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徹底解説みかさふみ講座 第30回 [2022.10.27]

みかさふみ 春宮の文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 はるみやのあや (その3)
 春宮の文 https://gejirin.com/mikasa05.html
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 のちひわひこに みことのり なんちくにゑお うつすへし
 やまとめくりて みなゑかく
 きみはみやこお くにのさに うつすはやたみ ううくため
 おもひかねして つくらしむ なりていさわに みやうつし
―――――――――――――――――――――――――――――
 後 ヒワヒコに 御言宣 「汝 国絵を 写すべし」
 ヤマト巡りて 皆 描く
 君は 「都を 国の南に 移すは八民 ううくため」
 オモヒカネして 造らしむ 成りてイサワに 宮移し
―――――――――――――――――――――――――――――

■ヒワヒコ (▽日生彦)
タケミカツチ(武甕槌)の別名で、トヨケ(斎名タマキネ)の曾孫です。
ヒノハヤヒコ(▽日の生彦)、ヒサヒコ(▽日覚彦)とも呼ばれます。
いずれも 「ヒタチ(日立・常陸)の国を治める臣」 を意味しますが、
その身分となるのは もう少し先の話です。

 トヨケ──??──ミカサヒコ(=ヲバシリ)──タケミカツチ
 

ヒノハヤヒコに 御言宣 「汝 国絵を 写すべし」 ヤマト巡りて 皆 描く〈ホ6-4〉
・この尊は トヨケの孫の ミカサヒコ その子
ヒサヒコ カシマ尊
 雷拉ぐ功を 
タケミカツチと 名付くこれかな            〈ホ191-2〉


■国絵・地絵 (くにゑ)
今風に言えば 「地図」 です。
ヱ(絵)は ヱ(合・会)と同じで、「合わせ・写し・コピー」 が原義です。

 
ヤマト (和・大和・倭)
「和の道が通った地」 すなわち 「中央政府の統治が及んだ国」 がヤマトです。
ですからこの時点においては、北海道を除いた 「日本全土」 ということになります。

 和(まと)の教えに かかんして のんアワ国は てんヤマト 〈ホ5-4〉


■国の南 (くにのさ)
サ(南)は 「かえ・かん」 を意味し、太陽が最も高い位置に上り、
地上に注がれる太陽のエネルギーが最大となる方位です。
そのゆえに 太陽神(あまひかみ)は “南” に移る、ということでしょう。

 木は春 若葉 夏 青葉 秋 熟もみぢ 冬 落葉 これも同じく
 根は北に 萌す東や サ(南)に栄え ツは実に尽くる    〈ミ1-7〉


■ヤタミ (八民)
ヤタミには複数の意味がありますが、ここでは “八民” で、
「八方の民・八隅の民・全国の民」 を意味します。


■ううく (▽生活く)
辞書にはない言葉ですが、ウフ(▽生ふ)+ウク(浮く・▽活く) の短縮で、
「生んで高める・生んで活かす・生み育てる・生育する」 などの意です。
これは アヤの最後に出てくる いきいく(生き活く) と同義です。


■オモヒカネ・オモイカネ・オモヰカネ・ヲモヒカネ
タカミムスビ7代タカキネの子で、フトタマ・ヨロマロ・タクハタチチ姫・
ミホツ姫らの兄弟です。別名を “アチヒコ” といいます。
回り歌(まわりうた)が縁となり ワカ姫(斎名ヒルコ)と結婚しています。
記紀には 思金神/思兼神 と記されます。

 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)    ┌クラキネ
 │          │           ├ココリ姫
 │          └アメヨロツ┬アワナキ─┴イサナキ┐
 │          (養子)↑  └サクナキ   (VII) ├ヒルコ
 │             └─────┐       ├アマテル
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ    ├ツキヨミ
 │      (初代)  │               ├ソサノヲ─ヲオナムチ
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ┬イサナミ┘
               (2〜4代)   (5代)├ヤソキネ─タカキネ┬オモヒカネ
                        │ (6代)   (7代) ├ヨロマロ
                        ├カンサヒ     ├フトタマ
                        └ツハモノヌシ   ├タクハタチチ姫
                                  └ミホツ姫
 アワナギ─イサナギ
        ├──────ワカ姫(ヒルコ)
     ┌イサナミ        ├────タチカラヲ
     │            ├────イキシニホ
 トヨケ─┤            ├─────ウワハル
     │            ├─────シタハル
     └ヤソキネ─タカキネ─オモヒカネ


 阿智神社 (あちじんじゃ)
 長野県下伊那郡阿智村智里489。 
 現在の祭神:天八意思兼命、天表春命


■イサワ (▽結和)
アマテルがオモイカネをして移した新都の名です。
この宮の痕跡は残っていませんが、現在の二見浦の近辺と考えています。
(伊雑宮は所在地がホツマの記述に適合しません)

