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徹底解説みかさふみ講座 第54回 [2023.5.19]

みかさふみ アワ歌の文〈神代和字〉 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 あわうたのあや (その2)
 年内になす事の文 https://gejirin.com/mikasa10.html
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 いかたとかもの はしめより やまとことはの みちあきて
 たつなかつほの ちまたより てにおはゐつき みちひきて
 ことはつかひも このうたの なかのななねお もととして
 ひとのむつねに くはりしる

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 イカダとカモの 初めより 和言葉の 道 開きて
 立つ中壺の 岐より テニオハ傅き 導きて
 言葉遣いも この歌の 中の七音を 基として
 人の六根に 配り知る

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■イカダとカモの初め (いかだとかものはじめ)
「イカダとカモ(=櫂)のはじまり」 の意で、
シマツヒコが鵜を観察して “イカダ” を考案し、
オキツヒコが鴨を観察して “櫂” を考案したことをいいます。

 船はいにしえ シマツヒコ 朽木に乗れる 鵜の鳥の
 アヅミ川行く イカダ乗り 棹差し覚え 船となす 
 子のオキツヒコ 鴨を見て 櫂を造れば  〈ホ27-3〉


■和言葉の道 (やまとことばのみち)
これは今に言う “大和言葉” ではありません。
後述されますが、「音を合わす言葉の道・韻を踏む言葉の作り」 をいいます。

 ヤマトは ヤマツの名詞形で、ヤマツは ヤワス(和す)の変態ですが、例えば
 ヤワス・ヤマツ・ヤマト の、音の近似性が ここに言う “和言葉の道” です。
 あるいは カキ(掻き)・コギ(漕ぎ)・カイ(櫂)・カモ(鴨) なんかもそうです。


■立つ中壺 (たつなかつぼ)
ナカツボ(中壺)は ナカ(中)+ツボ(壺) の連結で、どちらも 「中心・主・要」 を
原義とし、この場合は 5音−7音−3音 に綴る歌の、「中の7音」 をいいます。
“立つ” は ここでは 「他より高いさま・他より重要なさま」 を意味します。
ですから 「主要の中7音」 という意味です。


岐 (ちまた)
この場合は 「分かれ目・境目」 の意です。


テニオハ (弖爾乎波・天爾遠波)
助詞の ‘て’ ‘に’ ‘お(を)’ ‘は’ をいいます。


■傅く・斎く (いつく・ゐつく)
イツ/ヰツ(▽結つ)+ツク(付く)の短縮で、
「側に付いて世話する・助ける・かしずく」 などの意です。
モル(守る)、ハベル(侍る)、ツカフ(仕ふ) などの同義語です。


■人の六根 (ひとのむつね)
魄の根(しゐのね)・根の六臓(ねのむくら)・六宗(むむね) とも呼ばれ、
「人体の6つの根本・人体の基盤である6臓器・人の要の6臓器」 などの意味です。

具体的には 心臓、肝臓、腎臓、肺、膵臓、脾臓 です。
この六臓に元守が宿り、ミヤビを介して 中子(=心) とシンクロしています。
そのため六根が健全なら、心(こころ)も健全だということになります。

 魄の根は ムラト(腎)・ココロバ(心) フクシ(肺)・ユフ(肝)
 ヨクラ(膵)・ヨコシ(脾)や 
根の六臓 渡るミヤビが ものを知る 〈ホ17-6〉


■配り知る (くばりしる)
シル(知る・領る)は 「合う/合わす」 が原義です。
ですから 「配って合わす・割り当てる・なぞらえる」 などの意となります。

 

【概意】
イカダとカモの初めより 和言葉の道が開き、
主要の中7音の分かれ目から テニオハが助け導く言葉遣いも、
中7音をこの歌の基盤と見て、それを人体の基盤である6根になぞらえる。

 

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 ういのゐつねは みとてあし
 とめのみつねは あめつちと ひとほかまねく みつのあな
 うすたましまの かよひちや

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 初の五音は 身と手足
 留めの三音は 天・地と 人霊が招く 瑞の孔
 臼玉島の 通ひ道や

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■身と手足 (みとてあし)
ミ(身)は 「六根(=6臓)を除いた胴体」 ということでしょう。
身+両手両足で、1+2+2=5 です。


■天・地と人霊が招く瑞の孔 (あめつちとひとほかまねくみづのあな)
「日霊と月霊と人の霊が招く瑞(=心・意気)を取り込む口」 という意です。

 妊娠5ヶ月目に入ると、胎児は臓腑の成長が始まるといい、またこの頃、
 日の霊と月の霊と人の霊の3つが交わって、心(意気)が芽生えるといいます。

 “天・地と人霊” は 「日の霊(=)、月の霊(=)、人の霊(=霊の緒)」 をいいます。
 “” は 「本質・粋・髄」 を原義とし、人の本質である 「心・意気」 をいいます。
 “孔” は 「心・意気を取り込む口」 です。

