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一から学ぶ みかさふみ講座 第41回 [2023.2.12]

みかさふみ 嘗事の文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 なめことのあや (その2)
 嘗事の文 https://gejirin.com/mikasa07.html
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 ひのなめは つさにいなさの はつひより ふうおやわせて
 おけらたき わかめみつくみ しときもち まかりかやくり
 うなところ かくいもかしら しむのより
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 ’ヒ’ の嘗は 西南にイナサの 初日より 二陽を和せて
 朮 焚き 若女 水汲み 粢餅 環・榧・ 栗
 海菜・野老 橘・芋頭 親の寄り
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■イナサ
イナス(去なす・往なす)の名詞形で、「去らせるもの・退かせるもの・吹き払うもの」 を
原義とし、「風」 を意味すると考えます。ノカセ(退かせ・野風) の異表現かもしれません。
辞書には 「南東の風、台風」 とありますが、それは後世の定義だと思います。


■初日 (はつひ)
「元日」 をいいます。この場合は旧暦の元日ですから、新暦に直せば 「立春の日」 です。


■二陽 (ふう・ふつを)
ヒの神が招来する 「2陽のエネルギー」 をいいます。

  支配期間 (陰暦) 神の陰陽属性 招くエネルギー 地上の気象
の神 11月半〜12月末 3陽1陰 1陽 3陰1陽
の神 1月初〜2月半 2陽2陰 2陽 2陰2陽
の神 2月半〜3月末 1陽3陰 3陽 1陰3陽
の神 4月初〜5月半 0陽4陰 4陽 0陰4陽
の神 5月半〜6月末 3陰1陽 1陰 3陽1陰
の神 7月初〜8月半 2陰2陽 2陰 2陽2陰
の神 8月半〜9月末 1陰3陽 3陰 1陽3陰
の神 10月初〜11月半 0陰4陽 4陰 0陽4陰


和す (やわす)
原義は 「陽と陰を融合して一つにする」 です。これは両極端を和して
「中和/緩和/調和する・やわらげる」 ことを意味し、例えば、酸とアルカリを和して
中性にするということです。このことから 「調えて直す」 という意味にも使います。

 アワス(合わす)とヤワス(和す)は似ていますが、少し違います。
 アワスは 「添える・くっつける・混ぜる・ぶつける」 という感じですが、
 ヤワスはもう少し深くて、「溶かす・融合させる・一つにする」 という感じです。
 “和(やわ)” が少し訛ったのが “融和(ゆうわ)” だろうと思います。


朮 (おけら)
邪気と悪臭を取り去るのに用いる習わしがあり、現在も京都の八坂神社で行われる
大晦日〜元旦の 朮祭には、オケラを加えた篝火が焚かれます。[画像]
古くは、いわゆるアマテルの “イワト隠れ” の時に、庭火として朮を焚いています。

 ウズメらに ヒカケを襷 茅巻矛 朮を庭火 笹湯花 神座の外の 神篝 〈ホ7-5〉


■若女水汲み (わかめみづくみ)
元日の朝に初めて汲む水を 「若水」 といいますが、水は陰から生じたものなので、
“若水汲み” は 若い女の役割だったようです。

 海女の朋 明けて群れ出る 若姫が 椀に若水 汲まんとす 〈ホ25-2〉


粢餅 (しとぎもち)
シトギは シトグ(為遂ぐ)の名詞形で、「完成・完全・欠けが無いさま」 が原義です。
ですから “しとぎ餅” は 「円満な餅・まんまるの餅」 という意です。
(丸いくぼみを持つ臼で搗いて そのまま取り出せば、自然にこうなります。)
これが 鏡餅」 の原形ではないかと考えています。

 モチ(餅)は モチ(望)+イヰ(飯) の略で、臼の中で 「大きくまるくなった飯」 を
 表します。モチ(望)は 望月の如くに 「円満な形・欠けの無い形」 を意味します。
 ですから シトギ(為遂ぎ) と モチ(望・餅) はもともと同義語です。


■環・巻かり (まかり)
フトマカリ(▽沸環) の略で、「練った粉を環状にして油で揚げた菓子」 です。
現在も マガリモチイ(環餅)ブト(伏兎) の名で残っています。 [画像]
古くはヰツナミチを退治するために、アマテルがタケミカツチに授けた
まじないの武器でした。

 タケミカツチに ふと環 賜えば 「急ぎ 奏でん」と
 タカノに到る ヰツナミチ 万の獣に 化け懸かる   〈ホ8-4〉


■榧 (かや) ■栗 (くり)
は 実を正月の食品として、あるいは飾りとして使います。
栗は おせち料理の “栗きんとん” となって今に残ります。


■うな (▽海菜)
「海藻」 のことですが、“昆布” を使うことが多いようです。 [画像]


