマ姫を祀ります。
近くの若狭彦神社はヒコホオデミ、宇波西神社はウガヤ(斎名カモヒト)を祀ります。
若狭彦神社 (わかさひこじんじゃ)
若狭彦神社(上社):福井県小浜市龍前28-7。若狭姫神社(下社):福井県小浜市遠敷65-41。
現在の祭神:[上社] 若狭彦大神 (彦火火出見尊) [下社]
遠敷大名神 (豊玉姫命)
・社紋は 「宝珠に波」(別名:水玉)で、▶画像
これは山幸彦が龍宮で手に入れた潮を自在に操る
潮盈珠・潮乾珠 に因むという。
宇波西神社 (うわせじんじゃ)
福井県三方上中郡若狭町気山字寺谷129-5。
現在の祭神:彦波瀲武鸕鶿草葺不合尊 (ひこ・なぎさ・たけ・うがやふきあえずのみこと)
■恥ぢかえる (はぢかえる)
カエル(返る)は ここでは 「沸き返る・煮え繰り返る」
のカエルと同じで、
「同じことを繰り返す」 さまを表し、“恥づ”
の激しさを強調します。「恥ぢまくる」 と同義です。
■折 (おり)
オル(▽復る)の名詞形で、「めぐりあわせ・機会」
などを意味します。
オルは モトオル(回る)の母動詞で、「行き来する・回る・めぐる・返る」
などが原義です。
■もがな
【概意】
弟のタケスミと “六月の禊” をして後、
産屋を出てヲニフに到り、御子を抱いて
御面と御手を撫でながら、
「母は今
恥じまくっています。再会できる折があればいいね」 と、
捨てて、
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くちきかわ のほりやまこえ ややみかに わけつちのねの
みつはめの やしろにやすむ このよしお みつほにつけは
おとろきて ほたかみおして ととめしむ
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朽木川 上り 山越え やや三日に ワケツチの北の
ミヅハメの 社に休む この由を ミヅホに告げば
驚きて ホタカミをして 留めしむ
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■朽木川 (くちきがわ)
安曇川(あづみがわ)の別名で、現在は 安曇川(あどがわ)の中流域
を指す名となっています。
かつてシマツヒコは、安曇川を流れる朽木に乗って羽を乾かす鵜を見て、イカダを考案しました。
そのため安曇川は “朽木川” とも呼ばれます。
船はいにしえ シマツヒコ 朽木に乗れる 鵜の鳥の アヅミ川行く
筏乗り 竿差し覚え 船と成す 〈ホ27〉
■ワケツチ (分土)
川に 「分けられる土地」 の意で、カモ(賀茂)・カアヒ(河合)の換言です。
賀茂別雷神社の御神体とされる 神山(かみやま・こうやま)
も、
かつては 賀茂山(かもやま) また 分土山(わけつちやま)
と呼ばれました。
〈日本輿地通志畿内部
(五畿内志)〉
■ミヅハメの社 (みづはめのやしろ)
「水を治める自然神ミヅハメを纏る社」
で、後の貴船神社をいいます。 ▶ミヅハメ
貴船神社・貴布禰神社
(きふねじんじゃ)
京都市左京区鞍馬貴船町180。
現在の祭神:高龗神 (たかおかみのかみ)
<筆者注> もとはミヅハメを纏る社、後に高龗神(=豊玉姫)を合せる。
■ホタカミ
【概意】
朽木川を上って山を越え、ようやく3日目に
賀茂の北の “ミヅハメの社” に休む。
この由をミヅホ宮に告げば驚いて、ホタカミをして止めさせる。
トヨタマ姫とタケスミは、後の 若狭街道(鯖の道)を
遠敷から賀茂に向かったようです。
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をにふのきちの ひたとへは あとおしたひて くちきたに
にしよりみなみ やまこえて みつはのみやに おひつきて
こえとかえなて たけすみに ふくめととめて
はせかえり かえことなせは
―――――――――――――――――――――――――――――
ヲニフの雉の ひた飛べば 後を慕ひて 朽木谷
西より南 山越えて ミヅハの宮に 追ひ着きて
乞えど返え無で タケスミに 含め留めて
馳せ帰り 返言なせば
―――――――――――――――――――――――――――――
■ヲニフの雉 (をにふのきぢ)
「ヲニフ(遠敷)よりの伝令使」 です。 ▶雉
■ひた飛ぶ (ひたとぶ)
ヒタ(直)は
ここでは 「ただちに・すぐさま」 の意に解しています。
ですから
「ヲニフから伝令がただちに飛んで北の都のホタカミに伝える」
ということです。
トヨタマ姫はヲニフで御子を捨てた後に、逃避行に出発していますから、
姫の行先や通路などについての情報は、ヲニフに集中しています。
そのためヲニフにある情報を
雉によって北の都のホタカミに伝えさせると
同時に、姫を追跡して止める命をホタカミに伝えたということでしょう。
