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徹底解説みかさふみ講座 第50回 [2023.4.21]

みかさふみ 年内になす事の文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 としうちになすことのあや (その1)
 年内になす事の文 https://gejirin.com/mikasa09.html
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 としうちになすことのあや
 あるひこふ ゑおこのかみと をもひかね いちゐたたせは
 たまきねの このなすことお のたまわく
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 年内になす事の文
 ある日乞ふ ヱオコの尊と ヲモヒカネ 市居ただせば
 タマキネの 九のなす事を 宣給わく
―――――――――――――――――――――――――――――

■年内になす事 (としうちになすこと)
「一年の内に行うこと」 の意で、今風に言えば 「年中行事」 です。


■ヱオコの尊 (ゑおこのかみ)
ヤマトヲヲコノミタマカミ(和皇籠の御魂尊)の略と考えられます。
これはアマテルがクシヒコを褒めて賜った尊名です。それに先立っては、
ニニキネが ヲコヌシ(大地主・大国主) という尊名をクシヒコに賜っています。

他にも ヲコノカミ(皇籠の尊)、ヲコノミタマ(皇籠の御魂)、ヲコタマ(皇籠魂)、
また帰天後は オオクニタマ(大国魂)、ヤマトオオクニカミ(大和大国神)、
オホヤマトクニタマノカミ(大和国魂神)、ヤマトノカミ(大和の神) などと呼ばれます。

 大國魂神社 (おおくにたまじんじゃ)
 東京都府中市宮町3-1。
 現在の祭神:大國魂大神
大和神社 (おおやまとじんじゃ)
奈良県天理市新泉町星山306。
現在の祭神:日本大国魂大神 (大地主大神)

   




ヲモヒカネ
アマテルの左の臣であり、日夜見(=暦)の臣であり、ヒルコの夫であり、イサワ宮の
建設監督であり、オシホミミの御子守でもあり、根国とサホコ国の知行主も兼ねるなど、
派手な印象はありませんが、アマテル政府の影の立役者と言えるほど重要な臣です。
アチヒコ、ヤツココロ とも呼ばれます。

 阿智神社 (あちじんじゃ)
 長野県下伊那郡阿智村智里489。
 現在の祭神:天八意思兼命、天表春命
気象神社 (きしょうじんじゃ)
東京都杉並区高円寺南4-44-19 氷川神社内
現在の祭神:八意思兼命





■市居・市井 (いちゐ)
イチ(市)は イツ(▽結つ)の名詞形で、「結び・寄り・集まり」 を原義とし、
「人の集まり・社会・コミュニティ」 などを意味します。マチ(町)と同じです。
ヰ(居)は そこに 「居ること・身を置くこと」 をいいます。
ですから 「大衆の中に身を置くこと・市中での暮らし」 という意です。


■ただす (▽直す・正す・糺す・質す・糾す)
「まっすぐにする」 が原義です。この場合は、ごちゃごちゃして不明瞭なことを
他の人を利用して (たずねて)、「まっすぐにする・クリアにする」 という意味です。


タマキネ
アマテルの祖父で、5代タカミムスビであるトヨケの斎名です。

 ホツマとミカサ自体が “トヨケ” と表していることが多いため、
 本講座でもトヨケと記していますが、トヨケは “トヨウケ” の略です。
 トヨ(▽響)+ウケ(受け) で、「中央政府を受け継いだこと」 を意味します。


■宣給わく・宣わく (のたまわく)
ノタマフ(宣給ふ・宣ふ)のク語法です。

 

【概意】
年内に行う事の文
ある日 ヱオコの尊とヲモヒカネが願って
“市中での暮らし” を質問すると、
タマキネの “九のなす事” を宣給うには、

 以降はタマキネの言葉です。

 

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 ゑはねのみつの ひとをかみ ひのみちささけ ねにかえす
 ひとをふせても あめわゆき とのかみおして うゐなめゑ
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 ’ヱ’ は北の三つの 一陽神 日の道捧げ 北に返す
 一陽伏せても 陽陰 陰活 トの神をして 初嘗会
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■’ヱ’
「ヱの神」 をいいます。


■北の三つの一陽神 (ねのみつのひとをかみ)
ネ(北・寝)は 「の方向」 の意と、下に沈む(=寝る) 「」 の意を重ねているようです。
ですから ヱの神は 「北にあって3陰1陽の気象をもたらす神」 という意です。

