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徹底解説みかさふみ講座 第45回 [2023.3.17]

みかさふみ 嘗事の文 (6)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 なめことのあや (その6)
 嘗事の文 https://gejirin.com/mikasa07.html
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 かのなめは あのあかりもる
 ほつきなか みめにとくつき いものこの さわおいわいて
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 ‘カ’ の嘗は 天の明り守る
 八月半 三陰に磨ぐ月 芋の子の 多を祝いて
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■天の明り (あのあかり)
天(あ)は 「天よりの陽陰恵み」 を意味し、アカリ(明り)は ヒカリ(光)の変態で、
「陽」 の換言です。よって 「天よりの陽の恵み/エネルギー」 という意です。

 元元明の 陽陰恵み  届く柱は 透き通る 中の管より 運ぶ息 〈ミ6-7〉

  支配期間 (陰暦) 神の陰陽属性 招くエネルギー 地上の気象
の神 11月半〜12月末 3陽1陰 1陽 3陰1陽
の神 1月初〜2月半 2陽2陰 2陽 2陰2陽
の神 2月半〜3月末 1陽3陰 3陽 1陰3陽
の神 4月初〜5月半 0陽4陰 4陽 0陰4陽
の神 5月半〜6月末 3陰1陽 1陰 3陽1陰
の神 7月初〜8月半 2陰2陽 2陰 2陽2陰
の神 8月半〜9月末 1陰3陽 3陰 1陽3陰
の神 10月初〜11月半 0陰4陽 4陰 0陽4陰

カの神は3陰を招いて 地上を1陽3陰の気候に置き、結果として最後の1陽を守ります。
そのため “陽あげ神” (陽をあがらせる神・陽を終らす神) とも呼ばれます。
またこのアヤでは語られていませんが、カの神は西の空に坐します。

 ‘カ’ は西空の 陽あげ神 〈ミ9アヤ〉


■八月 (ほつき・はつき)
陰暦8月の異称で、ハツキ(葉月)と呼ばれることの方が多いです。
ハツキは ハツ(果つ)+ツキ(月)、ホツキは ホツ(▽秀つ)+ツキ(月) の短縮です。
ハツ・ホツともに 「行き着く・至る・極まる」 などが原義で、この場合は
「みのる・結実する・結果が出る」 などの意です。
ですから 「実りの月・成果の月・収穫の月」 を意味します。ホツミともいいます。

 
■三陰に磨ぐ月 (みめにとぐつき) ■芋の子 (いものこ)
「陰暦8月15日の望月(満月)」 をいいます。
今に言う 「十五夜お月さん・中秋の名月」 で、「芋名月」 ともいいます。

“三陰に磨ぐ” とは どういうことかよくわかりませんが、月は別名 “太陰” といい、 
いわば 陰の親です。すると “三陰” は 月の3匹の子供と言えるかと思います。
「3匹の子を得て、大きさと輝きに磨きがかかった月」、こんな意味と考えてます。

そう考えるのは、次に “芋の子” が出てくるからです。サトイモは芋頭(親芋)から
芋の子の塊がたくさん派生して大きくなりますが [画像]、収穫時期がこの頃です。
それゆえ 月を親芋に、3陰を芋の子になぞらえているのではないかと思うのです。
そのためか 9アヤでは “似た子持ち月” また “芋果月”(いもはづき) と呼ばれてます。

 八月半より 三陰の磨ぐ “似た子持ち月” “芋果月” 〈ミ9アヤ〉


■多・沢 (さわ)
沢山(たくさん)という意で、“騒ぐ” のサワと同源です。
辞書は “” と宛てています。

 

【概意】
カの神の嘗(御業)は 天の明りの1陽を守る。
8月半ば 3陰に磨ぐ月が現れる。芋の子の豊作を祝って。

 

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 なかつきは おおとしつける ここのみはかさね
 ここくり ひとよみき こもちつきには まめおそふ
 もちよりさむる をかまつり
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 九月は おおとし告げる 菊の衣重ね
 菊・栗 一夜酒 小望月には 豆を添ふ
 十五日より侍る 陽香祭
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ここは五七調が少々いびつなため言葉の区切りを調整しています

■九月・長月 (ながつき・なつき)
陰暦9月の異称です。ナガ(長)は 「長けるさま・至り・きわまり」 を意味し、
これは きわまりの数である 「九」 を表すものと考えます。
あるいはまた、ココナガツキ(九菜が月・菊菜が月) の略かもしれません。 ▶ココナ


