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■徹底解説ホツマツタヱ講座のサンプル

 

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徹底解説 ホツマツタヱ講座 第125回 [2019.7.19]

第二三巻 衣定め剣名の文(1)

著者:御預二号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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言葉の意味やその語源についてのより深い理解のために、
筆者HPの該当箇所を合せてご覧いただくことをおすすめします。
系図は等幅フォントで見ないと表示が乱れますので、その場合には
「メモ帳」 等のエディターにコピペしてご覧ください。

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 みはさためつるきなのあや (その1)
 衣定め剣名の文 https://gejirin.com/hotuma23.html
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―――――――――――――――――――――――――――――
 あめつちも うちともきよく とほるとき
 みちもののへら しらゐしに つるきおかみて ものぬしか
 きるもたからか ゆえおこふ ときにあまてる みことのり
―――――――――――――――――――――――――――――
 天地も 内外も清く 通る時
 三千モノノベら 領居州に 剣 拝みて モノヌシが
 "斬るも宝" が 故を乞ふ 時に和照る 御言宣
―――――――――――――――――――――――――――――


■天地も内外も清く通る時 (あめつちもうちともきよくとほるとき)
アメツチ(天地)は 「陽と陰」 を表します。
ウチト(内外)は 中節の内を巡る 「月」 と、外を巡る 「日」 を表し、
やはり 「陰と陽」 を意味します。
キヨク(清く)は 「曲りなく・偏りなく・健やかに」 が原意です。
トホル(通る)は 「隅から隅まで全域に貫徹する」 という意です。
ですから 「陽と陰が健やかに調和して、全領域に行き渡る時」 という意と
なります。

ホツマにおいては 「陽と陰の不調和」 が、あらゆる汚穢・災厄の発生の根源と
考えられていますが、「その不調和がどこにも無い」 というわけです。
そしてそれは 「日・月(太陽・太陰)の大霊が融和して顕現する神」 のおかげで
あると、賛美と感謝をアマテル神に捧げる前書きなのです。

こうした賛美感謝の前書きは、アマテルの重要な教えが アマテル自身に
よって語られるアヤの冒頭に置かれます。

 14アヤ 天地も内外も清に通る時 (あめつちもうちともすがにとほるとき)
 15アヤ 天地も和けき時 (あめつちものどけきとき)
 17アヤ 天地も内外も清く和る時 (あめつちもうちともきよくなるとき)
 18アヤ 陽陰晴れて和かに (あめはれてのどかに)
 23アヤ 天地も内外も清く通る時 (あめつちもうちともきよくとほるとき)

またイサナキ/イサナミの二尊も 「陽陰の融和した君」 ということから、
序文に『天地の平けし時 (あめつちのひらけしとき)』と賛美されています。


■三千モノノベ (みちもののべ)
「ヤス国(=中国)の千五百村の民を治める三千人のモノノベ」 を起源とし、
(そのことはこのアヤで語られます) 中央政府直属のモノノベをいう場合の
慣用的な表現です。三千彦、三千臣彦、三千の守、三千司 とも呼ばれます。


■領居州 (しらゐし)
シラ(▽領)は シル(領る)の名詞形で、「治め・纏り・政」 を意味します。
ヰシ(▽居州)は ヰス/イス(椅子)の変態で、「何かを置く土台」 を意味し、
この場合は 「宮の土台・宮の敷地」 をいいます。
ですから "領居州" は 「治めの宮の庭・まつりの庭・宮廷・朝廷」 などの
意で、領庭(しらには)、御領州(をしらす) の同義語です。
ここでは 「アマテルが都とするイサワの宮廷」 をいいます。


■剣 (つるぎ)
三種宝の一つである 「ヤヱガキの剣」 をいいます。
この剣の意義を説明することが、このアヤの目的です。


■モノヌシ
オオモノヌシの略で、ここでは二代目のクシヒコを指します。
ホツマツタエの中では3箇所の例外を除き、モノヌシ=オオモノヌシです。

     イサナギ ┌ソサノヲ─オホナムチ (初代モノヌシ)
       ├──┤       ├───クシヒコ (二代)
    ┌イサナミ └アマテル──タケコ     │
    │                  ├──コモリ (三代)
    │                  │
 トヨケ┴ヤソキネ──タカキネ───────ミホツ姫