  支配期間 (陰暦) 神の陰陽属性 招くエネルギー 地上の気象
の神 11月半〜12月末 3陽1陰 1陽 3陰1陽
の神 1月初〜2月半 2陽2陰 2陽 2陰2陽
の神 2月半〜3月末 1陽3陰 3陽 1陰3陽
の神 4月初〜5月半 0陽4陰 4陽 0陰4陽
の神 5月半〜6月末 3陰1陽 1陰 3陽1陰
の神 7月初〜8月半 2陰2陽 2陰 2陽2陰
の神 8月半〜9月末 1陰3陽 3陰 1陽3陰
の神 10月初〜11月半 0陰4陽 4陰 0陽4陰


■日の充ち捧ぐ (ひのみちささぐ)
ヒノミチ(日の充ち) は 「太陽エネルギーの充填度」 をいい、
ササグ(捧ぐ)は ここでは原義通りで、「上げる・UPさせる」 という意です。


■北に返す (ねにかえす)
これはミカサの7アヤの “かつめ神が舵を北に引く” と同じ意味でしょう。

 ’ヱ’ の嘗は北に 十一月の半 一陽を招けば かつめ神 舵を北に引き 日を迎ふ
                                  〈ミ7-1〉

陽陰陰幸・陽陰陰活 (あめわゆき)
「陽/陰(あめ)の勢力は 陰(わ)が優勢」 という意味だと思います。
ユキ(幸)は イキ(活・▽勢)の変態です。


■トの神をして (とのかみおして)
“して” のシは、スル(為る)の連用形で、スルは 「合わす・なす(▽和す)」 が原義です。
この場合は 「トの神を合せて/招いて/纏りて」 などの意になります。


■初嘗会 (うゐなめゑ・ういなめゑ)
ウイナメ(初嘗)は 「一年最初の行事」 、ヱ(会)は その 「機会」 を意味します。
新嘗会(にいなめゑ・さなめゑ)とも呼ばれ、冬至の日に行われました。
国君の即位後最初の初嘗会は 特に “大嘗会(おおなめゑ)” と呼ばれ、通常の初嘗会の
儀式に加えて、ユキ宮アメトコタチの9神スキ宮地の11神を纏ります。

 草薙ぎて 九星を纏る ユキの宮 アメトコタチと
 スキ殿に ウマシアシカイ ヒコチ神 合わせ纏れば 名もタカマ 〈ミ6-1〉

初嘗会については、説明が少なくて詳しくはわからないのですが、
“埴の社(はにのやしろ)” を設けて、そこに 「山海の幸を守る神々」 と
「トの神」 を纏ることが記されています。

・綾織は 埴の社の新嘗会に すき祈る衣ぞ 〈ホ23-4〉
・山海とト尊霊は 埴スキの嘗会に付けて 人草の寿 祈るなり 〈ホ27-3〉

トの神を纏るのは、夏のソロを守り 人草を潤すことによるのでしょう。

 ト神は夏の ソロを守る 永く人草 潤せば 〈ミ7-7〉

 

【概意】
ヱの神は 北に坐して3陰1陽をもたらす神。
日のエネルギーの充填度を上げるため 舵を北に返す。
一陽を地に伏せても、陽/陰の勢力は 陰が優勢。
トの神を纏って初嘗会。

 

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 しわすれはやや つちにみち よろきねうるひ
 うゑさむく すゑにひたけて そらさむく
 かたちはゑみつ をのはしら
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 しわすればやや 地に充ち 万木根 潤ひ
 上 寒く 末にひだけて 空 寒く
 形 土重水 陽の柱
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しわすれば
シフ(▽締ふ)+ハス(▽合す・▽挟す)の短縮 “シハス/シワス” の已然形です。
シフはシム(締む)の変態、ハス/ワスは 「合わす・はさむ・閉じる」 などの意です。
よって 「締まって閉じる」 の意です。この名詞形が12月をいうシワス(師走)です。
ここでは 「12月になれば」 という意に考えて良いでしょう。


■やや (弥々)
“やや” は ここでは 「しだいに・だんだん・ますます・いよいよ」 などの意を表します。


潤ふ (うるふ)


■上 (うゑ)
「地上・地表」 をいうと思われます。


■ひだく (開く)
ハダク(開く)ヒラク(開く) の変態と考えます。
ヒラク(開く)は ヒログ(広ぐ・拡ぐ)の変態で、ここでは 「広がる」 という意味です。


■土重水 陽の柱 (はゑみづをのはしら)

