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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第191回 [2024.10.24]
第三五巻 ヒボコ来たる スマイの文 (3)
著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com
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垂仁天皇-1-3
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ひぼこきたるすまいのあや (その3)
ヒボコ来たる スマイの文 https://gejirin.com/hotuma35.html
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なほふつき はひこもつみの このつつき たるねかかはゐ
つきひめお たつきさきとの かくやひめ なるうちめゐか
ことほきし はつたなはたの かみまつり
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七年七月初日 コモツミの子の ツツキタルネが
カバヰツキ姫を 立つ后 妹のカグヤ姫 なる内侍
五日寿ぎし 果つ棚機の 神祭
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ここは五七調がかなりいびつなため、言葉の区切りを調整しています。
■コモツミ
崇神天皇の兄 ユムスミ の斎名です。
■ツツキタルネ
コモツミの子で、垂仁天皇のいとこにあたります。
「ツツの県の主」 を意味する名で、古事記には 大筒木垂根王
と記されます。
ツツキ は
山背国の県の名で、今も 京都府綴喜郡
として名が残ります。
★ツツキ
ツツ+キ(城・▽限)
の、ツツ は ツツ(伝つ)
の名詞形で、「続・連・綴」 の意。
つまり 大和国と山背国を結ぶ 「つなぎの県」
の意と考えています。
★タルネ (足る根)
タル(足る)+ネ(根) で、「(地域を)足らす根・治す主」
を意味します。 ▶治す
“タルミ” の換言です。 ▶タルミ
孝元天皇 ├──────開化天皇 ┌ウツシコメ ┃ │ ┃ └ヘソキネ─────イカシコメ[内宮]─┬(3)ミマキイリヒコ(斎名ヰソニヱ:崇神天皇) ┃ └(4)ミマツ姫 ┃ 竹野県主ユキリ──タケノ姫[??]────(1)ユムスミ(斎名コモツミ)─ツツキタルネ┬カバヰツキ姫 ┃ │ 春日県主オケツ──オケツ姫[典侍]───(2)ヒコヰマス(斎名アリスミ) └カグヤ姫 ┃ 葛城国造タルミ──タカ姫[内侍]────(5)ハツラワケ(斎名タケトヨ)
■カバヰツキ姫 (かばゐつきひめ)
垂仁天皇の内宮 サホ姫
は燃える城の中で亡くなりました。 ▶内宮
その後任の内宮として、ツツキタルネの娘の カバヰツキ姫
が召されます。
この姫は他文献には登場しません。
炎 おこりて 城 崩る 諸人更れば サホヒコと 后も罷る 〈ホ35-2〉
樺井月神社
(かばいづきじんじゃ)
山城国綴喜郡。京都府城陽市水主宮馬場1、水主神社摂社。
現在の祭神:月讀命
■カグヤ姫 (かぐやひめ)
カバヰツキ姫の妹で、内侍として召されます。 ▶内侍
古事記に 迦具夜比売命
と記されます。
崇神天皇 ├──────垂仁天皇 ミマキ姫 ┃ ┃ ヒコヰマス────サホ姫[内宮1]────(1)ホンツワケ ┃ ツツキタルネ──┬カバヰツキ姫[内宮2] │ └カグヤ姫[内侍]
■果つ (はつ)
ハツ(果つ)
が そのままの形で名詞化したもので、ハテ(果て)
の変態です。
この場合は 「行き着くさま・きわみ・至り・究極」
などを意味し、
これは 垂仁7年7月7日 という “777” の3つ揃いを表したものと考えます。
■棚機の神祭 (たなばたのかみまつり)
「棚機の神に心を纏わすこと・棚機の神を慈しむこと」
をいいます。 ▶棚機神 ▶神祭
棚機神 (=元明け49神) は星になっているため、“棚機の星祭”
とも呼ばれます。
【概意】
垂仁7年7月初日、コモツミの子であるツツキタルネの
