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一から学ぶ みかさふみ講座 第19回 [2022.7.6]
みかさふみ 一女三男の文 (2)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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ひめみをのあや (その2)
一女三男の文 https://gejirin.com/mikasa03.html
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しかれとちちは すすよそほ はははみそひほ あめのふし
やとれはあたる ちちのをゑ をのこはははの くまとなる
みとせいつくし たらされと いわくすふねに のせすつる
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しかれど父は 鈴四十穂 母は三十一穂 陽陰の節
やどれば当たる 父の汚穢 男の子は母の 隈となる
三年慈くし 足らざれど イワクス船に 乗せ捨つる
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■しかれど (然れど)
“しく(如く・若く・及く)+あれど”
の短縮です。
■鈴四十穂 (すずよそほ)
スズ(鈴・▽寿)は、ここでは 「年齢」 を表します。
ホ(穂)は 「真榊が1年に伸ばす枝の長さ」
で、1穂=1年 です。
スズ(鈴・▽寿)は スス(▽進す)の名詞形で、
「進展・経過・熟成・老い」 などが原義です。
■陽陰の節 (あめのふし・あわのふし)
「陽陰(日月)の区切り・陽陰(日月)のリズム」
などの意ですが、
ここではそれに起因して起こる
厄年(やくどし) をいいます。
“陽陰の節” については、ホツマの1アヤに若干のヒントがあります。
ハナキネは 五七に綴るを 姉に問ふ 姉の答えは “陽陰の節”
… … 天の回りの 三六十五回 四つ・三つ分けて 三十一なり
月は遅れて 三十足らず まこと三十一ぞ
しかれども 後前(=陰陽・日月)かかり 三十二日も
粗る間うかがふ 汚穢モノを 祓ふは歌の 声余 〈ホ1−5〉
しかしながら、どういう理論・計算で 男の42歳と女の33歳が
“陽陰の節 (厄年)”
に当たるのかについては説明がありません。
■やどれば当たる (やどればあたる)
ヤドルは「留まる・滞る・行動せずに居る」などを原義とし、
ここでは「停滞する・その状態が続く」という意です。
“やどれば当たる” は
「このままでは当たる・ほおっておけば当たる」
という意味になります。そのため “宿る”
と宛字するのを避けています。
■汚穢 (をゑ)
ヲヱ(汚穢)は
ヲユ(瘁ゆ)の名詞形で、「よごれ・けがれ」
を意味しますが、
原義は 「曲り・ねじけ・それ・外れ・異常」 などです。
したがって反対の意味は 「直・まっすぐ・正常」
となります。
■隈 (くま)
クマ(隈・曲・阿)は
ヲヱ(汚穢)の同義語です。
やはり 「曲り・ねじけ・それ・外れ・異常」
などが原義です。
クマは クムの名詞形で、クムは クルフ(狂ふ)の母動詞 “クル” の変態です。
■慈し (いつくし)
イツク(傅く)+シク(如く)
から ‘ク’ を省いたク語法で、
「いつくしむこと・いつくしみ」 と同じです。
■イワクス船 (▽斎奇船/▽汚穢薬船)
イワクス船は 「栄して恵む船」 の意で、「御幸の船」
をいいます。
イワ(▽斎)は イワヒ(斎ひ・祝ひ)と同じ、クスは クス(▽奇す)の名詞形で、
両語とも 「高めること・栄すこと・照らし恵むこと」
を意味します。
イワクスにはもう一つ、イワ(▽汚穢)+クス(薬)
の意を重ねます。
イワは ヲヱ(汚穢)の変態、クスは 「直し・癒し・祓」
を表し、
「曲りの直し・汚穢の祓」 という意です。
つまりヒルコの汚穢を祓うために、そのモノザネとして御幸の船に
乗せたというわけです。
【概意】
しかし<ヒルコが生まれた時>、父のイサナキは40歳、