■和照る御言宣 (あまてるみことのり)
「和して照らす御言宣・ほどよく調えて恵む御言宣」 という意で、
アマテル大御神の御言宣を尊んでこのように表現します。
トヨミコトノリ(響御言宣)ともいいます。



【概意】
陽陰が健やかに調和して行き渡る時、
三千モノノベらが イサワの宮廷に ヤヱガキ剣の拝観を許された折、
モノヌシが なぜに "斬るも宝" と言うのか、その理由を乞う。
時に和して照らす御言宣。



―――――――――――――――――――――――――――――
 つるきのもとは あめのほこ くにとこたちの よにはまた
 ほこなきゆえは すなほにて のりおまもれは ほこいらす
―――――――――――――――――――――――――――――
 剣の基は 和の矛 クニトコタチの 代にはまだ
 矛なき故は 素直にて 和を守れば 矛 要らず
―――――――――――――――――――――――――――――


■和の矛 (あめのほこ)
アマノサカホコ(和の逆矛)の略です。意味は少し後に説かれますが、
「和(アメ)の教えに逆(サカ)らう者を綻(ホコ)ろばす物」 という意です。
"和の教え" は 「ト(調)の教え」 と同じです。

 ★和 (あめ)
 アメ(▽陽陰/▽和)は ヲメ(▽男女) や イセ(▽妹背) の同義語です。
 いずれも 「陽陰・男女・夫婦」 を意味しますが、陰と陽は結び付く宿命に
 あるため、同時に 「和合・中和・調和」 の意を表します。


■クニトコタチ
「地の先発者」 という意で、太古 地上社会の基礎を造った人類の先祖たちを
総称してクニトコタチといいます。ミナカヌシとトホカミヱヒタメの八尊を
指す場合が多いのですが、クニトコタチの範囲にはかなり広い幅があって、
最も広義には 「ウビチニ/スヒヂより前の まだ人類に男女の別が無かった
時代の国君」 を総称します。この別名が 「トコヨ尊」 です。


■素直 (すなお)
スグ(直ぐ)と同義語のナオ(直)を合成した言葉です。
「曲り/偏り/歪みの無いさま・中にあって端に振れないさま」 を表します。
別の言葉で言えば 「調和するさま・中庸」 です。


■和 (のり)
ノル(▽和る・乗る)の名詞形で、ノルは 「合わす・和する・調和する」 
などが原意です。ですからノリ(▽和)は 「和・調和」 を意味します。

 「典・範・法」 の意に解釈したくなりますが、それらがあっての "矛" 
 (=懲罰)であり、矛が要らなかったのなら、法も要らなかったはずです。
 ですからここでは 「心の素直さゆえに、人々は自然に調和を守った」 
 という意に解しています。



【概意】
剣の始めは、和の教えに逆らう者をほころばす "矛" であった。
クニトコタチの時代には まだ矛が無かった理由は、
人の心が素直で 自然に和を守るため、矛は必要なかったのである。



―――――――――――――――――――――――――――――
 こころゆきすく かみのよは ますよろとしの ことふきも
 うひちにのよは おこそかに かさるこころの
 ことふきも ももよろとしそ
―――――――――――――――――――――――――――――
 心ゆきすく 上の代は 千万年の 寿も
 ウビチニの代は 厳かに 飾る心の
 寿も 百万年ぞ
―――――――――――――――――――――――――――――


■ゆきすく (▽結き結く)
ユク(▽結く)+スク(結く) の連結で、ユクはウク(受く)の変態です。
両語とも 「合わす・結ぶ・収束する・調う」 などを原意とし、ここでは 
「(曲りが)直り調う・調和する」 の意を表します。
ですから "心がゆきすくさま" は 「素直」 と同意です。


