1961年 (昭和36年) 6月22日 木曜 | 前の記事 | 目次 | 次の記事 | |
録音:「マイ・ボニー」他 with トニー・シェリダン |
歌手トニー・シェリダン (Tony Sheridan)
とビートルズの最初のレコーディング・セッションが、この日ハンブルグで行われた。
一番右はトニー・シェリダン |
トニー・シェリダンもビートルズと同様に、1960年からハンブルグのブルーノ・コシュミダー (Bruno Koschmider) が経営するカイザーケラー (Kaiserkeller) に出演して人気を博していた。そして11月にはペーター・エクホルン (Peter Eckhorn) の経営するトップ・テン・クラブ (Top Ten Club) に移る。ビートルズはこの頃すでにトニーと会っていたが、一緒に演奏する機会はなかった。
しかし今回のビートルズのドイツ滞在では、両者はトップ・テン・クラブのステージを交互に努めたり、また時々はビートルズがトニーのバックバンドを努めたりもしていたのであった。
オーケストラのリーダーで、ポリドール (Polydor) のエージェントでもあったベルト・ケンプフェルト (Bert Kaempfert) は、彼らの共演ステージを何回か見て、トニー・シェリダンとそのバックバンドとしてレコーディングすることを奨めたのである。
それを受けてこの日のレコーディング・セッションの運びとなった。録音はプロ用のスタジオではなく、ハンブルグのフリードリヒ・エーベルト・ハレ (Friedrich Ebert Halle) のステージで代用した。
この会場はハールブルグ (Harburg) の街の多目的ホールとして、また地元の小・中学校の集会場として使われていた。またスキッフルやジャズの演奏会も数多く開催されていたが、ロックンロールは稀だった。ポリドールやフィリップス (Philips) の録音にしばしば使われていることからも、この会場の優れた音響をうかがい知ることができる。
トニー・シェリダンとビートルズの録音は、6月22日から24日まで3日間続くが、この日と翌23日には「マイ・ボニー (My Bonnie)」「ザ・セインツ (The saints)」「ホワイ (Why)」「クライ・フォー・ア・シャドー (Cry For A Shadow)」の4曲が録音される。初めの3曲はトニーがリード・ヴォーカルをとり、最後の曲はインストゥルメンタル・ナンバーであった。
スチュアート・サトクリフがビートルズを去った正確な日付は知られていないが、このセッションの時にはすでにスチュアートの姿は見られず、ジョン・レノン:リズムギター、ジョージ・ハリスン:リードギター、ポール・マッカートニー:ベースギター、ピート・ベスト:ドラムスというラインナップとなっている。楽器とアンプをステージにセットし、エンジニアのカール・ヒンゼ (Karl Hinze) が2トラックのステレオ録音装置を操作した。
最初に録音されたのは「マイ・ボニー」で、これは古きスタンダード曲「My Bonnie Lies Over The Ocean」のロックンロール・バージョンである。リードギターはジョージだが、ソロの部分はトニーが弾いた。これは後に異なるテイクがミックスされた。イントロの部分は、英語とドイツ語の2種が録音され、これはベルンド・バーティー (Bernd Bertie) によって翻訳された。
続いて「聖者の行進」をアレンジした「ザ・セインツ」、トニー・シェリダンの自作バラード「ホワイ」、そして「クライ・フォー・ア・シャドー」と録音される。「クライ・フォー・ア・シャドー」はジョンとジョージ共作のインストゥルメンタル・ナンバーで、1995年のアンソロジー1に収録されている。
トニー・シェリダンは、この時「サム・アザー・ガイ (Some Other Guy)」「カンサス・シティ (Kansas City)」「ロックンロール・ミュージック (Rock And Roll Music)」も録音したと言っているが、これまでの所その録音は発見されていない。
ビートルズはこのレコーディング・セッションに300マルクの報酬をもらっている。「マイ・ボニー」のシングル盤は1961年10月に、トニー・シェリダン&ザ・ビートブラザーズ (Tony Sheridan and The Beat Brothers) のクレジットでリリースされ、ドイツのヒットチャートの5位まで昇っている。
フリードリッヒ・エーベルト・ハレでの録音は翌23日も続く。しかし3日目の24日の録音は、スタジオ・ラールシュテット (Studio Rahlstedt) に場所を移して行われる。
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ライヴ演奏 トップ・テン・クラブ |
録音 「エイント・シー・スィート」他 |