母のイサナミは31歳で、<もうすぐ>どちらも陽陰の節(=厄年)。
このまま放置すれば、女子には父の汚穢が当たり、男子は母の隈となるため、
いつくしむこと3年にも満たぬが、イワクス船に乗せて捨てる。
ミカサの1アヤでは以下のように記されていました。
後に一姫を 生む時に 昼なれば名も “ヒルコ姫”
年を越ゆれば タラチネの 四十二・三十三の 汚穢隈も
女は ‘タ’ 男は ‘ラ’
に 当たらじと 捨つを 〈ミ1-4〉
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をきなひろたと にしとのに ひたせはのちに
ふたはしら うきはしにゑる おのころの
やひろのとのに たつはしら めくりうまんと
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翁 「拾た」 と 西殿に 養せば 後に
二柱 うきはしに得る オノコロの
ヤヒロの殿に 立つ柱 回り生まんと
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■翁 (をきな)
ヲキナは 「大きなる者」 の略で、「老熟の者」
を表します。
ここでは スミヱの翁
をいい、これはカナサキの別名です。
■西殿 (にしとの)
西宮(にしのみや)と同じです。西宮は
ヒロタの宮の別名でした。
カナサキ思えらく 子の早枯れの 痛みをも
乳を得し成すが 忘れ種 拾う “ヒロタの宮” 造り
育て上ぐまで カナサキの 常の教えは 御言宣 〈ミ1-4〉
廣田神社 (ひろたじんじゃ)
兵庫県西宮市大社町7-7。
現在の祭神:天照大御神荒魂 (撞賢木厳之御魂天疎向津媛命)
第一脇殿 :住吉三前大神
・廣田神社は、京の都から西方にある特別に重要な神社ですので、
中世の貴族達は 「西宮」 と別称し、当社への参拝を
「西宮参拝」、
「西宮下向」 と称しました。
西宮神社 (にしのみやじんじゃ)
兵庫県西宮市社家町。
現在の祭神:西宮大神 (蛭子神)
・当社の社伝では、蛭子命は西宮に漂着し、
「夷三郎殿」
と称されて海を司る神として祀られたという。
■養す
(ひたす)
イタス(致す)やミタス(満たす)の変態で、
「育てる・仕立てる・養う・潤す」 などの意を表します。
ヒタスは ヒツ(▽秀つ)+タス(▽達す)
の同義語短縮で、
両語とも 「上げる・高める・栄す・至らす」
などが原義です。
■二柱 (ふたはしら)
「イサナキ&イサナミの二尊」 は “二柱”
とも呼ばれます。
その理由はこのアヤの最後で語られます。
■うきはしに得るオノコロ (うきはしにゑるおのころ)
「うきはし(ヒタカミ国と根国の協力)によって得た
オノコロ(中央政府・都)」 という意です。
■ヤヒロの殿 (やひろのとの)
二尊がうきはしに得た中央政府の都は オキツの宮(▽奥つの宮)
あるいは
オキツボ(▽奥壺) と呼ばれました。オキ(▽奥)は
「中・中心」 を意味します。
“ヤヒロの殿” はその都に建てた皇殿の名です。
ヤヒロ(八紘)は 「八方に広がるさま・八方に響くさま」
を意味します。
■立つ柱 (たつはしら)
「ヤヒロの殿の中柱(なかはしら)」 を指します。“中柱”
は建造物の中央に
立てる柱をいいますが、この場合は国家の都の皇殿の中柱ですから、
それは国家の中心(都)の、そのまた中心(皇殿)の、さらにその中心(中柱)を
意味します。つまり国家のど核心です。
【概意】
スミヱの翁が 「拾った」 と西殿にヒルコを育て上げれば、
後に二柱は、根国とヒタカミ国の協力によって得た中央政府の都の、
“ヤヒロの殿” に立つ中柱を回って生もうと、
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ことあけに めはひたりより をはみきに わかれめくりて
あふときに めはあなにえや ゑをとこと
をはわなうれし ゑおとめと うたひはらめと
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言挙げに 女は左より 男は右に 分れ回りて
会ふ時に 女は 「あなにえや 愛男」 と