天の霊と タラチネの霊と を招き 三つの因みの 液あふれ 〈ホ14-4〉
陽元に招く 荒神霊 月の和霊 タラの霊と 三つ交わりて
 
心・意気 生りて通ふ 〈ホ16-3〉


■臼玉島 (うすたましま)
ウス(臼)は ウス(失す)の名詞形で 「凹むさま」 を意味します。
タマシマ(玉州・玉島)は、「ふくらんだ区画」 の意です。
ですから 「凹みのあるふくらんだ区画」 の意で、これは 「女性器」 のことです。

 

【概意】
また 初の五音は 胴と手足になぞらえ、
留めの音は、日・月の霊と人霊のつが招く(心・意気)を
取り込む孔になぞらえる。臼玉島の通い道や。

 

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 をかみのうたの そいのかす あうのひひきの あまれるお
 つきのはしめの もちにみつ
 めかみのうたは もちのすゑ まけてにやしの こころかく
 みつるかくるの ふたうたお ひとつれにあむ つくはうた

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 男尊の歌の 添いの数 ア・ウの響きの 余れるを
 月の初めの 望に満つ
 女尊の歌は 望の饐え 負けて和やしの 心 掛く
 満つる・欠くるの 二歌を 一連れに編む “付離歌”

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■添いの数 (そいのかず)
「歌に付くオシテの数」 です。


■ア・ウの響きの余れる (あうのひびきのあまれる)
男尊の歌は 「アとウの音が余分であること」 をいいます。

 男尊 なにゑや ましおとめに いぬ
 女尊 わなにやし ましをとこに ひき


■月の初めの望に満つ (つきのはじめのもちにみつ)
「月の初めの新月が望月に満ちる」 という意で、「上向き・上り調子」 を表します。
その理由は、陽母音 ア・イ・ウ の中でも特に、アは 「陽・天・上」 に通じ、
ウは (後に語られますが) アのオシテが上向きに突き出した形であることによります。

 ア () =空  イ () =風  ウ (△) =火  エ (己) =水  オ (□) =埴
 ←……………… 陽属性 …………………→   ←……… 陰属性 ………→


■望の饐え (もちのすゑ)
望月の欠けてゆくさま」 の意で、「下向き・下り調子」 を表します。

 スヱは スユ(饐ゆ)の名詞形で、「下る・落ちる・劣る・衰える・悪くなる」
 ことを意味します。スイ(垂・衰・水)、スエ(末)などの変態です。


■負けて和やし (まけてにやし)
負けて和し(まけてやわし)” と同じです。
「後ろへ下がってやわらげること・相手に譲って調和すること」 をいいます。

 ニヤシは ニユ(▽和ゆ・似ゆ)+ヤス(▽和す・▽安す) の同義語短縮
 “ニヤス” の名詞形です。ニヤは “にやにやする” のそれです。

 
■付離歌 (つくばうた)
ツクバは 「付きと離れ」 の意で、これが “筑波” の語源と考えられます。
付離歌は 男尊の 「付きの歌」 すなわち “あいぬ” (我結ぬ:積極能動) の歌と、
女尊の 「離れの歌」 すなわち “あひき” (我引き:消極受動) の歌を指します。

 つまり、付離歌=天のアワ歌 です。

 ★ツクバ・ツクマ (▽付分・▽付離)
 ツク(付く)+クブ/クム の短縮の名詞形で、「付きと離れ・和合と離別」 を意味します。
 クブ/クムは クバル(配る)/クマル(分る) の母動詞で、「分れる/分ける」 の意です。
 “筑波” の原義もこれです。

 

【概意】
男尊の歌のオシテの数の、アとウの音が余分なことを、
月の初めの新月が望月に満ちるさま (上向き・積極) になぞらえる。
女尊の歌は、望月の欠けてゆくさま (下向き・消極) になぞらえて、
負けて和やし (譲って調和) の心を掛ける。
満ちる/欠けるの二歌を 一連に編む “付離歌”。

 

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 つくねおあはす そのすゑは あしつみかわの しまつひこ
 なかれきにほす うのはして きおあみつらね いかたのり
 けりのおよくお なかめつつ つくるふなこの おきつひこ
 かもとなつけし ことのはお ついてにかやふ
 そのかたち あむとやわしと なかれきの ふつくにちなむ

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 付く音を合わす その粋は 安曇川の シマツヒコ
 流れ木に干す 鵜の羽して 木を編み連ね イカダ乗り
 鳧の泳ぐを 眺めつつ 造るフナコの オキツヒコ
 カモと名づけし 言の葉を ついでに通ふ
 その形 アムとヤワシと 流れ木の 悉くに因む

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■付く音を合わす (つくねおあはす)
「付ける音を合わす・韻を踏む」 の意で、これが先出の “和言葉の道” です。


■▽粋 (すゑ・すゐ)
スム(澄む)の変態 “スユ” の名詞形で、「上澄み・純粋・精髄」 などを表します。
ここでは 「最たる例・第一のもの」 等に訳したいと思います。


