1963年 (昭和38年) 3月5日 火曜 前の記事 目次 次の記事
 録音:『From Me To You』他/ロンドン

 

場所

EMIアビーロード第2スタジオ (Studio2/EMI Studios, Abbey Road)

プロデューサー

ジョージ・マーティン (George Martin)

エンジニア ノーマン・スミス (Norman Smith) 
録音楽曲 From Me To You,  Thank You Girl,  One After 909

  
アルバム「Please Please Me」はまだリリース前であったが、この日ビートルズは3枚目のシングル『From Me To You』のレコーディングのため、アビー・ロード (Abbey Road) のEMIスタジオに入った。

ジョージ・マーティン (George Martin) とブライアン・エプスタイン (Brian Epstein) は、ビートルズは毎年4枚のニュー・シングルと2枚のニュー・アルバムをリリースしていくプランを案出していた。さいわいビートルズは5日前の1963年2月28日に、ヘレン・シャピロ (Helen Shapiro) のUKツアーのバスでの移動中に『From Me To You』を書き上げていた。

この日は2:30pm~5:30pmと7:00~10:00pmの2回のセッションが行われた。初めのセッションではニュー・シングルの両面となる『From Me To You』と『Thank You Girl』をテープに収める。

ビートルズはスタジオでその2曲をライヴ演奏した。『From Me To You』は7つの基本テイクが録られた。それに続いてハーモニカ、ギター・ソロ、イントロの編集用ピースが録音される。これらは後の段階で、オーバー・ダブを駆使して最善のテイクに仕上げるための録音パーツである。
(そのすべてのテイクはこちらのサイトで聴くことができる)
  

テイク2・3・4・5・7は最後まで演奏している。
テイク1:
開始から1分ほどのところで中断。ギター弦を指でこすって出た「キー」という音を、ポールが調整室からの中断指示のホイッスルと勘違いしたらしい。
テイク5:
このテイクで初めて中間部にギターソロとコーラスが挿入される。
テイク6:
出だしでつまづいて終了。
テイク7:
最後のテイクで、これが最良と認められる。

  
編集用ピースはテイク8~13とナンバリングされた。これらはテイク7をバックで再生しながら、もう1台別の2トラックレコーダーに録音された。
  

テイク8:
イントロと間奏部にレノンがハーモニカを重ねた。
テイク9:
リトライ。もう1度間奏部と、今度は最終部にもハーモニカを入れるはずだったが、レノンは最終部にもハーモニカを入れるとは思わず、演奏せずリトライ。
テイク10:
最終部にハーモニカを重ねる。
テイク11:
イントロにハミングを重ねる
テイク12:
イントロにコーラスを重ねる。
テイク13:
リトライ。今度はレノンだけ他より1オクターブ上で歌った。

  
最終的な『From Me To You』は、テイク12のイントロで始まり、テイク8の最初の3行がそれに続き、間奏部はテイク9から取り、テイク10で終了する、という編集で後日完成する。

B面の曲はこの時点では『Thank You Little Girl』という仮題が付けられていた。ビートルズはこの曲の基本テイクを6つと、編集用ピースを7テイク録っている。最終バージョンはテイク6とテイク13のコンビネーションとなった。

夜のセッションにおいてビートルズはさらに2つの自作曲、『One After 909』と『What Goes On』を録音したい意向を持っていた。しかし1曲分の時間しか残っていなかったので、『One After 909』の基本テイクを4つと、中間部から始まって最終部まで続く短い編集用テイクを1つ録った。

4つの基本テイクの内、コンプリートできたテイクは1つだけで、それもその時点ではリリースには不適格と思われた。その後ビートルズは1969年の「Let It Be」のセッションの時に再度この曲に取り組んでいる。またこの日の録音の編集バージョンが1995年に「アンソロジー1」でついに公開された。

  

  

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