 イス(▽結す)+アフ(合ふ) の短縮 “イサフ” の名詞形で、
 両語とも 「合う・添う・付く・結ぶ」 などを原義とし、
 この場合は 「陽陰・和合・陽陰和合」 を意味します。
 イサフは ユスフ(結ふ)の変態で、イサワは イサ(▽結) や
 イセ(▽結・妹背) の同義語です。

 

【概意】
その後、ヒワヒコに 「汝は国絵を写すべし」 と御言宣。
ヤマトを巡ってすべて描く。
君は 「都を国の南に移すのは 八民を生み育むため」 と、
オモヒカネをして造らせる。完成すればイサワに宮移し。

 

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 ここにゐませは むかつひめ ふちおかあなの おしほゐに
 うふやのみみに あれませる おしほみのみこ
 おしひとと いみなおふれて かみありの もちゐたまえは
 たみうたふ
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 ここに居ませば ムカツ姫 縁丘穴の オシホヰに
 産野の耳に 生れませる オシホミの御子
 “オシヒト” と 斎名を触れて 神生りの 餅飯 賜えば
 民 歌ふ
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■ムカツ姫 (むかつひめ:向つ姫)
あまさかる日に向つ姫” の略で、セオリツ姫の別名です。
“日の前向つ姫(ひのまえまかつひめ)” とも呼ばれます。


■縁丘穴 (ふちおかあな)
「縁にある丘のはずれ」 という意味です。
フチオカ(縁丘)は 「(イサワの都の) 縁にある丘」 の意で、
これは 豊受大神宮の境内にある 「藤岡山」 を指すものと思います。
ホツマ11アヤには “縁丘耳” と記されます。

 母は日の前 向つ姫 斎名ホノコの 産宮は
 
縁丘耳の オシホヰに 生れます御子の 乳に咽ぶ 〈ホ11〉

 ★穴 (あな)
 アヌ(▽空ぬ)の名詞形で、「離れ・空き・逸れ・はずれ」 が原義です。
 アヌは ハナル(離る)の母動詞 “ハヌ(▽離ぬ・撥ぬ)” の変態です。


■オシホヰ ■オシホミ
これは “おしまいおさまり” などの変態で、「締め・終り」 を意味します。
ある領域の 「終端の場所を示す地名」 として、オシホヰ(忍穂井)の他にも、
オシホ(小塩)、オシホリ(押堀)、オシキリ(押切)、オシ(忍) など、
日本中にこうした地名が存在します。

ここでは 「イサワの都の終端」 の意で、“フチオカ端” の別表現です。

 オス(押す)+シホフ/シホム の短縮の名詞形で、オスは “押し迫る” のオスです。
 シホフ/シホムは シボル(絞る)シボム(萎む)スボム(窄む) などの変態で、
 「締める・閉まる・結ぶ・納める」 などが原義です。

後世、“忍穂井” と漢字が宛てられ、井戸の名と信じられたようです。
藤岡山麓にある井戸が忍穂井と名付けられ、上御井神社が建てられています。

 
■産野の耳 (うぶやのみみ)
「生れた土地 (イサワの都) のへり」 という意で、
これも フチオカアナ・オシホヰ の換言です。
ミミは “パンの耳” のそれで、「端・ふち・へり」 を表します。

 ようするに、ムカツ姫の産宮は、イサワの都のはずれの
 藤岡山の麓に建てられたということです。


■オシホミの御子 (おしほみのみこ)
オシホミは オシホヰの変態ですから、やはり 「締め・終り」 の意ですが、
このオシホミは二つの意味を重ねます。
(1) 都のはずれ(終端部)に生まれた御子。
(2) 締めの御子。最終の御子。最後に生れた御子。


■オシヒト
この御子の斎名(本名・実名)です。
“オシホミミ” と通称され、記紀には 天忍穗耳尊 と記されます。
オシホヰ+ウブヤのミミ、あるいは オシホミコ ということでしょう。

 箱根神社 (はこねじんじゃ)
 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根80-1。 
 現在の祭神:箱根大神
 ・(筆者注) ハコネ神はオシホミミの贈り名です。

 

■神ありの餅飯 (かみありのもちゐ)
「神の宿る餅」 をいいます。御子誕生の祝いとして臣民に配られたものと思います。

 ★餅・餅飯 (もちゐ)
 モチ(望)イヰ(飯) の短縮で、「望月のようにまんまるな飯」 が原義です。
 モチヅキ(望月)は 「満ち足りた形・欠けた所のない形」 を意味します。
 そのため餅は 「茂・望・満・完全」 のモノザネとして用いられます。

 

【概意】
ここに居ませば、ムカツ姫は 都はずれの丘の麓の
“オシホヰ” にて御出産。産土の終端で最終の御子が御誕生になります。
“オシヒト” と斎名を告知して、神ありの餅を振舞えば、民は歌う。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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