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徹底解説みかさふみ講座 第44回 [2023.3.11]

みかさふみ 嘗事の文 (5)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 なめことのあや (その5)
 嘗事の文 https://gejirin.com/mikasa07.html
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 ほのかみきねに なめうけて はのふめもりて
 あふみまつ ふめにやわして かせとなす
 ゆみはりにうむ いうとあさ をとたなはたの ほしまつり
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 ’ホ’ の神 東北に 嘗 受けて 地の二陰 守りて
 七月先づ 二陰に和して 風となす
 七日に績む 木綿と麻 復棚機の 星祭
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■地の二陰守る (はのふめもる)
「地上の2陰を確保する」 という意で、それはつまり 天地届く柱の中の管を通じて
アメノミヲヤの息から 「2陰のエネルギーを抽出して地上に招く」 ということです。

 元元明の 陽陰恵み  届く柱は 透き通る 中の管より 運ぶ 〈ミ6-7〉

  支配期間 (陰暦) 神の陰陽属性 招くエネルギー 地上の気象
の神 11月半〜12月末 3陽1陰 1陽 3陰1陽
の神 1月初〜2月半 2陽2陰 2陽 2陰2陽
の神 2月半〜3月末 1陽3陰 3陽 1陰3陽
の神 4月初〜5月半 0陽4陰 4陽 0陰4陽
の神 5月半〜6月末 3陰1陽 1陰 3陽1陰
の神 7月初〜8月半 2陰2陽 2陰 2陽2陰
の神 8月半〜9月末 1陰3陽 3陰 1陽3陰
の神 10月初〜11月半 0陰4陽 4陰 0陽4陰


■七月 (あふみ)
“アフミ月” の略です。アフミは アフ(合ふ)+フム(踏む) の短縮の名詞形で、
両語とも 「合い/合わせ・間(あい)・相(あい)・中・半・対」 などを意味します。
ですからアフミ月は 「中間の月・後半初めの月」 を意味します。
アフミ月は短縮されて アフ月(合月)、フミ月(文月)、フ月(文月) とも呼ばれます。

 アフミには 「中間」 の意味に加えて、「ふたつで一つ・一対・相」 の意味があり、
 例えば 馬具のアブミ(鐙)はこれです。腎臓も ホツマでは “アフミ” と呼ばれます。
 また2本の足の連携プレーである アユミ(歩み)は アフミの変態です。


■先づ (まづ)
現在は 「はじめに・最初に」 という意の副詞として使われることが多いのですが、
ここでは “まずは” “ひとまず” と言う場合のそれで、「はじめ・最初」 を意味します。


■風となす (かぜとなす)
「秋の風を吹かす」 という意で、七十二候の “涼風至(すずかぜいたる)” と同じです。
二十四節気で言えば “立秋” です。


■七日・弓張 (ゆみはり)
弓張月” の略で 「上弦の月」 をいい、「毎月7日」 をこう呼びます。
下弦の月の日(毎月23日)は “末の弓張・下つ弓張” などと呼びます。
ここでは陰暦(=旧暦)の7月7日をいい、
陽暦(=新暦)に直せば 8月の中ほど、お盆の1週間ほど前です。

 筆者は タナバタとお盆は一連の行事で、
 タナバタは お盆の前夜祭的なものだったと考えています。


■績む木綿と麻 (うむいうとあさ)
ウム(績む)は アム(編む)、ユフ(結ふ) などの変態で、「合わす・交える・結ぶ」
などが原義ですが、特に 「繊維質の素材をより合せて糸を作る」 ことをいうようです。
ツムグ(紡ぐ)ともいいます。

イウ/ユフは “結ふ” の名詞形で、「結び合すもの・結び合せたもの」 が原義です。
ここでは “木綿” と宛字しましたが、現在のモメン(木綿・cotton)とは異なります。
不詳ではありますが、「ユキという植物の繊維を素材とする糸や織物」 を
指すらしく、モメンと同様、縮みやすくて滑りにくい性質を持つようです。

・夏はヌサ 績みてヌノ織り 冬はユキ 縒りてユフ織り 〈ホ23-3〉
・絹は用ひず 縮み布 縮める
ユフで 八尺二つ     〈ホ192-2〉
・かけ橋の すべれば
ユフの 足袋付けて        〈ホ24-9〉

