1963年 (昭和38年) 3月9日 土曜 前の記事 目次 次の記事
 ライヴ演奏:グラナダ・シネマ/ロンドン

  
ヘレン・シャピロ (Helen Shapiro) を主役としたUKツアーを5日前に終えたばかりのビートルズは、早くも次の巡業ツアーをスタートした。ツアー初日のこの日、彼らはロンドン・イーストハム (East Ham, London) のバーキング通り (Barking Road) にあるグラナダ・シネマ (Granada Cinema) に出演する。

このツアーはクリス・モンテス (Chris Montez) とトミー・ロウ (Tommy Roe) の2人のアメリカのシンガーを花形スターとしていた。彼らにとっては不運であったが、観客が見たがっているのはビートルズだということがすぐに判明し、この翌日の公演からはビートルズがメインスターの座に据えられる。
  

3月に僕らはトミー・ロウとクリス・モンテスと一緒に巡業した。その2人がメインの座を分け合って、第1幕と第2幕のトリを務めることになっていた。クリス・モンテスは『Let's Dance』という大ヒットがあったし、トミー・ロウには『Sheila』があった。

ビートルズはどんどん人気が上がっていたから、トミーとクリスには不運だったね。ツアーの初夜はロンドンのバーキングだったが、ショーの終了後にみんな集まっての大会議があった。プロモーターのアーサー・ハウズ (Arthur Howes) が、ビートルズが前半のトリをやった方が良いと言い出したからだ。僕の記憶ではトミー・ロウが前半のトリ、クリス・モンテスが大トリをやってたように思う。僕らは言った「ノー・ノー、トミーとクリスがトリです。」なぜなら2人は僕らにとって依然としてビッグネームだったから。トミー・ロウがひどく怒って「そういう契約だったはずだ。もし僕がトリを務められないなら帰らせてもらう!」と言ったのを覚えている。

僕はクリス・モンテスを気の毒に思ったよ。かれは小さなメキシコ男だった。彼が椅子に腰掛けてスペイン風のスローな曲を演ると、不良どもがみんなで「ブー、引っ込め!」と叫んだ。彼は「オー、これ嫌い? OK。」と言ってその曲をやめ、ギターを置いて何か他のものを試そうとしてたよ。あれはほんとに悲しかったけど、ビートルマニア (Beatlemania) が芽生えようとしてた。『Please Please Me』はヒット中だったし、『From Me To You』ももうすぐだったからね。

 

ジョージ・ハリスン
アンソロジー

  
このツアーでのビートルズの演奏曲目は次の通り。

『Love Me Do』
『Misery』
『A Taste Of Honey』
『Do You Want To Know A Secret』
『Please Please Me』
『I Saw Her Standing There』
  

ニュー・ミュージカル・エクスプレス (New Musical Express) 1963年3月15日号

  

  

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