娘のカバヰツキ姫を后に立て、その妹のカグヤ姫は内侍となる。
5日にその祝賀をなし、<777の日の> 究極の棚機の神祭。
“タニハチウシの姫を後添えに”
というサホ姫の願いは、叶えられませんでした。〈つづく〉
御恵みを 忘らで 後の 定めには タニハチウシの 姫をもがな 〈ホ35-2〉
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あるとみきみに もふさくは たえまくえはや おおちから
ちかねおのはし つのおさく かなゆみつくり とこかたり
これおふみはる わかちから よにくらへんと もとむれと
なくてまかるや ひたなけく
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ある臣 君に 申さくは 「タエマクエハヤ 大力
地金を延ばし 角を割く 金弓造り 常語り
“これを踏み張る 我が力 余に競べんと 求むれど
無くて罷るや” ひた嘆く」
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■タエマクエハヤ
タエマ は 地名で、奈良県葛城市當麻(たいま)
に名が残ります。
クエハヤ は クフ(▽配ぶ)+ハユ(栄ゆ)
の名詞形で、「足らし助ける者・治す者」
の意と考えます。
ですからようするに 「當麻の県主」
を意味する名で、日本書紀には 當麻蹴速
と記されます。
ホツマには説明がありませんが、古事記によれば、小俣王
の子孫です。
開化天皇 ├─────────ヒコヰマス オケツ姫[典侍] ├────┬水穂真若王(アフミ)──ヤサカフリイロネ │ ├丹波道主王(タニハチヌシ) ホノススミ─??─アメミカゲ─息長水依比売 ├沙本毘古王(サホヒコ) ├沙本毘売命(サホ姫) ├神大根王 └小俣王──タエマクエハヤ
当麻山口神社
(たいまやまぐちじんじゃ)
大和国葛下郡。奈良県葛城市當麻1081。
現在の祭神:大山祇命、天津彦火瓊瓊杵命、木花佐久夜比売命
境内摂社 当麻都比古神社 祭神:彦坐皇子、麻呂子皇子
・近くに當麻蹶速塚あり。
■踏み張る (ふみはる)
この フム は フル(振る・▽奮る) の変態で、
「勢いよく・奮って」 の意を続く動詞に添えます。フンバル
とも言います。
【概意】
ある臣が君に申すには、
「タエマクエハヤは大力で、地金を延ばし、角を割き、金弓を造って、常語り。
“これを踏み張る我が力、余人と比べたいと相手を探しているが、
その機会もなく世を去るのか?”
と、ひたすら嘆いております。」
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きみもろにとふ くえはやに くらふるちから あらんおや
もふさくのみの すくねなり なかおいちして これおめす
のみのすくねも よろこへは あすくらへんと みことのり
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君 諸に問ふ 「クエハヤに 競ぶる力 あらんをや」
申さく
「ノミの スクネなり」 ナガオイチして これを召す
ノミのスクネも 喜べば 「明日競べん」 と 御言宣
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■ノミのスクネ
ホツマに出自の説明はなく、ウカツクヌ
の子の 襲髄命
と同一人とする説もありますが、
筆者は否定的です。日本書紀には 野見宿禰
と記されます。 ▶スクネ
ノミ は ヌメ(滑)・ヌマ(沼) などの変態で、「泥・埴・土」
を意味すると考えています。
もしそうなら 「土の司」 を意味しますので、出雲の 土師
を束ねる地方役人だったと考えています。
アマテル──ホヒ──オオセイイミクマノ … … ┬フリネ(11代国造) (初代出雲国造) │ ├ヰイリネ─ウカツクヌ(12代)─襲髄命(13代) │ └ウマシカラヒサ
■ナガオイチ
ノミのスクネ が主となっている出雲の キツキ宮
に遣わされたものと思われます。
神魂神社 (かもすじんじゃ)
島根県松江市大庭町563。
現在の祭神:伊弉冊大神、伊弉諾大神
・垂仁天皇は、出雲国造13代の孫
野見宿祢が怪力であることを御聞きになり、