アサ(麻)については ホツマ・ミカサに これといった説明はありません。
アシ(葦:繁茂する雑草全般)からつくった糸や織物の総称かと考えてます。

 なぜイウ/ユフとアサの糸を績むかといえば、おそらく
 天と地・神と人 を 「ユフ(結う)、アス(▽合す・▽圧す) ための糸をつむぐ」
 という意味でしょう。


■復棚機 (をとたなばた・おとたなばた)
タナバタ(棚機)は 「機(布)を織り連ねること」 また 「織り連ねた機(布)」 をいいますが、
ここでは 夜空に広がる星の帯を、織り連ねた機(布)に見立てて “棚機” です。
今はこれを 天の川 と呼んでます。
オト/ヲト(▽復)は オツ(復つ)の名詞形で、「往き来・循環・反復・くり返し」 を
意味します。“復棚機” は 「くり返し織り連ねた機(布)・無限に伸び広がる機(布)」
という意味で、棚機=天の川 の壮大さを強調した表現です。


■星祭 (ほしまつり)
ホシ(星)は 地上社会の基礎造りを終えた後に 「星となされた四十九の神」、
つまり 「クニトコタチの七代の神」 をいい、マツリ(纏り・祭)は その神々に
「心を纏わすこと・思いを寄せること」 をいいます。

 

【概意】
ホの神は東北にて嘗(御業)を引き継ぎ、地上の2陰を確保する。
7月の初め、2陰に <既存の2陽を> 和して秋風を吹かす。
<民間では> 7日に木綿と麻の糸をつむぎ、<それを以て天と地を結び>
棚機(=天の川)の星となった神々に思いを寄せる。

 星となった神々の纏りで天-地の通路を開いた後、各家の先祖の神霊を纏ります。
 「お盆」 です。後世は お盆(おぼん)・盂蘭盆(うらぼん) と呼ばれてますが、
 ミカサの9アヤは  “シムノモチホギ” (親の十五日祝) と呼んでいます。

 

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 もちはみをやと いきたまに ゑなのはすけの めをあえは
 あおきおとりて いおうくる
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 十五日は御祖と 生霊に 胞衣の蓮食の 陰・陽 会えば
 仰ぎ踊りて 意を受くる
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■十五日・望 (もち)
望月(もちづき)の略で、「陰暦の毎月の15日」 をいいます。
モチ(望)は ミチ(満ち)の変態で、望月= 満月 です。
この場合は 「陰暦(旧暦)の7月15日」 で、今に言う 「お盆」 です。


■御祖・上祖 (みをや)
ミヲヤの ‘ミ’ は カミ(上)の略形で、「上流・過去・前・先・もと」 などを
意味します。ですからミヲヤは 今風に言えば 「先祖」 です。


■生霊 (いきたま)
「地に生きる神霊」 の意で、これは 「肉体に宿る神霊」 をいい、
つまりは 「地上の人間」 の別名です。今は 生霊(せいれい) と呼ばれます。

 天に還った先祖の神霊が “御祖”、地に生きる子孫の神霊が “生霊” で、
 その両者が再会する行事が 「お盆=親の十五日祝」 です。


■胞衣の蓮食 (ゑなのはすけ)
ハスケ(蓮食)は ハスヰヰ(蓮飯)ともいい、後代はハスメシ(蓮飯)と呼ばれます。
これはお盆の食べ物で、「蓮の葉に飯を包んだ料理」 です。
御祖
生霊の再会を 「母の胞衣に包まれる子」 になぞらえ、
それを 「蓮葉に包まれる飯」 で表現したものと考えられます。

なぜ蓮の葉か? については、
蓮の葉は水面の上にあり、水下にある地の根と隔てられていますが、
これを 「天にいる先祖と地の子孫の関係」 になぞらえたと考えています。


■陰陽 (めを)
この場合は 「地と天・下と上・子と祖」 の意です。
陽陰=天地=上下 です。


■仰ぎ踊る (あおぎおどる)
地上の子孫が天の先祖と意識を交えようと、天を仰いで踊ります。
天(ア)と地(ワ)を合わす(アワス)ので、アワ踊り(天地踊り・阿波踊り)
なのでしょう。つまり “アワ踊り” は “盆踊り” の古名と考えます。

 
■意・気・霊・射 (い・ゐ)
「意識」 の意味に解して “意” と宛てました。“気”  ”霊”  “射” でも同じです。

 