■安曇川 (あしづみがわ・あづみがわ)
現在の 安曇川(あどがわ) です。


■シマツヒコ
太古アワ国の安曇川で、朽木に乗って羽を乾かす鵜を見て、イカダを考案した人です。

 シマツヒコ─オキツヒコ─シガ─?─?─?─カナサキ

 船はいにしえ シマツヒコ 朽木に乗れる 鵜の鳥の
 アヅミ川行く イカダ乗り 棹差し覚え 船となす 
 子のオキツヒコ 鴨を見て 櫂を造れば  〈ホ27-3〉


■鵜の羽して (うのはして)
“して” のシは、スル(為る)の連用形で、スルは 「合わす」 が原義です。
この場合は 「鵜の羽をまねて」 の意になります。 [動画:鵜の羽干し]


■イカダ (筏・桴)
イク(▽結く)+カツ(▽括つ) の同義語短縮 “イカツ” の名詞形で、
「結び括ったもの」 の意です。


■鳧 (けり)
現在は別種となっていますが、カリ(雁)カモ(鴨・鳧) の変態で、
「足を前後に掻いて泳ぐ鳥」 を意味します。[動画]

 ケリ(鳧)は ケルの名詞形で、ケルは カル(駆る)の変態。
 カルの名詞形が カリ(雁)です。
 カモ(鴨)は カムの名詞形で、カムは カフ(交ふ・替ふ)の変態。
 カフの名詞形が カイ(/回) です。
 いずれも 「回す・往き来させる・搔く・漕ぐ」 などが原義です。
 したがって語義的には  ケリカリカモカイ=掻き=漕ぎ  なのです。


■フナコ (▽船漕)
フネ(船)+コギ(漕ぎ) の略で、「船を漕ぐ物/者」 を意味し、
この場合は 櫂(カモ/カイ) の別名です。


■オキツヒコ
シマツヒコの子で、鴨(カモ)を見て 櫂(カモ/カイ)を造りました。

 シマツヒコ─オキツヒコ─シガ─?─?─?─カナサキ


■アムとヤワシと流れ木 (あむとやわしとながれき)
ム(編む・▽合む)は 「付き・寄り」 をいい、の 「積極能動」 を表します。
シマツヒコの例では 「編み連ねること」、オキツヒコの例では 「造ること」 に該当します。

シ(和し)は 「離れ・退き・負けて調和」 をいい、の 「消極受動」 を表します。
シマツヒコ・オキツヒコの例では 「見て真似ること・眺めて真似ること」 に該当します。

“流れ木” は よくわかりませんが、「流れに身をまかすこと・無為・偶然」 を表すかと
考えてます。「たまたま鵜の羽干しや鳧の泳ぎに立ち会ってそれに目が留まる偶然」 を
いうのではないでしょうか。


悉くに (ふつくに)

 

【概意】
付ける音を合わすその最たる例は、安曇川のシマツヒコが
流れ木に乗って干す鵜の羽をまねて、木を編み連ねてイカダ乗り。
ケリ(鳧)が泳ぐのを眺めて フナコ(櫂)を造ったオキツヒコは、
ケリを 鴨(カモ) と名づけ、ついでにその言葉を 櫂(カモ/カイ) へと通わせる。
そのさまは能動と受動と無為の偶然が完全に因み合う。

 

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 もとつねの あむとやわしの つくはねお
 むすひまします あめみをや いまふたかみも なそらゑて
 つくはのかみと たたゑたまひき

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 基つ音の アムとヤワシの 付離根を
 結びまします アメミヲヤ いま二尊も なぞらえて
 “付離の神” と 称え給ひき

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■基つ音のアムとヤワシ (もとつねのあむとやわし)
「基となるム(編む:)とヤシ(和し:)の音」 の意で、
つまり 「すべての根源であるア(陽)とワ(陰)の音」 ということです。
これは以後、ウイネ(初音)・モトア(基ア)・ウヰノアワネ(初のア・ワ音)
などと言い換えられていきます。


■付離根 (つくはね・つくばね)
「付き/離れの根・満ち/欠けの根・結ぬ/引くの根」 などの意で、
「陽/陰の性質の根源・陽/陰の本質」 を表します。


■結びまします (むすびまします)
“結ぶ” の尊敬語の “結びます” に、尊敬の “ます” をもう一つ重ねた表現です。

 ムスブは ムス(生す・産す・▽睦す)+スブ(統ぶ) の同義語短縮で、原義は
 「付ける・合わす」 ですが、ここでは 「(実を)結ぶ・生む・現す」 などの意です。


アメミヲヤ (陽陰上祖)


■付離の神・筑波の神 (つくはのかみ・つくばのかみ)
「付きの歌と離れの歌によって陽と陰の本質を現した二尊」 に、
アマテルが贈った神名です。

 筑波山神社 (つくばさんじんじゃ)
 茨城県つくば市筑波1番地。
 現在の祭神:筑波男ノ神 (伊弉諾尊)、 筑波女ノ神 (伊弉冊尊)
 ・筑波山は別名が筑波嶺(つくばね)。

 ふたかみの 貴き山の 並み立ちの 見が欲し山と 
 神世より 人の言ひ継ぎ 国見する つくはの山を 〈万葉集3〉

 

【概意】
基つ音のムとヤシの “付離根” を結びまします陽陰上祖。
今 二尊もなぞらえて  “付離の神” と称え給うのであった。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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