■おおとし (大年・大歳)
オフ(老ふ・逐ふ・終ふ)+トス(▽遂す・▽達す) の同義語連結の
名詞形で、「達成・成就・完成・完遂」 などが原義です。
この場合は ココ(九) と同義で、「きわまり・至り・究極」 を意味し、
ココ・キク(九・菊) にかかる枕詞と考えてます。

 後代は 「大みそか」 「豊作」をいうようになりますが、ここでは原義通りの意味
 であるため、漢字から受ける先入観を避けようと “おおとし” としています。


■菊・九 (ここ)
ホツマ・ミカサにおいては、植物の 「菊」 は “きく” と呼ばれる場合もありますが、
ココ(九) あるいは ココナ(九菜)、ココナシ(九成し) と呼ばれることが多いです。
ココ(九)は 「至り・きわみ・至高・究極」 を意味し、菊はそれを体現する花と
考えられていたようです。“きく” は 極(ごく・きょく) の変態だと思います。
“九” を 「至高・究極」 とする源は アメトコタチの九星 にあると考えられます。

 ココナ 日月の 霊胤ゆえ 食えば目の玉 明らかに
 合ひ求むなり 陽陰の道 なす人 神に 合ひ求む
 故に
ココナシ 愛つむこれかな     〈ホ15-8〉


■菊の衣・九の衣 (ここのみは)
もともとはアマテルが愛し、神をまつる時に召した祭礼用の衣(みは)で、
アマテルが帰天する際、遺品としてウガヤフキアワセズに授けています。
その紋様デザインは ココチリ(菊散り・九散り) と呼ばれます。
当時のココチリがどのような図柄だったかは不明ですが、皇室の菊の紋は
これに由来すると考えられます。

・小葵の御衣 菊散りと ヤマハ留色の 三つの紋
 神の装ひの 御衣裳なるかな                〈ホ26-4〉
・カスガは君に奉る 神のヲシテと 差使の冠と 衣裳は菊散りぞ〈ホ28-4〉


■菊・栗 (ここくり)
この場合は、陰暦9月9日の 「菊の祝」 と、9月13日の 「栗の祝」 をいいます。

ココの日(九・九の日・9月9日)に語呂合せして、ココ(菊)の開花を祝います。
後代には 菊の節句菊の宴重陽 などと呼ばれます。

“栗の祝“ は、陰暦9月13夜の 「月見の祝」 で、栗を備えて名月を祝います。
後代には “栗名月” と呼ばれるようになります。


■一夜酒 (ひとよみき)
「一夜の酒宴」 という意味でしょう。
辞書にある 一夜酒 とは違うように思います。


小望月 (こもちづき)
「望月の前夜」、すなわち 「陰暦14日の月」 をいい、
この場合は 「陰暦9月14日の月」 です。
後代には 「豆名月」 と呼ばれますが、13日夜の “栗名月” と混同されました。

 
■侍る (さむる)
サムラフ(候ふ・侍ふ)の母動詞で、「合わす・寄る・付く」 などが原義です。
この場合は 「身を合わす・仕える・つとめる・行う」 などの意となります。


■陽香祭・生姜祭 (をがまつり)
ヲガは “陽香” の意で 今に言うショウガ(生姜)だろうと思います。
またミョウガ(茗荷)は メガ(陰香)と呼ばれてました。
現在も各地で “しょうが祭” や “はじかみ祭” と称する祭が行われていますが、
それらはこの “ヲガ祭” に連なるものかもしれません。
縁起・由緒は語られていませんが、六ハタレのキクミチを、椒(はじかみ)の
生姜と茗荷をいぶして退治したことに由来するかと考えてます。

 「クは煙の 陽の放を厭ふ 椒の 陽香・陰香 燻べ 拉がん」 と 〈ホ8-6〉

【概意】
9月は 究極を意味する菊の衣を重ね着して、
菊(9日)と栗の祝(13日)に一夜酒。小望月(14日)には豆を添える。
15日より身を合わす生姜祭。

 

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 まとかのなかの みはしらは かのかみかたち
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 円の中の 実柱は "カ" の神形
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カの神の形 (すなわちカのヲシテの形) を口述したものです。
円(まどか) ‘○’ の中に、実柱(=中柱) ‘h’ が立つ。
まったくそのまんまです。


【概意】
円の中の実柱は ‘カ’ の神形。

 

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 みのなめは そのめたえにて
 かみなつき うめしりそけて しくれなす
 ややそこにみち をおつくす かれををなむち かなつきに
 ぬるておたきて もろかみに もちゐほとこし
―――――――――――――――――――――――――――――
 ’ミ’ の嘗は その陰 妙にて
 十月 大陰 退けて 時雨なす
 やや底に充ち 陽を尽くす かれヲヲナムチ 神無月に
 ヌルデを焚きて 諸守に 餅飯ほどこし
―――――――――――――――――――――――――――――