■ミヅハの宮 (みづはのみや・みづはみや)
ミヅハメの社 の換言です。ミヅヤ(水社・水屋)とも呼ばれます。
■返え無で (かえなで)
「返事/返答は無くて」 という意です。
【概意】
ヲニフの雉がただちに飛んで <北の都のホタカミに伝えると>、
ホタカミは足跡を追って朽木谷、西に山を越え、南に山を越えて
ミヅハの宮にて追い着く。姫に御帰りを乞えど
返答は得られぬため、
<ここに留まるよう>
タケスミに言い含めて、馳せ帰って報告すれば、
―――――――――――――――――――――――――――――
きしとひて つくるつくしの はてすみと おとたまひめと
わにのほり にしのみやより やましろに いたりてとえと
ひめはいま おりてのほらす おとたまお ささけとあれは
もろともに のほりもふせは いもとめす
―――――――――――――――――――――――――――――
雉
飛びて 告ぐるツクシの ハテスミと オトタマ姫と
ワニ上り 西宮より 山背に 到りて訪えど
「姫は今 下りて上らず オトタマを 捧げ」 とあれば
諸共に 上り申せば 妹召す
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■ハテスミ ■オトタマ姫
(おとたまひめ)
トヨタマ姫の父のハテスミと、妹のオトタマ姫です。
カナサキ─??─ハテツミ┬トヨツミヒコ ├トヨタマ姫 ├タケツミヒコ └オトタマ姫
■ワニ上る (わにのぼる)
「ワニ船にて上京する」 という意です。 ▶ワニ
■妹召す (いもとめす)
本源的には キミ(木実)
= 日月 は 陽陰(男女)のペアであるため、
即位式のしきたりの都合上、内宮トヨタマ姫の当座の代理として、
妹のオトタマ姫を后として召したということだと思います。
【概意】
事情を告げる雉を九州に飛ばせば、父ハテスミと妹オトタマ姫が
ワニ船にて上京し、西宮より山背に到ってトヨタマ姫を訪うも、
「姫は今
宮を下りて上る気はありません。オトタマを君に捧げ」
とあれば、
父と妹が諸共にミヅホ宮に上ってそれを申せば、君は妹を召す。
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あまつひつきお わかみやに さつけたまいて
おおゑきみ しのみやにます
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和つ日月を 若宮に 授け給いて
太上君 シノ宮に座す
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■若宮 (わかみや)
ヒコホオデミ(斎名:ウツキネ)
です。
■大上君・太上君 (おおゑきみ)
「太上皇・上皇」
をいい、ニニキネを指します。
オオヱスベラギ(太上皇)、ヲヲキミ(太君) とも呼ばれます。
■シノ宮 (しのみや)
かつてウツキネがその主であった、アワ海南岸の 「オオツシノ宮」
です。
和つ日月をウツキネに譲ったニニキネは、国家首都のミヅホ宮もウツキネに明け渡し、
シノ宮に隠居します。
【概意】
和つ日月を若宮に授け給いて、太上君はシノ宮に座す。
―――――――――――――――――――――――――――――
みつほには にはりのためし ゆきすきの ををんまつりの
おおなめゑ みくさのうけお あにこたえ
あおひとくさお やすらかに たもつやはたの はなかさり
あすよろたみに おかましむ
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ミヅホには ニハリの例 ユキ・スキの 大御祭の
大嘗会 三種の受けを 天に応え
青人草を 安らかに 保つ八幡の 花飾り
明日万民に 拝ましむ
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■ニハリの例 (にはりのためし)
“ハラの法” の換言です。
この場合は 「ニニキネがニハリ宮で行った大嘗会の作法」
をいいます。
帰るニハリに ユキ・スキの 宮に祈りの 大嘗会 三種の受けを 天に応え 宮に納むる
その飾り 香・八幡あり その明す日 大御宝に 拝ましむ 〈ホ24ー4〉
■ユキ・スキの大御祭 (ゆきすきのををんまつり)
「ユキ・スキの宮に神を招く最大の祭」という意味で、これは
“大嘗会” の別称です。
■花飾り (はなかざり)
「カラフルな飾り・色とりどりの装飾」 などの意で、
「八幡・八色幡・色垂・八色和幣」
などの換言です。
■明日 (あす)
アスカ(明す日・明す処)
の略です。
【概意】
ミヅホの宮では ニハリの例にならって
ユキスキの大御祭である大嘗会を行い、三種の受領を天に報告する。
青人草を安らかに保つ “八幡” の八色和幣も、明日
万の民に拝ましむ。
本日は以上です。それではまた!