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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第105回 [2024.1.5]

第二〇巻 皇御孫十種得る文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 すめみまごとくさゑるあや (その1)
 皇御孫十種得る文 https://gejirin.com/hotuma20.html
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 すめみまごとくさゑるあや
 ふそむすす そむゑよそひほ としきやゑ やよいかすかの
 としをいて まつりやすまん ことわりに

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 皇御孫十種得る文
 二十六鈴 十六枝四十一穂 年キヤヱ 三月 カスガの
 年老いて 政 休まん 断りに

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■皇御孫 (すめみまご)
「皇となるアマテルの御孫」 というような意です。 ▶皇 ▶御孫


■十種 (とくさ)
本文中で説明します。


■二十六鈴十六枝四十一穂 (ふそむすずそむゑよそひほ)  ▶数詞
真榊(=鈴木)による暦法で、1鈴=6万年、1枝=60年、1穂=1年 です。
ウビチニ&スヒヂの時代に植え継ぎが500回の限界に達し、累計年数が
一旦リセットされていますので、この暦の起点はその頃と考えられます。
以来ホツマに暦年の記載されている出来事を振り返ると、次の通りです。

・21鈴125枝31穂 アマテル誕生。 ・21鈴126枝58穂 アマテル即位。
・22鈴505枝1穂 トヨケ帰天。 ・24鈴999枝60穂 六ハタレ蜂起。
・25鈴93枝37穂 カシマ直ち開始。 ・25鈴100枝11穂 オシホミミ即位。
・25鈴100枝28穂 アマノコヤネ結婚 ・25鈴130枝58穂 アマテル下り居。


■キヤヱ
我が国本来の干支の表し方で、今の表し方では 甲辰 (きのえ・たつ) にあたります。
60年で一周する41番目ですから、これは真榊の暦で “41穂” と言うのと同じです。


■カスガ (▽上下/▽和直・春日)  ▶意味1 ▶意味2
これは “カスガ殿” のことで、アマノコヤネの父のヰチチを指します。
霊返しの方法を完成した功により、ココトムスビという尊名と
中国カスガ県の知行者の地位をアマテルより賜りました。  ▶中国

 「ヰチチが選む 霊還し ココストの根を 結ぶ文」
 ココトムスビの 名に 据えて カスガ殿とぞ 尊ませ 〈ホ8-9〉

            ┌フツヌシ
         ??──┤
            └アサカ姫┐
                 ├─アマノコヤネ
 ツハヤムスビ──??───ヰチチ─┘
           (ココトムスビ)
            (カスガ殿)


■政休む (まつりやすむ)
中国カスガ県の 「治めを休止する・知行者としての役目を退く」 という意です。 ▶政

 ★休む (やすむ)
 ヤス(痩す)+スム の同義語短縮で、スムは スユ(饐ゆ)の変態。
 両語とも 「下がる・勢いを失う・鎮静する・衰える」 などが原義です。


断り (ことわり)
ここでは 「伝え・告げ・申し出」 などの意です。

 

【概意】
皇御孫十種得る文
26鈴16枝41穂キヤヱの3月、
老齢のため役目を退きたい というカスガの申し出を受けて、



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 あまてらします おしほみみ みこはくしたま ほのあかり
 いみなてるひこ くたさんと ちちみつからの つけふみお
 かくやましかに たてまつる

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 和照らします オシホミミ 御子はクシタマ ホノアカリ
 斎名テルヒコ 下さんと 父自らの 告げ文を
 カグヤマ 使に 奉る

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■和照らしますオシホミミ (あまてらしますおしほみみ)
時のアマツヒツキ(和つ日月)が オシホミミであることを示します。 ▶オシホミミ

 ★和照らします (あまてらします)
 アマテラス(和照らす)+マス(尊敬) で、アマテラス(和照らす)の尊敬表現です。
 「和して照らしたまう・ほどよく調えて恵みたまう」 などの意です。

 
■クシタマホノアカリ・テルヒコ
オシホミミとタクハタチチ姫の長男で、斎名はテルヒコです。

 ヤソキネ─タカキネ─タクハタチチ姫┐
                  ├クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
 サクラウチ─セオリツ姫┐     │
            │     ├ニニキネ(斎名キヨヒト)
            ├オシホミミ┘
 イサナギ┐      │
     ├─アマテル─┘
 イサナミ┘

他文献では 火明命、天火明命、天照国照彦火明、天照國照彦天火明櫛玉饒速日
などと記され、ニギハヤヒと混同されていることが多いです。しかし別人です。
(この誤解の責任はホツマツタヱの29アヤの記述にあると筆者は考えてます)