ヱの神の形 (すなわちヱのヲシテの形) を口述したものです。
ハ(地・土・埴)を 「地平・地平線」 に見立て、それを ‘―’ で表し、
ミヅ(水)を 「蛇行する川」 に見立て、それを ‘己’ で表します。
そしてその上に陽の柱 ‘h’ が立ちます。
埴と水は 「陰の支配」 を表し、陽の柱は 「天の紗霧を地に届ける柱」 を
表すのでしょう。それにより 一陽が “地に充つ”。

 

【概意】
12月になると <1陽が> しだいに地に充ち、万木の根は潤うが地上は寒く、
月末に <1陽は> 拡散してゆくも、空 (空気・気温) はまだ寒い。
ヱの神の形は、埴と水の重なりに陽の柱が立つ。

 

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 ゑもとのかみの わかるよは ゐりまめうちて おにやらゐ
 ひらきゐわしは もののかき ほなかゆつりは しめかさり
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 ヱ元の神の 別る夜は 煎り豆打ちて 鬼遣らい
 柊鰯は モノの垣 穂長・譲葉 注連飾
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ヱ元の神の別る夜 (ゑもとのかみのわかるよ)
「ヱの天元神が離れる夜」 の意で、陰暦12月30日=大晦日 をいいます。
これは太陽暦(=新暦)では 2月の 「節分の夜」 になります。
ですから現在行われている節分の行事は、かつての大晦日の行事です。


■煎り豆 (ゐりまめ・いりまめ)
ヰリマメ(煎り豆)は 「マメ(魔穢)をイル(射る)」 のモノザネと考えます。


鬼遣らゐ (おにやらゐ・おにやらひ)
オニ(鬼)は “鬼モノ” の略で、「邪霊・悪霊」 のことです。
“遣らゐ” は ヤラフ(遣らふ) の名詞形です。


柊鰯 (ひらぎゐわし)  [画像]
ヒラギ(柊)は 「射る木・刺す木」 を意味します。
ヰワシは ユハス(結はす・弓弭)の変態で、これは 「弓」 の別称です。
ですから 「射る木の弓・矢と弓」 の意で、やはり 「魔穢を射る・鬼を遣らう」 のモノザネです。

 ヰワシは 「結い合わせ」 が原義で、魚の鰯は 「群れる魚」 をいうと考えます。


■モノの垣 (もののかき)
モノは この場合は “鬼モノ” のことで、すなわち 「邪霊・悪霊」 をいいます。
カキ(垣)は 「囲い・画・限り・隔」 が原義です。
ですから 「邪霊の侵入を防ぐ囲い」 という意です。


穂長 (ほなが) ■譲葉 (ゆづりは・ゆづは)
“穂長” は 「ウラジロ」 の別名で、「ハヱ葉」 とも呼ばれます。


注連飾・七五三飾 (しめかざり)  [画像]

 

【概意】
ヱ元の神の別れる夜は、煎り豆を打ちて鬼遣らい。
柊鰯は鬼モノの垣。穂長と譲葉でしめ縄を飾り。

 

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 ひはつさかせの ふつをかめ きたれはひらく はつひくさ
 はつひまつりは ふとまかり やまのかやくり うみのめも
 ところたちはな ゐもかしら しむのふしゑは たるむつみ
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 ‘ヒ’ は西南 風の 二陽神 来たれば開く 初日草
 初日祭は ふと環 山の榧・栗 海の布も
 野老・橘 芋頭 親の付合は 足る睦み
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■二陽神 (ふつをかめ)
「2陽のエネルギーを招く神」 の意です。
このエネルギーの源泉はアメノミヲヤの息です。

 元元明の 陽陰恵み  届く柱は 透き通る 中の管より 運ぶ 〈ミ6-7〉

  支配期間 (陰暦) 神の陰陽属性 招くエネルギー 地上の気象
の神 11月半〜12月末 3陽1陰 1陽 3陰1陽
の神 1月初〜2月半 2陽2陰 2陽 2陰2陽
の神 2月半〜3月末 1陽3陰 3陽 1陰3陽
の神 4月初〜5月半 0陽4陰 4陽 0陰4陽
の神 5月半〜6月末 3陰1陽 1陰 3陽1陰
の神 7月初〜8月半 2陰2陽 2陰 2陽2陰
の神 8月半〜9月末 1陰3陽 3陰 1陽3陰
の神 10月初〜11月半 0陰4陽 4陰 0陽4陰