男は 「わな嬉し 愛女」 と 歌ひ孕めど
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■言挙げ
(ことあげ)
「言葉を発すること・声を上げること」 をいいます。
“言立ち(ことたち)” “言立て(ことだて)”
とも呼ばれます。
言葉を発するのは、意思を現象させる
(目に見える形として現す)
ためですが、これについては少しあとに述べます。
■左 (ひだり) ■右 (みぎ)
“左” は日が昇る 「東」 の同義語、“右” は日が沈む
「西」 の同義語です。
■あなにえや/あなにゑや
「ああ麗しや・なんと素晴らしや」
というような意味です。
アナは 「ああ・おお・わお・なんと」
などと同様の感嘆詞ですが、
これは “はなはだし” の
ハナの変態で、「至って・極めて」 の意を表します。
ニエ(▽和/▽熟)は ニユ(▽和ゆ・似ゆ/煮ゆ)の名詞形で、
「心に合うさま・好むさま」 また
「心が熟すさま・心が潤うさま」 を表します。
ヤは終助詞です。
■愛男 (ゑをとこ) ■愛女 (ゑおとめ)
ヱは “合・会” が原義で、この場合は
「心に合うさま・好むさま」 を表します。
そのため “愛” と宛てています。
オトメは、辞書は
“少女・乙女” と漢字を宛てて 「若い女・少女」
の意と説明し、
確かにその意味に使う場合もあるのですが、ここでは単純に
「女」 を意味します。
なお、ヲトコとオトメの、“ヲ” と
“オ” の違いに注意してください。これは
“大” と “小” の関係、すなわち ウス(上下・陽陰)
の関係を表すものです。
■わな嬉し (わなうれし)
ワナは アナと同様の感嘆詞ですが、アは 「陽・天・男」
に、
ワは 「陰・地・女」
に対応することに留意する必要があります。
【概意】
言挙げに、女は左(東)より、男は右(西)より 分れて回り、
二人が会う時に、女は 「ああ麗しや 愛しき男」と、
男は「わあ嬉し 愛しき女」と、
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うたひはらめと つきみてす
ゑなやふれうむ ひよるこの あわとなかるる
これもまた このかすならす あしふねに なかすあはちや
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歌ひ孕めど 月満てず
胞衣破れ生む ヒヨルコの 泡と流るる
これもまた 子の数ならず 葦船に 流す淡路/吾恥や
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■月満てず (つきみてず)
妊娠期間の 「月を満たさず」という意味です。
今は十月十日(とつきとおか)といいますが、ホツマでは
女児の場合は十月、男児の場合は一年としています。
男の子は年に 女は十月 イキス好ければ 生むも安きぞ 〈ホ16-5〉
■胞衣 (ゑな)
「胎児を包む膜と、それを胎盤につなぐ臍の緒」
をいいます。
また 「育成の基盤/母体」 の意味にも用います。
■ヒヨルコ
流産で生れた子の名です。
ヒヨルは “ひ弱” と同じ意ではないかと考えてます。
■泡 (あわ)
アワ(泡)は 「あぶく」 のことですが、
同時にその「淡くはかないさま」 を表現しています。
■葦船 (あしぶね)
「草で造った船」 です。はかない船です。
はかなく流れたヒヨルコを、はかない葦船で流したというわけです。
なお 記紀の記述は、ヒヨルコとヒルコを混同しているようです。
■淡路/吾恥 (あはぢ)
これはアハツ(淡つ)という動詞の名詞形です。
アハツは「淡くなる・薄くなる・弱る」などの意です。
これは泡のように儚く流れたヒヨルコの生れた場所を表します。
またこれに “吾恥” (=我が恥) の意を重ねています。
誤りて 穢るる時に 孕む子は 必ず粗るる
前後(=陽陰・日月) 乱れて流る 我が恥を 〈ホ7-7〉
【概意】
歌って孕みはしたものの、十月を満たさず、
胞衣が破れて生れたヒヨルコは泡と流れる。
これもまた子の数とならず、葦船に流す淡路(吾恥)や。
本日は以上です。それではまた!