■上の代 (かみのよ)
今に言う "上代(じょうだい)" で、「先の時代・古き時代」 を意味します。
ここでは 「クニトコタチの代」 と同じです。


■千万年 (ますよろとし)
マスは 「100,000」、ヨロは 「10,000」 を表す数詞ですから、まともに取れば 
「10億年」 となりますが、これは数の巨大さを誇張した表現でしょう。
ミカサフミには クニトコタチの齢は "百ハカリ齢=10,000,000年" と
記されているため、ここでは "マスヨロトシ" に 「千万年」 と宛てました。

 アメナカヌシの 百ハカリ齢 ・・・
 トコタチの 代は変わらず 百ハカリ齢    〈ミ4アヤ〉


■寿 (ことぶき)
コツ(▽越つ)+フク(噴く) の連結 "コトブク" の名詞形で、
「上がり・栄え・熟成・至り・祝い」 などが原意です。
ここでは 「寿命」 を意味します。


■ウビチニ (▽泥因)
トヨクンヌ(最後のクニトコタチ)の後を継いで国家君主となった尊です。
トヨクンヌの代までは 人に男女の別がなく独り尊でしたが、ウビチニ以降、
人は男女に分れます。男のウビチニは女のスヒヂと結ばれ、初の夫婦一対の
国君となりました。結婚制度はこの二人に始まり、このことが雛祭の由来と
なります。



【概意】
心の調和する太古の時代には千万年の寿命も、
ウビチニの代に 自分を大きく見せようとして
飾る心が芽生えると、寿命も百万年へと減る。



―――――――――――――――――――――――――――――
 おもたるの たみときすくれ ものうはふ
 これにおのもて きりをさむ おのはきおきる うつわゆえ
 かねりにほこお つくらせて ときものきれは よつきなし
 たみのよわひも やよろなれ
―――――――――――――――――――――――――――――
 オモタルの 民 鋭き勝れ 物奪ふ
 これに斧以て 斬り治む 斧は木を伐る 器ゆえ
 金錬りに矛を 造らせて 鋭き者斬れば 代継ぎ無し
 民の齢も 八万均れ
―――――――――――――――――――――――――――――


■オモタル
ウビチニの孫です。カシコネを妻として国君となり、近江安曇の都に、
東はヒタカミから西は筑紫まで治め、ほぼ日本全土を統一しますが、
代嗣が生まれることなく、ミナカヌシに始まる皇統はここに断絶します。
そのため 統治システムが崩壊して秩序が失われ、日本国家は退廃への道を
歩み出します。その後にヒタカミのトヨケが暫定的に国家の統治を継ぎ、
イサナキ/イサナミを国君とする新たな皇統を打ち立てます。

 ミナカヌシ─天の八尊─地の十一尊─クニサツチ─トヨクンヌ─┐
 ←・・・・・・・・(広義のクニトコタチ)・・・・・・・・→ │
       ┌――――――――――――――――――――――┘
       └ウビチニ
          ├―――ツノクヰ
         スヒヂ    ├―――オモタル
              イククイ   │
                   カシコネ


■鋭き勝る (ときすぐる)
トキはトシ(利し・鋭し・疾し)の連体形が名詞化したもので、
「明敏さ・利発さ・鋭利さ」 などを意味します。
ここでは "鋭き" と宛てましたが、"利き・疾き・敏き" でも同じです。
スグル(勝る・優る)は、もとはスグ(過ぐ)の連体形です。
ですから 「利発が過ぎる」 という意です。
これは17アヤに出てきた "利き過ぎねぢけ" "鋭き過ぎて" の別表現です。