 神を “カメ” と記しているのですが、これは母音の交替と考えています。
 特に ‘ヰ’ と ‘ヱ’、‘ミ’ と ‘メ’ の交替に顕著で、ここだけでなく このアヤの随所に
 出てくるため、単なる誤筆写とは考えづらいです。
 現在でも地方によっては母音交替が残っており (我が地方もそれです)、例えば
 “インフルエンザ” は “エンフルインザ” と発音します。またそのように筆記する
 場合もあります。


■初日草 (はつひぐさ)
ハツクサ(初草)とも呼ばれ、今に言う 「元日草」 と思われます。
別名が 「福寿草」 です。


■初日祭 (はつひまつり)
今風に言えば 「元日の祝」 です。
これは初日の出 (一年最初の太陽の出現) を祝うもので、1月15日の祝は、
一年最初の望月(=満月)の出現を祝うものだったと考えられます。

 初日・十五日 陽陰の敬ひ  〈ミ1-5〉


ふと環 (ふとまかり)
フト(▽沸・▽悉) は 今に言う “沸騰” で、この場合は 「油で揚げること」 を意味します。
マカリは 「巻いているさま・輪っか」 をいいます。

 筆者の地方では今でも “巻いている” ことを、“巻かる・巻かってる” といいます。


榧 (かや) ■栗(くり)


■海の布 (うみのめ)
ワカメ(若布・和布)、昆布などの 「海藻類」 をいいます。ウナ(海菜)と同じです。


野老 (ところ) ■橘 (たちばな・かぐ) ■芋頭 (ゐもがしら)


■親の付合 (しむのふしゑ)
シムは シム(染む)の名詞形で、多くの意味がありますが、
この場合は 親(しん)とほぼ同義で、「親しい人・親族・身内」 などを表します。
フシヱは フシ(付し)+ヱ(合・会) で、「付き会うこと・寄り集まること」 をいいます。
ミカサ7アヤは “親の寄り” と記しています。


■足る睦み (たるむつみ)
ムツミ(睦み)は ムスビ(結び)の変態です。
ですから 「親睦を足す・親睦を満たす・結び付き/結束を強める」 などの意です。

 

【概意】
ヒの神は西南に坐す風属性の二陽神。来たれば開く初日草。
初日祭は ふと環、山の榧・栗、海の布、野老、橘、芋頭 を飾り、
親族の集まりは身内の結束を強める。

 

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 ゆみはりまつる みそのなは ぬゑあしもちか かさくさお
 こけふはこへら ゐたひらこ すすなすすしろ すせりなつ
 このななくさに のそくなり 
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 七日纏る ミソの菜は ヌヱアシモチが かさくさを
 ゴゲフ・ハコベラ イタヒラコ スズナ・スズシロ スセリ・ナヅ
 この七種に 除くなり
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■七日纏る (ゆみはりまつる)
ユミハリ(七日・弓張)は、ここでは陰暦(=旧暦)の1月7日をいいます。
マツル(纏る)は ここでは 「手当てする・調える・用意する」 などの意と思います。


■ミソの菜 (みそのな)
ミソは ミス(見す)の名詞形で、「合わせ・添え・付け」 を原義とし、
この場合は いわゆる七種粥 (当時は粥だったか不明) に添える 「具材」 をいいます。
ナ(菜)は ハナ(▽放)の短縮で、「放つもの・出るもの・生えるもの」 が原義です。
ハ(葉・歯・派)ともいいます。


ヌヱアシモチ・ヌエアシモチ


■かさくさ (▽傾曲)
カサ+クサ(▽曲) の同義語連結で、「傾き曲るさま・異常・病」 などの意です。

 カサは カシグ(傾ぐ)の母動詞 “カス” の名詞形で、「曲り・傾き」 が原義です。
 クサは クス(▽屈す)の名詞形で、クセ(曲)の変態です。
 ですからこれも ヲヱクマ(汚穢曲)ヱヤミ(穢病・疫病) などの同義語です。
 カタヲヱ(▽傾汚穢)と記している箇所もあります。


■七種・七草 (ななくさ)
七種の内訳は、ゴゲフハコベ菜/ハコベライタヒラ菜/イタヒラコ
スズ菜
スズシロスセリナズ/ナヅ です。

 