当時大和で日本一の大力と豪語する當麻蹴速と角力させんと、勅使を当大庭に遣はされ、
宿祢に伝えさせ給う。
【概意】
君は諸に問う。「クエハヤに対抗できる力の持ち主はいないものかや。」
申して
「ノミのスクネなり」 ナガオイチをしてこれを召す。
ノミのスクネも喜べば、「明日競べん」 と御言宣。
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ちからくらふる かみののり すまいのさとに はにわなし
たえまはきより のみはつに あひたちふめは
のみつよく くえはやかわき ふみてまた こしふみころす
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力競ぶる 上の法 スマイの里に 埴環なし
タエマは東より ノミは西に 合ひ立ち踏めば
ノミ強く クエハヤが脇 踏みてまた 腰踏み 殺す
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■上の法 (かみののり)
「御上の定めたルール」 の意に解しています。 ▶御上
■スマイの里 (すまいのさと)
現在の 相撲神社 の周辺をいうのだろうと思います。 ▶里
★スマイ
(争い・相撲)
スム(▽統む・住む)+アフ(合ふ) の短縮 スマフ(争ふ)
の名詞形で、
両語とも 「合う/合わす・当る/当てる・ぶつかる・比べる」
などが原義です。
今に言う スモウ(相撲・角力)
です。
相撲神社
(すもうじんじゃ)
奈良県桜井市穴師1065、穴師坐兵主神社摂社。
現在の祭神:野見宿禰、当麻蹶速
■埴環・埴輪 (はにわ)
「土の輪/環」 の意で、今に言う 「土俵」 です。
土で造る象形物の 埴輪
ではありません。それらは ハニデコ(埴偶) と呼ばれます。
■踏む (ふむ)
この フム は 「合わす」
が原義で、「押す・圧す・当る・打つ・ぶつかる」
などの意です。
【概意】
力を競べる御上の法は、スマイの里に土俵を造り、
タエマは東より ノミは西より、同時に立ってぶつかれば、
ノミ強く、クエハヤの脇を打ち、また腰を打ちて殺す。
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ときにきみ うちはおあけて とよませは とみもよろこひ
くえはやか かなゆみおよひ たえまくに のみにたまわり
いえはつま つきなしのみは ゆみとりそこれ
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時に君 団扇を上げて とよませば 臣も喜び
クエハヤが 金弓および タエマ地 ノミに賜わり
言えば妻 「付き無しの身は 弓取りぞこれ」
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■団扇 (うちは)
相撲の行司が持つ 軍配団扇
の起源でしょう。
まったくの余談ですが、銀杏(いちょう) は
その発音と葉の形から、団扇(うちは) の
転訛と考えています。 ん!? ・・・ だから力士は 大銀杏(おおいちょう)
を結うのか!?
■とよます (響ます)
「団扇を往き来させる」 という意で、この場合は
「軍配を勝者の方に振り向ける」 動作を表します。
現在は行司が行いますが、その起源は 垂仁天皇
だったわけです。
★とよむ
(響む)
トフ/トユ(訪ゆ)+ヨム(▽揺む) の短縮で、ヨム は ヨル(揺る)
の変態。
両語とも
「往き来する・揺れる・振る・回る・伝わる・響く」
などが原義です。
■付き無しの身 (つきなしのみ)
「縁もゆかりもない身・かかわりのない者・似つかわしくない者」
という意です。 ▶付き無し
■弓取り (ゆみとり)
ノミが 「クエハヤ の 金弓
を賜ったこと」 をいいますが、
同時にクエハヤが領していた タエマ
の地も賜っています。
そのため “弓取り” は 「一国の領主となった者」
を含意するようになったようです。
ゆみとり【弓取り】〈大辞泉〉
・一国を領有するほどの武家。
【概意】
時に君は団扇を上げて勝者ノミに振り向ければ、臣も喜び、
クエハヤの金弓、およびタエマの地をノミに賜わる。
それを妻に言えば、「その地に何のかかわりもない身が領主となったぞなこれ。」
本日は以上です。それではまた!