・荒猛心 子に求め 利き過ぎねぢけ よこしまの    〈17アヤ-4〉
・鋭き過ぎて生る ハタレども それ試みに 術をなせ  〈17アヤ-7〉


■金錬り (かねり)
「金属の精錬・加工をする人」 をいい、つまり 「鍛冶屋」 です。
カネリト(金錬人)・ヰモノシ(鋳物師) とも呼ばれます。


■鋭き者 (ときもの)
「利発が過ぎてねじけた者」 をいいます。


■代継ぎ無し (よつぎなし)
これは 「利発が過ぎた民を次々に斬ったら、次代の子供がいなくなった」 
という意で、"オモタルに代嗣が無かった" ことと直接の関係はないと
思いますが ・・・
しかしながら 「その祟りによってオモタルに代嗣が生れなかったのだ」 と、
暗に言ってるようにも思えます。

 妬み煩ふ 胸の火が 愚霊と成りて 子種噛む  〈16アヤー7〉


■八万均れ (やよろなれ)
民の寿命も 「平均8万年」 となった、ということです。

その後も増減の波を繰り返しながら、人の寿命はずっと減少への道を
たどったようです。また君・臣・民の身分によって寿命の長さに違いが
あったとホツマはいいます。

・今の代は ただ二万年 生き均るる 食 重なれば 齢なし 〈1アヤ-2〉
・万の齢の 尊・彦 やや千齢保つ 民も皆         〈14アヤ-2〉
・人草の食 頻るゆえ 生れ賢しく 永らえも 千齢は百齢と 萎り枯れて
                             〈27アヤ〉



【概意】
オモタルの時代の民は、利発が過ぎて物を奪うようになる。
これに対して斧を以って斬り治めるが、斧は木を伐る道具ゆえ
金錬りに矛を造らせて、鋭き者を次々に斬れば代継ぎがいなくなり、
民の寿命も平均八万年となる。



―――――――――――――――――――――――――――――
 けにもよれとも むかしあり よろすすもへり
 もとせより またよろにます これすすお むすふかみなり
 おそるるは なつみときれは こたねたつ けにつつしめよ
―――――――――――――――――――――――――――――
 食にもよれども 昔あり 万鈴も減り
 百年より また万に増す これ鈴を 結ぶ上なり
 恐るるは 泥み人斬れば 子種絶つ げに謹めよ
―――――――――――――――――――――――――――――


■食 (け)
ケは "クエ" の短縮音で、クエは クフ(食ふ)の名詞形です。
ですから 「くいもの・たべもの」 を意味します。


■鈴/寿 (すず)
スス(▽進す)の名詞形で、「進展・熟成・老い・永らえ」 などを原意とし、
ここでは 「寿命」 を意味します。
ですから 齢(よわひ)・寿(ことぶき) の同義語です。


■これ
素直だったり、飾ったりする 「人の心・心の状態」 をいいます。


■鈴を結ぶ上 (すずおむすぶかみ)
"鈴" は 「齢・寿命」、"結ぶ" は 「形とする・編む・生む」 などの意です。
"上" は 「上位/上流/源流にあるもの・本質・支配的なもの」 をいいます。
ですから 「寿命を結ぶ源・寿命を左右する根本原因」 という意です。


■泥み人 (なづみと)
ナヅム(泥む)+ト(人) で、ナヅムは 「交じる・まみれる・紛れる」 が
原意です。ですから 「有罪/無罪が紛らわしい人・容疑を確定できない人」 
という意です。


■子種 (こだね)
ここでは 「子を生む種(=親)」 という意です。


■実に (げに)
ゲは シク(如く)の名詞形 シカ(然)の変化で、
ゲニは 「如くに・しかと・本当に・まさしく」 などの意を表します。
辞書は 「実に」 と宛てています。


■謹む (つつしむ)
「心する・気を付ける・直す・正す」などの意を表します。



【概意】
食にもよるけれども、昔はいた万年の寿命の民も減り、
百年ほどになったかと思えば、また万年に増えたりもする。
これ人の心は 寿命を支配する根本原因なのである。