野老 (ところ)
正月の祝いに飾ります。そのため “野老飾る” は新年の季語です。


■橘 (かぐ)
カグは タチバナ(橘)の別名で、「かぐわしきもの」 という意です。
今の辞書にも 香の菓(かくのこのみ) という名が残っています。
今風には 「みかん・だいだい」 で、鏡餅やしめ飾りに使います。


芋頭 (いもがしら・ゐもがしら)
「サトイモの親芋」 のことで、おせち料理や雑煮に使います。
子芋の方は “いもの子” と呼びます。


■親の寄り (しむのより)
正月に 「身内・親族が集まること」 をいうのでしょう。

 シムは シム(染む)の名詞形で、多くの意味がありますが、
 この場合は 親(しん)とほぼ同義で、「親しい人・親族・身内」 などを表します。
 親(しん)は もともと日本語なのだろうと思います。

 

【概意】
西南にいる風の神、ヒの神の嘗(御業)は、元日より二陽を融合する。
<民間では> 朮を焚き、若い女は若水を汲み、
粢餅・環・榧・ 栗・海菜・野老・橘・芋頭 を飾って、〈参考:蓬莱飾り
親族が寄り集まる。

 

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 ゆみつきのよは ゐのみつに ぬえあしもちか かたをゑお
 こけふはこへな いたひらな すすなすすしろ すせりなす
 なみそにのそく
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 弓月の夜は 亥の三つに ヌエアシモチが かた汚穢を
 ゴゲフ・ハコベ菜 イタヒラ菜 スズ菜・スズシロ スセリ・ナズ
 七みそに除く
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■弓月 (ゆみづき)
ユミハリヅキ(弓張月)と同じです。この場合は 「旧暦1月7日」 をいいます。


■亥の三つ (ゐのみつ)
これは時刻を表していると考えますが、ホツマ・ミカサには時刻の表現は
これ以外に例が無いため、‘ヰ’ の意味する所を類推することができません。
そのため仮にシナ由来の十二支をあてはめて、”亥の三つ” としています。
亥の三つは 「22時頃」 です。

〈参考〉御伽草子の七草草子に見える、七草と時刻についての説話
 ・1月6日までに7種類の草の集めておくこと。
 ・次の時刻に柳で作った器に種を載せ、玉椿の枝で叩くこと。
   酉の刻から芹
   戌の刻から薺
   亥の刻から御形
   子の刻から田平子
   丑の刻から仏座
   寅の刻から菘
   卯の刻から清白
 ・辰の刻からこれらの種を合わせ、東から清水を汲んできて、これを煮て食べること。


■ヌエアシモチ・ヌヱアシモチ
これは化けモノの名前と思われますが、不詳です。
語義としては ヌエ(▽萎)+アシ(▽褪)+モチ(▽没) かなと思ってます。
病気を引き起こすと信じられた疫病神の一種なのかもしれません。

 このハタレ ヌヱアシモチぞ 化け術に たぶらかす者 みな斬らん〈ホ8-7〉


■かた汚穢 (かたをゑ)
カタ+ヲヱ(汚穢) の同義語連結です。
カタは カツ(▽傾つ) の名詞形で、「曲り・傾くさま・それるさま」 などが原義です。
“がたが来る” という場合のガタは これです。
ですからこれも ヲヱクマ(汚穢曲)ヱヤミ(穢病・疫病) などの同義語です。
カサクサ(▽傾曲)と記している箇所もあります。


■七みそ (なみそ)
ミソは ミス(見す)の名詞形で、「合わせ・添え・付け」 を原義とし、
この場合は いわゆる七種粥 (当時は粥だったか不明) に添える 「具材」 をいいます。
七みその内訳は、ゴゲフハコベ菜/ハコベライタヒラ菜/イタヒラコ
スズ菜
スズシロスセリナズ/ナヅ です。

 

【概意】
弓月(1月7日)の夜は、亥の三つに ヌエアシモチの汚穢曲を
ゴゲフ・ハコベ菜・イタヒラ菜・スズ菜・スズシロ・スセリ・ナズ の
七の具に除く。

 

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 めをおえは もちのあしたは ひもろけの あつきのかゆに
 ゑやみよけ ささおけとんと もちやきて かゆはしらなす
 かみありの かゆふとまにや
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 陰陽合えば  十五日の朝は 霊守食の 小豆の粥に
 穢病避け 笹・オケ・ドンド 餅焼きて 粥柱なす
 神ありの 粥フトマニや
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■陰陽合ふ (めをおふ)
既存の2陰と、ヒ神が将来した2陽の勢力が拮抗するため、
「陰と陽がぶつかり合う・陰と陽がたたかう」 という意です。
それがまた汚穢の発生原因になります。そのため1月15日の朝に …