【概意】
7月15日は “先祖と子孫” に、胞衣の ”蓮” と 子の “飯” をなずらえて
“地と天” が再会すれば、仰ぎ踊りて先祖の意識を感受する。

 

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 ほつみはつひは うけまつり
 ふめたつかせに かやおふす ふしあれのわき そろをゑは
 しなとまつりに のわきうつ ほをのはらゐぞ
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 八月初日は ウケ祭
 二陰立つ風に 萱を臥す 臥し荒れ 野分き ソロ穢えば
 シナト祭に ノワキ打つ 蝕の祓ぞ
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■八月初日 (ほつみはつひ)
「陰暦(旧暦)の8月1日」 です。
後代には 八朔(はっさく) と呼ばれるようになります。
現在も “八月一日” と書く苗字が存在し、ほづみ/ほずみ と読みます。

 ホツミは ホツム(▽秀つむ)の名詞形で、「行き着くこと・至り・極まり」
 などを原義とし、ここでは 「実り・成果・収穫」 などを意味します。
 そのため刈り入れの月である陰暦8月を “ホツミ” とも呼びます。


■ウケ祭 (うけまつり)
ウケは ウカ・ミケ・イケ などの変態で、イケ(生け・活け) が原義です。
「生かし・活かし・勢いづけ・糧」 などを意味しますが、この場合は
それらを守る ウケの神霊(みたま) をいい、別名が 稲荷神 です。
マツリ(纏り・祭)は この神に 「心を纏わすこと・思いを寄せること」 をいいます。
“ホツミの祭” とも呼ばれ、今風に言えば 「秋祭収穫祭・感謝祭」 でしょう。

 陰暦8月1日に行われるこの祭が、収穫(稲刈り)の前だったのか?
 稲刈り後だったのか? 地域によってどちらの場合もあったのか?
 については不詳です。


■萱を臥す (かやおふす)
カヤ()は ここでは 「草木全般」 をいうものと思います。
フス(伏す・臥す)は 「倒す・寝かせる」 の意です。


■臥し荒る (ふしある)
「臥し荒らす」 の意で、アラス(荒らす)は “食い荒らす” のそれと同じでしょう。
「乱暴にあちこち倒してまわる・片っぱしからなぎ倒す」 などの意と思います。


■ソロ (▽揃・▽繁)
ソロフ(揃ふ)の母動詞 “ソル” の名詞形で、「備わるさま・充足・実り」
などを原義とし、ここでは 「作物」 をいいます。


■穢ゆ・瘁ゆ (をゆ)
「曲る・それる・外れる・異常となる・病む」 などの意です。
ヲヱ(汚穢)の母動詞であるため “穢ゆ” と宛字しています。


■野分く (のわく) ■野分 (のわき)
「野を分ける」 の意で、強風が草をなぎ倒して野を分けることをいいます。
またその強風、今に言う台風を ノワキ(野分) といいます。[画像]


■シナト祭 (しなとまつり)
風を鎮めるため 二百十日二百二十日 の前後に行う祭で、
今に言う 「風祭」 です。

 ★シナト (科戸・級長戸)
 「風を司る自然神」 で、シナトベ(級長戸辺)ともいいます。
 ヤマサ神の一柱です。

 
■蝕 (ほを)
ホユの名詞形で、ホユは ハユ(蝕ゆ)の変態です。
「侵蝕・虫食い」 を意味します。

 

【概意】
8月1日はウケミタマの祭。
2陰の起こす風が草木を倒す。片っぱしからなぎ倒して野を分け、
作物が病むため、シナト祭(=風祭)に野分を鎮める。蝕の祓ぞ。

 

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 かたちはに ふはしらたちて むつましく これかみかたち
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 形 埴 二柱立ちて 睦まじく これ神形
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ホの神の形 (すなわちホのヲシテの形) を口述したものです。
‘ロ’ は 「」 を表し、‘||’ が 「二柱」 を表します。
‘ロ’ は四方の囲みであり、これはすなわち 「国」 を意味します。
二柱は 「夫婦一対の君(木実)・日月の君」 を意味します。
“睦まじく” は 「日月の君が陰陽和合しているさま」 をいいます。
これは理想的に統べ治まる国の典型を表します。

 

【概意】
埴の形の中に2柱が立ちて和合なす。これ神形。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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