■下す (くだす)
引退する “カスガ殿” の空きを埋めるため、「中国のカスガ県にテルヒコを下す」
ということです。テルヒコは国家君主オシホミミの代嗣御子ですから、これは事実上、
テルヒコを皇とする次期中央政府を大和国に立てる準備といえます。

 この時期の国家の政体は、国家元首のオシホミミはヒタカミの首都タカノコフにあり、
 ヒタカミ国主のタカキネが代の殿となって、近江のタガで中央政府の君を代行しています。


■父 (ちち)
オシホミミを指します。


■カグヤマ ■カグ
“カグヤマツミ” の略で、さらに略されて “カグ” とも呼ばれます。
オオヤマズミ
2代 カグツミの次男で、オシホミミの従兄弟にあたります。

  サクラウチ─┬─カグツミ──カグヤマ
 [初代ヤマズミ]│  [2代]
        │
        ├─ホノコ
        │  ├──オシホミミ┬クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
        │ アマテル     │
        │  │       └ニニキネ(斎名キヨヒト)
        └─ハナコ


使 (しか)

奉る (たてまつる)
和つ君(=国家君主)であるオシホミミが  “奉る”  となれば、
その相手はアマテル大御神以外にはありえません。

 

【概意】
和つ君オシホミミは、御子のクシタマホノアカリ (斎名テルヒコ) を下さんと、
父自らが記した告げ文を カグヤマを使者として大御神に奉る。



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 ふみにもふさく みつからか あしはらくにお をさめんと
 よそふまにたみ あつまりて ひたととむゆえ
 てるひこお くたすへきやと うかかゑは
 いせのをんかみ きこしめし ゆるせはしかの かえことす

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 文に申さく 「自らが あしはら国を 治めんと
 装ふ間に民 集まりて ひた留むゆえ
 テルヒコを 下すべきや」 と うかがえば
 妹背の御神 聞し召し 許せば使の 返言す

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あしはら国 (葦原国・▽朝原国)

装ふ (よそふ・よそおふ)

■ひた留む (ひたとどむ)
「ひたすら止める」 という意です。  ▶ひた ▶留む
これは夏の水浴びにも注意が必要なほど虚弱なオシホミミを心配してのことでしょう。


うかがふ (窺ふ・伺ふ)

妹背の御神 (いせのをんかみ)

聞し召す (きこしめす)
ここでは 「聞き留める・心に留める・考える・慮る」 などの意の尊敬表現となります。

 

【概意】
文に申さく、
「自らが あしはら国を治めようと支度する間に、
民が集まってひた止めるゆえ、代わりにテルヒコを下すべきや」 と伺えば、
妹背の御神は慮って許可なさり、使者はその御言を返す。



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 ここにとをやの あまつかみ とくさたからお さつけます
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 「ここにト祖の 天つ神 十種宝を 授けます」
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■ト祖 (とをや) ■トの尊 (とのみこと) ■トの神 (とのかみ)
“ト祖” は 「トの先祖」 の意で、天元8神の内の “トの神” を指します。  ▶祖 ▶天元神
クニトコタチの一人として降臨し、地上社会の基礎を築きました。
地上にある時は “トの尊”、帰天して星となっては “トの神” と呼ばれます。

 なぜトの神なのか?については、
 ミナカヌシの御子として トホカミヱヒタメ の8神が世に降臨し、地上に8国を建てて
 君となりますが、ヱの神とトの神は日本に降臨しており、元来日本と縁の深い神です。
 またアマテルは トの神 (トのヲシテ) を特に重視し、23アヤで『我はトの道に治む』
 と語っています。それは、トのヲシテが表す道は 「ととのえる道・調和の道」 であり、
 和の道
の根本であるからです。またミカサで語られるように、トの神は南にあって
 夏の繁栄を守り、人草の寿命を伸ばす ということもあります。

 ・我はトの道に 治む故 オミもトミなり 〈ホ23〉
 ・ト神は夏の ソロを守る 永く人草 潤せば 〈ミ7-7〉
 ・‘ト’ は南向く 人草の 寿延ぶる 〈ミ9-3〉

 
■天つ神 (あまつかみ)・天神 (あまかみ)
これは天界の神という意ではなく、アメトコタチの別名で、
「ミナカヌシ+ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ8神」 を表す総称です。
この9神は 天つ事 (魂魄や寿命など人智の及ばぬ事柄) を司るため こう呼ばれます。

 天つ事 纏るトホカミ ヱヒタメの 八元の神の 守らせき 〈ホ22〉


■十種宝 (とくさたから)
「十種の宝物」 という意です。  ▶種(くさ)
“ト祖” と “トの道” に語呂を合せて “十(ト)種” としたのでしょう。
つまり十種は 「トの種(のたね)・調和を通す(ほす)種」 を意味するモノザネです。