 アワス(合わす) と ヤワス(和す) の違いがはっきりわかる一例です。


■朝 (あした)
アス(▽明す)+タ(▽処・手) で、「改まるところ・新たになるところ」 が原義です。
一日が新たに始まる 「朝」 をいう場合と、日が改まる 「翌日・明日」 をいう場合が
ありますが、ここでは前者です。


■霊守食 (ひもろけ)
ヒ(霊)+モロ(▽守)+ケ(食) で、「神が宿る食」 を意味します。
これは 神あり粥(かみありかゆ/かゐ) などとも呼ばれます。


小豆の粥 (あづきのかゆ)
“霊守食” の具体例です。 ▶画像
アヅキ(小豆)は ア(天)+ツキ(付き・着き) のモノザネでしょう。


■笹 (ささ)
笹湯花(ささゆばな) の略です。
湯釜の熱湯に笹の枝葉を浸し、それを振り回して参列者に湯を掛けます。
これを湯花と呼び、身に浴びると一年中無病息災だといいます。
現在は 「湯立神楽・湯神楽」 などと呼ばれます。[画像]

 
■オケ
オケラ(朮)の略と考えます。


■どんど
「どんど火(ほ)」 の略で、現在は 「どんど焼き・左義長」 などと呼ばれます。[画像]

 
■粥柱 (かゆばしら)
どんどの炎で餅を焼いて “粥柱” をつくり、それを小豆粥に入れます。


■粥フトマニ (かゆふとまに)
焼き餅の粥柱に いくつ飯粒が付着するかで占います。
現在は 「粥占(かゆうら)」 と呼ばれます。

 

【概意】
陰と陽がぶつかり合うため、15日の朝は神の宿る小豆の粥に穢病をよける。
笹の湯花を浴び、オケラを焚き、どんどの火で餅を焼いて粥柱をつくる。
神のあらわる粥フトマニや。

 1月15日の行事は 別名 “六腑(むわた)まつり” と呼ばれます。

 

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 きさらきは めをほほやわし きさしおふ
 たねかしまつる いなるかみ のりゆみひらき
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 二月は 陰陽ほぼ和し 萌し生ふ
 種浸し 祭る 稲荷神 乗弓開き
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二月・如月・衣更着 (きさらぎ)
陰暦2月の異称です。
本来は キ(▽刻・亀) サラ(更)にキル(切る) の意で、受精後2ヶ月の人の胚が
「さらなる細胞分裂を起こすこと」 を意味するといいます。

 二月至れば 三日走り 皺さらに切る “キサラ” とて 母の謹み 〈ホ16-3〉


■陰陽ほぼ和す (めをほぼやわす)
勢力が拮抗して戦っていた 「陰と陽がほぼ融和/調和する」 ということです。


種浸 (たねかし)
「稲の種を水に浸して活性化すること」 をいいます。
“たなふて(種浸)” “たなひたし(種浸)” “たねつけ(種漬け)” 
“しんしゅ(浸種)” などとも呼ばれます。


■稲荷神 (いなるかみ・ゐなるかみ)
イナル/ヰナルは ユイナル(結い成る)の変態で、
作物を 「結んで成らせる神霊」 という意です。


■乗弓開き (のりゆみびらき)
ノリユミ(乗弓)は 「馬に乗りながら弓を射る」 ことをいい、
後世の 流鏑馬笠懸 と基本的に同じです。
この競技会は毎年2月最初の “シヱ” の日に開催されました。
シヱは 後世の干支では 午(うま) の日にあたり、
現在は 初午祭(はつうままつり) と呼ばれています。

 二月シヱ まつる乗弓 並ぶ頃かな 〈ホ192-2〉

 

【概意】
二月には陰と陽は ほぼ和し、草木は萌し生う。
種を浸して稲荷神を祭り、乗弓競技の開催。

 

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 もちまてに そこにふきたつ はつひかせ これかみかたち
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 餅 左右に 底に吹き立つ 初日風 これ神形
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 ヒの神の形 (すなわちヒのヲシテの形) を口述したものです。
 粥柱として使う2本の餅を ‘||’ で表し、‘’ は 「風」 を表します。
 “底” は 「寒さのどん底・大寒」 をいい、
 “初日風” は 「立春の風・春一番」 を意味します。



 ★アイウエオ
 言い忘れていましたが、日本語の5つの母音はそれぞれ
 五元素の 「空・風・火・水・埴」 を表します。

 ア () =空  イ () =風  ウ (△) =火  エ (己) =水  オ (□) =埴
 ←……………… 陽属性 …………………→   ←……… 陰属性 ………→

  アイウエオ 空・風・火と 水・埴の 交わり生れる ミナカヌシ 〈ホ18-2〉

 

【概意】
餅の柱を左右に立て、寒さのどん底に吹き立つ初日の春風。これ神形。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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