恐れるのは、容疑があるというだけで斬ったなら、
いたずらに子を生む種を絶ってしまうということである。
そのことにしかと心いたせよ。



―――――――――――――――――――――――――――――
 あめのかみ つきなくまつり つきんとす かれいさなきに
 のたまふは とよあしはらの ちゐもあき みつほのたあり
 なんちゆき しらすへしとて ととほこと さつけたまわる
―――――――――――――――――――――――――――――
 和の尊 嗣なく政 尽きんとす 故イサナギに
 宣給ふは 「響朝原の 千五百秋 瑞穂の田あり
 汝 行き 領すべし」 とて 経と矛と 授け賜る
―――――――――――――――――――――――――――――


■和の尊 (あめのかみ)
和つ君(あまつきみ)・和つ日月(あまつひつき) と同じで、
「中央政府の君・皇・国家君主」 を意味します。
ここでは オモタル/カシコネの夫婦 をいいます。


■政 (まつり)
ここでは 「国家の纏り・国家の統治」 という意です。


■響朝原 (とよあしはら)
トヨ(▽響)は 「八方に響いて恵むさま」 を表し、「中心」 を意味します。
アシハラ(▽朝原)は 「政府の領」 の意で、中国(なかくに)の別名です。
ですから 「八方に響いて恵む中央政府の領」 というような意味です。

 ★アシハラ (▽朝原)
 アシはアス(▽合す・▽和す)という動詞の名詞形で、「治める・纏る」 
 などの意を表します。アシの変態が アサ(朝)です。
 ハラ(原)は 「区画・場所」 を表し、これはニワ(庭)と同意です。
 ですからアシハラは 「治めの場所・政の庭・政府(領)」 を意味します。
 これはつまり =朝廷 です。


■千五百秋 (ちゐもあき)
"千五百" は 「中国(なかくに)に存在する村の総数」 です。
"秋"は アク(上ぐ)の名詞形で、「上がり・出来高・生産高」 を意味します。
よって "千五百秋" は、「中国の千五百村の総生産高」 をいいます。


■瑞穂 (みづほ)
ムスビ(結び)の変態で、「実り・結果・成果・収穫」などを意味します。


■経と矛 (ととほこ)
ト(▽経)は タマ(▽尊・瓊)と同義で、「尊いもの・最尊重すべきもの」 を
意味し、具体的には 「経・法・教え」 などを指します。そのモノザネが
タマ(珠)です。ホコ(矛)は 「懲戒力・警察力」 を象徴するモノザネです。

したがって "経と矛と授け賜る" は、二尊が 「法を定めて施行する権利と 
それに従って裁き・懲戒する権利を授かった」 ことを意味し、すなわち
それは 「中央政府の君・国家君主」 となったことを意味するものです。



【概意】
和つ君を継ぐ子が無かったため、国家の統治も絶える寸前であった。
それゆえ(トヨケ尊が)イサナギに宣たまうは、
「中央政府領には "響朝原の千五百秋" と謳われるほどの収穫を上げる
田がある。汝は行きてそれを領すべし」 とて、経と矛と授け賜る。



―――――――――――――――――――――――――――――
 とはをして ほこはさかほこ ふたかみは これおもちひて
 あしはらに おのころおゑて ここにおり
 やひろのとのと なかはしら たててめくれは
 おおやしま とふるまことの とのをしゑ
―――――――――――――――――――――――――――――
 経はヲシテ 矛は逆矛 二尊は これを用ひて
 朝原に オノコロを得て ここに下り
 ヤヒロの殿と 中柱 立ててめぐれば
 オオヤ州 通るまことの トの教え
―――――――――――――――――――――――――――――


■ヲシテ (押手)
ここでは 「言葉・記・文」 を意味します。
つまり国家に調和を実現するための 「掟・きまり・法を 記したもの」 です。


■逆矛 (さかほこ)
これもアメノサカホコ(和の逆矛)の略です。
「ヲシテ(掟・きまり・法)に逆らう者を綻ばす矛」 をいい、
これは 「懲戒」 を意味します。


■オノコロ
ここでは 「八方を調えて恵む中心」 を意味し、
「タカマ・都・本拠」 をいいます。

 オヌ(▽合ぬ・▽和ぬ)+コル(▽転る) の連結 "オノコル" の名詞形です。
 オノコルは ヤワシテメグル(和して恵る) や アマテラス(和照らす) の
 同義語で、「ほどよく調えて恵む」 という意です。