 

【概意】
「ここに天つ神 トの神の心を留める十種宝を授けます。」



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 おきつかかみと へつかかみ むらくもつるき
 うなるたま たまかえしたま ちたるたま みちあかしたま
 おろちひれ ははちしむひれ このはひれ このとくさなり

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 「奥つ鏡と 辺つ鏡 ムラクモ剣
 ウナル珠 霊還し珠 チタル珠 道明かし珠
 折霊領巾 蝕霊締む領巾 コノハ領巾 この十種なり」

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■奥つ鏡 (おきつかがみ) ■辺つ鏡 (へつかがみ)
これは両方を合せて 「マス鏡」 をいうものと考えます。
“奥つ鏡” は 「奥に置く鏡」 の意で、「裏鏡・心鏡」 と同じです。
“辺つ鏡” は 「そばに置くの鏡」 の意で、「表鏡」 と同じです。


■ムラクモ剣 (むらくもつるぎ)
「曲り/汚穢を直す剣」 という意です。 ▶ムラクモ
これは “ハハムラクモの剣” とは別物です。ハハムラクモは ソサノヲから子々孫々の
オオモノヌシに伝授されていたことが、後の記事からわかるからです。


■ウナル珠 (うなるたま) ■霊還し珠 (たまかえしたま)
■チタル珠 (ちたるたま) ■道明かし珠 (みちあかしたま)

“霊還し” 以外は不詳です。  ▶タマ


■折霊領巾 (おろちひれ) ■蝕霊締む領巾 (ははちしむひれ) ■コノハ領巾 (このはひれ)
ヒレは ヒル(放る/▽翻る)の名詞形で、「払いのけ/はね返し」 を意味しますが、
そのモノザネが “領巾” です。

 オロチ(▽折霊)ハハチ(▽蝕霊)は どちらも 「邪霊」 をいうと考えます。
 シム(締む)は 「締める・縛る」 の意で、“鬼神縛る器物” と意味は同じと思います。
 コノハは不明です。

 

【概意】
「奥つ鏡と辺つ鏡、ムラクモ剣、
ウナル珠、霊還し珠、チタル珠、道明かし珠、
愚霊領巾、蝕霊締む領巾、コノハ領巾、この十種である。」


 旧事紀にも類似の記事がありますが、十種宝の名称は微妙に異なっています。



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 いたむこと あらはひふみよ ゐむなやこ とまてかそえて
 ふるゑたた ゆらゆらふるゑ かくなせは すてにまかるも
 よみかえる ふるのことそと みことのり

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 「傷む如 あらば “一二三四 五六七八九 十” まで数えて
 振るえ ただ ゆらゆら振るえ かくなせば すでに曲るも
 よみがえる 振る
宣詞ぞ」 と 御言宣
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振るふ (ふるふ)
「ふるわす・揺らす・動かす・活気づける」 などの意です。


■ゆらゆら
ユラは ユル(揺る)の名詞形です。


■曲る (まがる)
マグ(曲ぐ)+カル(離る) の短縮で、「逸れる・外れる・不調/異常となる」 などの意です。
この場合は “傷む” の言い換えです。


よみがえる (蘇る・甦る)
ヨム(▽揺む)+カエル(返る・還る) の同義語連結で、ヨムは ヨル(揺る) の変態。
両語とも 「往き来する・回る・返る・還る」 などの意です。

 ヨム(▽揺む)、ヨル(揺る)、ユル(揺る)、フル(振る)、フルフ(振るふ)、ぜんぶ同義語です。


■振る宣詞 (ふるのこと)
フル(振る)は フルフ(振るふ)の母動詞で、 「活気づける・振興させる」 などの意です。
ですから 「活気づける詞・奮い起す唱え言」 という意で、これは 1から10までの
「十種(とくさ)の数字を読み上げること」 をいうと思われます。

 ここで 十種(とくさ)の もう一つの意味が見えてきます。
 トグ(研ぐ・磨ぐ)+クサ(種) の短縮で、曇り錆びたものを 「研ぐ種(ぐたね)」 です。

 ★宣詞 (のこと)
 ノトコト → ノッコト → ノコト の変化で、「鳴り響かす言葉・となえる言葉」 などの意です。

 

【概意】
「何か傷んでいるなら、“一二三四五六七八九十” と数えて揺り動かせ。
ただゆらゆらと揺り動かせ。かくなせばすでに傷んだものもよみがえる。
<“とくさ” は> 元気を奮い起す詞ぞ」 と御言宣。


 かくしてクシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)は大群の臣を引き連れて大和国へ向かいます。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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