■ミの嘗 (みのなめ)
「ミの神の御業」 という意です。ミの神は0陰4陽の属性を持つ神で、
そのゆえに4陰を招いて、地上を0陽4陰の気象下に置きます。

  支配期間 (陰暦) 神の陰陽属性 招くエネルギー 地上の気象
の神 11月半〜12月末 3陽1陰 1陽 3陰1陽
の神 1月初〜2月半 2陽2陰 2陽 2陰2陽
の神 2月半〜3月末 1陽3陰 3陽 1陰3陽
の神 4月初〜5月半 0陽4陰 4陽 0陰4陽
の神 5月半〜6月末 3陰1陽 1陰 3陽1陰
の神 7月初〜8月半 2陰2陽 2陰 2陽2陰
の神 8月半〜9月末 1陰3陽 3陰 1陽3陰
の神 10月初〜11月半 0陰4陽 4陰 0陽4陰

なおこのアヤでは語られていませんが、ミの神は東南に坐します。

 ‘ミ’ は東南に住む その陰 振り 陽神退く 初時雨 〈ミ9アヤ〉

 
■その陰 (そのめ)
「ミの神が招く4陰」 をいいます。


■妙 (たえ・たゑ)
タフの名詞形で、タフはトフ(飛ぶ・跳ぶ)・トム(富む) などの変態です。
「上にある・高まる・優れる・勢いがある・栄える」 などが原義で、
ここでは 「勢いの強いさま・強力・猛烈」 などを意味します。


■十月・神無月 (かみなつき・かなつき)
陰暦10月の異称です。意味は 「神のいなくなる月」 ですが、
ここに言う ‘神’ は 「陽の神・陽のエネルギー」 のことです。


■大陰 (うめ)
「4陰」 の別称です。


時雨 (しぐれ)
シケル(湿気る)の母動詞 シク (“しくしく泣く” のシクです) の、
連体形 シクル の名詞形と考えます。ですから 「湿り」 が原義です。


ヲヲナムチ


■ヌルデ
ウルシ(漆)などの 「ヌルヌルを出す木」 の総称と考えます。
現在は “白膠木” という ウルシ科の特定の木を指す名となっています。

 “かれヲヲナムチ 神無月にヌルデを焚きて 諸守に餅飯ほどこし”
 この記述が 「神無月は 出雲国では神在月」 という伝説の根拠となった
 のではないかと思います。

 

【概意】
’ミ’ の嘗は、その陰は強力で、
十月、大陰が <陽を> 退けて時雨となす。
<大陰は> 次第に地底に充ちて陽を尽くす。
ゆえにヲヲナムチは神無月にヌルデを焚いて <暖を取り>
諸守に餅飯をほどこす。

 

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 しもつきは ややめかのほる しもはしら
 ひらきはつくさ つほみさす
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 十一月は やや陰が上る 霜柱
 柊・初草 つぼみ差す
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■十一月・霜月 (しもつき)
陰暦11月の異称です。
シモ(霜・下)は シム(凍む)の名詞形で、「下がる・低まる・寝る」 などが原義です。
陰暦11月は シモツキ の他に “ツキ”、“シモ” とも呼ばれます。

 ‘ネ’ は キツサ のそれで、「太陽がるさま」 を意味します。そしてこれは
 「北」 の方位を表すのですが、シナ由来とされる、方位を十二支で表した図でも、
 北は 子(ね) と書かれています。また 子月 という言葉もあります。


霜柱 (しもばしら)


柊 (ひらぎ)
ヒラ+キ(木) で、ヒラは ヒルの名詞形で、“ひりひりする” の ヒリの変態。
またヒラは イラ()の変態でもあり、イラはイル(射る)の名詞形です。
ですから 「ひりひりする木・射る木・刺す木・トゲの木」 などの意です。



■初草 (はつくさ)
ハツヒグサ(初日草)とも呼ばれ、今に言う 「元日草」 と思われます。
別名が 「福寿草」 です。

 

【概意】
11月は 次第に陰が地表に上って霜柱となり、
柊と初草は蕾を出す。

 

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 はによりかせの ひとゐたつ これかみかたち
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 埴より風の 一射立つ これ神形
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ミの神の形 (すなわちミのヲシテの形) を口述したものです。
ハニ(埴)を 「地平・地平線」 に見立て、それを ‘―’ で表し、
 ‘∩’ はカゼ(風)を表します。地の底から 一射 ‘↑’ が立ちます。
これもそのまんまです。

 

【概意】
埴より風の一射が立つ。これ神形。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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