 オノコロは 「中心が周囲を調えて恵むこと」 を原意としますが、
 (1) 周囲を調え恵む 「中心」 を意味する場合。
 (2) 中心が調え恵む 「範囲全体」 を意味する場合。
 この二つの意味に使われます。二つの関係は 「太陽と太陽系」 の関係と
 同じだと言って良いでしょう。


■ヤヒロの殿 (やひろのとの)
二尊の皇宮の名です。ヤヒロは漢字を宛てるとすれば 「八紘」 です。
「八方の民を和し恵む中心の宮殿」 という意で、"八紘一宇" の心を
表す名です。したがってヤヒロはオノコロの類義語です。


■中柱立てて巡る/恵る (なかはしらたててめぐる)
アメミヲヤの "初の一息" により 混沌たる泡泥に回転が生じて、宇宙の
創世が始まりますが、その 「回転の中心に立つ柱」 になぞらえたものが
この "中柱" です。

上の回転する大きな渦の 左端にイサナキ(陽)が、右端にイサナミ(陰)が
立ったとたん、二人は渦に巻き込まれ、回りながらしだいに渦の内側に
引き寄せられ、最後に渦の中心(=中柱)で、二人は会合します(陽陰融合)。
イメージ動画:https://pixta.jp/footage/70751293

二尊の "柱巡り" は この動きを表現しています。それは陽と陰に分れて
いた二人が再融合して、アメミヲヤと同じ陽陰合一の状態となることを
意味します。陽陰合一のアメミヲヤは、自らを陽と陰に分けることによって
万物を創造しました。二尊はミヲヤの創造を再現しようとして柱をめぐり、
中心で陽陰融合したのです。それは世の万物を再生するためです。

中央政府の皇統がオモタル/カシコネで断絶した後、長き混乱の時代の中で、
社会のシステムは崩壊し、人の生活も心も獣と化し、万物がほとんど無の
状態に帰します。そこで皇統を受け継いだ二尊は ふたたび無から万物を
生み出して、八方の民を和して"恵る"必要があったのです。


■オオヤ州 (おおやしま)
オオヤは ヲヤ(親・祖) と同じで、「上流/上位にあるさま」 が原意です。
シマ(州・島・▽締)は 「区分・区画・領域」 が原意です。
ですから 「上位の領域」 という意で、「中央政府の領・朝廷領」 をいい、
すなわち 「中国=アワ国」 を指します。オオヤマトともいいます。

 辞書には 大八洲(おおやしま)、大倭(おおやまと) とあって、
 「日本国の古名」 とありますが、それは誤解だと考えます。


■まことの
マコト(真・実・誠)は マツ(▽和つ・交つ)+コト(如) の短縮で、
「合うさま・和すさま・曲りのないさま」 が原意です。
ここでは 「本当の・真実の」 という意ではなく、「和の・調和の」 という
意味を表し、"トの教え" の ト(調) の語義を説明しています。


■調の教え (とのをしゑ)
君臣が民に 「調和の道を教えること」 をいいます。
"調の導き" とも呼ばれます。



【概意】
経は法典。矛は懲戒。
二尊はこれを用いて旧朝廷領に本拠を得て ここに下り、
ヤヒロの殿と中柱を立てて巡り、(万物を再び生んで) 民を恵れば、
中国に通る 調和の "トの教え"。


 この部分はこれまでに何度も出てきていますが、ここでようやく
 神話的表現の奥に秘められた "事の重さ" を理解できる気がします。

・壺は葦原 千五百秋 汝 用ひて 領せとて 経と矛 賜ふ 〈2アヤー3〉
・オノコロの ヤヒロの殿に 立つ柱 回り生まんと    〈3アヤー1〉
・下りて共に とつぎして 実柱回り アワ歌を 詠みて
 オノコロ 万物を 生みしは昔             〈18アヤー1〉