【概意】
七日に用意する具材の菜は、ヌヱアシモチによる病を
ゴゲフ、ハコベラ、イタヒラコ、スズナ、スズシロ、スセリ、ナヅ
この七種に除くなり。

 

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 もちのあさほき あつきかゆ さむさにやふる わたゑやみ
 さやけをけらに とんともち ゑさるかみあり
 きさらきや こりゑこころみ むままつり
 よろきひいつる かみかたち
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 十五日の朝祝 小豆粥 寒さに破る 腑穢病
 さやけ・おけらに どんど餅 穢さる神あり
 二月や 駆射試み 馬祭
 万木秀づる 神形
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■十五日(望)の朝祝 (もちのあさほぎ)
今にいう 「小正月」 です。ホツマでは “六腑纏り(むわたまつり)” とも呼ばれます。

 十五日の朝 六腑纏りは 米と小豆 神あり粥ぞ 〈ホ38-6〉

六腑とは 「内臓」 のことですが、一年最初の望月の日に内臓のケアに心するのは、
肉体の元となっているのが 陰のエネルギー(と呼ばれる)だからだと思います。
そして太陰とも呼ばれる月は いわば陰の親ですから、内臓を気遣うことによって
月に対する敬いを表したものと考えます。
肉体の部位を表す漢字 (脳・肺・胃・腸・腕 … … )には “月” が付くことからも、
月と肉体との関係が伺い知れます。


小豆粥 (あづきかゆ)


■腑穢病 (わたゑやみ)
ワタ(腑)は 「空きを埋めるもの」 が原義で、ここでは 「はらわた・内臓」 です。
ヱヤミ(穢病・疫病)は ヱ(穢)+ヤミ(病み) の同義語連結で、「曲り・逸れ・異常」
が原義です。よって カサクサ(▽傾曲)・ヲヱクマ(汚穢曲) などの同義語です。


■さやけ・さやげ
さやぐ” の名詞形で、「さやさや・ざわざわという音がするさま」 をいいます。
これはたぶん 「笹の枝葉を振る時に出る音」 です。
よって ササ(笹) の別名と考えられます。


おけら (朮)


■どんど餅 (どんどもち)
どんどの炎で焼いた餅」 をいい、これを “粥柱” として小豆粥に入れます。


■穢さる神 (ゑさるかみ)
このサル(▽更る)は 「改める・リセットする・洗う」 などの意です。
ですから 「穢れを改める神・曲りを直す神」 という意です。


■駆射 (こりゑ)
「馬を駆りながら矢を射ること」 をいい、ノリユミ(乗弓)と同じです。

 コリは コロブ(転ぶ)の母動詞 “コル” の名詞形で、コルはカル(駆る)の変態です。
 よってコリは 「転がし・回転・運転」 などを意味します。
 ヱは ヰ(射)の母音交替かと思います。

 
■試みる (こころみる)
「物事を回転させる・事を運ぶ」 を原義とし、
ここでは 「催す・実行する・運営する」 などの意です。

 ココロは コク(転く・漕ぐ)+コル(▽転る) の名詞形で、「回転」 が原義、
 ミル(見る)は 「合わす」 が原義で、この場合は 「する・do」 の意です。


■馬祭・午祭 (むままつり)
陰暦2月の最初の午の日に行われる 「馬の祭」 をいいます。
現在は 初午祭(はつうままつり) と呼ばれ、伏見稲荷大社のものが有名です。 ▶画像
午の日はホツマの干支では ○シヱの日にあたります。

 二月シヱ まつる乗弓 並ぶ頃かな 〈ホ192-2〉

 このように ホツマはシヱの日と馬(午)との関係を記しているわけですが、
 シナの十二支がその日を 「午の日」 としているのはどういうことでしょう。
 日本からあっちへ伝わったとしか考えられないのですが。


■万木秀づる神形 (よろぎいつるかみかたち)

ヒの神の形 (すなわちヒのヲシテの形) を口述したものです。
「万の木が秀でる神の形」。そのまんまの意味でしょう。

 

 

【概意】
十五日の朝祝は小豆粥を食べて、寒さに破る内臓の病。
さやけ、おけら、どんど餅、どれも穢れを祓う神が宿る。
二月は駆射を催して馬祭。
万木秀でる神形。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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