―――――――――――――――――――――――――――――
 ちゐものあしも みなぬきて たとなしたみも にきはえは
 ゐやまととふる やまとくに まとのをしゑは のほるひの
 もとなるゆえに ひのもとや しかれとやまと なすてそよ
―――――――――――――――――――――――――――――
 千五百の葦も みな抜きて 田となし民も 賑わえば
 ヰヤマト通る ヤマト国 マトの教えは 昇る日の
 本なる故に "日の本" や 然れどヤマト な棄てそよ
―――――――――――――――――――――――――――――


■千五百の葦もみな抜く (ちゐものあしもみなぬく)
「中国の千五百村の田に繁茂する雑草を抜くこと」 をいいます。
枕詞 "あしひきの" の意味の一つはこれです。

 中央政府の皇統がオモタル/カシコネで途絶えた後、政治不在が長く
 続いたため、民心も土地も荒廃し、田畑はさながら葦原のように雑草が
 繁茂してました。
 二尊はこの地に調和の道を敷き、民の心を和します。その結果、民は
 雑草を引き抜き始め、田畑を甦らせます。


■ヰヤマト/イヤマト (▽弥和)
ヰヤ(弥)+マト(▽和・円)、あるいは ヰヤ(弥)+ヤマト(和) の短縮で、
「いよいよの和・大いなる調和・和の本質/真髄」 などの意を表します。
ヲヤマト(大和)・モヤマト(▽最和) とも呼ばれます。

 ヰヤ(弥)は イユ/ヰゆ(斎ゆ)の名詞形で、イユは 「上がる・勢い付く・
 栄る・熟れる・優れる・至る」 などが原意です。
 マトはマツ(▽和つ)の名詞形、ヤマトはヤマツ(▽和つ)の名詞形で、
 どちらも 「和すさま・調和するさま」 が原意です。


■ヤマト国 (やまとくに:和国)
このヤマトはヰヤマトの短縮音で、「ヰヤマトが通った国」 という意です。
はじめは 「中国」 に付けられた新名でした。

 二尊の "トの教え" により調和の道が通った中央政府領の中国には、
 まず アワクニ(▽和国) の別名が添えられました。
 その後ついに ヰヤマト(大いなる和・和の真髄)が通ると、
 中国は ヤマトクニ(和国) とも呼ばれるようになります。
 二尊は地方各地にも巡幸して調和の道を敷き、しだいにその範囲を広げ、
 ヰヤマトが国家全体に通った時点で、日本国の国号となります。

・ミソギに民の 調いて 弥和通る 葦引きの 千五百の生田の 瑞穂成る
 和の教えに かかんして のんアワ国は てんヤマト   〈5アヤー4〉


■マトの教え (まとのをしゑ:▽和の教え)
「和の教え・調和の教育」 という意で、"ト(調)の教え" と同じです。
マト道、ヤマトの道、アメ(和)の教え、などとも呼ばれます。


■昇る日の本 (のぼるひのもと)
"昇る日" は 「日の出」 を意味しますが、ここではその 「勢い」 をいいます。
ですから 「日の出の勢いの基・旭日昇天の勢いの原動力」 という意です。
そしてそれは "マトの教え"、すなわち 「国に調和の道を通すこと」 だと
いうわけです。


■日の本 (ひのもと)
現在の我が国の国号 「日本」 です。
すでにこの当時から この名称があったことがわかります。
現在は 「日が昇る所の国」 の意とされますが、本来は 日の出の勢いのもと
である "調和" が通った国、和(やまと)の国という意味だったようです。
かなり複雑ですね。



【概意】
千五百の村の葦もみな抜いて田となし、民も賑わえば
ついにヰヤマト(大いなる和)が通る。そのゆえに "ヤマト国"。
マトの教えは日の出の勢いの原動力ゆえ、また "日の本" や。
しかれどヤマトの名は棄てるなよ。



徹底解説 ホツマツタヱ講座 第125回 完